【完結】嵐を呼ぶうたわれるものとケツだけ星人(うたわれるもの 二人の白皇×クレヨンしんちゃん)   作:アニッキーブラッザー

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第11話 裏切りはよくないぞ

「ちい! いい度胸だ……アレはもう破壊する」

「待つのじゃ、ミカヅチ。いくらなんでも、こんな馬鹿らしいことにアクルカの力を使うのは許さぬのじゃ。ハク同様に、その仮面はそなたにとっても負担であろう!」

「しかし、聖上……今、奴に対抗できるとしたら……」

 

超カン・タムゥと呼ばれし、真っ赤に染まった機体。

操縦者のクーヤを動揺させれば何とかなると思ったが、まさか、自動操縦になるとはな。

 

「おおおおお、超カンタムだぞ! じゃあ、超超カンタムもあるのか! ほっほーい、すごいぞすごいぞー!」

 

自分と一緒にクーヤとサクヤに精神的な痛手を負わせたしんのすけは、カンタムの変形に興奮して喜んでいるが、正直、シャレにならんだろう。

 

「うおおおおおお、余の瞳を犯した罪、決して許しはせんぞォ! そして、サクヤの仇だ!」

「ま、待つかな、クーヤお母様! ハクはこんなんだけど、わたくしの夫だから、許してほしいの!」

「許せるかアアア! ぶるぶる体操だか何だか知らぬが、あんな恥知らずの男を夫にするなど、草葉の陰でハクオロが泣いておるぞ!」

「いや、だから、父様はここにいるかな!」

「クオンの母としても、そのような男とクオンを結婚させるものかァ!」

 

 正に、アベルカムルの完全殲滅モードのように手当たり次第に拳を地面に叩きつけていく、超カンタム。

 破壊力も速度も、大幅に上がっている。

 っていうか、もう、完全にアクルカを解放したかのような力だぞ?

 

「父様も言って欲しいかな。ハクは確かに、お下品なところもあるけど……それでもとっても素敵な人だからって!」

「う、うむ……まあ、私もクオンの婿は彼しかいないと思っていたのだが……しかし、オシュトルとして動いていた頃の彼からは想像もつかぬほどの……」

「うっ……た、確かに、あ、あの時のオシュトルになっていた頃のハクも、凛々しくてかっこよくて……でも、わ、わたくしは今のハクがいいかな! 今のハクこそ、ハクの本当の姿で、わたくしのハクなんだから!」

「……クオン、お、お前の選んだ男は、酒に多少酔ったとはいえ、あんなことをするものなのか? ……ぶるぶる体操など……」

 

 どうやら、ハクオロもクオンの男を見る目に少し心配になっているようだ。

 これもまた、最小限の犠牲によって出てしまったもの。

 これじゃあ、クーヤを怒らせただけでなく、自分がトゥスクルの人たちからも失望されただけという……

 

「許してなるものかァ! 散るがよい、変態め! 邪魔するものもまとめて蹴散らす!」

 

 拳を叩きつけ、そして足踏みして、地震のように巨大な衝撃を何度も起こす。

 近づいただけでもひとたまりもないぞ。

 

「ハク、今すぐ謝るかな! 誠実な態度で、わたくしを娶るということを今すぐクーヤお母様に言って、安心してもらうしかないかな!」

「いや、待て、クオン。もうこの人……話を聞く様子もないぞ? それにだ……そんな恥ずかしいことを言えるはずがないだろう」

「なっ! なんでかな! ぶるぶる体操はできるのに、どうしてそういうことを恥ずかしがるかな!」

 

 もう、戦うというよりも、被害が及ばぬように逃げ回るしかない。

 誰もが少しずつその場から後ずさりする中で、クオンが「言って!」と自分に訴えるが、正直、そんなことを堂々と宣言するのは恥ずかしい。

 

「おおお、ハクとーちゃん、ピンチだぞ? 超カンタムが出たら、超超超超超……えっと、とにかくカンタムはいっぱいパワーアップするぞ!」

「ぐっ、旧人類め、なんという無意味なことを! パワーアップばかりの戦いなど、何も生み出さないというのに」

「おお、ハクとーちゃん、カンタムも前同じことを言ってたぞ?」

「くそ……なんとか、あの自動操縦されているカンタムを止める手はないのか? ……パスワード! ……くっ、やはりダメか!」

 

 自分の力は相変わらず封印の力で戻らない。もはや、ブルブル体操も通用しないだろう。

 そんな自分が、あのカンタムをどうやって……

 

「ん? ……そ、そうか! その手があったのじゃ!」

 

 その時だった。

 

「あ、アンジュ様?」

「聖上、いかがされましたか?」

 

 その時、さっきまで自分とクーヤのことで正気を失っていた帝さんが、瞳を光らせた。

 何かを思いついたかのように。

 

「クーヤ殿と申したな! そなたの言うとおり、余もまた、クオンとハクの婚姻を認めておらぬのじゃ! 二人は、これっぽっちも、ち~~っともお似合いではないのじゃ!」

 

 いや、帝さん? あんた、急に何を言っているんだ?

