魔法少女なんてガラじゃない!   作:行雲流水

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第十五話:敵襲

――さぁ、狂宴の時間を始めよう。

 

 

「何も起こらない、か」

 

昏睡事件の犯人は、上総を襲撃してから姿を現さなくなった。

その沈黙が何を意味をするのかは解らないけれど。

 

「どういうつもりなんだろう…」

 

「…諦めた、という訳は無いだろうな。只単に彼女の居場所を把握できていないのか、何か策を練っているのかもしれない」

 

「フェイト、君はどう思う?」

 

「犯人の目的は上総だよね。なら、確実に上総を手に入れる方法を考えていそうだけれど…動きが無いから、何とも言えないかな」

 

「だな。何もできる事は無い、ただ待つだけと言うのは、正直キツイ。それに彼女をアースラに乗艦させたままにはいかない。今は夏季休暇とはいえ、彼女にも生活が有るからね。何か対策を立てないと」

 

「私達が護衛に就く事は?」

 

「それも手ではあるけれど、得策ではないかな。四六時中彼女の傍にいる事は不可能だし、彼女自身の負担も大きいだろう。

それに、本局からの帰還命令が下れば、僕たちは戻らなければならない。その間に解決が出来る事を願うばかりだね」

 

二人で大きなため息を吐く。本当に動きが無いのはお手上げだ。

犯人の情報は無いに等しいし。犯人が動いてくれなければ手の出しようが無い。

結局、現状は変わらないままだ。

アースラに彼女を保護と言う形で、居てもらう事。それしか手が無い。

こうして、兄さんと同じ話をするのは何度目だろう。

けれど、私達は決して諦めない。

 

「クロノ、上総の様子を見てくるね」

 

「うん? 嗚呼、わかった」

 

そう伝えて、提督室を後にする。

問題は上総の居場所になるのだけれど、恐らくあの場所だろう。

アースラの図書室。

そんなに規模は大きくないけれど、管理局の成り立ちや、魔法について書かれている本が有る。

最近、暇を持て余している彼女が良くいる場所だった。

 

以前“魔法に興味が有るの”と聞いたら、使えたら便利そうと言っていた。けれど、攻撃魔法等には興味は無いらしい。

あくまで生活する上で便利な魔法が知りたいと言う感じだった。

上総らしい、と言えばいいのか。戦う事の無い日本にずっと住んでいる人らしい言葉だと思う。

そんな事を考えながら、図書室へと辿り着いた。

 

「上総、居る?」

 

「どうしたの?」

 

「何して居るのかなって思って」

 

「本読んでた。翻訳魔法って凄いね。読めない筈なのに読めるんだから」

 

手にしていた本を掲げて笑う上総。

表題を見てみると、料理の本だった。

 

「面白い?」

 

「うん。こっちの世界と作り方は殆ど一緒みたいだから。でも時々、吃驚する時が有るかな。素材とか全然違う物、使ってたりするし」

 

「上総は料理するの?」

 

「ほとんど一人暮らしみたいなものだからね。家事全般出来ないとまともに生活が送れないから。必然的に覚えたかなぁ。フェイトは?」

 

「仕事で忙しいから殆どする事は無いかな。でも時々母さんが、教えてくれるんだ」

 

そう言った後で、私が失言をした事に気が付いた。

上総にはお父さんもお母さんも居ないという事に。

 

「皆、仕事頑張り過ぎだよ…無理しないでね」

 

そう言って、上総は何もなかったように笑う。

気にしていない筈は無いのに、笑える事は凄いと思う。

私も、一度家族を失った身だから。今でも思い出すと、悲しい気持ちになるし、もっと違う結末もあったのかもしれないと思う時もある。

上総も私の様に、考える事もあるだろう。でも、その姿をおくびにも出さない事は、精神的に強い彼女の姿なのか。

 

「二人ともぉ。お腹すいたよーご飯食べに行こう」

 

「「なのは」」

 

図書室の扉を開けて、勢いよく此方へと来るなのは。今日は、武装隊の皆に座学の講義をすると言っていた。

午前の時間をほぼ使って、講義をしていただろうなのはは、疲れ果てた姿で私達の元に現れた。

座学の講義よりも模擬戦の方が気が楽と言っていたなのはには、苦笑するしかない。

 

「お疲れ様、なのは」

 

「なのは。大丈夫?」

 

