捻くれた少年としっかり者の少女   作:ローリング・ビートル

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未来

「まさか雪穂がねぇ~」

「うんうん、雪穂がだよ!」

「な、何よ!どうしたの?」

 お母さんとお姉ちゃんが何やら勝手に納得している。

「まさか穂乃果より先に雪穂に彼氏ができるとはね~」

「雪穂…………成長したね」

 うわぁー、腹立つ。特にお姉ちゃん。あとでパンを食べてやる。

「彼氏とかじゃないよ。ただの知り合いっていうか」

「てことは、男の子なのね?」

「ふふ~ん」

 やばっ。誘導尋問に引っかかった。

「いや、何て言うか、偶然出会っただけだし…………」

「あ、もしかして、この前の男の子?」

「うっ」

「えー!お母さん見たの!?どんな人なの!?」

 厨房の方でガタンと音がしたけど気のせいだろう。

「そうねえ。目つきは悪かったけど、顔自体はそこそこだったわね。身長は普通くらいかしら。猫背が少しマイナスだけど…………将来性に期待はできるかも」

「雪穂!写真見せて!」

「ないよ!あったとしても見せないし!てゆーか出てって!」

 何とか二人を追い出し、ベッドに寝転がる。

「ふう、疲れた」

 お姉ちゃんも自分の恋愛に興味持てばいいのに。今女子高だけど。

 …………だめだ。ぼーっとしてたら色々と考えてしまいそう。読書でもするかな。

 読みかけの文庫本のページを開く。このまま眠ってしまったら、また同じような夢を見てしまいそうだし。

 

 土曜日。割と早めに家を出たので、昼前に穂むらに着いてしまう。まあ用事が早く済むのはいい事だ。親父の金で、小町と再び東京観光でもすればいい。ざまぁ。

 午後の予定に思いを馳せながら、穂むらの中へ入る。

「「いらっしゃいませ~♪」」

 高坂の母親と、姉らしき女の子に挨拶される。愛想が良すぎて、思わず一歩引きそうになってしまった。

「あなたが比企谷君?」

 姉らしき方が素早い移動で俺の真ん前にやってくる。近い近い近いいい匂い近い!

「え、ええ、まあ…………」

「むぅ…………お母さんの言ったまんまだね」

 お母さんの言ったまんまとはどういう事かわからないが、何やら俺の話がされていたらしい。

 …………しかしこの姉妹、あまり似てない。

「もしかして、雪穂ちゃんのお姉さんですか?」

 小町がひょこっと俺の背後から出てくる。

「うん、高坂穂乃果です!小町ちゃんだよね?よろしく!」

「こちらこそ~」

「こっちが母の高坂秋穂です!」

「こら、穂乃果。いきなりお客様に対して失礼でしょ?ねえ、比企谷君」

 言いながらも、どこか楽しそうだ。

 高坂は用事なのだろうか、と思ったが、聞きはしなかった。本能が、聞くのはやめたほうがいい、と告げている。

「じゃあ、小町。俺は適当に選んどくから」

「うん、任せた!」

 そう言った小町は、もう高坂姉と打ち解けていた。

 任された俺は、この前と同じやつと、直感で良さそうなやつを選ぶ。

「ありがとうございます!」

 高坂母の声と共に商品を受け取り、小町を促す。

「じゃ、行くか」

「比企谷君!」

 小町より先に高坂姉が反応した。

「小町ちゃんとまだ話したいんだけど、比企谷君も上がってお茶飲んでかない?」

「ね?」

「…………わかった」

 小町に手を引かれながら言われたので、選択肢などないに等しかった。

 





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