【完結】嵐を呼ぶうたわれるものとケツだけ星人(うたわれるもの 二人の白皇×クレヨンしんちゃん)   作:アニッキーブラッザー

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第14話 またまた一件落着だぞ

「なぜだ! 何故、余の邪魔をする! 余の何が間違っている!」

 

 挟撃。挟撃。ひたすら挟撃!

 カンタムの攻撃力も防御力も関係ない。

 高揚した自分たちは一丸となり、次から次へと攻撃を叩き込んだ。

 連撃。術。必殺の一撃。

 これは、あの最終決戦で、クオンから発せられたウィツァルネミテアと対峙した時の自分たちと同じ。

 どこまでも高揚して力が増した。

 

「ぐっ、えええい、うざったいわああ! まとわりつくな! 超カン・タムゥを舐めるなあ!」

 

 関係ない。

 我等が一丸となった時の力は、大神すらも打ち破るのだ。

 太古の遺産の一つや二つ等、軽く蹴散らしてみせる。

 

「うりゃああ、主婦のヒップアターック!」

「くらえええ、営業マンの靴下攻撃―っ! 足臭いキーック!」

「アクションビームッ!」

 

 それに、今はこの頼もしい一家も居る事だしな。

 

「気力を失ったら一旦下がるです! 私が回復させるのです!」

「怪我をしたって、わたくしが全部直してあげるかな!」

「はい、私たちにお任せ下さい!」

 

 体力が落ちてこようと、回復の体制も万全だ。

 自分たちは、カンタムの足にまとわりつくように、次から次へと攻撃を叩き込んだ。

 その勢いは、無敵のカンタムに乗ったクーヤを取り乱させるほどだ。

 

「ハクオロ、これをっ!」

「ぬっ……この鉄扇は……」

「今だけ貸してやる。いや……今だけ、返してやる。自分には、このオシュトルの剣があるからな」

「ふっ……そうか。ならば、遠慮はいらん。久々に私もやるとしよう!」

 

 ハクオロに鉄扇を渡し、自分も刀を抜いて構える。

 同時に走り出した自分たちは、左右から同時にカンタムの足に必殺を叩き込む。

手ごたえあり! 発せられた渦がカンタムを捻るように吹き飛ばす。

 

「なぜだ! 余は……余もサクヤも何も間違っていないであろう!」

 

 カンタムの機体から、悲鳴のような声が響いた。

 

「愛しき男に忘れられただけでなく、その男は他の女とイチャツきおる! 余もハクオロの妻となりて毎日イチャイチャしたり甘えたりしたいのだぞ! それに、我が最愛の娘は下品な変態男に手篭めにされてキズモノにされた! そんな男との結婚等破談させてやる! それの何が悪い!」

 

 義は自分にこそあると主張するクーヤ。

 そして、ハッキリいって正論過ぎて、自分もハクオロも言い返すことが出来ない。

 だが……

 

「ざっけんじゃないわよーっ!」

「ふっざけんじゃねーっ!」

 

 自分でもハクオロでも、ヤマトでもトゥスクルでもない。

 クーヤの言葉に叫び返したのは、しんのすけの父と母だった。

 

 

「妻として夫とイチャイチャしたい? あんたが言うほど妻も母親も簡単じゃないのよ! いつも早起きしてご飯作って、寝坊して起きた子供を幼稚園に毎朝送って、旦那の少ない給料でやりくりしながら家事をして、言うこと聞かない子供を叱って、家族のために毎日働く旦那を支える! やることなんていっぱいあるんだから! 甘えてイチャイチャすることだけが嫁の仕事だと思ってんじゃないわよ! でもね、その大変なことの積み重ねの毎日こそが、妻の幸せなのよ! 旦那が居て、しんのすけが居て、ひまわりが居て、シロが居て、そんな家族と過ごすことこそが妻の最高の幸せってもんなのよ! それが分かんないやつが、妻とか母とか言ってんじゃないわよッ!」

