仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。 作:3番目
連合軍が汜水関の前で陣形を組む、一般的な横隊である。
最前線先鋒の劉備の陣では
「いよいよ、攻撃開始か・・・・」
高まってくる緊張感を北郷一刀は感じていた。
「こういうのっていつまでたってもなれないよね。」
一刀を気遣っての事だろうか劉備が話しかけてくる。二人とも神輿なので劉備軍の中衛後方にいる。
「ああ、胃が痛くなるな。(いろんな意味で・・・)」
待っていれば待っているほど、頭の中が混乱してくる。これからの戦いに対してもそうだが、暴政をしていないかもしれない董卓軍。三国志のかませ犬とは思えないほど強大化している両袁家。その背後にいる超大国徳川日本国。考えれば考えるほど悪い方向に考えてしまう。
銅鑼の音が響く
「ご主人様、合図だよ。」
「ああ、全軍前進!作戦通り、敵軍の前で罵倒の限りを尽くして、大物を釣り上げよう!」
「「「「「「おぉおおおお!!!!」」」」」」
「皆!!頑張ろうね!!・・・・・じゃあ、出発進行!!」
劉備の号令に答え、兵たちがゆっくりと前進を始めた。
汜水関では
副官的兵士が華雄に連合軍が動き出したことを伝える。
「華雄将軍。連合の先陣が進軍を開始しました。」
「ああ。しかし、小勢のようだな。・・・将は誰だ?」
「斥候の報告では、平原の相、劉備を名乗るものだそうです。」
「劉備・・・・・聞いたことのない名だ。大方、この前の賊狩りで名を上げた新参者だろう。」
「百戦錬磨の我らの敵ではありませんな。」
それを聞いた華雄は即決した。
「なれば鎧袖一触で殲滅し、敵の総大将に目にもの見せてやろうではないか。」
「了解しました。」
「全軍、出撃準備!先陣の劉備軍を粉砕し、敵中央の袁家の牙門旗を堕とすぞ!」
華雄の勝手な行動に待ったを掛ける張遼。
「待ちなや!!華雄!!賈駆っちの命令は汜水関の死守やで!?出撃はあかんやろ!!」
「ふん・・・・・。守勢と言うのは私の性に合わん。」
「だからって、命令無視はあかんやろ・・・・。料簡がちがうやないか?」
「だが、戦に逸る兵の思いを抑えることなどできん。その戦意こそ、我が軍の力となっているのだからな。私は私で好きにやる。」
華雄の言葉に、大きなため息をつく張遼。
「はぁ・・・・・・・分かった。うちは控えておく、勝手にしいや。」
「勝手にしろ。」
出撃していく華雄の背を見送る張遼はひとり呟く。
「猪武者・・・ここに極まれりやな。現実を見んあんたには、多分明日はこんやろな。」
前線
関羽と趙雲が最前列に立ち待ち受ける。
「愛紗よ。汜水関で何か動きがあったようだぞ。」
「まさか、華雄が突出してくると言うのだろうか?」
「そうなれば楽なんだがな。そんな愚か者は・・・・・いたようだ。」
「そのようだ。」
二人は顔を見合わせて、華雄軍を見据えてから、向き直り青龍偃月刀と龍牙を構えて自身の兵たちを鼓舞する。
「聞け、勇敢なる兵士達よ!」
「いよいよ、戦いの鐘がなる!!この戦いこそ、圧政に苦しむ庶人を解放する、義の戦い!」
「恐れるな!勇気を示せ!皆の思い、皆の力・・・己のすべてを振り絞り、勝利の栄光を勝ち取るために!」
「我らに勝利を!」
「「「「「「「「勝利を!!!」」」」」」」」
「我らに栄光を!」
「「「「「「「「栄光を!!!」」」」」」」」
「全軍抜刀せよ!」
「位置につけ!」
「「皆の命、我らが預かる!」」
兵士たちが答える。
対する華雄軍の方も
「全軍抜刀!連中に拳骨をお見舞いしてやれ!!」
「「「「「「「「応!!!」」」」」」」」
「怯んだところを、一気に追い詰めて殲滅する!我らの恐ろしさを思い知らせてやれ!・・・・・・・・全軍突撃せよ!!!」
「「「「「「「「おぉおおおお!!!」」」」」」」
魚鱗の陣へと移行して華雄軍と一気にぶつかる劉備軍の関羽・趙雲の先鋒部隊。
後方では、兵站や攻城兵器を後ろに控えさせており、その中の一つである破城槌の屋根の上に梯子をかけてその様子を観戦する七乃と大久保。
袁術軍の指揮は紀霊に任せている。
「お!ぶつかりましたな。三人一組で数的有利を作り出している。」
「それに対して、華雄の軍は攻め一辺倒・・・、突撃力はあるんですけどねー。あら、距離を取りましたね?突貫するのでしょうか?」
「馬鹿の一つ覚えだな。あの手の将なら我が軍との相性はいいな。投入戦力によっては殲滅に10分とかからない。」
「あら、怖いですね。」
「林太郎君、ちょっと、私の焼酎入りのスキットルを取ってくれないか?」
「じゃあ、わたしも葡萄酒の方を・・・あ、突撃しましたよ。」
林太郎と言う少年医官を従者代わりにして、戦場を望遠鏡片手に覗く、七乃と大久保、気分は観客である。
「劉備軍に食い込んで・・・違いますね。嵌められてるんですね。」