「にゃはは。ありがとう、大丈夫だけど、疲れたかなぁ。動いている方が、楽しいよぅ」

 

今日のなのはの仕事内容を把握していた上総は、なのはに労いの言葉を掛ける。

流石に今のなのはの言葉は、武装隊の皆には聞かせられない。なのはの教官としての立場もあるから。

でも、座学の講義より模擬戦の方が楽しいと言っているなのはは、なのはらしいのだろう。

 

「じゃぁ、早くご飯食べに行かないとね。そろそろ混み合う時間だし」

 

そうして時計を見ると、昼の十二時を過ぎている。

あまり遅くなると、良いメニューは売り切れてしまうし、席の確保もある。

 

「そうだね。行こうか」

 

「うん!」

 

よっぽど疲れてたのか、御飯が食べられると、一番嬉しそうな顔をしたのはなのはだった。

 

アースラ艦内の廊下を三人で闊歩する。

ちなみに上総は未だに、道筋を覚えていないのか、私となのはの後ろを歩いてついてくる。

上総が言うには、艦内の景色が似たり寄ったりだから、中々に覚えられないそうだ。

 

『総員傾注! 第一種戦闘配置! 第一種戦闘配置!! これは訓練では無いっ!』

 

突然の警告音と艦内放送。

その声の主は、ブリッジに常勤しているオペレーターの男性だ。

緊急時に流れる定型文を読み上げているだけなのだけれど、瞬時にして艦内は緊張に包まれる。

 

「フェイトちゃん!!」

 

「なのは!」

 

なのはに名前を呼ばれて、確りと頷いた。何かが起きている。それも、とても大きな事が。

艦内放送された声は緊張に飲まれており、尋常ではない雰囲気を醸し出すには十分な効果が有った。

そうしてこの異常に包まれた空気は上総にも伝わったのだろう。

 

「なのは! フェイト! 何が有ったの?」

 

困惑の表情で私達に問いかける。

何が起こっているのか、なんて一目瞭然だった。

『名も無き偽典』の契約者―マスター―が何か行動を起こしたのだろう。

情報を仕入れる為に、ブリッジに急がないといけない。

 

「大丈夫。何も心配ないよ、上総。きっと、これで終わるから!」

 

「いってくるね! 上総ちゃん!!」

 

そうすれば、家にも、学校にも戻れるのだから。日常に、戻れるのだから。

だから、此処で待っていて。

そんな心配そうな顔をしないで。

きっと私達は帰ってくるから。笑っていられるようになるから。

 

――上総の明日を約束するよ。

 

そうして私となのはは、まだ納得のいかない表情で立ちすくむ上総を置いて、ブリッジへと急いだ。

 

 

 

 

 

 

段々と小さくなる二人の背中。

笑って私を置き去りにした二人は酷いと思う。

私にはブリッジに入れる権限は無いのだから。

 

「…なのはもフェイトも何で、笑えるんだろう」

 

手近にあった長椅子に力なく座り、右手で顔を覆う。

私は、ただ此処で待つだけしか出来ない。

怖くないのだろうか。何処の誰とも知らない人と戦うために、笑って出撃していく姿は、勇ましいけれど、危なくもある。

そんな二人の背中を、ただ眺めるだけで声も掛けられずにいる私は、きっと臆病者だと思う。

そうして、その背中さえ見えなくなってしまった。

まだ三人と出会って、幾ばくの時間も経っていない。

どうして私なんかの為に、あんなに笑っていられるのだろうか。

これから、どんな目に合うのかも解らないのに。

彼女達の様に強くありたいと思うけれど、そう簡単に強くなれる筈なんて無かった。

今だ鳴り響く警告音と、騒々しく慌てて廊下を行く局員の人達。

その姿を眺めるだけしか出来ない私は、まるであの時の様に、無力だった。

 

 

 

 

 

 

 

――数分前

 

「艦長っ! 大変です!!」

 

けたたましく響く警告音と、オペレーターの絶叫。

そのオペレーターの彼の顔は信じられない物を見ている表情で、私とクロノ君にに訴えかけてくる。

 

「どうした! 状況を報告しろ!」

 

その言葉を聞き、尋常ではないと判断したクロノ君は顔を引き締めて、オペレーターの人に問いかける。

 

「海鳴市のある一点から、高出力の魔力を検知! その場所を起点にして、海鳴の街ほぼ全域に結界を展開! その範囲は徐々に広がっています!」

 

