その日は、よく晴れた日だった。
青い空、照らす陽光。
しかしそれよりも強い熱量を放つ集団があった。
東京都千代田区に建てられた国会議事堂には、かつてないほどの人の群れが詰めかけていた。
銀座に突如として開いた異世界への「門」。
そして特地と名付けられた、門の内で出会った人々。
彼らの中の何人かが、今日、この国会議事堂に招致されているのである。
主に特地に派遣された自衛隊の実情を知ることが目的とされている。
それ以外では、特地の文化や生活などを実際に生活をしている本人から確認することがあるだろう。
皆は知りたがっているのだ。
門の先にある、未知なる世界について。
それを知りえるのは、こちらの世界では、派遣された日本の自衛隊員しか知りえない。
その特権を悪用していないかどうか、それを本会議にて暴こうというのが、野党のねらいであった。
特地から招致されたのはテュカ、レレイ、ロゥリィの三人。
彼女たちの浮世離れした容姿がテレビで放映されると、すぐさま世間の反応が返って来た。
金髪碧眼の麗しい容姿を持つテュカ。
短めの髪でRPGに出てくるような魔法使いに似たポンチョを着こんでいるレレイ。
黒いゴスロリ衣装に身丈をはるかに超える長物を持った、ロゥリィ。
彼女たちの姿かたちは、地球においても浮きだって見え、目立っていた。
自衛官を傍らに侍らせた彼女たちの姿を見た人々は、一度で理解ができた。
彼女たちこそ、門の外からやってきた位階からの訪問者であると。
スマートフォンで写真を撮られ、アップされた彼女たちの写真のおかげで、とある提示版サイトが一つの祭りとなっていた。
前日から大きな盛り上がりを見せていたが、当日はそれ以上だった。
日本の公共放送であるNHKは、普段ならばそれほど視聴率は良くはないが、その日は記録的な視聴率をたたき出した。
具体的な数値は伏せるが、大晦日に放映される某歌番組よりも人々に見られていたという。
それほど、世の関心ごとが高かったのだろう。
更にNHKは衛星を通じて、世界向けて発信される。
日本の政治家たちがどんな答弁を行うのか。
特地に赴いた自衛官たちの行いはどうだったのか。
異世界からやってきた人々は、一体どんな人物なのか。
こうした疑問が、この答弁で明かされる。
そう思って、人々はこの放送を見ているのである。
連日新聞欄の一面やニュース番組を騒がせている「門」に関する公式の情報。
皆が求めていたものであった。
放映内容は、普段の日本の国会と変わらないように見えた。
野党の議員が質問を投げかけ、与党の人間や自衛官が答える。
今回は、回答者として特地からやってきたテュカやレレイ、ロゥリィもその人物としてあげられる。
人々は繰り広げられる答弁の中で、各々に最適な情報を引きだしていこうと考えている。
しかし、その日は皆が一様に、どこか固いように見えた。
画面の前に座ってテレビを眺めている人々は、固くなった表情、固くなった声、固くなった空気を感じ取っていた。
それにつられて、どこか自分の体も、心も固くなっていく。
今日という日がどういう意味を持つのかを、自分なりに体感しているらしかった。
特地からの訪問者に対しての大きな喜びの反応も、どこかから元気だったのかもしれない。
いや、絶望に負けないように、自信を奮い立たせようとするちっぽけな勇気の産物だったのかもしれない。
自衛隊と異世界からの訪問者に対する答弁は、大きな問題もなく終わった。
特地のこと。
炎龍のこと。
亜神のこと。
エルフのこと。
魔法のこと。
そんなファンタジックな情報を、当の本人から引き出したところで、国会での答弁は終わりを告げた。
野党の人間からすると、結果は芳しくない。
彼、彼女たちが想定していた与党及び自衛隊を攻撃する材料が得られなかったからである。
それどころか、NHKで放映されたその姿は、世界中で失笑を買ったことだろう。
まあ、終わったことを言ってもしかたがない。
委員長が議会の閉廷を告げる前に、彼は現れた。
『委員長、お待たせして申し訳ない』
それは虚空より突如として出現した。
答弁するための席に現れた、バルタン星人の姿に一同が身を固くした。
第二ラウンドの始まりであった。
◆
彼は人々の視線を一斉に受けていた。
