仮題・・・恋姫世界に幕末日本をぶち込んでみた。 作:3番目
遡る事晩餐会の企画より前のこと
江戸城本丸御殿大広間
大広間上段に座る家茂。
中段左右に大政参与松平定敬、政治総裁職田安慶頼、貴族院議長近衛忠房、大老井伊直弼、下段左右に兵部総裁職(新名誉役職)松平容保、他総裁職の10人、二の間は御三家、御三卿、御家門と言った親藩、三の間に雄藩藩主、四の間に主要奉行衆と比較的有力な藩主が控える。菊の間には奥詰隊が有事に備え、江戸城の警備に本める撤兵隊が動員される厳戒態勢の中。
家茂はある人物の謁見をすることになる。幕府は開闢200年を超える、天皇家は践祚2500年を超える。
家茂がこれから謁見するのは亡国の皇族とはいえ短く見ても265年、系列の王朝も換算すれば5000年近い歴史を持つ国家の皇族との謁見である。
全員が全員緊張しているがその心の何割かは好奇心から来るものもあった。実際本来なら将軍との謁見は白書院なのだが、どこから情報を聞き付けたのか。親藩や雄藩藩主達がどうにか一目見たいと言う願い出が幕府へ届けられ大広間での謁見となった。
家茂の斜め後ろに控える彦丸が家茂に告げる。
「先方、ご到着です。」
「お通ししろ。」
「っは」
待の廊下に控える小姓が声を上げる。
「クレオパトラ17世様の御来援にございます!」
世界三大美女の一人であるクレオパトラの血筋である。男なら一目見てみたいと思うのは当然と言えよう。
黄金の蛇の王冠、黒い髪、白を基調にした若干露出度の高い服イメージ通りの姿だ。
肌の色は薄く辛うじて褐色と言えるさすがに古代エジプト人の純潔は守り切れなかった様だ。まあ、七世の代で純血はありえない話か。
「日出る国の王よ。この度の謁見の機会をお与えくださったこと感謝いたします。」
そう言って頭を下げる、クレオパトラ17世とその随行者。
「余としてもプトレマイオス王朝の忘れ形見であるその方らと会う機会が持てたとこは誠に祝着至極である。帝国幕府はそなたらを歓迎しよう。長旅の疲れもあろうてごゆるりとしていかれよ。」
「ありがたきお言葉にございます。・・・このたびは皇族としての役目を果たすべく帝国へ参りました。・・・あぁ、わたくしは今は亡きプトレマイオスの皇族、国はなくとも守るべき民はいるのです。」
クレオパトラ17世の芝居がかった動きと言葉ではあるがあまり嫌味に感じることはない。ある種の魅力を感じることもできる。流石は三大美女の血筋か。
「我が始祖たるプトレマイオス1世より受け継がれてきた華やかな文化、わたくしの可愛い民達は・・・うぅ、悪逆なるローマに属州奴隷として搾取され明日をも知れない闇の中を彷徨っているのです。」
「まるで歌劇を見ている様だ。」家茂を中心にそう思った者達も少なくないだろう。彼女にはそう言った女優性もあるように思える。
「わたくしの先祖には月の女神の名を冠しているものもいましたが、ローマと言う闇を照らすには月の光では力およばず・・・。あぁ、どうか、どうか!旭日の国の王よ!その眩い陽の光を持ってわたくしの国に纏わりつく闇を討ち払ってくださいませ!」
言葉に合わせて体をくねらせ服がずれる姿はかなり艶めかしい。
井伊を中心とする爺どもですら鼻息を荒くしているような気がする。
このまま続けさせても悪くはないような気もするが、悪く言えばエロい姉ちゃんである彼女をそのままにすると本丸殿の大広間でストリップでも始めそうなのでそろそろ止めておこう。
「あいわかった。プトレマイオス再興の件、悪いようにはせんそう遠くないうちに目に見える形で善きに計らう故。しばし、日ノ本に滞在されるがよい。」
「あぁ、なんとお優しいお言葉。わたくしの身に染み入りますわ。」
「う、うむ。」
クレオパトラ17世は姿勢を崩したかと思うとスススと家茂の方へ近付いて行く。
「わたくし真名をアルテミスと言いますの家茂様もそう呼んでくださいませ。」
「そ、そうか・・・。アルテミス殿、ちと近くないか?」
「そうでございましょうか?月と太陽が寄り添うのはいけないことでしょうか?」
近い!?近すぎる!?胸がポロリしそうだ!!