「海鳴市をほぼ覆う結界!? そんな広域結界を張っていったい何をするつもりなんだ!」

 

正面モニターに海鳴市の地図が表示される。

国守山にある八束神社を起点にして、海鳴の街を呑み込んでいく結界。その結界の形は歪であるけれど、確実に海鳴市を取り込んでいく。

何処にこれ程の魔力を所持していたのか、見当もつかない。

 

「嘘やろ! 街の人達、そのまま取り残されとるやんか!」

 

「どういうつもりなんだ! 街の人間全員が人質だとでも言うつもりか!」

 

そして通常の結界と違い、リンカーコアを所持していない人達まで結界の中へと閉じ込められる。

何も変わらない風景ではあるけれど、味わった事の無い、違和感に恐怖し戸惑う人達。

 

「それとも、誘っている、かやな」

 

「犯人の手に乗る訳にはいかない…けれど、乗るしかないのか!」

 

くそ、と珍しくクロノ君が悪態をつく。

 

「八束神社にサーチャーを飛ばしてくれ! 映像が欲しいっ」

 

「了解です!」

 

高速でキーボードに入力して、サーチャーを起動させるオペレーターの彼の手腕は見事なものだった。

そうして、サーチャーを起動させ転送魔法を併用して、八束神社の映像を瞬時に中央モニターへと出力させた。

緑に囲まれた、静けさを湛えた神社の風景に悉く溶け込んでいない、全身に白色のスーツを纏い見事に着こなした痩身の男性と、クロにそっくりな銀髪碧眼の女性の姿が有った。

 

「あの二人が、『名も無き偽典』とその契約者―マスターーか!」

 

「…!」

 

彼らは何をするでもなく、海鳴に張られた結界の中に居る。

何が目的なのか、何をしようとしているのか、全く見当もつかない。

ただ、はっきりと解っている事は上総ちゃんが目的だという事。

けれど、上総ちゃんの居場所が判らず仕舞いだったのか、恐らく強行的な手段を取ったのだろう。

その結果が、悪手になるのか、最良の手になるのかは、私達にも彼等にも解らない。

 

「クロノくん!」

 

「クロノ! 状況は!?」

 

急いで、ブリッジに来たのだろうなのはちゃんとフェイトちゃん。

息を切らして、クロノ君に状況確認を請う。

 

「二人とも来たか! 『名も無き偽典』のマスターが現れた! だが、広域結界を張り街の人間を取り込んでいる!

何をするつもりなのかも解らないが、最悪は街の人間ごと巻き込んで何かを起こす腹積もりだろう」

 

「そんな! 関係の無い人たちまでっ」

 

なのはちゃんが叫び、フェイトちゃんは眉を眉間に寄せて、モニターを眺めている。

急速に広がっていた結界範囲は、一旦停止してそれ以上結界の範囲が拡大することは無かった。

そうして、“偽典”のマスターは八束神社に相変わらず佇んだまま、何も行動を起こそうとしていない。

 

「…っ! 現場に急行します!」

 

「フェイトちゃん! 私も行くよ!」

 

確りと目を見つめて、頷きあう二人。

息を合わせたように、駆け出した二人はブリッジを後にし、転送ポーターへと向かうのだろう。

クロノ君はそんな二人に何も言わず、モニターを注視している。

きっと、なのはちゃんとフェイトちゃんの事を信頼しているのだろう。

 

「クロノ君。私も後衛として出撃する! 犯人が何を仕出かすか解らへん以上、なのはちゃん達だけには任せとけられへんからな!

もしもの時は、広域魔法を使ってでも止めるさかい」

 

一対一の魔導師戦なら、私なんかよりなのはちゃんやフェイトちゃんの方が優れている。

けれども、広域で戦闘を行うのならば、私の魔法が役に立つ筈。

海鳴の街の人達を、盾に取られた以上、護り手が居なければ。

武装隊の人達も、そのうち出撃命令が下令されるだろう。

犯人はこんな広域結界を張れる魔力を所持しているのだ。戦力は多ければ多い方が良い。

 

「解った。全ての責任は僕にある。はやては何も気にせず暴れてこい」

 

「…頼りにしてるで、提督はん!」

 

「嗚呼。任せろ」

 

