仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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86話 鄱陽の戦い 後編

連合軍右翼本陣

「報告!!左翼薩摩藩より孫伯符の奇襲部隊を発見!!これより交戦するとのこと!!」

馬上より伝令の報告を聞いた容保は指揮杖を強く握りしめて「よしっ」とつぶやいた。そして、二の句を続ける。

 

「会津藩及び歩兵隊に通達!!これより前進射撃を行う!!全隊前へ!!」

会津藩兵と幕府兵が横隊を維持しつつ射撃と前進を繰り返し程普・呂範の軍と距離を詰め始めた。

 

さらに左右より新撰組を最前列に会津藩の抜刀隊が挟み込む。

 

「いいぞ!!このまま押しつぶせ!!敵は疲労している!!押し続ければ勝てる!!」

 

連合軍右翼が前進を開始すると孫家軍右翼は反撃が出来ずじりじりと後退を開始。

連合軍左翼も太史慈の残存部隊や孫家軍左翼の追撃に入った。

 

 

 

 

連合軍後衛総本陣

金扇の大馬印を真ん中に銀地に袁の旗と緑地の徳川葵の旗が左右に並ぶ。

中央に軍扇をもって座る徳川家茂とその膝に腰かける美羽。その左右に七乃と彦丸が控えている。

 

「左翼軍西郷隆盛殿より迂回しようとした孫伯符と思われる軍と交戦し、敵を殲滅したとのことです!!」

「右翼軍順調に敵を包囲殲滅中。」

 

家茂は孫家軍前衛を左翼右翼が前進し半包囲を形成する。徐々に包囲が狭まっていくのを見て家茂はつぶやき、それに応じる美羽。

「圧倒的ではないか。我らの軍は・・・・」

「うむ、妾と旦那様が力をあわせれば最強なのじゃ♪」

「ふはは、全くだな。」

 

ベット上での長い生活が祟って体力がだいぶ落ちていた美羽だが、最近はだいぶ体力がついてきた。それでもあまりハードなことはさせられないが普通に生活が出来るまでにはなっていた。今は主治医にいた南方先生から従軍医官の林太郎(彦丸の弟)へ体調管理が引き継がれ、比較的穏やかであった。

 

「ん?あれはなんじゃ?」

美羽が遠方の砂ぼこりを指さす。

 

「いけません!お嬢様!!」

それを見た七乃は表情を崩した。

 

「敵襲!!敵襲!!」

奥詰隊の兵達が慌しく動く。少数の騎馬兵が迫っていた。

 

「彦丸、あれは?」

「恐らくは、別動隊の第二段ではないかと考えられます。こちらの陣を、先程の別動隊以上に迂回したものと思われます。」

 

それを聞いた家茂は一言。

「随分と面倒なことをを・・・、だがここを攻めるにしては、やはり数が少なすぎたようだな孫伯符・・・・・・。」

 

家茂の視線には敵の最精鋭の小集団を持って突き進む孫策の姿がはっきり見えていた。

「だ、旦那様・・・・」

孫策の姿を捉えた美羽は先のトラウマが刺激されたのだろう。家茂の服の裾をつかんで震えている。

 

「七乃・・・美羽と一緒に少し奥に引っ込んでおれ。ここから先は余の穢れなき妻には刺激が強すぎるゆえにな。・・・・・・・彦丸、例の部隊を余の前に・・・」

「っは!!」

 

孫策がこちらに狙いを定めて突進してくる。奥詰の兵だけでは抑えきれていない様だが家茂の不敵な笑みは崩れない。

 

「くくく、所詮は生き残り部隊の最後の悪あがきよ。彦丸、例の部隊を・・・」

「っは!!」

 

家茂より命令された彦丸の指示で10数名の兵がパイプで連結した圧搾ガスのボンベを背負って横一列に並ぶ。

 

「あなたが徳川家茂ね!!夫婦共々あの世に送って上げる!!」

孫策が叫ぶ声が聞こえた。

 

家茂もこれに言い返す様に大声で返す。

「江東の虎孫伯符、獣にふさわしい最期をくれてやる。地獄の業火に焼かれて死ぬがいい!!やれ!!」

家茂は軍扇を振い、横隊になっていた兵士達の指先が引き金にかかる。

流石は孫伯符とその精鋭たち、その技量は達人級。引き金を引く指を見たのかその瞬間跳躍する。

まさに見事と言える芸当だ。これが銃だったなら・・・・・・

 

 

しかし、これは銃ではない火炎放射器だ。

孫策の周りの兵達が自ら炎に呑まれるかの如く焼き殺されていく。

孫策は野生の勘だろうかギリギリで炎を交わしたが、炎による酸欠、煙による窒息効果によってその場に倒れこむ。

奥詰銃兵と刀や槍を持った近侍が孫策の様子を確認する。死んではいないが至近距離で炎の熱に晒されやけども目立つ致命傷と言わずとも重症だ。

 

「捕えて牢にいれよ。戦闘停止、掃討戦へ移行せよ。」

「奥方様にはどのように説明しますか?」

「孫伯符はどのみち殺す。戦死したことにしておけ、孫仲謀にも同様に、姉の死刑執行人を実の妹に刺せる程、余は残酷ではない。(人を焼き殺そうとした時点で十分残酷だがな・・・)」

 

 

 

 

兵士達に孫伯符を討ち取ったことを宣言させると揚州孫家軍は半数が徹底抗戦、残りの半数はそのまま北揚州に向けて敗走を開始した。

 

それを聞いた、家茂と七乃は

「勝ちましたね、家茂さん。ですが、こうなった孫家軍は面倒かもしれません。」

「いや心配いらん、揚州孫家軍は徹底抗戦の様だが連中はもう終わりだ。残党狩りは彼らに任せる。」

「そうですね。私達は高みの見物と行きましょうか?」

 

 

 

家茂達の背後からドドドと地響きが聞こえるほどの足音が聞こえてくる。

兵の一人が視線を向けるとそこには国境線を超えて越国軍の大軍が南方の他の国の援軍と共だって侵攻を開始した。

 

孫策が事実上戦死して揚州孫家軍は一部の将を中心に抗戦の構えを見せるが、もはや大半は敗走を始めている。しかし、それらも含めて逃がすつもりはなく連中に明日はない。

徳川と汝南袁家は高みの見物としゃれこむが、今まで孫家に対して恨みつらみの溜まった越国軍を相手に戦うのだ。きっと、相当苛烈なことになるだろう。

 

無論、孫仲謀にもチャンスは与えている。北や中部の揚州にも武装化した仏教徒や非孫策派の反乱、孫策派の残党と火種は多分にある。あとは彼女の頑張り次第だ。

 

 

家茂は衣服の召し替えの為に徳川の天幕に引っ込む。

「彦丸君、最高の劇だとは思わんかね。」

「上様が非常に優秀なお方であることは分かりますが、自分には判断しかねます。」

「戦争は別に戦場だけでやるものではないと言うことだ。精進したまえよ。」

「っは、肝に銘じます。」

彦丸の表情が硬くなっているのに気が付いた家茂はふと彦丸に尋ねる

「時に彦丸よ。彼女とはどこまで行った?」

「は?」

「我が妻美羽の所の忍者少女の事だ。」

「な!?///」

顔を赤くする彦丸。

「余が気が付かんと思うたか?」

「い、いえ」

「どこまで行った?」

「先日、一緒にお茶をする約束を・・・」

「ふははは、若いな。それはとても良い事だ。ふははは。」

 

 


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