仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。 作:3番目
サブタイトルは仮で変更有です。
徳川幕府江戸城大天守閣最上層
この日、約200年ぶりに再建された江戸城大天守閣の最上層の間で彼ら徳川十三氏族の代表の間で密談が行われていた。
集まった氏族は徳川将軍家当主徳川家茂、田安徳川家当主徳川慶頼、紀州徳川家当主徳川茂承、尾張徳川家当主徳川慶勝、水戸徳川家当主徳川慶篤、一橋徳川家当主徳川慶喜、清水徳川家当主徳川昭武、福井松平家当主松平春嶽、津山松平家当主松平慶倫、会津松平家当主松平容保、越智松平家当主松平武聰、久松松平家当主松平定敬、大河内松平家松平正質の13人。最後の大河内家は徳川家康の時代までに分家したルーツを持つ松平十八家の長沢松平家の分家であり今回は代理出席である。また、松平十八家は徳川御一門の枠から微妙にずれており、御一門十三氏族の一席しか与えられておらず十八家は徳川一門の下位と言う位置付けにある。その為、十八家に属する者達でも藩主や組織の長に席を置いている権威を持っている者が就任することが多い。
「これで欧州も中東も一応の安定を得られた。占領統治に必要な兵力以外は戻しても良いだろう。意見はあるか?」
家茂の言葉に全員が首を振るか「否」と答える。
「さて、ここで一つ問題が発生した。」
家茂は定敬を促す。
彼らが囲む円卓の中央に何枚かの写真がぶちまけられ、数枚の書類が配られる。
それを見た氏族たちは一様に怪訝な表情を浮かべる。
「我々に担ぎ上げられただけの小娘がやってくれようとは…」
徳川慶頼の言葉に何人かが肯定するように頷く。
「ふむ、内通者か…。機密の類はいかほど流されたのか?」
「どうやら、銃の製造法の様です。」
茂承の問いにすでに書類に目を通し切った慶勝が答える。
「天皇家に対して忠勤を尽くし、国の発展のために献身した。我らへの裏切り行為ですな。」
「この仕打ちとは…。」
慶篤と慶頼は壱与に対して不満を口にする。
「お飾りの操り人形にしては少々悪戯が過ぎたように感じますねぇ。」
慶倫は何もない空間に目を漂わせながらつぶやく。
「壱与様が我々の手から離れ独自に権勢をふるうようになっては少々困りますな。」
武聰も面白くないと言わんばかりの態度を示す。
「まあ、あれも根本的に俺達とは考えが違った。ここまで過激な手を打ってくるとは思わなかったがありえないことではなかった。」
「実際起こってしまったのだから手を打たねばならんぞ。」
曖昧ながらもあり得ないことではないと言ってその場を濁す容保に対しては昭武が窘める。
この様な状態の発言が続き平行線状態になり始めた。
「このままでは将軍家。いえ、我ら徳川松平氏族と宮家の対立が起こります。朝廷内に我らの息が掛かった者達がいるうちに手を打ったほうが良いかと…。」
そして、話が流れそうな空気が漂い始め慶喜は家茂に少々過激な方向性の結論を促す。
「ですが相手は宮家です。暗殺や襲撃の様なあまり露骨な手は使えません。」
「壱与様を害することが問題ですので食べ物に毒を混ぜる毒殺でも、暗殺者による殺害でも問題が残ります。」
慶篤と昭武は家茂に慎重論を述べる。
「我らが張譲を介して管理者于吉と交渉を重ねていた事がどこで漏れたのやら。張譲は対馬府中の宗氏の預かりにしていたのだが…。我らが彼女の手駒ではないとわかったが故に乗り換えたとでもいうべきか。于吉と交渉を持ち何らかの関係を持ったとはいえ自国の神輿の首を差し出す訳はないのだが…。それとも我らが世界の覇権を握ったのが気に入らなかったのか。議会でもよく反対派に回ることが多かったしな。どちらしても浅慮でございましたな壱与様。」
家茂は即答はせずにこの様な状況になった経緯の一部を述べる。
十三氏族の者達は無論知っていることだが口を挟まないで見守る。これがある種の前置きであることは皆わかっていた。
「壱与様…。正攻法は勿論、搦手でも相手にするには厄介だ。……………であるならば………奥の手を切るとしよう。定敬、直轄領の周防山口の代官に連絡を取れ。」
「っは。では朝廷内の親派にも連絡を入れます。」
「仔細は任せる。」
家茂は定敬に何かの謀の指示を出し、定敬はそれを受けて部下の藩士に命令を下す。
「う、上様。奥の手とは?周防に何があるのですか?」
慶喜は家茂の下した命令の意図がつかみきれず尋ねる。
「余はただ美羽との平穏…。否、この煌びやかな生活が維持できればなんでも良い。天皇家の御家問題などにはさして興味はない。だが、神輿に乗せてやった北の帝が余に手向かうのであれば南に挿げ替えるのが当然であろう。」
家茂はそう言って小姓頭の彦丸から煙管を受け取り煙を吸い込み一服する。
慶喜の様な特に聡い者達は何かに気が付いて表情を硬くするが、半分ほどの者達は家茂の言った言葉の意味を理解できずにいた。それを察した定敬が家茂の言葉に補足を入れる。
「周防山口には南朝の帝があらせられます。…これより我らがあおぐは北朝天皇にあらず。南朝天皇こそが正統であり我らが今後あおぐ帝であります。」