「いや、その、余は妻に操を立てている故、あ、あまりその様なことをされては困る!?」
「あら、奥様がいらっしゃるのですか?でしたら・・・愛人でも構いませんわよ?」
なんか顔が紅潮してるし、しっとりしてる感じがする。エロい、エロいぞ!?この女の先祖はこうやってカエサルを落としたのか!!
「と、とにかく!!プトレマイオスの事は帝国が責任を持って対処するゆえご安心されよ!!余は少し用事を思い出した故失礼致す!!プトレマイオスの客人方は桑名藩預かりとする!!」
その日の夜
物音で目を覚ます家茂。今日の傍控えは彦丸か?珍しいなあれが物音を立てるなんて・・・
女人?大奥はまだ再建中で女中は入れてないはず。今の江戸城に余がいる寝所まで入れる者はおらんはず。
「よいしょっと、失礼しますわ」
目を開けてみると布団の中に入ってこようとするアルテミス嬢。
「ぬぉおおお!?な、なんだ!?この状況は!?」
気が付けば部屋の隅で縛られた彦丸。それを見た家茂は瞬間的に彼女達から距離を取る。
「あら、つれないお方。」
その日は寝なかった。いかがわしい事はしていない。
翌日、間違えなく桑名藩邸に預けた。
蛇足だが、桑名藩邸にてサータバーハナ朝のシムカ国王とプトレマイオスの皇族クレオパトラ17世が面会した。
とにかく、桑名藩邸に預けていたのは間違いないのだ。
時を進めること、晩餐会後各総裁らに今後の計画の実行計画概略の作成を命じ、帝国劇場を後にする。
御用馬車で美羽達を連れて江戸城へと戻った。
夜通しの夜会明けのテンションと美羽の「(初潮が)来たのじゃ。」の一言で完全に暴走してしまったのだ。普段の家茂ならリスクを考えてこう言ったことは即日でするようなことはしない。だが、男とはかくも愚かな生き物なのだ。
小姓達に命じて寝所に布団を二つ並べさせている。江戸城の電化の影響で照明をアレなライトでそれっぽい雰囲気を演出している。そこまでは完璧だ完璧なんだ。
「お待ちしておりましたわ。」
襖の向こう側に布団包まって顔をのぞかせるアルテミスが居なければ・・・
家茂は即座に襖を閉めた。
この時、家茂は人生最大の危機を迎えていた。
「どうしたのじゃ。旦那様?」
純真そうな瞳でこちらを伺う美羽。
「あらあら、そうしたのですか家茂さん。奥さんが不倫相手と鉢合わせした場面に居合わせて動揺しまくる夫のような姿をして?」
こいつ、何か知っているうえに面白がっている。隠せるのか!?いや、無理だ。
誤魔化すしかない。
「あー、今日は暑いな!縁側で涼んでから寝るとしようか!部屋は少々取り込んでいるようだ!」
少々大きめの声を上げる、この部屋のどこかにいるはずの小姓頭の彦丸に聞こえる様に・・・
縁側へ美羽達を連れて移動する。
「んー!!んー!!」
何か声が聞こえる。少し覗いてみると縄で縛られた状態の黒猫のコスプレをした彦丸がいた。
「んー!!んー!!ん!?!?!?!?!?んーーーーー!!!」
なんか一瞬、袁家の隠密頭の少女、明命の姿が見えてすごい勢いで彦丸が奥へ引き込まれていった。彦丸ー!!
唯一の味方が!?
七乃が後ろでニヤニヤしている。絶対これ仕組んだのお前だろ・・・
って、襖から布団(アルテミス㏌)が転がってくる!!
布団を押し入れにぶち込むしか!?いや、将軍の寝所に押し入れなんてなかった!?じゃあ、別の部屋か。それしかない布団を抱えて隣の部屋へシューー!!
