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日曜日。
本来なら明日からのだるい学校生活に向け、束の間の休息を堪能する日なのだが、とある事情で朝から秋葉原に来ていた。
『ごめ~ん。小町、どうしても外せない用事があってさ。お兄ちゃん取ってきてくんない?お願い♪』
本当に腹立つな。何であんなに可愛いんだよ。俺の妹があんなに可愛いわけ…………あるか。
溜息をつきながら穂むらの扉を開ける。
「いらっしゃいませ~!あ、お兄さん」
「おう」
高坂が白い割烹着のようなものを着て、商品整理をしている。こういう普段のイメージとギャップのある恰好っていいよね!まあ、そこまで普段の高坂を知らないんだけど。
「ちょっと待ってくださいね」
高坂がこちらに背を向けると、最後の仕上げか、一気に大きめの箱をいくつか持ち上げる。
「…………大丈夫か?」
「平気ですよ。このぐらい」
しかし、案の定バランスを崩す。
「わわっ!」
「っと…………」
すんでのところでに荷物を支える。そこそこの反射神経に感謝感激。そのまま一人で抱える。
「すいません…………」
「…………どこに運ぶんだ?」
「あ、こっちです」
高坂に案内され、お客様侵入禁止のエリアへと入っていく。
「あら、比企谷君?」
「…………どーも」
高坂母は、俺が入ってきた事にキョトンとしていたが、箱を抱えているのを見て、理由を察したようだ。
「ごめんねぇ。お客様に手伝わせちゃって」
そう言いながらニヤニヤ意味ありげな視線を送るのはやめてもらえませんかねぇ。
とりあえず華麗にスルーして、高坂の指示通りににもつを置く。
「ありがとうございます!助かりました!」
「ああ…………」
「やっぱり男手がある方がこういう時に楽よね~。あなたもそう思うでしょ?」
「…………ありがとう」
「い、いえ」
いかにもな職人オーラをバシバシ放つ高坂父の威厳ある低い声に身構えてしまう。怒鳴られたら震え上がってしまいそうだ。
「じゃあ、俺はこれで…………」
「あ、これ…………」
高坂から小町の学生証を受け取る。ミッションコンプリート!
「ちょっといい?」
高坂母にがしっと肩を掴まれる。
「お母さん?」
「な、何でしょうか?」
嫌な予感がする。そして大抵の場合、その予感は的中する。
「比企谷君、今日は暇?」
「いやー、どうでしょう」
あると言っておけばいいものを、何故か都合のいい嘘がつけない。正直者が損をする世の中です。
「よかったら力仕事を手伝ってほしいんだけど…………どう?」
「…………」
いつの間にか、高坂父も帽子を取り、頭を下げている。
「外も雨だし…………」
窓に目を向けると、確かに雨が降り出していた。いつまでも降りそうな6月の雨。まあ、こんな日もある。
「わかりました…………」
諦めたような俺の返事に、隣で高坂が小さく微笑んでいた。
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