その光景はテレビを通じて、ネットを通じて、肉眼を通じて人々の意識に共有される。
「門」からの来訪者へは期待があった。
退屈な日常とは違う、創作でしか見られないようなファンタジーがあることを。
彼女たちの口からは、これまた期待を裏切ることない言葉が次々と飛び出してきた。
人々はそれに沸き上がっていた。
テレビの前で、ネットの中で、会話の中で。
この地球とは違う異世界への期待が、胸の内に膨れ上がっていく。
それは良い気持ちだった。
良いというのは、気分がいいということである。
しかし、その気持ちが瞬時に薄れていく。
人々は彼のことを知っていた。
テレビで、新聞で、ネットで、そのほかメディアを通じて、彼のことについて連日放送されていたからである。
彼は一般的には創作の中に出てくる存在であると認知されていた。
当たり前である。人間は、地球人以外の知的生命体と出会ったことがないからだ。
人類の目標の一つとして、宇宙進出がある。
広大な宇宙、今もなお無限に広がり続けているこの黒い空間は、無限の可能性を秘めている。
人類は、その未知の可能性の中に、自分たちのような知的生命体の姿を幻視した。
創作物の中に著された「宇宙人」は、さまざまな姿をしている。
その中でも、特に人気のある宇宙人の一人が、バルタン星人なのだった。
『ウルトラマン』という日本の特撮番組を好きな人物は、今や日本を超えて世界に広がって存在する。
ネットワークの発達によって、人類は世界中どこにいても、その姿を見ることができるようになった。
その恩恵もあって、今回の銀座の騒動も容易に人の目に共有されることとなっている。
彼らは創作としてのバルタンの姿は知っていた。
彼らはそれが創作――――つまりはフィクションであることを知っていたし、そう認識もしていた。
だから、どこまで行っても一つの壁があったのである。
それは二次元と三次元の壁ともいうべきものだった。
創作であるがゆえに超えられない、超えてはいけない壁である。
そして今、その壁を越えてあのバルタン星人が現実の世界にやってきたのである。
ウルトラマンと共に銀座に出現したときは、人々は喜びの声を上げた。
彼らの夢想していた、可能性の一つが、本当に彼らの目の前に現れた。
こんなに嬉しい、わくわくすることがあるだろうか。
一度は、彼らは姿を隠した。
大した銀座への被害もなく、人々はウルトラマンが現実に現れたことを喜んだ。
そして彼ら宇宙からの訪問者は、再びその姿を現した。
今度は、バルタン星人だけだった。
ウルトラマンは、いなかった。
人々は思い出した。
バルタン星人の当初の目的が、地球侵略であったことを。
もちろんその情報は創作の中にだけしか存在しえないが、現実と創作との境が曖昧になっている今となっては、その情報も信ぴょう性があるものとなっている。
人々は恐れを取り戻した。
未知なるもの、わからない者に対して人々は恐れを抱く。
今日、実際改めて、異形の存在を認識することができた。
長くなってしまったが、現状を報告しよう。
その光景を目にした人々全員が、一様に体を固くしていた。
固唾をのんで、その光景を食い入るように見入っていた。
国会議事堂内で撮影された映像には、あの宇宙人の姿が映っていた。
ズームで映された映像には、奇妙なリアリティがあった。
チョキチョキと動かす二つの大きな鋏の滑らかさが。
ぎょろぎょろと動く不気味な二つの黄色い目が。
あの特徴的な生の声が。
本物であることを、現実であることを皆に教えていた。
映像を目の前にした人々でさえそうなのだ。
今、国会議事堂内は騒然となっていた。
ざわめきは納まる様子がなかった。
表情を固くし、頬をつりあげた議員たちは、視線を宇宙人に固定している。
バルタンはその光景を楽しんでいるように嗤っていた。
フォッフォッフォッフォ、その嗤い声が人々の不安を煽っていく。
議場には、与野党の議員と共に、審問会に召集された伊丹たち自衛官、異世界からの訪問者であるテュカ、レレイ、ロゥリィが残っていた。
一同が同じように表情を固くしている。
カンッ、カンッ、というハンマーを叩く音が響いた。
我に返った委員長が、勇敢にも会議場の収拾を図ったのである。
静粛に!静粛に!
