君の名は。〜After Story is wish〜 作:恋紫心実
雨上がりの日、私は、彼に会えた。
8年の時を経て、彼に会えた。
雨上がりの日、俺は、彼女に会えた。
5年の時を経て、彼女に会えた。
「きみの、名前は……?」
私たちは、お互いの名前を教えあった。
俺たちは、お互いに名前を教えあった。
「三葉。宮水三葉です」
「瀧。立花瀧です」
「瀧くん……」
「三葉……」
私は、その名前を、聞いて懐かしさから、
名前で呼んでいた。
忘れていたはずの、あの日のことを、
思い出してきた。
俺は、その名前を、聞いて懐かしさから、
名前で呼んでいた。
忘れていたはずの、あの日のことを、
思い出した。
あの日、糸守町に彗星の片割れが隕石となって、
落ちた日のことを。
あの日、御神体のある山の頂上で、カタワレ時に、
彼、瀧くんと会ったこと。会って、町のみんなを
救うためにすることを聞いて、町長を、お父さんを、
説得したこと。
あの日、糸守町に彗星の片割れが隕石となって、
落ちたあの日のことを。
あの日、御神体のある山の頂上で、カタワレ時に、
彼女、三葉と会ったことを。会って、町のみんなを
救うためにすることを話して、想いを書き伝えたことを。
「えっと……」
「あ……」
「あ、瀧くんは、これから会社?」
「あ、そうだけど、でも、時間が……。
それを言うなら、三葉だって」
「あ、そうやね。……よし、今日は休む!」
「な、そんな簡単に……」
「平気やよ。適当に口実をつけて休めば、
不審に思っても、追及されることはないんよ」
「……」
「瀧くんは、どうするん?」
「あ、えっと、俺は……」
「じゃあ、取り敢えず、何かしらの口実をつけて、
上司の人に連絡すること」
「あ、あぁ、うん」
その後、一旦離れて、お互いの上司に
電話して休む旨を伝えた。
こんな場所で立ち話をするのも、
どうかということから、二人にとっての思い出の
あのカフェに行く事にした。
「うーん、なんか久しぶりって感じがする」
「そっか。入れ替わってた頃は司らと
来てたんだっけ」
「そうそう、あの時は楽しかったな」
「そう言えば、あの時、司との関係を
疑われたりしたんだぞ。それに、バイトのシフトを
たくさん入れなくちゃならなくなったんだからな」
「それを言うなら、瀧くんだって、私の体で、
散々色々なことしたくせに」
「色々ってなんだよ」
「色々は、色々やよ。スカート履いとるのに、
男子の視線を気にしなかったり、
告白されたりしとったし!」
「な、三葉こそ、俺の体で好き勝手しただろうが!」
「なにをー! 私の体で好き勝手してた瀧くんに言われとうない! それに、何度もおっぱい揉んだくせに!」
「み、三葉。こ、声がでかい/////」
「あ……/////」
二人して、ゆでダコ状態である。
幸いにも開店したばかりか、二人の他には、
数名の客がいるくらいだった。
二人を温かく微笑ましく見つめているのだった。