捻くれた少年としっかり者の少女   作:ローリング・ビートル

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Any

 

「カマクラちゃんって普段どんな感じなんですか?」

「…………俺にはあまり懐いていない」

「へえ~、まあ猫ってそういう所も可愛いですよね」

「ま、そうだな。餌が欲しくて寄ってくる時とかな」

「いいなあ…………猫」

 さっきからこんな感じで私と比企谷さんばかりが話している。亜里沙に話は何度もふっているのだが、「そうだね!」とか「う、うん!」とかばかりで、会話らしい会話に発展しない。これじゃあ、どっちがサポートかわからない。てゆーか、比企谷さんも亜里沙に少しぐらい声かければいいのに。こんな可愛い子から好きになってもらえるなんて、なかなか無いことだよ?まあ、気づいてないんだろうけど…………。

「あ、あの!」

 何の前触れもなく亜里沙が大きな声を出すから、体がビクッと跳ねそうになる。

「ど、どうした?」

 比企谷さんも驚いたようだ。その表情と仕草が微笑ましい。

「今度の土曜日、雪穂と一緒にカマクラちゃんの家に遊びに行っていいですか!?」

 よく言った、と褒めたい所だけどなんか惜しい!てゆーか私が一緒に行く事になってる!

「あ、ああ。別にいいけど」

「雪穂、よかったね!」

「え?う、うん!」

 だから、これじゃあどっちがサポート役かわからないってば!

 

 和気藹々(?)とした会話をしている内に、駅へと到着した。雲の合間の空を見て、少し日がながくなったんだなぁと実感する。

「それじゃあ、今度連絡しますね!」

「おう、お前らも気をつけて帰れよ」

「比企谷さん。今日は本当にありがとうございました」

「まあ、そんな大した事はしてないけどな」

「今度は接客もちゃんとしてくださいね」

「次があるのかよ…………」

「ふふっ、どうでしょう?」

「むう…………」

 亜里沙が頬を膨らませたのを見てはっとなる。今のは私のミスだ。

「比企谷さん、亜里沙の割烹着姿もよかったですよね!看板娘みたいで!」

「え、え?」

 私の言葉に亜里沙が驚く。少し強引だったかもしれない。

「…………まあ、確かに…………いいと思う」

 それだけ言い残して、比企谷さんは足早に改札を通り抜けていった。照れてるのかな?

「ゆ、雪穂!聞いた!?今、ものすごく可愛いって!」

「落ち着こうね、亜里沙。そこまでは言ってないから」

 親友の頭を撫でながら落ち着ける。

 気持ち良さそうに目を細めるのを見て、自分もほっこりした気分になった。

 …………仮に、私が同じような事を言われたら、私はどんな気持ちになったんだろう?

 もう比企谷さんの背中は見えなかった。

 

 東京から千葉へと流れていく景色を窓越しに眺めながら、上手く働かない思考回路に戸惑っていた。

 まだ口元に高坂の吐息の熱が残っている気がして落ち着かない。それに間近であんな寝顔を見せられたら、どうやっても深く記憶に刻まれてしまう。

「…………」

 無理やり意識を外の風景に持っていった。

 このまま考えていたらやばい事になりそうだった。

 何がやばいのかは自分でもわからない。






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