仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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87話 孫策死す

家茂は徳川の天幕の中に配されている玉座に腰掛け、目の前に鎖を付けられて捕えらている孫策を見やる。孫策は殺気を孕ませて睨みつけてくるが鎖に繋がれた虎など恐れるに足らずだ。

周囲には奥詰の兵や御庭番の忍達が配され不測の事態に、備えている。

 

「さてと、孫伯符。南揚州の制圧は進み、中部揚州・北揚州も次期に我が手中に収まる。これにて孫呉の夢は潰えたわけだ。」

 

「いえ、まだよ。まだ、あたしの思いを引き継いでくれる者達がいるわ。」

家茂の発言を聞いた孫策はキッ!と睨みつけながら言い返す。その言葉尻から強い意志が感じられる。

 

「ふむ、二の姫と三の姫の事を言っているのか。二の姫の孫仲謀はこの度の一件で公式に孫呉の王位を退くそうだ。今後は美羽の臣して仕えるそうだぞ。それに三の姫も孫呉の王位こそ継ぐかもしれんがうまくはいかんだろうな。一族の団結は強みでもあるが身内贔屓は弱みにもなるのだ。貴様の叔母孫静が動き出しているぞ?孫呉の非主流派を纏め上げてな・・・。恐らく三の姫・・・孫尚香は神輿だろうな。念のため言ってくが撤退中の貴様の将が北揚州にたどり着くことはないだろう。着けても僅かだろうな。」

 

北揚州についての家茂の言葉を聞いて青ざめる孫策。そして、配下の将がたどり着けないと言う発言に声を殺して言ってくる。

 

「どういう事よ。」

 

「君たちの軍師には周公瑾がいたはずなのに気が付けなかったのか。所詮は第三世界の住民か・・・。君らは何も学ばなかったのだな黄巾の乱で・・・宗教は恐ろしいと。中部揚州領主笮 融は熱心な仏教徒。我が国は仏教も遇しており、同盟国は天竺にもある。・・・・軍師でないとしてもこの意味は分かるだろう?」

 

「・・・・・・・・いくらなんでもやりすぎでしょう。飢饉だってあなた達が手を回したからって聞いたわ。きっと北部の疫病だって・・・・私達が先に手を出したからだってことは認める。でも何でここまで出来た、普通ならここまでのことは出来ないわ。」

孫策の口調には僅かに非難を含んでいる。

だが、彼女は勘違いしている色々と・・・

 

「貴様らはやり過ぎたのだ。やんちゃが過ぎた。美羽の下で大人しくしていたならば孫仲謀は我が国に有益であろうし、いずれは建国の名のもとに第二世界の住人になれたものを・・・自らその権利を蹴ってしまったのだ。大久保を殺した時点で貴様が退位し孫仲謀に禅譲すれば多少の不遇は受けようともそれなりの形は残せただろうに・・・・愚かなことだ。余の妻を傷つけ、徳川の邪魔をした当然の報いだ。当然揚州に屍の山を築き上げることになった。」

 

家茂は一呼吸置く。

 

「それに、余は徳川大日本帝国を統治するもので、美羽は汝南袁家を治める立場にある。揚州の民は我らの民にあらず。我らの民の命は誠に尊いものだ。だが、揚州の民は孫伯符、貴様の民だ。余に言わせてもらえば美羽の旧領回復と地盤を固めるのが大事で、彼女を慕う民が大切なのだ。余と妻の平穏を乱す敵国の民が1人死のうが2人死のうが、1万人死のうが10万人死のうが知ったことではない。死ぬなら勝手に死ぬがよい、生き残り我らの下に下るなら有効に利用してやろう程度には思うがな・・・。いや、有効利用はしているな。我が国の射撃訓練と病理研究の実験にな。我ら第一世界の文化的な生活の維持には第三世界の血と汗と涙と言うものが必要なのだよ。」

 

そう言って、ガラスの盃に入った葡萄酒を飲みほす。

 

「そ、そんな理由であんな沢山の人を・・・・・あなた・・・おかしいわ!!狂ってるわ!!」

孫策は本気で怒鳴ってくるが、家茂はどこ吹く風で飄々としている。

 

「クク、余は至って本気で平静なのだがな。世の中は所詮弱肉強食・・・今の大陸がそうではないか?少数の第一世界とそれに追従する第二世界、そして他大多数の搾取されるために存在する第三世界と搾取する価値もないゴミの様な第四世界。それが世界の形だよ。」

 

孫策はなおも睨みつけている。

家茂は拳銃に弾を込める。

「自分でも思いのほか饒舌になってしまったな。では、死ぬがよい。」

 

天幕内で一発の銃声が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

天幕の端の方で待機していた兵部三奉行の水野忠徳・永井尚志・江川英敏に家茂が指示をする。

 

「早く片付けさせろ。敷物が汚れてしまっている。」

江川が兵士に孫策の亡骸を木製の棺桶に収納させる。

 

「上様、この後はいかがされますか?」

水野が尋ねてくる。

「うむ、徳川帝国は中部まで進軍し、そこで停止する。先発している前田加賀には好きにさせておけ。中部や北揚州は七乃や孫仲謀殿に任せる。北揚州は孫家が分裂している、下手に我らが手を出すよりは仲謀殿に任せておけばよい。南の掃討戦は越に好きにやらせておけ。」

 

 

外では集結した20万の越国軍を前に越国王黄乱が演説を行う。

 

「聞け!勇猛なる越の戦士達よ!!長年にわたる孫家との因縁に終止符を打つ時が来た!!孫文台から始まりその長女孫伯符の2世代にわたる戦いで我々は多くの同胞を失った!!一時は周囲の漢人達に包囲され危機的状況に陥ったこともあった。しかし、我々は多くの理解者を得て逆に連中を包囲することにも成功したのだ!!そして、これより攻める地は古より同胞たちが住まう土地だ!かつて連中に奪われた土地を取り返す時が来たのだ!!全軍進め!!」

 

 

越国の参戦。

汝南袁家と徳川大日本帝国は越国に対し蘆陵・豫章・鄱陽南半分・会稽の一部を割譲することを条件としたこの参戦は、混迷を極めている揚州の騒乱を半ば強引に早期解決させた。

この餌に飛びついた越国はこの戦いに20万と言う戦える人間を根こそぎ動員した大規模な動員を行った。この時期すでに越国は交州を完全に掌握しており後顧の憂いはなかったのだ。

 

 

 


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