仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。 作:3番目
須拉薩(スラサ)の港には徳川日本国の軍艦や企業より動員された商船、近隣諸国の船が集まっていた。
蒸気船、帆船が集まっていた。
当初は日本が海上航路を担う予定であったが、一部の大国が、対抗意識を持ち自国一番の船で来航した訳であるが、徳川日本の蒸気船や大型商船を見て愕然とするわけであるが・・・
袁術達一行のは須拉薩の港へ降り立った。
汝南袁家頭首の袁術を代表に名簿に記載されているのは張勲、劉勲、陳紀、孫権、甘寧の四人であった。それらの護衛に250(袁術親衛隊200、孫家親衛隊50)の編成であった。
ちなみに、孫家親衛隊の中に当時大成していなかった呂蒙もいた。
彼女達も、他の国の国賓達同様に港の時点で驚ろいていた。
彼女達の迎えに現れたのは徳川日本国大老井伊直弼であった。
「ようこそ、いらっしゃいました。袁公路様、儂は徳川日本国大老井伊直弼と言う。上様より丁重にもてなす様にと仰せつかっております。」
「うむ、宜しく頼むのじゃ!」
張勲が少し考え込む。
「えーっと、大老と言いますと?確か・・・」
「えぇ、上様から数えて大政参与・政治総裁職・大老、つまりはこの国の第四位ですな。それはともかく初日は儂が案内するゆえ、宜しく頼む。」
袁術がもじもじしながら直弼に尋ねる。
「のぅ?井伊殿?妾は以前汝南に来た徳田殿にも会いたいのじゃが・・・居るかの?」
「ん?徳田殿?っあ、あぁ徳田殿か。もちろん、会えますぞ。あの方も、袁公路殿とお会いすることを、楽しみにしておりましたからな。それと、後日、上様にもお会いいただきたく思います。」
「うむ、そうか。新の奴はおるのじゃな!!うむうむ・・・・」
そんな様子を直弼は少々微笑ましく思う。そんな様子を勘違いしたのか袁術はわたわたと動揺しながら取り繕う。
「もちろん、徳川殿とお会いすることも楽しみじゃぞ!?」
その姿もずいぶんとお可愛らしいなどと直弼は思った。
彦根藩士達も列に加わり合計300の集団で移動を始めた。
「明日の開会式まで時間があるので、そうだな。日本館をご案内しよう。恐らく、開会式後ではかなり込み合うと思うのでな・・・」
日本館の前を警護する幕府兵に声をかけた直弼は幕府兵に日本館の門を開けさせ、さらにその奥の大扉を開けさせた。
「ここからは、護衛の数は儂の兵2人に幕府の兵6人とそちらから4人でお願いしよう。本来は開館じゃないのでなあまり人は入れたくないのだよ。」
直弼の言葉に張勲は従い、孫権にも指示を出す。
「なら仕方ありませんねー。私達も適当に二人見繕って、あ、孫権さんのところも二人お願いしますね。」
「えぇ、わかったわ。」
日本館は擬洋風建築と書院造の2つ建物を左右に置き、間に数寄屋造りの屋敷一つと総土蔵造の店倉を並べ町並みを演出した展示場だ。
総土蔵造の店倉には菓子や反物などの売店コーナーを通り過ぎて、擬洋風建築の建物へと案内される。
擬洋風建築の建物を金剛宮の前には3両の列車が展示されており電気機関車と内燃機関車と蒸気機関車だ。
直弼は書面を見ながら説明をする。
「現在我が国を走る鉄道は殆どはこの内熱機関車だ。以前は左の蒸気機関車が主流だったのだが、石炭などを使う内燃機関を動力源とする機関車の方が性能が良く今はこちらが主流じゃな。右にあるのは電気機関車。電化区間において架線などの外部電源から電力を受電し、その電力を電動機で動力へ変えて走るそうだ。」