 

「俺だってもし、ひまわりの選んだ男が、いきなりチンチン出してくるような変態野郎だったらぶっとばしてやる! ぶっとばして、その上で腹割って話して、一緒に酒飲んで、そいつの目を見て、ひまわりが笑顔かどうか見て、そんでひまわりの結婚式では号泣してやるんだ! ぶっとばすのも結婚反対も分かるが、娘が本当に幸せになるかもしれねーってんなら、一度信じて向き合ってみるのが親ってもんだろうがっ!」

 

 

 妻の言葉と親の言葉。

 そして、それは自分たちの口からは出てこない言葉でもあった。

 今、自分たちの中には、親となって子育てをしているものはいる。

だが、自分やハクオロのような特殊な存在ゆえに、この場に居る男も女も、誰もが夫婦となって子供を産んで家庭を育んだことがあるものは居ないのだ。

 だからこそ、クーヤもまた言葉を失っていた。

 このクーヤという人が、どれほど悲しくツライ運命を送ってきたのかは知らない。だが、そんなこと関係ないのだ。

 妻なら。親なら。その言葉がクーヤを深く貫いた。

 

「だが……お前をそうさせたのもまた、私の罪でもある」

 

 そんな中で、ハクオロは鉄扇を掲げて呟いた。

 

「クーヤ。私も親としても夫としてもまだまだだ。本当にすまなかった。お前をそこまで追い込んでしまい……もちろん、サクヤにもそうだ」

「……ハクオロ…………余は……余は」

「今こそ、お前を全ての呪縛から解放しよう。そしてこれからは共に成長していこう。クーヤ。今度はもう……離れたりはしない」

 

 ハクオロもまた、しんのすけの両親の言葉が胸を貫いたのだろう。

 そして、全ては自分の責任だとクーヤに詫び、その上でもう一度鉄扇を構える。

 

「ハク……お互い大変だろうが……それでも……」

「ああ。自分も……気持ちは同じだ、ハクオロ」

 

 俺はハクオロに頷いて、オシュトルの剣を構える。

 

「「惚れた女をもう泣かせない!」」

 

 これが最後の一撃だ。すべてのケジメを、今こそつける。

 

「おお、おじさん! ハクとーちゃん、オラもオラもーっ!」

 

 自分とハクオロの間に入るしんのすけも、両腕を前に構える。

 

「ああ、そうだな、しんのすけくん」

「当たり前だ、しんのすけ。何故ならこれは全て……お前から始まった……お前のおかげで、ここまで辿りついた」

「ほうほう、それでは最後はご一緒ですな」

 

 笑って頷き合う三人。

 そして、これが最初で最後の三人の挟撃。

 

 

「風陣乱扇ッ!」

 

「白燕乱舞ッ!」

 

「アクションビーームッ!」

 

 

 閃光と激しい渦が、カンタムを包み込み―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ……まだ、言ってなかったな。クーヤ……」

 

「ハクオロ……」

 

「ただいま。クーヤ」

 

「ッ! この……たわけもの……めが」

 

―――――全てが晴れたときには、もう決着はついていた。

 閃光が晴れ、大破したカンタムの破片の瓦礫の中から出てきたクーヤに、微笑みながら語りかけるハクオロ。

 その回りには、トゥスクルの者たち、そしてクオンが涙目で笑いながら、寄り添っていた。

 

「クオン……」

「なにかな、クーヤお母様」

「……幸せか?」

「ッ! もちろんかな! それで……これからも、その幸せを育んでいくの。ハクと一緒に」

「……そうか……」

 

 すると、クーヤは頷いて、今度はこっちをチラっと見てきた。

 

「おい……そこの貴様。クオンを不幸にしたら……今度こそ殺す!」

 

 本気の殺気を込めて睨んでくるクーヤ。

 すると、回りの女たちも一斉に笑い出した。

 

