仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。 作:3番目
チャンパ王国との戦いの後、後方に下がった負傷兵の護衛に大多喜藩・小田原藩と一部の幕臣が残され、チャンパ王国との戦後処理を行っていた。南方開拓団の外務省出向役人である新見恒興は何とも言いえない気持ちになっていた。
まず、戦後処理と言っても当事国でないため事務仕事も多くはなくすぐに終わってしまった。そうなるとやることなどは負傷兵の治療や炊き出し等の指揮の手伝いくらいしかない。
そういった仕事の中には当然死体の処理もあるわけだ。
よく思い出してほしい、この南蛮地域の住民の身体的な特徴を・・・獣人幼女である、重要なので、もう一度言う獣人幼女である。
そして、先ほどの戦いでは象騎兵による突撃、銃撃や砲撃が行われた。つまり、R-18Gである、目を覆いたくなる惨状である。先ほどまで敵であったとしても罪悪感があふれてくる。
もし、この光景に何も感じないのなら、そいつは精神に異常をきたしているに違いない。
無論、精神異常者ではない恒興は罪悪感を感じている訳である。
だからと言って感傷に浸るわけにもいかない彼は部下に指示して埋葬の手伝いをする。
積みあがっていく死体の山を見て彼は誓う。この国とは二度と戦いたくないと・・・
死体を乗せた荷車から恒興の前にゴトリと南蛮人の亡骸が落ちてきた。
そんなはずはないのだが、恒興はその亡骸と目が合ったような気がした。
10歳前半の子供と変わらない体躯のその亡骸を抱えてみると右腕がないことに気が付いた。
戦いで失ったのであろう、恒興は周囲を見回して彼女の腕を見つけそれと一緒に彼女を、亡骸の山にそっと下し、目を閉じ手を合わせた。
目頭が熱くなったのを感じた。
彼、彼女達の冥福を真剣に祈った。
彼が目を開けてみると何人かの南蛮人達がこちらの様子を窺うように覗き込んでいるのがわかる。その表情は不思議そうな、むしろ困惑しているようにも見えた。
その南蛮人達の一人、黒い毛並みの獣人幼女が歩み寄ってくる。たしか、彼女は朶思大王だ。今は大王じゃないので朶思だろうか。
一瞬そんなことを考えた恒興に朶思が声をかけてきた。
「おまえはあいつらのことを悼んでくれているのかにゃ?」
「ああ、戦争ゆえに仕方のなき事とはいえな。死にたいやつなどはいるはずもない。」
朶思は腕を組んで少し考えるようなしぐさをする。思わずかわいいと思ってしまった。
「お前たちは、モフモフじゃないにゃけど、良いやつらなんだにゃ。」
まさか、自分たちが殺した相手の国の人にそんなことを言われるとは思わず恒興は思わず言葉に詰まってしまった・・・
「お前たちは、北のモフモフしてない奴らと違ってミーたちの仲間をさらし者にしたり、奴隷にしたりしないのにゃ?」
「私達はそのような野蛮な真似はしない。」
恒興がそう答えると声のトーンが少し上がったのを感じた。
「そうにゃのにゃ。孟獲が信じるだけあるにゃ!モフモフないやつらでミーたち泣いてくれたのはお前が初めて、ミーたちのために何かしてくれたのはお前たちが初めてにゃ!ありがとにゃ!」
そう言ってすこしだけ出た涙をぬぐった朶思は続けてこう言った。
「ミーたちはきっとうまくやっていけるにゃ!仲間たちの死は無駄じゃなかったにゃ!」
この場にいた日本人全員がキュンとした。
「おまえ、名前はなんていうにゃ?」
「新見恒興という。」
「にーみ、にいみつねおき。わかった!にいみつねおき!朶思の真名は放(ほう)にゃ!」
「放・・・」
「お前たちはいいやつばかりだにゃ。にーみ、お前は特にいいやつ、だから真名おしえたにゃよ。」
「私も真名を決めたら君に教えるよ。」
「そうかにゃ、モフモフじゃないやつらに真名を教えるのはにーみが最初にゃよ」
純真無垢さに恒興はキュンとした。