仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。   作:3番目

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82話 揚州漸減計画

そして、○年を跨いだが、いまだに群雄は割拠していた。

状況の変化としては劉備が劉璋を滅ぼし一大勢力へと成長した。曹操は劉協の権威を活用し涼州連合と西城長史は平和裏に曹操へと下った。ただし、涼州の最有力者である馬家は劉備と同盟関係にあり政治的にややこしい状態である。

 

劉表領は南部がほぼ独立状態で旧袁術領では反乱が頻発し、他の領地でも不満が溜まっておりガタガタであった。

孫策軍も治政を進めているが安定からは遠い状態であった。

華北袁家もぱっと見変わりなかった。

 

 

 

 

 

○年前、袁術亡命からしばらく

徳川大日本帝国台湾島臨時行政府

 

家茂を中心に各奉行職従事者達が書類を読み報告を上げている。その中の一人外務奉行栗本鋤雲の報告が読み上げられる。

 

「漢王朝におきましては今年は雨も少なく日照りが続き食糧不足が予想されます。華北袁家からもすでに食料輸入の打診を受けています。」

 

「ふむ、漢王朝の支配地域はほぼ全土が例年以上の不作となるか?」

家茂が鋤雲に確認する。

 

「かなりの可能性で・・・お約束できます。」

「左様か・・・。同盟国の北海孔家(孔融勢力の事)、余の義姉でもある麗羽殿を苦心させるのは忍びないなぁ。それに、美羽の所の紀霊将軍の拠点も危ういな。もしかしたら越国や扶南にも影響が出るやもしれんな。うむ、こちらで同盟国に送る食料物資を確保しておくとしよう。井上、予算はいかほど出せるか?」

 

家茂は会計奉行の井上清直に尋ねる。

 

「大凡ですが、これくらいでしょうか。」

井上は資料の裏面で簡単な計算式を書いて計算したもの家茂に見せる。

 

「もう少し出せんのか?軍費を削っても構わん。」

家茂は井上に注文を付ける。

 

「上様それは・・・」

兵部三奉行の一人である兵部軍備奉行の江川英敏が反対を述べようと口を開きかけるが家茂は江川が話し始める前に言葉をさらに続けた。

 

「遠まわしではあるが敵を殺せるのだ、兵部の予算を削っても良いだろう。」

「それはどう言うことですか?」

江川の質問に家茂は当然と言わんばかりの表情で答える。

 

「揚州で作物を買い付けて華北袁家や北海孔家、あと紀霊将軍の所に送る。大陸の商人達に相場の3倍で買うと言って置けばよかろう?献帝や曹操の領地で買い付けられると効果が薄れるのでな。亀山財閥のあたりに最初の内は曹操の御膝元で最初は高く買い付けさせよう。さすれば聡明な曹操ならばすぐに規制するだろうし、その後は大陸商人達に金子をチラつかせて動かせばよいだろう。・・・・・・・・・省略・・・・・という訳だ。」

 

家茂の言葉を言いて各奉行たちは「おお」と関心の声が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

奉行衆達との会議を終えた家茂は小姓頭の森彦丸に手伝わせながら執務室で書類仕事を進めていた。

 

ドアをノックする音。

「どうぞ、入り給え。」

 

家茂は誰が来たかはわからなかったがとりあえず入るように扉の向こうの相手を促した。

「失礼しま~す。」

「ん?七乃殿か。・・・・どうかしたか?」

 

七乃はすすっと家茂に近づきつつ楽しそうに話しかけてきた。

「家茂さん、読ませていただきましたよ~。食糧支援計画書」

 

少しだけ眉を動かした家茂は「この人は・・・」と内心思ったが、彼女の諜報能力の高さは前々から知っていたので家茂は「まあいいか」と思い七乃との語らいに入る事にした。

「彦丸、茶を2つ持ってまいれ。お茶を用意したらしばらく下がっていろ」

「はい」

 

彦丸が退室したのを確認した家茂はペンと書類を端に置き、七乃は家茂の執務机の正面に設置している簡単な応対テーブルに据え付きの椅子に腰かける。

 

「戦わずして敵を弱らせる、なかなか出来るものではありませんよ~。」

「ふむ、やはり七乃殿にはすぐに理解されてしまうか。うちの奉行衆は理解するまでに半刻は掛かったがな。」

 

七乃も家茂も冷酷な要素を持ち合わせる天才的な謀略家である。幕府大政参与松平定敬も同様なのであるがそれはひとまず置いておく。家茂としても自分の思考と趣向に積極的に理解を示してくれる七乃を好意的に思っているし、美羽至上主義の二人は基本的に仲が良い。

 

「あはは、それは当たり前ですよ。人の手で大飢饉を引き起こそうなんて考える悪魔みたいな人は普通いませんよ~。実に勉強になりますぅ。」

 

「また、人を褒めているのか貶しているのか解らない様な言い方を・・・」

「やだなー。お嬢様に楯突いた敵が死ぬんだから褒めてるに決まってるじゃないですかー。家茂さんのそういうところ・・・・・・そこにしびれるあこがれるぅ!キャーかっこいいぞぉ!」

 

家茂はフッと笑いそれにこたえる。

「軍隊を送り込んで血を流すだけが戦争ではないのだよ。私も戦争などして美羽と一緒に居られる時間を減らしたくはないのでね。それと別に私の力で大飢饉を引き起こす訳じゃないぞ?通常の飢饉に少し勢いをつける様に手を回しただけだ。」

 

「あはは、でも大陸の思想って家茂さんにとってある意味本当に都合がいいですよね~。飢餓や疫病がつつけばその為政者は天に見放されたと思われる。逆に豊作であれば多少無能でも崇められるんですから~。美羽様の復権に正当性を持たせるためにも揚州の民にはもっと苦しんでもらわないといけませんね~。」

七乃は特に読むでもなく家茂の執務机のある種の手遊びの一種として書類をめくりながらながら家茂に応じる。そんな中から一枚の書類を拾い上げて家茂に尋ねる。

 

 

「ところで、家茂さん。この黒い太陽計画って何ですか?」

 

 

 

 


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