 

「あら、クーヤ。心配いりませんわ。その時は、この私もハクを殺しますもの」

 

「ええ。我らの娘を不幸にするのなら、たとえ相手が大神だとしても」

 

「うむ、某の刃の錆びにしてくれよう」

 

「みんなで、ハクちゃんやっちゃうから、クーヤン、その時は力を貸すよ♪」

 

「アルルゥもやる」

 

 

 ああ、そうだろうな。もし、自分が今後、クオンを本当に不幸にしてしまったら、その時ばかりはトゥスクルは自分に手を貸すどころか、総力を挙げて自分を抹殺するだろうな。

 それを分かっているからこそ、頷くしかない。

 ちょっと自信がないが、自分も頷き返した。

 

「ほうほう、これで一件落着ですな~、ハクとーちゃん」

「だな。よく頑張ったな、しんのすけ」

 

 ああ、本当にそうだな、しんのすけ。

 そう思って、自分がしんのすけの頭を撫でようとした、その時だった。

 今まで黙って静観していた、ぶりぶりざえもんが突如口を開いた。

 

 

「ああ…………本当に……これで終わりのようだな。そして……私の……願いと役目も……」

 

 

 その呟きと同時に、しんのすけの両親を出現させたゲートが、再び光り輝いた。

 しかし、それだけではない。

 

「ぬっ! お、おい、ブルタンタ佐衛門!」

「ど、どういことかな!」

「おい、ぶりぶりざえもん!」

「あっ、ど、どうしたんだぞー、ぶりぶりざえもーん!」

 

 目を疑った。突如、ぶりぶりざえもんの身に起こった異変。

まるで自分やヴライやオシュトルが、仮面の力を使い果たした時のように、ぶりぶりざえもんの肉体が崩れていく……

 

「長らくメンテナンスもされていなかったのに、スペックを超えた力を使いすぎた……ゲートを使った時空移動も……これで最後だ……」

 

 ぶりぶりざえもんは、何を言っている? 

 だが、これではまるで、ぶりぶりざえもんがこのまま……

 それに……

 

「やはり、お前は……コンピューターウイルスぶりぶりざえもんをモデルにした亜人ではなく………ぶりぶりざえもん本人ということか? しかし、ぶりぶりざえもんは、既に消滅したウイルスと聞いていたが……」

 

 クーヤを抱きかかえながら、神妙な顔で尋ねるハクオロ。その問いにぶりぶりざえもんは低い声で答えた。

 

 

「私ほどになると違う。確かに、私はコンピューターのデータ上消去された。しかしそれは、『消去した』という記録がコンピュータに残るだけであり、その存在を完全に消滅することはできないのだ。ただ、眠っていただけだ。大災厄の際に、何者かが私を持ち出して、肉体を与えて封印していたようだがな……」

 

「そ、そんなことが……」

 

「そこの娘に封印を解かれなければ、ずっと眠ったままだっただろう。まあ、それも遅すぎたがな……もう、この世界は、コンピューター等なんの意味もない世界に変わり、私の存在意義すらも無くなった」

 

 

 それは、さっきまでしんのすけとチンチンを見せ合っていたり、ケツを突き出していたぶりぶりざえもんとは思えぬほどの語り。

 そして語られる真実。

 

「私のことを誰も知るものが居ない世界と時代……せめてもう一度……友と並んで何かを見たかった……研究所の遺産を見て実行した」

 

 友? それって、まさか……

 

「だが、それもこれまでだ。私の肉体が滅べば、もう二度と復活することはできん。ゲートも起動することは出来ん。だから……しんのすけ……今のうちに、とっとと帰れ」

 

 そして、真実と同時にぶりぶりざえもんの口から語られたのは、非情とも言える今生の別れの宣告だった。

 




色々とやりたいこともありましたが、次が最終回になります。
かなりツッコミどころ満載なのもありますが、勘弁してつかあさい。

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