魔法少女なんてガラじゃない!   作:行雲流水

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第九話:痛みを抱えて【前】

 

 

静まり返った、閑静な住宅街の一角。

そんな場所に一つだけ、まるで取り残された様に廃工場が静かに佇んでいる。

けれども、明らかな違い。違和感。

そう、結界が張られているのだ。

上総の使い魔より先に現場に辿り着いた私は、この堅牢な結界に梃子摺っていた。

 

「ビクともしない…!」

 

発動された術者の許可が有れば簡単に入れるが、それは叶わないというものだ。

この結界は、中に居る者以外の侵入を固く拒んでいる。

攻撃魔法を発動させて打ち込んでみたが、傷一つ付かない。

頑丈な結界に、舌打ちしそうになるのを抑えて、次の一手を考える。

 

「クロノ! どうにかならないの?」

 

『済まないフェイト。こちらでも解呪を試みているが…時間が掛かる!!』

 

アースラでも忙しなく皆が頑張っている。

けれど無情にもすぎていく時間に、焦りが募る。

 

「お願い! 急いで!!」

 

『嗚呼、全力を挙げてソレを破ってみせる!』

 

「うん!」

 

そうして待つ事しか出来なくなった私は、忌々しい結界を見上げる。

この中に、きっと上総が居る。

 

――どうか、無事で。

 

「退け、金髪」

 

静かな声色で、声を掛けられた。

振り向いた先には、金髪碧眼の女性の姿。

黒一色の服が彼女の金色の髪を更に引き立てていた。

けれど、先ほどの言葉には腑に落ちない。

貴方も私と同じ金髪だろう、と言いたかったのだが心に留める。

 

「っ! この間より強固なモノにしているか…」

 

結界に触れた女性が怒りを露わにして吐き捨てた。

そうして、思案し始めた彼女に疑問を投げかける。

 

「あの、君はクロ?」

 

「嗚呼そうだ。…これも駄目か」

 

彼女を上総の使い魔だと勝手に推測したのは私達だし、確信が欲しかった。

そうして返ってきた答えは肯定だったし、嘘を吐いているとは思えなかった。

その間にもクロは、この頑丈な結界を破る為に何かを試している。

 

「おい、金髪」

 

「フェイトだよ。フェイト・T・ハラオウン」

 

さっきから金髪と言われているが、この場に私しかいないのだから私の事だろう。

非常時だから仕方ないとはいえ、私には名前が有る。

ちゃんと名前を読んでほしくて、クロに私の名を告げた。

 

「恐らく私の魔力は、この結界をこじ開ければほぼ枯渇する」

 

聞いてくれているのだろうか、と不安に囚われつつ彼女の言葉に耳を傾ける。

彼女の言葉に驚愕するが、この結界を破ってくれると言うのなら、私の力すべてを結界の中で使えるという事だ。

 

「わかった。私が前に立つよ」

 

「話が早くて助かる。済まないな、手を煩わせて」

 

「ううん。友達を助けるのは当然だよ!」

 

そうか、と短く呟いてクロが結界に触れる。

彼女の足元には、白に輝く魔力光。

聞き取れない言葉を呟いて、閉じていた目を開く。

 

「行くぞ、金髪」

 

人が一人通れる隙間を開けて、加速魔法で中へと向かうクロ。

その速さに、驚いた。

 

「ま、待ってください! それと私はフェイトです!!」

 

名前の呼び方を変えてくれないクロに抗議する。

それでも私たち二人は、最速で結界の中へと侵入する。

さほど進みもしないうちに、廃工場の中心へと辿り着いた。

暗闇の中に浮かぶ二人の影。

 

「動かないで下さい。時空管理局です!」

 

管理世界に住んでいる人なら、一瞬で理解する言葉を告げる。

上総の姿が見当たらないと、さらに注視した瞬間だった。

 

――どうして、こんな事に!

 

倒れ込んでいる上総を視認した瞬間、私は激昂した。

クロは上総の傍に駆け寄り、怪我の状態を把握している。

ならば、私のやる事は目の前の二人の対処だ。

 

攻撃魔法の発動準備を密やかに済ませ、二人に向かう。

 

「…彼女に何をした!」

 

「おやおや。こんな辺境の星にまでやって来たのかね?