袁術達一行は全員全く理解できなかった。そもそも、鉄道を見たことがなかったのだ。
「すまないけど、私たちは鉄道そのものがわからないわ。」
孫権の言葉に直弼は済まなかったと謝罪し鉄道についても簡単に説明を始める。
「鉄道とは、鉄製の軌条を案内路としてこの、機関車が走行する交通機関だ。これが国内及び入植地の各都市各拠点をつなぎ人々の移動や物流を担っているのだ。」
「ちなみに、物流と言っていたがこの機関車でどれくらいの物が運べるのかしら?」
孫権の質問に直弼が頁をめくり、応じる。
「確か、貨車1両の積載限界が凡そ2150貫、そちらの斤に直すとおよそ1万3500斤(約8トン)だったはずじゃ。それを通常は5両から8両を牽引するはずだったから・・・」
「い、1万3500斤!?じょ、冗談でしょ!!」
「孫権さん~。あまり大声は出さないでくださいねー。私も驚きましたけど。」
驚きに声を上げた孫権を張勲が軽く窘める。
「まあ、初めて聞いた者は皆似たような反応だ。気にすることはない。今回は貨車の展示は行っていないが、その土蔵の鉄道資料館に写真は展示しておるゆえ。別の日に覗いていくとよい。おぬしらもそれなりに長い期間滞在するのだろう?」
「ええ、半月程を目途にしてますよ。」
「そうであったか。それだけ時間をかければすべての展示館を回れよう。次は建物の中を案内しよう。」
直弼に従い金剛宮の中へ入る。窓はあったが中は少々薄暗く見えにくかった。
「おい!明かりをつけろ!!」
直弼が叫ぶと中にいた幕府役人や幕府兵が何か小さな球体を鉄の棒に嵌めていく。
「眩しいのじゃ!?」
袁術の目に張勲が手を当てる。
「蓮華様!?お下がりを!!」
一行の護衛達が彼女たちを守ろうと動いた。
「ははははは!!!お客人安心めされよ。これは光源です、天井の方は蛍光灯。台座にあるのは白熱電球です。我が国もまだ、ガス燈や灯篭に燭台などが光源の主流ですが、今後はこの電気灯が我が国の主流となるでしょう。」
張勲と孫権はそれぞれの護衛を下がらせて直弼の後に続く。
「袁術殿、これを覗いてみて下され。」
直弼は袁術に台座に据え置かれた筒を覗くように示した。
「うむ。」
袁術は張勲に支えられて筒の中を覗き込む。
「おおー、すごいぞ!!遠くまでよく見えるのじゃ!!人の顔までよく見える!!」
「これは、望遠鏡と言って遠くを見渡せる道具だ。」
袁術に続いて、張勲、孫権、甘寧と覗いていく。
「蓮華様、これがあれば戦場での視野が広がります。彼らがこれを多数保有しているということは・・・」
「そうね、敵の動きをほぼ正確に掌握できる。戦場の流れをつかむことも可能ね。」
「では、お嬢様方。我が日本館の目玉の一つであるものをご紹介しよう。君たち布を外してくれ。」
幕府兵と幕府役人達が布を剥がす。
四輪の鉄の塊がそこにはあった。
「これこそ、今後馬車や人足達を陸運から排斥するであろう重量運搬具。蒸気自動車である。8350斤(5トン)の荷を積載し大人4人が乗っても自走可能だ。そうだ、少し動かしてみよう。そこに君!!これを動かしてくれ!!」
「はい!!」
幕府役人の一人が蒸気自動車に水を入れ、乗り込みペダルを踏む。
ガタガタと音を立てて進む。
「七乃!!馬がいないのに動いておるぞ!?」
「す、すごいですね・・・さすがは徳川日本国、牽引についには馬をも使わなくなったのですねぇ」
「っな・・・なんなのこれは・・・」
「っ・・・・・・・」
袁術や張勲達にとっては同盟国の凄さを単純に理解する機会であった。
孫権達にとっては袁術庇護者である徳川日本国の強大さを思い知ることになるのであった。