【完結】嵐を呼ぶうたわれるものとケツだけ星人(うたわれるもの 二人の白皇×クレヨンしんちゃん)   作:アニッキーブラッザー

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第4話 コーモン様のお通りだぞ

「ハ~ク~オ~ロ~さ~ん! ハクさ~ん! 二人とも待ちなさーいッ!」

 

 なんか、エルルゥさんからフォークが飛んでくるんだけど! なんでフォーク? この国にはフォークがあるのか? 

 

「まずいですわね。まさか、かつて戦乱の世にて名を馳せた策士二人が手を組むなど……主様ァ~、もうお戯れでは過ぎませんことよッ!」

 

 カルラさんがその場で拳を繰り出すだけで拳圧が飛んでくるんだけど! あの人、仮面の者じゃないよな? 

 

「大封印を発動されたくなければ、降伏をオススメします!」

 

 あんた、そういうキャラだったんですか、ウルトリィさん! 一番常識人だと思っていたのに! 

 

「くけーっ! 聖上~! ハク殿~! 某とクオンの未来のため、神妙にして頂く!」

 

 なんだろう。トウカさんだけ平常運転に見えるのは。

 

「逃げてもいいよ~。その代わり、カミュたちも手加減なんてしないんだから!」

 

 お前ら、楽しんでるだけだろ、カミュ! 

 

「かくごする」

 

 アルルゥ、ムックルには一応手加減するように伝えてるよな? シャレにならんぞ! 

 とまあ、乙女の怒りなんて可愛い言葉では済まされないほどの攻撃が背後から次々と飛んでくる。

 

「ハクオロ、なんかいい能力はないのか?」

「私は普通の人間だ!」

「策は?」

「やはり……君を囮に……」

「……見捨てるぞ?」

「い、いや、待ちたまえ! というか、君も考えたまえ! ヤマトの総大将にまでなった漢だろう!」

「自分はオシュトルの名前があったから出来ただけだ。ただの辺境の男から大陸の皇にまでなったあんたと一緒にするな!」

 

 自分もハクオロも寸前のところで回避しているが、このままでは時間の問題だ。

 何か良い策はないものか? 

 そう思ったとき……

 

「ねえ、ハクとーちゃん、おじさん、何で逃げてるんだ? 何か悪いことしたのか? おら、もう疲れちゃったぞ」

 

 段々バテてきたしんのすけの素朴な疑問にハッとなる。

 何か悪いことをしたのか? 

 

「悪いことをしたんだったら、逃げないでゴメンなさいをするんだぞ? 幼稚園ではみんなやってるんだぞ?」

「しんのすけ……」

「女の子に悪いことをしたのに知らん顔するやつは、ゲスの極みなんだぞ?」

 

 いや、自分たちは悪いことをしていないぞ? 

 ハクオロは不条理な要求に潰されそうになり、自分は神様だから人間と気軽に会うわけにはいかない……そう、ちゃんと理由が……

 そう、その理由は全て、男の身勝手な理由。

 その身勝手な意地が、こうして女を悲しませている。

 そう気づいた瞬間、ハクオロは足を止めた。

 

「……みんな、聞いてくれ」

 

 ハクオロがピタッと足を止めて、その場で語り出した。

 その後姿を見て、先ほどまで鬼気としてハクオロに迫っていた女性陣も、その只ならぬ気配を察して足を止めた。

 

 

「エルルゥ。私は……どんな顔をして皆と接すればいいのかを、未だに戸惑っている。ましてや自分はエルルゥから多くの時間を奪ってしまった。そんな自分にエルルゥは変わらずに接してくれることに嬉しく思う反面、どうしても気を使わせているのではないかと思い……いたたまれなくなってしまった」

 

「そ、そんな、ハクオロさん……私は好きでやっているんです! だから、今、本当に幸せなんです」

 

「カルラ。お前は何年経っても自由で、それで居て──────―」

 

 

 とまあ、そこから暫くハクオロの独白と女性陣との甘酸っぱいやり取りがあり……

 

 

「────―そう、だからこそ……そんな皆の想いを十数年ぶりに感じたことで、色々と考えてしまい、少し一人になりたかったのかもしれない。すまなかった」

 

「「「「「(ハクオロさん)(主様)(ハクオロ様)(聖上)(おじさま)(おとーさん)」」」」」

 

 

 このジゴロめっ! 女性陣は、ハクオロの一人一人への言葉に大変満足したのか、頬を赤らめて、先ほどの瘴気が浄化されていた。

 

 

「私たちこそ、ハクオロさんのお身体の負担等を考えずに……本当にごめんなさい。薬師失格です……」

 

「たとえ何年経とうと、来世になろうとも、私が主様のモノであることに変わりありませんわ」

 

「ただの女になるのは本当に久しぶりで、ハクオロ様との再会の喜びで私もとんだ粗相を……本当に申し訳ありません」

 

「聖上、この不忠なる某をお許しください」

 

「本当にごめんね、おじさま。でも、これからは、おじ様をもっと支えるよ」

 

「おとーさんの気持ちも考える」

 

 

 しっかし、この人たちもこういう顔をするんだな。

 今まではクオンの保護者という立場で、すべてにおいてクオンを優先していた人たちが、こんなに自分に素直になって、ただの女として愛する男に想いをぶつける。

 こんな光景を見れただけでも、ハクオロをこの人たちの下へと帰すことができて良かったな。

 

「主様。私たちがいる」

「二人で五人分、十人分の働きをします」

 

 そんなハクオロとエルルゥさんたちが羨ましかったのか、この二人も自分にしな垂れかかってきた。

 と、さてさて一件落着ということで、そろそろ自分も……

 

 