いやはや、ご苦労。だが、君たち管理局に捕まる訳にはいかないのでね」

 

クロに瓜二つの女性が褐色の髪をオールバックにした痩身の男性を守る様に前に立つ。

能面の様に眉一つ動かさない女性に、何か薄ら寒い物を覚えるが、この際は無視する。

私の言葉を無視して、一方的に己の事のみ喋る男にいらだちを募らせる。

こういう手合いには何度か対面しているが、大抵碌な事にはならないのだから。

 

「では、また会おう! さらばだ!」

 

言うや否や、黒い霧に包まれて男と女性が消えた。

それと同時に結界も消えて、緊張感に包まれていた雰囲気も霧散する。

一つ息を吐いて、気持ちを落ち着ける。

 

何か大事な事を、忘れているような…

 

「っ、上総!」

 

「慌てるな。命に別状は無い」

 

傷ついた上総をクロが抱き上げて、そう言った。

近寄って上総の頬に触れようとした瞬間、クロに手を払われた。

 

「金髪。貴様を利用した事は謝罪しよう。だが私も、管理局に関わりたくはないのでな」

 

「でも、上総のその怪我はどうするつもりなんですか?」

 

上総の両腕の傷は酷い。

右手は爪が全て剥がれているし、左腕は目を背けたくなるほどの火傷を負っている。

上総を抱えたクロの服には、上総の血が滲み始めていた。

 

「傷は残るかもしれんが、どうにかするさ」

 

そう言って、二歩程下がりこの場を去ろうとする。

 

『済まないが、事情聴取を行いたい。大人しく来てくれるかい?』

 

「クロノ!」

 

突然割り込んできた通信。

まるで、犯人の様な扱をするクロノに抗議する。

通信で聞こえてきたクロノの声に少し戸惑う表情をクロが見せるが、すぐ平静を取り戻した。

悪い人じゃない、きっと。けれど心の何処かでこの事件の真意を握っていると確信している。

 

「断れば、どうなる?」

 

『外に控えさせている武装隊に、無理矢理にでも連れて来てもらうよ。

君にそっくりな逃げた犯人についても聞きたい事だしね』

 

どうやらクロノの方が上手だったようだ。

外にはもうアースラから派遣された武装隊が、この廃工場を取り囲んでいるのだろう。

 

「八方手づまり、か」

 

『そうだね。僕たちから逃げれば罪状が増えるだけだ。

管理世界出身ではない彼女には記憶を消して忘れてもらう事が出来るだろうが、

魔法を解く事ができる君には、そうはいかないからね』

 

深い溜息を吐いて、やれやれと首を大きく左右に振るクロ。

 

「クロ、次元航行船が待機してるから逃げても監視されてるよ。

アースラのスタッフは皆優秀だから…」

 

どうにか穏便に上総とクロをアースラへ迎えたい。

何よりも、上総の怪我を治療しないと。現地の病院に行けば事情を聴かれる事になるだろうし、

魔法について話す訳にはいかない。

そして何より、女の子に傷が有るなんて、あってはならない事だから。

 

「仕方ない、か。貴様らからすれば私も十分に怪しいのだろう。ただ、一つ条件だ。コイツの手当てを頼む」

 

『嗚呼、確約するよ。万全を尽くそう』

 

クロノが通信を切ったと同時、転送座標が送られてくる。

 

「行こう、クロ。きっと悪い事には成らないから」

 

「…」

 

黙ったままのクロ。

もしかすると、クロは管理局を良く思っていないのだろうか。

執務官と言う職業柄、敵意や悪意を向けられることは沢山ある。

だけれど、友人の使い魔から煙たがられるだなんて初めての事だ。

多分、上総とクロは精神的に繋がっている筈。

地球に住む人に、ある意味で異世界から来ている私達を疎ましく思うのは当然の事なのかもしれない。

けれど今は、上総の怪我の治療と事件の聴取だ。

かぶりを振り、懸念を無理矢理に振り落して私達はアースラへと転移した。

 

