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それでは今回もよろしくお願いします。
無事に買い物を終え、家へ帰った俺達はさっそく料理を始めていた。手を洗い、材料を並べ、雪穂と頷き合う。
いよいよ第二関門の始まりだ。
「お兄ちゃん、頑張って!」
亜里沙のレインボーの破壊力……そもそもレインボーを知らない小町は呑気に傍観を決め込んでいる。……こいつの分だけ亜里沙に作ってもらおうか。
由比ヶ浜にはズバッと言えたのだが、ここまで亜里沙ちゃん、マジ天使!な可愛さがあると、俺の精神をもってしても事実を告げるのに躊躇してしまう。
いや、今はそんな事より早急に俺と雪穂で役割分担を済ませてしまおう。今日は無難にやり過ごす方向で。
「よし、じゃあ……」
「じゃあ私が野菜を切りま~す!」
「お、俺が切る!」
さっそく来たが、ここはガード。
その拾ってきた子猫が家で飼えないと言われた時のような表情に胸が痛むが仕方がない。後でお菓子を買ってあげるから笑って許して!
「じゃあ、卵を……」
「あ、あたしやるから!亜里沙は小町ちゃんとゲームでもやってて!」
次は雪穂がガードに入った。
表情から察するに、心の中で謝りまくっていそうだ。
亜里沙が今度は落ち込むのではなく、怪訝そうな目を向けてくる。
「……どうしたの、二人共?」
やばいな。少し露骨だっただろうか。やはりレインボーの正直な感想を言うしかないのだろうか。亜里沙の視線に緊張しながら、雪穂を横目で窺う。
僅かな逡巡の後、意を決した彼女は予想外の事を言い放った。
「私……今、八幡さんと二人で料理が作りたいの!」
「は?」
「え?」
驚く俺と、さっきまで話に入ってなかった小町が反応して、突然の停電のような静寂が訪れる。
ごまかす為に言っているのは間違いないが、さすがにストレート過ぎて、顔が熱くなる。
雪穂はほんのりと赤く頬を染め、一瞬だけこちらに目をやり、再び亜里沙に向き直った。
それに対して亜里沙は…………微笑んだ。
「……二人がそんなに仲良くなってたなんて。ふふっ」
「あ、亜里沙?」
亜里沙の予想外のリアクションに雪穂はポカンとしている。このやり取りには、俺では知り得ない二人だけの秘密のやり取りも為されている気がした。
「しょうがないなぁ~。じゃあ、今日は譲ってあげる」
「う、うん……ありがとう」
何とか第二関門をクリアしたが、亜里沙の悪戯っぽい笑顔がやけに気になった。
作業は順調に進み、俺はピーラーの便利さに感謝しながら、野菜の皮を剥き終えた。ひとまずボウルに入れておこうと手を伸ばすと……
「「…………」」
同じボウルを取ろうとした雪穂の手と重なっていた。お互いにその手を確かめ、そして目が合う。
「わ、悪い……」
「いえ、こちらこそ!」
お互いにぱっと手を放した。
漫画とかだとあまりにもベタな展開だが、やはり自分の身に起こると対応に困る。触れたのは数秒なのに、やけに柔らかい感触が手に残っていた。
「じゃあ、雪穂がそっち使ってくれ……」
「あ、はい。ありがとうございます」
そこにある気まずさか気恥ずかしさからか、この後二人して作り終えるまで、一言も話さなかった。
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