 

「あ、アンジュ? 何を言っているのかな? わたくしとハクほどお似合いなのはありえないかな?」

「いーや、ぜんっぜんお似合いではないのじゃ! そう、ハクはやはり余のような選ばれし高貴なるものこそ相応しいのじゃ」

 

 

 急に、ワケのわからないことを話し出した帝さんに、誰もが顔をキョトンとさせた。

 

 

「そなた、異大陸のヤマトの帝か……随分と話が分かるではないか……そう、その仮面の男とクオンが夫婦になるなどおかしいのだ」

「そうであろうそうであろう! やはりここは、二人を引き剥がすことが互いにとっての利点となるのじゃ!」

 

 あっ……ああ、そういうこと……

 何となく、帝さんの考えが分かった。

 すると、自分と同様に、皆もその考えを理解したようだ。

 

 

「な、なに? ど、どういうことだ! クオンとハクがお似合いでないならどうだというのだ? ……クオンはトゥスクルに……で、結婚できなかったハクはヤマトに……ッ! そういうことか!」

 

「あ~、そういうことなん? せやな~、おにーさんがヤマトに居てくれたほうが、うちも都合ええからな~」

 

「そ、そうなんです! クオン様とハク様のご結婚は色々と問題があると思いますので、お二人のために、ここはハクさまをヤマトに連れ帰るのがいいと思います!」

 

「ぐっじょぶ」

 

「その案は大変素晴らしいものだと思います。では、主様、クオン様など忘れて私たちとヤマトへ」

 

 

 ノスリ、アトゥイ、ルルティエ、ウルゥル、サラァナは理解したようだ。

 すると、帝さんは彼女たちを従えて……

 

「クーヤ殿、我等も加勢するのじゃ! 共にこの二人を引き剥がすのじゃ!」

「はははははは、素晴らしい案だ! 余もそなたらを気に入ったぞ、ヤマトよ! 承知した、我らの力で、クオンとその仮面の男を引き剥がす!」

 

 ちょっと待てエ! 話が変な方向に行ってないか? そもそも、クーヤが怒っていたのは、ハクオロの所為なのに!

 

 

「い、いや、クーヤ? こ、この男は私も知っている。確かに愉快なものではあるが、彼が居たからこそ私もクオンもこうして「黙れハクオロッ! そなたも後で覚悟するがよい!」……はい」

 

「ハクオロさん! 何でそんな弱腰なんですか! クオンを未亡人にしてはならないと言ったのは、ハクオロさんなんですよ?」

 

「ええ、主様。少々ヤマトの方たちがお戯れていらっしゃいますが、クーヤと一緒にまとめてお仕置きして差し上げますわ」

 

「我等も大神を連れ去られるのは望みませんし、母としてもクオンを悲しませるわけにはいきません」

 

「ヤマトの方々、ハク殿は渡さぬ!」

 

「そだよ~、ハクちゃんとクーちゃんの結婚は邪魔させないから!」

 

「全員、ボロボロのオボロボロにする」

 

「やれやれ、なんだかワケわからなくなっちまいやしたね、大将」

 

「ですが、……ハク殿は絶対に逃がしません……」

 

 

 身構えるトゥスクル勢は完全交戦体制。

 いかん。いかんぞ。いかんですよ……

 結局、こんなことで、ヤマトとトゥスクルの戦争が?

 ヤクトワルトやキウルたちも、呆れて笑っているだけ。

 ネコネは……

 

「……あねさまとあにさまの結婚は大賛成なのです……でも、そうなるとお二人はずっとトゥスクルに……でも、結婚しなければ、あにさまだけはヤマトに……エンナカムイに……うううう~、ど、どうすればいいのです」

 

 いや、悩むな、ネコネ。

 

「ええい、ちょっ、待て待て待てえ! 今、シャレに、なら、ないから! 争うなあ! みんなでタタリ浄化の旅に行こうという話を昼間したではないか!」

「ハク! ちょ、クーヤお母様もみんなもやめるかな! ハクはわたくしの最愛の人なんだから! 本当にこれ以上は怒るかな!」

 

 カンタムのゲンコツ。カンタムの足踏みから逃げ回りながら叫ぶ。

 もはや、オシュトルだった頃の振る舞い方なんて忘れてしまった。

 

「しっかし、本当にまずいじゃない、旦那」

「そうですよ~、兄上。な、なんか、聖上もルルティエ様たちも、皆さん、こんな状況なのに物凄く恐い顔して、本気ですよ!」

「はあ、聖上……あとで、小生が尻を千回叩いて仕置きをしますが……ハク殿、いかがなされる?」

「アクルカの力を持ってしても、あの巨大な人型兵器を討つのは容易いものではないぞ」

「ええ、ですので、ハクさん。ここは、姉上たちと一緒に、もうヤマトに帰ったらどうですか♪」

「ダメです、オウギさん! ハク様は、クーちゃんのお婿さんなんですから、引き剥がしてはダメなんです」

 