 

 

 

 

 

 

アースラ艦内が途端に騒がしくなったのは、武装隊に出撃命令が下ってから幾分も経たない頃だった。

私が、アースラに医務官として乗艦する事が決定したのは偶々であった。

それに今回の航海は、はやてちゃんも関わることになっていたから、都合が良かったと言えば良かった。

私たちは、はやてちゃんの守護騎士で主の傍に仕える事は至上命題なのだから。

烈火の将であるシグナムから“主の事を頼む”と言われているのである。

自分の命を賭しても護る。それが私たちの存在理由。

どうか何事も無く事件が解決するようにと、思っていた矢先。

この騒々しい原因に巻き込まれる事になったのはアースラ艦長からの通信が私の元へと、繋がった瞬間からだった。

 

『シャマル! 急で済まないが怪我人を寄越す。治療を頼みたい!!』

 

「わかりました。武装隊の誰かが怪我でも?」

 

この時の私は、まだ剣呑に構えていた。

 

『いや、現地の住人だ。犯人から暴行を受けた…』

 

語尾が弱くなっていくクロノ君の声に、珍しい事もあるものだと思った。

私の中での彼の評価は、真面目で実直。

ある意味で面白みに欠ける人物ではあるが、仕事に関しては手抜きは絶対に無い。

どんな場面に出会っても、無難に事を運ぶのが彼だと言うのに。

 

通信の切れたモニターを見つめて立ち上がる。

まずは患者である現地民の怪我の度合いの把握が先決だ。

私は少しでも早く患者に治療が施せる様に、フェイトちゃんと怪我人が転送される一室へと向かった。

 

部屋へと辿り着いて、数分もかからずミッドチルダ式の丸い魔力陣が浮かび上がる。

金色の魔力光に、これはフェイトちゃんが発動させた術式だとすぐ解った。

少し疲れた様子のフェイトちゃんと、髪の長い金髪の女性。そしてその女性の腕の中には怪我を負った女の子。

全く身動きを取らない女の子に駆け寄って、怪我の度合いを診る。

 

「呆っとしてないで、早く担架に乗せてっ!」

 

声を荒げた私に、はっと気が付いたように女性が担架へ女の子を乗せた。

腕の火傷も酷いが、肋骨も何本か折れていた。

一体何が有ったのか、何をされたのか。あまり想像はしたくない。

 

「どうしてこんな酷い事を…!」

 

眼を覆いたくなるような怪我に、声を出さずにはいられなかった。

クロノ君が落胆していた原因は、この子の怪我だろう。

アースラ艦内の長い廊下をこの時ばかりは疎ましく思いながら、速足で私の城である医務室へと向かう。

担架の後ろには、一緒に付いてくる心配そうな顔をしたフェイトちゃんと無表情の女性の姿も有る。

 

「貴方たちは此処まで。中には入らないでくださいね」

 

「けど、シャマル!」

 

「大丈夫です。このシャマルさんに任せてください!」

 

医務室前に辿り着いた私は、笑ってフェイトちゃん達に医務室への立ち入りを禁止した。

此処からは刹那の勝負だ。

いくら治療に長けた魔法が有るとはいえ、この医務室にミッドチルダの大病院ほど、良い設備は存在しない。

 

――それでも万全を尽くすのが私の仕事。

 

クラールヴィントをリンゲフォルムへと形態を変化させて治療を開始する。

きっと心配で仕方ないと言う顔をした医務室の外で待っているであろう、フェイトちゃんの姿を思い出して気合を入れた。

 

 

 

 

 

 

未だ開かれない医務室の扉。

中ではシャマルが必死に頑張っているのだろう。

治療魔法に詳しくない私は手伝う事すらできない。

上総のあの怪我は誰が見ても酷い物だった。ちゃんと治るのか。

治ったとしても、あの時のなのはの様に過酷なリハビリが待ち受けているのではないか。

不安は尽きない。

クロは相変わらず無表情のまま、腕を組んで壁にもたれかかって、何を考えているのか読み取れない。

上総の使い魔なのだから、もう少し心配していてもおかしくはないと思うのだけれど、彼女の性格上なのか、落ち着き払った様子で静かに佇んでいる。

 