慌てて走る家茂の前にスッと足を出す七乃。
蒲団の裾をつかんだ家茂だけが隣の部屋へシューーート!!超エキサイティング!!な修羅場が完成!!
「だ、旦那様!!妾と言うものがあるにもかかわらず!!どういうことじゃ!!」
頬を膨らませて御冠な美羽とそれを「嫉妬するお嬢様もかわいい!」とか馬鹿な事を言う七乃。アルテミスの方もノリノリで「眠れぬ夜を過ごした中ではありませんか!」とか言っちゃう。
これを聞いた美羽も
「新は妾の夫じゃ!!妾が一番愛しているのじゃ!!」
家茂の足にしがみ付きとか言い出す、結構うれしい(惚気)。
だが、惚気ている暇はない。家茂自身が嵐の中心なのだからこの場を治めるのは自分自身だけだ。
「家茂さん~?これはいったいどういう事なんでしょうか?眠れない夜って?」
「いや、それはな。あの、なんだ。俺は美羽が一番だぞ!」
本当のことを言えばいいのに、変なことを言い出す家茂。ちなみにこのこの回答だと2番3番もいる意味にとられるのでこう言った場で言うセリフとしては間違いである。
場がいい感じでカオスとなりかけた時。
「もう、その辺にしてあげてください。」
「上様が泡吹いて倒れちまう。」
襖の向こうから松平定敬と松平容保。
「そうですね、定敬さん。そろそろ終わりにしますよー。美羽様?家茂さんも位ある男の人ですよ。側室の一人や二人出来るに決まっていますよ。美羽様は家茂さんの一番で正妻なんですから広い心で許してあげなくてはいけませんよ。」
七乃が口を尖らせてお開き宣言をすると美羽に正室としての在り方を説明し始める。
「くすくす、お二人は本当に愛し合っているのですわね。妬けてしまいますわ。」
アルテミスも口を抑えながら小さく笑っている。
「こんなに愛し合っている二人ですもの、他人が入る余地は「ありますよ」!?」
アルテミスの敗北宣言に待ったを掛ける定敬。
「将軍家の世継ぎ問題は早々に解決してもらいたいのは幕府の総意ですので・・・。クレオパトラ17世女王陛下がよろしければこのまま側室になってもらって大いに構いませんよ。むしろ、なってください。この二人おぼこと童貞ですので・・・。ふたりに手取り足取り教えていただければ。それと上様、喜んでください大奥再建しますよ。」
家茂に側室(アルテミス)が出来た。
美羽が御台所として奥向きの仕事を学ぶことになった。
また、大奥再建を呼び水に明治期天下普請と呼ばれる江戸城の大整備大改築が行われた。
本丸御殿では大奥が取り潰され大広間、白書院、黒書院はそのままに表・中奥の拡張が行われ、二の丸には慶応3年に焼失した二の丸御殿の再建が行われ二の丸御殿は最初期の小堀遠州の案のものが数多く再現され、表向の機能が省略された極めて遊興性の高いものであった。南西にある築山を背後に有し白鳥濠と繋がる池の中には水舞台があり、対岸の畔にある御座や濠に突き出た釣殿から観覧することができた。中央は大奥御殿があり、東側にも池や築山、池の中島にある御亭や御茶屋・御囲・学問所や御文庫があった。
また、北の丸においても大名屋敷の再編が行われ親藩の多くが移転させられて来たた。さらに吹上には日本庭園とゴルフ場が建設された。
しかし、今回の普請で一番の目玉は明暦の大火により焼失して以後再建されずにいた大天守の再建であった。この天守は当時の建築学の推移を結集させた独立式望楼型6重10層(外観6層内観3層地下1層)と言う前代未聞の巨大天守の建造であった。壁面は金の彫刻が施されたうえで黒色になるような表面加工が施された銅板を張り、屋根は金箔瓦葺である。さらには金の鯱や破風の飾り板を金の延板で飾った豪華絢爛なものとなっている。これは大阪城よりも巨大で豪華であった。この天守は表記において岐阜城以来の天主表記がなされたものであり、この世界の天主が己であることを世界に誇示した訳でもあった。
次回あたりからドロドロした話になります