 唯一自分の立場で、トゥスクルともヤマトの女性陣ともいがみ合わずに味方で居てくれる、ヤクトワルト、キウル、ムネチカ、ミカヅチ、オウギ、フミルィル。

 しかし、彼らの力を結集したとしても、トゥスクルとヤマト女性陣を掻い潜りながら、あのカンタムを討つ作戦が思い浮かばない。

 すると……

 

「お……おおおおおお、オラ、アクション仮面になっちゃったぞーっ!」

「「「「「…………えっ?」」」」」

 

 それはまた、ほんの少し目を離した途端だった。

 自分としんのすけの挟撃により気を失っているサクヤ。

 そのサクヤから外れて落ちていた青い仮面。

 その仮面をしんのすけは……

 

「ば、ばかやろうっ! なにやってんだ、しんのすけ!」

「わーはっはっはっはっは! わーっはっはっはっは! アクショーン仮面参上だぞーっ!」

 

 青い仮面を装着した途端、しんのすけの衣服が青い特殊な衣装へと変化した。

 仮面は兜のように頭を覆い、光を発しながら、しんのすけを変化させた。

 

「なにいっ! モロロ頭、貴様、仮面の力をッ!」

「おーし! ハクとーちゃんを、オラがおたすけするぞーっ! アクションビーム! ビビビビビビビビビビ!」

 

 しんのすけから放たれる光線。その光線が超カンタムを包み込む。

 その威力は、僅かながら、カンタムをうろたえさせている。

 

「おおおお、やるじゃないか、しんのすけ!」

 

 思わぬ力に場が揺れる。

 しかし、

 

「ええい、うざったい! ちょっと危ないからどっかに行っておれい、モロロ頭ッ!」

「おっ?」

「だがしかし、下がらず……そしてその仮面も外さぬというのなら……」

 

 その威力は、超カンタムという規格外の存在を相手にするには、到底力が足りるものではなかった。

 それどころか、クーヤを余計にイラつかせている。

 このままではまずい。

 そう思ったとき、

 

 

「モロロ頭、貴様はこいつに遊んでもらうがよい! 旧クンネカムン三大禁忌! 兵器のカン・タムゥ! 仮面のアクルカ・ション! そして、最後の一つは……召喚ッ!」

 

 

 召喚? クーヤの宣言に、思わずネコネとウルゥルたちを見た。

 召喚といえば、式鬼とかキリポンとか……

 

 

「いでよ! ブルタンタ佐衛門!」

 

 

 ボンっと煙が突如音を立てて発生する。

 

 

 

「大いなる父が残した遺産! 亜人種の研究の一つとして生み出されし、伝説の怪物として封印されしものよ!」

 

 

 カンタムに続き、またとんでもないものを出現させようってのか? 

 ブルタンタ? 伝説の怪物?

 一体……

 

 

「ふぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ、もう少し……ん?」

 

 

「「「「「……………………………………………………えっ?」」」」」

 

 

 

 煙が晴れて中から出てきた……いや、クーヤの力によって召喚された伝説の怪物。

 それは確かに、ブルタンタの顔をしている。

 体の大きさは、しんのすけぐらいか?

 まあ、それはそれとして……なんだその体勢は?

 

 

「………………………………………………………………」

 

「「「「「……………………………………………………えっ?」」」」」

 

 

 目を合わせるも、場が無言になる。クーヤも絶句している様子。

 なぜなら、召喚されたブルタンタは、厠で用を足すために中腰で踏ん張っている体勢だったからだ。

 その証拠に、穿いている下穿きをズリ降ろし、むき出しになったケツがこっちを向いて……

 

――――ぷ~

 

 ……屁までこいた。

 

 

「………………………………………………………………」

 

「「「「「……………………………………………………」」」」」

 

「………………………………………………………………」

 

「「「「「……………………………………………………」」」」」

 

「………………………………………………………………」

 

「「「「「……………………………………………………」」」」」

 

「………………………………………………………………」

 

「「「「「……………………………………………………」」」」」

 

「………………………………………………………………」

 

「「「「「……………………………………………………」」」」」

 

 

 互いに物凄く気まずい雰囲気が続いたが、やがてブルタンタが頬を赤らめて……

 

 

「いやん」

 

「「「「どわああああああああああああああっ!」」」

 

 

 自分たちは、カンタムも含めて全員ずっこけてしまった。

 そして同時に……

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ! ぶりぶりざえもんだぞーっ!」

 

 しんのすけが、またしても目を輝かせて叫んだ。

 その言葉に、自分は、思わず顔を上げた。

 そして、ハクオロもだ。

 

「ぶ、ぶりぶりざえもんだとっ! そ、それって確か、……何とか博士……なんだけっ? コンピューター社会がまだまだ確立されていないような時代に……あわや世界を支配しかけたウイルスを開発した……」

「思い出した! あの、大袋博士が開発させたという、幻のコンピュータウイルス! ぶりぶりざえもん!」

 

 カンタム同様に、それはまたあまりにも意外すぎる単語で、あまりにも特殊すぎる名前で……

 

「「で、なんで、しんのすけ(くん)が知っているんだ?」」

 

 謎が深まるばかりだった。

 

 


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