その言葉に会議場が静かになっていく。
その場にいるそれぞれの人が、事の成り行きを見守っていた。
どうか、悪いことにはならないようにと、祈りながら。
人々が席に着き、会議場が静かになることを見届けたバルタン星人が、話を切り出した。
彼の出会ったことがある人物には聞き覚えのある、低い合成音声のような声である。
「諸君が不安に思う気持ちも、よくわかる。――――そこで委員長、人々の不安を払しょくすることのできる、スペシャルなゲストをお呼びしたいと考えているのですが、よろしいかな?」
「……その人物とは、誰かね?」
「あなた方が今一番求めている人物ですよ。―――――ああ、外にほら」
バルタンの言葉の後、会議場に備え付けられた巨大なモニターに電源が灯った。
そこには国会議事堂の外の様子がリアルタイムで報道されている。
外は騒然となっていた。
それは不安からくるものではなかった。むしろ希望に満ち溢れていた。
国会議事堂の空には、四つの赤い光球が浮かんでいた。
夕日のように、燃えている赤い太陽は、その姿を変化させていく。
美しく、どこか神聖な光だった。
希望の光は、人々の希望の象徴に姿を変えた。
彼らが待ち望んだ存在が、国会議事堂の外に並んで立っていたのである。
来たぞ、われらのウルトラマン!
「あなた方がよろしければ、彼らをここに招きたいと考えているのですが、いかがかな?」
人々の返事は、決まっていた。
◆
講堂内は異様な雰囲気に包まれていた。
証人席には、バルタン星人、ウルトラマン、ウルトラセブン、ゾフィー、ウルトラマンメビウスが並んで座っている。
かつて『ウルトラ8兄弟』という映画の発表会見にて、ウルトラマン8人が並んだ風景が撮影されたこともあったが、今回はその光景よりもさらにシュールなものであった。
違うのは、本物であるがゆえのリアリティや、神々しさといった点だ。
心なしか、彼らの身体が光を放っているようだった。
彼らはテレビの映像に登場する着ぐるみなどではなかった。
まぎれもなく、遠い宇宙の果てからやってきた、光の戦士なのだ。
地球人たちは今、違う星からやってきた二種類の宇宙人と向き合っていたのである。
ごくりと、誰かの喉を鳴らす音でさえ、沈黙した会議場では大きな音となる。
重い空気の中、バルタン星人が右手の鋏を高く上げる。
「委員長、発言をしても?」
「……あ、ああ。どうぞ」
バルタンは前に出て、マイクの備わった議席に立つ。
肉眼で、映像で、その姿が映し出されている。
「地球人、そして異世界からやってきた隣人たちよ、こんにちは。今回、君たちの貴重な時間をいただいたのは、私が人間との政治的対話を望んだからだ。君たちの中には、私を恐れ、排除しようとする人もいるだろうが、まずは話を聞いてほしい。君たち地球人を害する意思など、私にはない。……その証拠と言っては何だが、遠い宇宙の彼方から、偉大なる四人の戦士たちを応援に呼ばせてもらった。そのことについて、この場で感謝を申し上げたい」
怪獣退治の専門家、ウルトラマン。
惑星観測員である、ウルトラセブン。
宇宙警備隊の隊長、ゾフィー。
まだ若手ではあるものの、宇宙警備隊の一員であるウルトラマンメビウス。
「彼らは貴重な時間を割いて、私と地球人との対話の仲介役として、この場に駆けつけてくれた。私と君たち地球人、そして彼らとの議席を設けることで、この場を政治的な意味を持たせたいというのが、私の狙いだ。……それでは、光の国の代表として、ゾフィー、何か一言お願いできるかな?」
バルタンが促すと、席に座っていたウルトラマンの一人が立ち上がった。
