それでは今回もよろしくお願いします。
「じゃあ、今日は付き合ってくれてありがとね~♪」
「うん、私も楽しかったよ!」
日も傾き始めた頃、俺と小町は帰る時間になった。明日は雪ノ下と共に、由比ヶ浜の誕生日プレゼントを買いに行かなければならないので、遅刻するわけにはいかない。罵倒の種は減らしておくべきだ。
小町と高坂が連絡先を交換しているのを見ながら、今日の不思議な出来事を考える。今思えば、俺のテンションがおかしかったのは、新しい妹ができた気分になったからかもしれない。そんな大して意味のない事を考え、駅の人ごみが奏でる雑多なBGMを聞きながら、ポケットに手を突っ込んでいた。
「はぁ、ったく。このゴミぃちゃんは…………」
小町が何事か呟くが、高坂の耳にも届かなかったらしく、首を傾げていた。
手早く連絡先を交換すると、あとは改札をくぐるだけだ。
「じゃあ、帰ったら連絡するからね!」
「うん、二人共、帰り気をつけて!」
二人共と言われたので、軽く頭を下げる。
「そっちも気をつけて帰れよ」
こちらの言葉が意外だったのか、高坂が一瞬だけ目を見開いた。
「…………ありがとうございます」
遠慮がちな言い方に、もしかして言わなけりゃよかったのだろうか、という不安を抱きながらも、その微笑みに半分安心しながら、小町を促す。
「行こーぜ。小町」
「はいはい」
二人はまた別れの挨拶を交わし、こうして不思議な出会いは終わりを告げた。
最後に軽く手を上げた高坂に、こちらも軽く手を上げて応え、それきり振り返る事はなかった。
ちなみに、家に帰ってから小町に説教された。
「どうしたの?雪穂」
クラスメイトの絢瀬亜里沙が話しかけてくる。今日も姉の絵里さんより薄めの金色の髪が綺麗だ。白い肌も陶器のように透き通っている。
「ぼーっとしてるよ?」
机の前にしゃがんで、私の顔を覗き込んでくる。
「亜里沙…………」
「?」
「年上と年下と同い年どれがタイプ?」
「え、ええ!?」
「ど、どうしたの?」
突然の親友の大声にこっちが驚いてしまう。
「ハ、ハラショー…………雪穂がそんな事を聞いてくるなんて…………」
「いや、思春期の女の子だからね、私」
「そ、そうだよね。でも、どうしたの?」
「ただ気になるだけだよ」
何が気になるのだろうか。自分でもいまいちわからない。
「う~ん、年上…………かな」
聞き耳を立てていたらしい男子達がガクッと項垂れる。ご愁傷様。
「そ、そういう雪穂はどうなの?」
亜里沙は顔を赤くしながら聞いてくる。この初々しさがたまらなく可愛い。あ、え、わ、私?
「…………年上」
窓の外に目を向けると、うねるような雲が青空に浮かんでいて、それは誰かさんの髪型に似ていた。
読んでくれた方々、ありがとうございます!