確りと頷いて返事を返したクロノ君は、最高指揮官としての責任を全うしようとしている。

なら、私もその思いに確りと答えなければいけない。

転送ポーター室へと急いで、ポーターを操作する係員に声を掛ける。

 

「いきなり、ゴメンな。いけるん?」

 

「八神捜査官! 勿論、準備は完了しています!」

 

「ありがとうな。お願いや!」

 

「お気をつけて! 御武運をっ」

 

私に激励の言葉を掛けて、敬礼をして見送ってくれる。

そうして転送された先は、八束神社の上空。

少し先に、なのはちゃんとフェイトちゃんが、飛行魔法で上空に停滞している。

その視線の先、八束神社の地面に立っている、“名も無き偽典”のマスター。

私達を見ても微動だにしない姿に、並々ならぬ魔導士としての自信を抱えているのが解る。

 

「時空管理局執務官。フェイト・T・ハラオウンです! 貴方を管理局法違反で現行犯逮捕します!」

 

「…この私を捕まえる、と。さて、君達に出来るのかね? それよりも私が何をしたと言うのだね?」

 

フェイトちゃんの言葉に動じる様子も無い。前回、管理局を名乗ったときは直ぐに逃げたと言う話だったけれど、どうやら今回は逃げるつもりは無いらしい。

 

「…管理外世界で魔法を使用した事! 現地の民間人に魔法を使用して怪我を負わせた事! 知らないとは言わせません!」

 

上総ちゃんが襲われて、傷だらけになっている姿を見たのはクロとフェイトちゃんだけだ。

左腕の火傷が、かなり酷い状態だったとフェイトちゃんから聞いている。

その事を思い出したのか、フェイトちゃんの声には怒気が含まれていた。

 

「それの何が悪いと言うのだね!? 抗う手段を持ちえない弱い人間が悪いのだよ。搾取されるしか能の無い有象無象の人間が、だ。

リンカーコアを所持していない、魔法も使えない人間に価値など有る筈は無かろう!」

 

「それは貴方の勝手な解釈だ! 生きている人の命を勝手に奪う権利なんて、誰にも有りません! 増して、貴方の様な人に奪われる事なんて断じて有ってはいけない!」

 

「そうだね、フェイトちゃん! 幸せに暮らしている人達が誰かの勝手で不幸になる必要なんて、有りません! だから私達は貴方を、逮捕します!」

 

「ははははっ!!! クヒヒ…!」

 

右手で顔を覆い、笑い続ける。狂っている、としか言えない。

弱い人を、価値は無いと蔑んだ事。

彼の価値観に、同意できる所等微塵も無い。

 

「大した正義だよ! 御嬢さん達。だが私は、管理局の正義とやらが大嫌いでね。君達の掲げる理想には反吐がでそうだ。

強い者が弱い者を守る。大いに結構。そんな守られるしか能の無い人間から、強い者が弱い者から搾取する事の何がいけないのかね? タダで安寧を享受出来ると思う間抜け振りは、見ていて虫唾が走る」

 

「それは貴方の勝手な理由に過ぎない!」

 

「勝手で結構。では君達の力を私に示したまえ! 抗いたまえ!! そして私に平伏したまえ!!!」

 

私達の言葉が彼に伝わることは一生無いのだろう。

相容れない人は存在する。

なのはちゃんとフェイトちゃんが愛機のデバイスを構えて、リンカーコアに有る魔力を練り始める。

その様子を察した、『名も無き偽典』のマスターは両手を広げ、まるで道化師の様に笑い、声を上げる。

 

「さぁ、狩りの時間を始めよう。吼えるがいい。人はソレを虚勢と言う。逃げるがいい。逃げられるのならば。君達は、私の掌の上で踊り狂えっ!!!」

 

にぃ、と口角を上げて笑い、右腕を前に差し出して、私達を挑発する“名も無き偽典”のマスター。

その顔は、人としての顔ではなく、人智を超えた人ならざる者の顔だった。

 

 

 

 

 

白のスーツを纏い佇む男性と、その後ろには『名も無き偽典』の統括官―コマンダー―と呼ばれるクロちゃんに瓜二つの銀髪碧眼の女性。

古びた本を片手に開いて、足元にはミッド式でもベルカ式でもない魔方陣を展開させている。

先程の犯人の口上に、同意できる言葉は一ミリも無かった。

彼の勝手な考え方だと思う。力を持った人間が、何かを間違えて、踏み外して、そんな考えに至り就いたのかどうかは解らないけれど。

今は、海鳴の街の人達を守る事が最優先事項だ。

勝ち負けなんて関係ない。

 