胸に輝くその功績の証が、彼をゾフィーであることを示している。
バルタンは横にのいた。
ゾフィーがマイクの前に立つ。
地球の人々は、期待するように彼の言葉を待っていた。
「えー…、地球の皆さん。そしてこことは違う世界からやってきた人たち、私ははるか宇宙の彼方、M78星雲の光の国からやってきた、宇宙警備隊の隊長をしております、ゾフィーといいます。本日は、ここにいるバルタン星人より、地球の方との会談を行いたい、そこで公平を期すために、私たちウルトラ族に仲介してほしいとの指名がありました。……宇宙は無限に広がり続けています。この広大な黒い世界には、皆さんがまだ知らない、会ったことのない他の知的生命体が存在しているのかもしれません。地球人の方々はまだ若い。宇宙へ進出することを夢見始めたばかりでしょう。当然、バルタン星人や私たちのように、すでに宇宙空間での活動を行っている種族とは、常識、知識、技術体系なども異なっています。彼を恐れる気持ちは、私にもわかります。そこで私たちが間に入り、あくまで公平に、政治的な話し合いを実現したいと考えています。これは、地球人とバルタン星人との約束です。もし彼がその取り決めを破るならば、私たちはあなた方の代わりに、彼のことを断罪しましょう。もしも地球人の方が破ったならば、彼の為す事には我々は関与いたしません。あくまで第三者の立場として、あなた方の会談をより良い結果を残すために、私たちも力を尽くすことを約束します!」
身振り手振りを交えながら、ゾフィーは言葉を終えた。
会場では、相変わらずの沈黙を保っていた。
しかし、多少なりとも空気感は変わってきたようである。
どうやら、バルタンの目的は、人々の想定していた最悪なものとは違うようである。
ゾフィーが退席し、再びバルタンがマイクの前に立つ。
「ありがとう、ゾフィー隊長。繰り返す事になるが、今日ここで行われる私と君たちとの会談は、ウルトラ戦士が見ている中で行われる。私も発言を捻じ曲げたり、取り決めを反故することができないようにするためだ。だから、君たちもいくらか安心してほしい。これは私から地球人への誠意だと思ってほしい。私は決して、君たちと争うことを望まない。だから、こうした政治的な決着をつけようと考え、今日の議場にお邪魔させてもらったのだから」
◆
まずは、そうだな……、私のことから話そうか。
私はバルタン星人テラー。
テラーは個体識別名で、君たちで言うところの名前に当たると思ってくれて構わない。
呼び方はテラーでも、バルタンでもお好きにどうぞ。
私は君たちが知っているところの、バルタンの星からこの地球にやってきた宇宙人だ。
私たちの故郷は、とある実験の失敗により消滅した。
そこまでは、『ウルトラマン』で見た通りかな?
しかし、私は残った20億3000万の生き残りとは、別の道を進んでいた。
あの日、実験の失敗により引き起こされた大爆発に私は巻き込まれた。
視界が闇に沈み、気づいたらバルタンの宇宙船ごと、この惑星に転移していた。
ここで君たちには悲報なことに、この世界にはウルトラの星も、バルタンの星も存在しない。
どうやら、私は時空を超えてこの星に流れ着いたようだった。
私は壊れた宇宙船を修理しながら、この広い宇宙を探索し続けた。
しかし、いくら探しても私の同朋を見つけることは叶わなかった。
そして地球で地球生命体の出現が見られるようになると、私はこの星を第二の故郷として生きることに決めた。
顔や種族も違う私が君たち人類と同居することができるのか?