床を踏みしめる音に気が付き、誰だろうとそちらを向く。

 

「クロノ?」

 

「済まない。待たせたね」

 

事後処理に追われていたのであろうクロノがやって来た。

 

「此処では落ち着いて話が出来ないからね。部屋を用意したから、そちらに行こう」

 

クロノが部屋への道を手で示す。

けれどクロが深い溜息を吐いて、首を振って否定した。

 

「私が出した条件はまだ満たされていない。事について喋るのはそれからだ。

黙秘権ぐらいはあるのだろう? それとも、先の連中の様に無理矢理に聴き出してみるか?」

 

「馬鹿な事を言わないでくれ。彼等と一緒にするな」

 

クロノが怒気をはらんだ声でクロの言葉を否定した。

長い沈黙。

どちらも譲らない、という空気が流れる。

そうして結局、折れたのはクロノだった。

 

「…わかった。佐藤上総の治療が終わり次第、話を聞かせてもらう。

ただ、それまで君の身柄を自由にするわけにはいかない。拘束、とまではいかないが監視をつけさせてもう」

 

「好きにすればいい。それと、もう一つ条件を加える。

話をするのは、アイツが目覚めてからだ。当事者が蚊帳の外、と言う訳にはいくまい」

 

腕を組みなおして、また壁にもたれかかったクロ。

この場から動く気は無いと、言っているようだった。

 

「…! 僕たちとしては一刻も早く情報を手に入れたいのだけれどね。

君の、いや、君たちの勝手で、被害が増えればどうするんだ?」

 

「それをどうにかするのが管理局なのだろう? 武装隊まで連れてきて、易々と奴に逃げられた事は棚の上か?」

 

「…っ!」

 

言い返せない、とクロノが言葉に詰まる。

確かに、あの場所に居合わせていたのに簡単に逃げられてしまった。

私は、上総が無事ならそれでいいと思っていた。

けれど、クロノは犯人を逃がしてしまった事は、手痛い失敗だったのだろう。

それに、クロは被害者である上総を救っている。

あの場所にあった結界を破ったのはクロだ。

私たちは、あの結界を破る事に手間取っていた。

あれ以上遅れていれば、上総の命は無かったのかもしれない。

此処でクロノが取り繕ってクロを説得しても無駄、なのだろう。

 

「…はぁ、わかった。君の言うとおりにしよう。

だが、彼女が目覚めたあかつきには洗いざらい、知っている事を話してもらうぞ!」

 

「わかった」

 

「フェイト。済まないが、後を頼む」

 

クロを監視をしろと、幾分か遠回しな言い方をして管制室へと帰っていった。

疲れているのか、先の舌戦からなのかその背中は煤けていた。

そうして、監視対象となったクロを見る。

先程から、変わらず腕を組み壁にもたれかかったままだ。

金色の長い髪と、深い青色の瞳。整った顔立ち。

私も身長は平均より高めなのだけれど、クロの背は高い。

一言でいえば、綺麗な人だと思う。

素体が猫なのだから、“人”と言ってしまうのはどうだろうと思うけれど。

 

「あの…クロ?」

 

「なんだ」

 

話しかけると、無視はせず答えてくれる。

けれどクロから話を振られる事はないだろう。

だから私は必死に話題を考える。

あまり話す事は得意じゃないけれど、きっと他愛の無い事でも、この重苦しい雰囲気は少しでもまぎれる筈なのだから。

 

「どうしてクロは、上総の使い魔になったの?」

 

「それは、前に話をしたはずだが?」

 

「そうだね。けど、きちんと話を聞いたわけじゃないよ。

あの時は、現地で魔法を使った人がいるってなっちゃったから」

 

「まさか念話を失敗するなど、誰が思う…全く」

 

髪をかき上げ、笑ってそう答えてくれた。

少しだけ感情が現れたクロの様子に安堵すると共に、複雑な気持ちが湧き出してくる。

彼女達にとってきっと、大切な記憶なのだ。だから笑って答えてくれたのに、それを奪ってしまった。

 

「そう、だね」

 

「…」

 

結局、私たち二人の会話はたいして続かず一瞬で終わってしまった。

また訪れた重苦しい空気。

けれど、それでも私はクロに言わなければならない事が有る。

 

「ごめんなさい!」

 

「なんだ、いきなり」

 

「上総を守れなかった事だよ…」

 

「はぁ。それについては貴様に言われる事じゃない」

 

盛大な溜息を吐いて、もたれかかっていた壁からはなれて私に向き直る。

 

「違うよ! 黙っていたけど、貴方たちをサーチャーで監視していた!