「なるほど、躱して劉備軍中・後衛とぶつけて前衛で蓋をする・・・・・包囲殲滅か。」
七乃と大久保が戦観戦をしている頃、袁紹軍では・・・
「さぁ、さぁ!もっとお飲みになってください!」
「よっ!!連合軍の華麗なる総大将!!」
「オーホッホッホ!!!当たり前のことを言っても何も出なくてよ!!!」
徳川日本国の2人の商人からの接待の真っ最中であった。商魂逞しい連中だ。
そして、金遣いの荒い袁紹である。完全に乗せられて浮かれている。
「このたびは我が住友財閥の黄鉄鉱並びに黄銅鉱のお買い上げありがとうございます!!住友の鉱石は丈夫で見栄え良く、袁紹様の軍勢をさらに輝かせることでしょう!!」
ちなみに、黄銅鉱は5円玉の材料である。つまり、今の袁紹軍の装備は見た目は金以上にピッカピカである。
「もちろんですわ!!この輝く軍隊こそが、わたくしを飾るに相応しい存在ですわ!!広瀬さんでしたかしら?覚えておきますわ!!」
汝南袁家が徳川日本国の官が梃入れするのなら、華北袁家に手を貸しているのは徳川日本国の民なのである。
「そういえば、あなたはどちらさまでしたかしら?」
もう一人の商人の方を見て首をかしげる袁紹。
「こ、これは手厳しいですな。この鴻池幸富、袁紹様が物入りと言うことで、この度の遠征費用の半分を融資させて頂きましたが・・・」
袁紹は複雑な銀行関係の事は理解できていないため、結構な頻度でこの手の商人は忘れる。
だが、重要な商人であることはわかっているのでそれなりに応対する。
「あら、そうでしたの?鴻池さんでしたわね。あなたもわたくしの偉大さを知る一人ってことですわよね!!」
「袁紹様ほどの預金者様は当行の英雄でございますー!!!!」
「そうですわ!!!わたくしは大陸の英雄でございますわ!!!!オーホッホッホ!!!!」
そんな、宴会場と化している袁紹軍本陣に顔良が姿を見せる。
「姫様・・・・そろそろ、宴席は御終いにして欲しいのですが・・・。」
「あら、顔良さん何ですの?苦労しても報われない庶人の様な情けない声を出して?それに顔良さんには前線の指揮を頼んだはずですわ。まさかこんなことで戻ってきたわけではなくって?」
袁紹の問いに「あ、そうだった」と言わんばかりに思い出した顔良が告げる。
「そうでした、姫。前線で動きがあったようですよ?」
「前線で動き?」
「はい、砂塵の舞い方からして、多分先陣が押されてるんじゃないかと思いますけど・・・・」
「・・・・はぁ、全く。使えない人ですわ・・・劉備さんは。」
(あんな無茶ぶりをして、よく言うよぉ)
「なんですの斗詩さん。何か言いたそうな目をしてますわね。」
「あ、あはは、気のせいですよー。・・・・とりあえず、前線の動きにどう対応します?一応、各部隊に戦闘準備を取らせますけど。」
「それでよろしいのではないかしら?」
袁紹の発言を鴻池が持ち上げる
「なるほど!高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応するということですな!!さすがは袁紹殿!!」
「おお、袁紹殿の御慧眼。この広瀬宰平感服いたします。」
「オーホッホッホ!!名門袁家の兵達は一を聞いて十を知る精兵揃いなのですわ!!!」
実際これである。上がこれなので必然的に下は有能でないと死んでしまう。
それを、聞いていた顔良は心の中で思う。
「は、はぁ(つまりは、行き当たりばったりってことよね。)」
「なんですの?その『そんなことで大丈夫なのかなぁ』的な返事は!!あなたも名門袁家の将なのですから、もっとシャキっとなさい!!」
「はぁ~い」
気の抜けた返事をする顔良。
「・・・・・・・・・・・顔良さん。あなた、お仕置き決定ですわ。」
「えー!!!どうしてそうなるんですか!」
「袁家の将として、今夜の閨でその体にたっぷりと教育して差し上げますわ。」
((そこの所、詳しく!!!))
「うぅ~・・・・・」
「そんなことより、顔良さんは部隊の指揮に御戻りなさい。」
「はぁ~い。本陣の指揮はどうします?文ちゃんか私がしておきましょうか?」
「結構です。袁家の本陣ぐらい、わたくしが取って差し上げますわ。」
「分かりました。じゃあ、私たちは前衛の指揮を執りますから、姫は本陣でお願いしますね。危なくなったら逃げてくださいよ。」
「逃げるなどと言う言葉は、名門袁家にはありませんわ!」
「・・・・・はいはい。それじゃあ、私は文ちゃんの所に戻りますね。」
顔良の姿が見えなくなったのを確認した広瀬は袁紹に話しかける。
「あの、袁紹殿?少々お時間を頂戴できますか?」
「なんですの?わたくし、これから本陣の指揮で忙しくなりますの!」
「いえ、袁紹様の華麗なるご活躍に花を添えられればと思いまして・・・少々、新しい武器をお持ちしました。」
「なんですの?お見せなさい?」
そこに鴻池が待ったを掛ける。
「ですが、その新しい武器は少々値が張るんですよ。」