その疑問を解決してくれたのは、バルタン星の優れた科学力だ。
私はこの星の人々になりすまし、その文化や法、ルールを守ることによって社会に同化した。
人間は他人にはさほど興味を示さない。
人間が作りだした社会の風俗、習慣になじみ、その時々で施行される法律を守ることで、私は人間として生活することができた。
私は今、日本で生活をしているが、別にそれは日本に限ったことではない。
バルタンの寿命は、人間のそれをはるかに超えている。
時代によって、私は土地を移動し、その都度現地の住民、風俗に土着化していった。
たびたび人間が引き起こす争いもまた、私がかつて住んでいた土地を移動する契機となった。
数々の出会いと別れ、それらを経験することで、私は人間を深く理解することができた。
その上で、改めて君たちに宣言しよう。
私は、地球を侵略する意思など、欠片も持ちえないことを。
現在、地球上においてバルタンからやって来た宇宙人は私一人だ。
しかし、私は人間の一員としても、この地球上で暮らしている。
私は一人ではない。
故郷を失い、友や家族とも別れを経験したが、それでも私は生きていけた。
この地球で、私は新たな出会いを経験することができた。
地球の皆さん、どうかわかってほしい。
私をこのまま、人間のままでいさせてほしい。
私は人間のやること、為す事に干渉する気はない。
発展も滅びも、たとえ見通しのきかない未来にどうなったとしても、私は君たちには干渉しないことをここに誓いましょう。
この約束は、君たちだけに宣言するのではない。
この場にはるばる来てくれた、ウルトラ戦士たちも聞いています。
もし私が、この約束事を破ることがあり、人間に害を与えるような事態になったとしたら、空に浮かぶウルトラの星が輝き、君たちのもとに彼らが姿を現すだろう。
そして、君たちの代わりに私を罰するだろう。
彼らは私たちバルタンの嫌いな、スペシウムを生産することができる。
私も、死ぬことは恐ろしい。
恐ろしいからこそ、格好の罰となり得るのだ。
長くなったが、私はバルタン星の生き残りとしても、一人の人間としても、君たち人類の発展と行く末を応援している。
私はこれから今まで通り、姿を隠す。
もしかしたら、君の周りにいる人物の一人が私であるかもしれない。
しかし、どうか恐れないでほしい。
地球にいるバルタン星人テラーは、悪い奴ではないと、そう思ってほしい。
これにて、私からの話を終えさせてもらう。
ご清聴、感謝する。
◇
その日の各国の新聞の一面を、その写真が飾った。
日本の内閣総理大臣と、バルタン星人とが手を合わせている写真である。
二人の周りには大勢の人が囲んでおり、何台ものカメラで撮影されているのが見て取れた。
この日、人類は歴史上に残る出来事を記録することになった。
宇宙からやってきた隣人との、友好を結ぶことに成功したのであった。
◆
月の下で歩く二つの影があった。
一人は、バルタン星人テラーが擬態した姿である、寺島鋏魅の姿が。
もう一人は、ウルトラマンが擬態したハヤタ・シンの姿が。
空には一面、星の輝きが瞬いていた。
美しい光景だった。
「もう行くのか?」
寺島が尋ねた。
ハヤタが首肯する。
ウルトラ戦士が守護するのは、単一宇宙だけではない。
彼らの活動は、マルチバースにまで及ぶ。
助けを呼ぶ声があれば、かけつける正義のヒーローなのである。
「バルタン星人テラー、……いや、寺島くん、君に会えてよかった」
「私もだよ、ウルトラマン」
彼らの間には、奇妙な友情が生まれていた。
当初、両者ともにある種の因縁を感じていた間柄であったが、こうして会談を終えた今では、ともに笑いあえる仲になっている。
ハヤタが右手を差し出した。
それを寺島が受け取る。
寺島の手には、丸い赤い石が握られていた。
「これは?」
「君と私たちとの、友情の証だ」
赤い石は、夜の街中でなお、輝きを放っていた。
「……お別れだ」
「さらばだ、ウルトラマン。できれば、君とはもう会いたくはないな」
「それはどうしてだい?」
「今度会うときは、私が君たちに裁かれるときだろう。……それだけは勘弁願いたい」
「私たちはつながっている。例え宇宙を隔絶していたとしても、君と私との友情は不滅だ。その『ウルトラの星』に誓って」
「……そうだな。ありがとう、ウルトラマン」
「さらばだ、寺島鋏魅よ」
ウルトラマンは、赤い光の玉となった。
夜の空を昇って、星となっていく。
それに追随する三つの星の姿も、寺島には見えていた。
遠い宇宙の彼方で、彼らは自分の所属する宇宙に戻るのだろう。
夜空に輝くウルトラの星を、寺島は見えなくなるまで、手を振って見送っていた。
さすがに打ち止め。少し休憩します。
ネタ回とかも入れたいので。
読み直して、書き直したりするかもしれせん。
感想、評価、お気に入りに入れてくれた方々、ありがとうございました。