捻くれた少年としっかり者の少女   作:ローリング・ビートル

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 お待たせしました!

 それでは今回もよろしくお願いします!


youthful days ♯4

 

 休日という事もあり、スーパーマーケットは沢山の客で賑わっていた。はしゃぐ子供を叱りながらテキパキと食品を選ぶ家族連れ。のんびりと店内を見て回る老夫婦。弁当を見ているスーツ姿の女性。様々な目的を持った人々で溢れていた。

「ん~、何作ろっか?」

「オムライスにしましょうか?」

「わかった!ロシア風レインボーオムライスだね!」

「「…………」」

 困り顔の雪穂とアイコンタクトを交わす。

(おい、またレインボーなんて言ってるぞ)

(しかもアレ、ロシア風なんですね……)

(いや、違う。絶対にロシアは関係ない)

(ですよね……)

(アレは絶対に回避しよう)

(はい。私も全力を尽くします)

(俺はカゴを持つ)

(私は食材を選びます)

 おそらく、伝わった……か?

 雪穂と頷き合い、それぞれのポジションにつく。亜里沙は……何故かスパイスのコーナーから出てきた。おい、いつの間に……何を持ってるのかな?それがこの前のレインボーの元ですか?だとしたら、さり気なく棚に戻しておかねばなるまい。

 と、とりあえずミッションスタート。

「じゃあ、玉ねぎを」

 雪穂が玉ねぎをカゴに入れる。

「じゃあ、らっきょうを」

 亜里沙がらっきょうをカゴに入れる。

「…………」

 俺はらっきょうをこっそり棚に戻す。この子はどうやって食材を選んでいるのかしら。

 これを繰り返さなきゃならんのか。いや、いっそはっきり事実を突きつけて……

「なあ、亜里沙……お前の料理な……」

「はい?どうかしましたか?あ、もしかしてこの前のピロシキ、お口に合わなかったですか?」

「…………すごく楽しみだ」

「ありがとうございます!私、頑張りますね!」

「ああ」

「…………ふん。デレデレしすぎ」

「……っ」

 足に激痛が走る。

 見てみると、雪穂に足を踏まれていた。

「ゆ、雪穂……?」

 振り返ると、すぐそこに雪穂の顔があった。……すっごいジト目で睨まれている。

 そして、ひそひそ話のように小声で小さな怒りを俺の耳に吹き込んでくる。

「目的忘れたんですか?またレインボーされたいんですか?」

「……わ、悪い。気をつける」

 その後はこっそりスパイスを棚に戻したり、何故か入っていたかき氷シロップを棚に戻したり、隠密行動を繰り返しながらレインボー回避の為に全力を尽くした。

 

「よ~し、お腹も空いたし早く帰ろう!」

「あ、ああ……」

「あはは……そうだね」

 第一関門はクリアした。

 あとは調理さえしっかりすればいい。

 亜里沙が由比ヶ浜のような木炭製造機じゃない事を切に願いながら、再び夏の陽射しが照りつける道を引き返した。

 

 





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