捻くれた少年としっかり者の少女   作:ローリング・ビートル

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youthful days ♯3

「…………あ、亜里しゃ」

「はい♪」

「……………………雪穂」

「は、はい」

「お兄ちゃん!小町は?小町は?」

「ああ、小町」

「うえー、なんかテキトー」

 三者三様のリアクションを見届けながら、溜息を吐く。くっ、こんなにあっさりファーストネームで呼ぶ事になるとは!でも誘惑されたんだから仕方ないよね。だって男の子なんだもん!

「じゃあ、私も今から八幡さんって呼びますね」

「…………」

 そう呼んでいいのは戸塚だけだ、と丁重にことわろうとしたが、まだ腕がホールドされているので逆らえない。約束が違うじゃないかよう…………。

「八幡さん!」

「…………」

「ぎゅうううううっ♪」

「は、ひゃいっ!」

「…………デレデレしすぎだよ、もう」

 高坂がぼそっと何か呟いたが、今はそれどころではない。このままでは理性が持って行かれる…………とまではいかないが、あまり精神的によろしくない。

「な、なあ、そろそろいいか?」

「しょうがないなあ~」

 本気の懇願が伝わったのか、ようやく離れてくれる。

 …………いざ離れていくとやっぱり寂しいような気がする。何このツンデレ。そうか、俺はヒロインだったのか。 

 おかしな事になっているが、奉仕部に入ってから振り回されるのには慣れている。材木座の小説読まされるよりは百倍はマシ、いや比べるのも失礼か。中学時代の俺なら好きになっていたところだ。

「ま、まあ、ファーストネームで呼び合うくらい、なんでもないか」

「あはは…………比企谷さん。頑張ってください」

「雪穂、呼び方違う!」

「え?」

「八幡さん、でしょ?」

「え?わ、私も?」

「当たり前だよ!ほら早く」

 キョトンとしている雪穂に亜里沙は異論を許さない。

 高坂は

「…………八幡さん」

「お、おう」

「…………」

「…………」

 沈黙がふわふわと漂い、リビングが何とも言えない気恥ずかしい空気に支配される。どこかへ追いやろうとして無理矢理口を開こうとしても、言葉が出てこない。

「うん、二人共いいよ♪でも、少し見つめ合いすぎ!」

 絢瀬…………亜里沙の言葉に反応して、視線を何も映っていないテレビに向け、気持ちを落ち着ける。えーと、リモコンリモコン。左手でソファーの上にあるものを掴んだ。

 そして手に取った物をテレビに向けるが反応しない。あれ?…………ってこれは…………

「「「「…………」」」」

 俺が握っていた物はリモコンではなく、高坂の右手だった。高坂は頬を紅く染め、繋がれた手を見ている。

「あ、あの…………」

「わ、悪い!」

「お兄ちゃん、何やってんの…………」

「さすがにこれはダメ!」

 顔が熱くなるのを意識しながら、俺は台所へ行き、MAXコーヒーを1本、一気飲みをして気分を落ち着けた。  

 

「昼飯どうする?」

「皆で作るっていうのはどう!?」

 小町が唐突な提案をしてきた。

「あ、私得意だよ!」

「私も…………できなくはないですね」

 まじか。俺も専業主夫志望として見習わなくてはいけない。

「材料あんのか?」

「あー、冷蔵庫何もないから買い物行くしかないね」

「じゃあ、行くか」

「私はお留守番してるから3人で行ってきて♪」

「お前…………楽しようとしてないか?」

「だって亜里沙ちゃんや雪穂ちゃんにお留守番させるわけに行かないし、男子がいた方が荷物持ってあげられるでしょ?」

「まあ確かに」

 小町にしては正論だ。

「じゃ、行くか」

 こうして女子二人を連れて、食材集めをしに行く事になった。こう言えばなんか冒険っぽい。大して意味はないが…………どうやらさっきのをまだ引きずっているみたいだ。

 

 さっきから亜里沙ってば一体何考えてるの?これじゃ、立場が逆じゃん…………。

 私は無垢な笑顔の親友の気持ちが全くわからなくなっていた。




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