何かあればすぐ動ける筈だった。でも結局、上総があんな目にあった!!」

 

語気を荒げて、言葉にする。

溢れる気持ちは、後悔とやるせなさ。

誰かを護る為、救う為に執務官になったと言うのに。

 

「嘆いても仕方あるまい。起こってしまった事は変えられない。

誰のせいでもないさ。ただ強いて言うなら、襲った奴が悪い。それだけだ」

 

「けど、けれど! それでも私は、上総を助けられなかった事を後悔しています!」

 

上手くいかないな、と思う。

誰も哀しい世界なんて望んでいないのに、誰かの身勝手でこうして痛い思いや、悲しい思いをしなくちゃいけなくなる。

 

「そう思うのなら、この先で取り返せばいい。それに貴様には感謝している。

あの場で貴様が来なければ、私一人だったからな。魔力が枯渇した状態でアレらに対抗できるとは思えん」

 

「あ…え?」

 

責められることはあっても、お礼を言われる事など無いと思っていた私は、妙な声を上げてしまった。

クロの表情は相変わらず無表情のままだ。

 

「謝辞は素直に受け取っておくものだ。世の中、上手く立ち回らんとな」

 

「ありがとう?」

 

私の言葉に満足したのか、目を閉じて壁に寄りかかり直したクロ。

もう話す気は無いと言われている様だけれど、雰囲気は軽くなった気がする。

それは私の勝手なのかもしれないけれど。

 

――それでも私は、上総を助けられなかったことを悔やむのだろう。

 

ぎゅっと拳を握って、未だ開かれない医務室の扉を見つめた。

上総がどうか無事でありますように、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

私が、小娘に説教をするとはな。

と言っても、悪いものでは無いと思う。

人間よりも長く生きている私は、沢山の物を見てきた。

汚れて、穢れて、汚濁していく奴。

埋もれ、溺れて、魅入られる奴。

そんな奴らは総じて、何処かで迷い、狂い、壊れていく。

 

私の目の前で、謝罪する彼女の様な真っ直ぐな人間には幸せであって欲しいと願ってしまうのは、致し方の無い事なのかもしれない。

 

――全く。

 

長く生きるモノでも無いのかもしれないな。

人間の様に命の期間が短ければと、思う事も有る。

生命の火が付き、燃えて、輝き、そうしてゆっくりと消えていく。

私の様な人外のモノには無理な生き方だ。

未だ私の使命は、成し遂げず。

次元世界を数多に渡り歩く。

 

何時の何処の誰が、何を目的として私を創ったのか。

私の生まれてきた意義は薄れ、ただ目的の為に生きる。

それでも良い。それが私の生きる意味だ。

 

けれど、出会ってしまった。

ずっと、ずっと求めていた。契約者となれば、きっと私を導いてくれる、そんな人間を。

皮肉な事にその本人は、契約の意思など欠片も無さそうだが。

数百年、契約者を得ず世界をただ彷徨っていたと言うのに。

笑い話にも、程が有る。

 

そんな呑気な契約者候補に溜息を吐いて、未だ開く様子の無い扉を、私は胡乱な意識で眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処だろう、此処。

一定間隔で鳴り響く電子音と鼻にツンとくる特有の臭い。

ぼやけた視界がだんだんとはっきりしていく。

そうして視界に入った、モノを見た私。

 

――知らない、天井だ

 

 

 

 




最後のは、ただ単にやってみたかったネタ。ただの蛇足。

あと、お気に入り登録が100を超えていたので、喜び勇んでキーボードを新調しました。
打ち心地がいい感じ(笑

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