仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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83話 徳川大日本帝国ダークサイド③ 黒い太陽計画①

建安の大飢饉と揚州疫病大流行は揚州民が再起不能となる代表的な要因の一つであり、揚州壊滅の最大要因である。

 

この時代は気候変動によって冷害や干害・蝗害が常日頃から起こっていた。

当然ながら徳川幕府や台湾島袁術政権が標的としていた孫策の揚州もそう言った被害に定期的に遭っているのだが、これに目を付けた徳川幕府は歴史の闇に沈められた史上類を見ない悪魔の計画を実行に移す。

 

そして徳川幕府がその計画を実行していたこの時期は大陸では大なり小なり全土で飢饉の兆候が見られており、穀物に実がならなかったり、枯れてしまうなどの事象が見られていた。

 

 飢饉の兆候が表れ始めてから徳川幕府は大陸の商人を介して穀物の高額買取を実施、また、飢饉の兆候があり徳川から情報を受け取っていた華北袁家や北海孔家も穀物の買い占めを始める。こう言った動きを察知した曹操も領内において荷留めを行い食糧が他領へ流れることを防いだ。また、益州で戦争中の劉備劉璋は戦争と言うことで元々食料の流れに対しては規制を掛けていた。これらの群雄以外は例年通りの対応を取っておりこれが悲劇の元であった。

特に資金豊富な徳川幕府や台湾島袁術政権は金にものを言わせて揚州の穀物を相場の倍近い値段で買い取り、孫策らも規制に動いたが穀物は闇から闇へ流れていき劉繇の影響が強い南揚州では孫策らが行った規制が機能しておらず。金欲しさに飢饉用の備蓄を流し飢餓輸出の様相を呈し始めていた。

そして、秋になり収穫がほとんど見込めなくなり揚州は大規模な飢饉が発生した。

孫策達が直轄する北揚州も飢餓状態にあったが南揚州は特にひどかった。備蓄食料を売ってしまった南揚州では倒れた馬にかぶりついて生肉を食い、行き倒れとなった死体に狼や鳥が食いちぎる。生きている牛馬の首に縄をかけて梁に吊るして、刃物を腹に突き刺して、血の滴る肉を草の根と一緒に煮て食い。そして鳥や犬も尽きると、病気で弱っているものを剣で刺し殺し、或いは小児の首を切り、頭面の皮を剥ぎ取って、火の中でいぶり焼いて、頭蓋の割れ目にヘラを差し入れて脳味噌を搔き出し、草木の根や葉と混ぜて調理して食べる者もいた。村々には白骨の山が積み重なり、南揚州は狂気の世界が広がっていた。

 そして、飢饉の被害を何とか抑えた北揚州であったが、この時期に高熱や発疹を伴う奇病が大流行し始めたのだ。この直前に貯水池や井戸に死体が放り込まれたり、畑に肉片がばら撒かれる事件が報告されているが関連性は不明である。

これにより北揚州も地獄に早変わりであった。飢餓によって飢えた人間が疫病で死んだ人間の肉に貪りつき、疫病に感染し、それが死亡したらその死体に別の誰かが貪りつき、これが繰り返されることによって多くの人間が死ぬのであった。

また、疫病の広がりであったがこれは揚州内部で封じ込められたのであった。

疫病の自領への侵入を嫌がった国境を接する領主たちは曹操・劉表を中心に入国を固く禁じ、揚州の人間が侵入した際は即座に殺害された。蘆陵袁術軍も門を固く閉ざし、越国では国境に銃や弓を装備した兵士を配置し近づいてくるものすべてを悉く射殺したのであった。

台湾島では揚州から来たと思われる小舟は全て沈めるように徳川幕府海軍と琉球王国海軍双方に徹底された。

 

 

 

徳川大日本帝国江戸桑名藩邸

 

その一室に多くの中堅及び弱小商人たちが集められていた。

四隅には抜身の刀を構えた桑名藩士達、上座には桑名藩藩主でありこの国の宰相位にある大政参与の松平定敬が商人達を舐める様に見ていた。

 

商人達は一様に怯えを隠せておらず震えていた。無言の時間がしばらく過ぎ去ると定敬が口を開く。

 

「本日はこの定敬の声で集まってくれ、誠に大儀です。まあ、ここに来ていない者達はもうこの世にいないのですが。さて、本来なら君達は今ここにいない者達同様神や仏の下へすぐにでも旅立ってもらうのが妥当と言えます。ローマとの密貿易、利敵行為は打ち首獄門・市中引き回しは当然。ですが、私は君らに汚名返上の機会をさしあげましょう。」

 

定敬は一拍置いて続ける。

 

「何、簡単なことだ。君らはこれまで通り密貿易を続けてくれてかまいませんよ・・・ただし、売るものは我らが指定する道具や織物です。」

 

密売商達は小首をかしげる。

 

「無論、ただの道具や織物ではないぞ・・・・天然痘患者が使用した物だ。これを奴らに売り払いなさい。」

 

それを見た商人たちが「っひ」と悲鳴を上げ後ずさる。

 

「落ち着きなさい、君らは種痘を受けているでしょうに・・・。とにかく、これを西洋に流してくるように・・・、結果いかんによっては上様からお目こぼしがあるやもしれません。」

 

定敬は冷めた目で密売商人達を睥睨してから、部屋を後にした。

 

定敬は同行させていた筆頭家老酒井孫八郎に話しかけ、酒井もそれに応じる。

 

「確かこの計画の立案主導は加賀藩の前田慶寧殿でしたか?」

「はい、そのように記憶しております。」

 

「しかし、上様も奥方を失いかけて急に過激な方向に転換しました。まさか、前田加賀の計画が採用されるとは・・・・。ここ2年で世界が大きく変わっています・・・世界が贄を求めている・・・そう思えてきますよ。」

「・・・・・・・」

 

定敬の予言じみた言葉に酒井はただ黙って頷いた。

 

 

 




参考 ホロドモール

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