「ほうほ~う、おじさんはなかなかのプレイボーイですな~。で、おじさんはこの人たちの中で誰が一番好きなんだ?」

 

「……へっ?」

 

「「「「「ッ!」」」」」

 

 

 と、その時、しんのすけが爆弾を放り込んだ。

 誰が一番好きなんだ……いや……別にそこまでは女性陣も聞く気はない。

 彼女たちは互いに互いを認め合っているからこそ成り立っている関係性。

 誰も分け隔てなく平等に……それがハクオロなのだが……でも……ねえ、やっぱり女性たちもそれはそれで気にならないかといえば……

 

「は、ははは、何を言っているんだい、坊や。誰が一番だなんてそんなことはない。私たちは家族なのだから」

 

 少々顔を引きつらせたハクオロがそう言った。

 しかし次の瞬間、しんのすけは「やれやれ」と両肩を挙げて溜息を吐いた。

 

「やれやれだぞ、おじさん。家族っていうのを、一番便利で都合のいい言い訳に使っちゃダメだぞ。女心はアクション仮面の怪人みたいに恐いんだから、誰にでもいい顔ばっかしてると、いつか刺されちゃうぞ?」

 

 お前は本当に五歳児なのか! でも、言わんとしていることは分からなくもないが、今、そんなことを言ったら! 

 すると、女性陣はニッコリと微笑みながら……

 

 

「大丈夫です、分かっていますからハクオロさん。十数年前……あのままハクオロさんが居たのなら、私がトゥスクルの皇后でしたから……」

 

「分かっていますわ、主様。私が本妻になっていたことなど」

 

「ハクオロ。私があなたの奥様になっていたであろうことは、ちゃんと理解しております」

 

「そそそそ、某は……にに、に、新妻に……」

 

「カミュは幼な妻になってたよね?」

 

「アルルゥは、かーさんになってた」

 

 

 顔はニッコリだけどお互いに牽制するようなことを言い合って……こ、恐い、恐いよ。もう、自分はいまのうちに……

 

「そ、そう! そんな私の所為で、君たちをずっと未亡人にしてしまった! だからこそ、今、我らがすべきことは一つ! 我々の大切な娘であるクオンにも同じようなことをさせてはならないということ! だからこそ、今、ここに居るハクを捕まえることこそが我らの天命ッ!」

 

 ……えっ? 

 

 

「えっ、ちょっ、お、おいいい! ハクオロッ! お、お前、自分を裏切ったのか!」

 

「すまない、ハク。父とは、娘のためなら禍日神になろうと地獄に落ちようと悔いはない!」

 

 

 ハクオロのやつ、自分を裏切っただけでなく、標的に! くそお、恩を仇で返しやがって! 

 

 

「……そ~ですね~、ではやっぱり、無理してでも私たちに遅れを取り戻してもらいますからね」

 

「ならば、やはり二人まとめてトゥスクルに連れ帰り、早々に華燭の典といきますわ」

 

「クオンの妹か弟を私たちが、そしてハク様、あなたが私たちに孫を……」

 

「そうと決まれば話が早い」

 

「覚悟しなよ~。クーちゃんと私たちの家族計画」

 

「いっぱい産む」

 

 

 でも、やっぱりハクオロもただではすまないっぽいな! 二人まとめてこの人たちは狩る気だ! 

 ……っていうか、そもそもベナウィだったり、この人たちだったりといい、何で自分が将来的にトゥスクルに行くことが確定しているんだ? 

 

 

「あいや、待たれい! 控えろーっ!」

 

 

 その時、禍日神と再び化して自分たちに飛びかかろうとするトゥスクル勢に待ったをかける声が上がる。

 って、おいおい、この人たちはトゥスクルの重鎮だぞ? そんな人たちに、「待て」なんて命令を一体どこの誰が……

 

「お────ー、ムネちゃんだぞ────っ!」

 

 ムネチカアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! 

 しかもちゃっかりと、仮面まで装着している、懐かしき戦友ムネチカが、推して参られた! って、しんのすけ、何で知ってるんだよ! 

 だが、ムネチカはしんのすけを無視して、こっちをギロリと睨む。

 すると、その背後では、ゆっくりと小さな女の子が威風堂々とした姿で闊歩してきていた。

 

「あっ……」

 

 いや、居るのは何となく分かってたけど、結局見つかった……

 

「ようやく……ひっぐ、ようやく見つけたぞ……この、たわけもの! 余の半身でありながら……黙っていなくなるとは何事じゃ!」

 

 立派になったな……と頭を撫でてやりたくなる衝動を堪えた。

 民を導く存在として大きく成長したはずの彼女の表情は、まるで迷子の子供が親を見つけられたかのような表情。

 懸命に堪えているものの、自分を見つめる彼女の瞳には涙が溢れ出そうになっている。

 

「皇女さん……いや、……今は、帝さんか……」

 

 自分が思わず呟くと、傍らのムネチカが再び声を上げた。

 

 

「控えろー! この紋所が目に入らぬか! ここにおわすお方をどなたと心得る!」

 

 

 懐から取り出した印籠を掲げるムネチカ。

 ああ、知ってるよ。そこに居るのが誰なのか。

 ヤマト総大将オシュトルが崇める、ヤマトの帝、アンジュ様。

 

 

「うっほほーい、ケツだけ星人でござる~! てーやんでてーやんでー! おらのコーモン、見てコーモン! ブリブリブリ~!」

 

「「「「「ぶぼはあああああああああああっ!」」」」」

 

 

 その瞬間、しんのすけのケツだけ星人が炸裂し、自分もハクオロもトゥスクル勢も、当然ムネチカも帝さんも盛大にズッコケた。

 

 


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