「…なのは、私が前に出るよ! 犯人がどう言う手段を取るのか判らないけれど、何もしてこない以上、切っ掛けを作らないと! はやては街の人達に、被害が及ばない様にお願い!」

 

「分かったよフェイトちゃん! 援護は任せて! どうにもならない時は私も前に出るよ!!」

 

「OKやで。街の人達は、このはやてちゃんにお任せや!」

 

フェイトちゃんの言葉の通り、犯人から動く気配は無い。

どんな手段を取り、どんな魔法を行使するのかは解らないのは手痛いけれど。

それなら、状況を打破する為に先手を取る。

危険かもしれないけれど、最速を誇るフェイトちゃんなら、犯人の元に一番早く辿り着ける。

それに、賭ける。

 

「いくよ、バルディッシュ!」

 

『――Yes, sir.― Sonic Move』

 

フェイトちゃんのバルディッシュが高速移動魔法を発動させて、犯人の元へと加速していく。その速さは尋常では無く速い。

それと同時、デバイスの機構を変えて斧の形態へと変化する。

 

「はぁぁああああああ!」

 

気合の入った一撃を放った瞬間だった。犯人の顔ギリギリに、防御魔法が展開した。

フェイトちゃんのバルディッシュの魔力刃は寸での所で犯人に届くことは無かった。

それを見届けた犯人が大仰に笑ったその時、彼の後ろに控えているだけだった、銀髪碧眼の女性がフェイトちゃんに襲いかかる。

どうやら彼女は近接戦闘が専門なのか、デバイスも使用せずに、拳でフェイトちゃんに殴り掛かった。

 

「…素晴らしい一撃だ。だが、詰めが甘い」

 

「…っ!」

 

女性の一撃を防御魔法を瞬時に展開させて防いで、バックステップで下がり、犯人と距離を取るフェイトちゃん。

バルディッシュを構え直して、犯人と相対する。

緊張した時間が流れる。

犯人の元に至るまでの時間は、たったの数秒。

その間に犯人は、防御魔法を展開してフェイトちゃんの渾身の一撃を防いだ。

 

――一筋縄じゃいかない、か。

 

フェイトちゃんの最速の一撃を防いだ事実に驚嘆した。

そうしてまた犯人は自ら攻撃するつもりは無いらしく、動かない。

犯人を守る様にして、立つ女性の姿は何人も通さないと、無言の表情で訴えている。

 

「レイジングハート、私達もいくよ!!」

 

『――All right my master!―Accel Shooter』

 

レイジングハートの声と共に、二十発の魔力弾を精製。

私が移動しながらの発射・制御は出来ないけれど、フェイトちゃんとはやてちゃんが居るのなら、その事は考えなくていい。

まずは、犯人とクロちゃんに瓜二つの女性の分断を念頭に、誘導弾を制御する。

そうしている間に、フェイトちゃんの第二波が始まっていた。

 

フェイトちゃんの邪魔にならない様に誘導弾を操作する。

フェイトちゃんの戦術は、長年の付き合いから把握しているし、フェイトちゃんも私の戦術を理解してくれているから、息は合っている。

問題は、犯人と女性の戦闘スタイルだ。全く私達と同じ戦術を取っている。

というよりも、模倣しているのだろうか?

 

先のフェイトちゃんの一撃から、先を取っているけれど、目に見えた効果の有る魔法が犯人に届いてはいない。

犯人が何を考えているのか、それとも唯単に手加減をしているのか。

奇妙な感覚にとらわれる。

 

「…」

 

『…埒が明かないね』

 

この戦端をどう開いたものかと、思案し始めた時だった。

 

『皆、聞こえるか?』

 

「「「クロノ(君)!」」」

 

『今から武装隊をそちらに向かわせる! 街の人達の護衛に入ってもらう。君達には済まないが、犯人に注力してくれ! それと、アースラから出来るサポートは万全を尽くす!』

 

「わかったよ!」

 

「うん、ありがとう! クロノ君!」

 

「よっしゃ! 全力で犯人に挑むでっ!!」

 

気合を入れ直して再び犯人へと向かう、私達三人だった。

 

 

 

 

 




やっと佳境に入ったかな?
あとは、やりたい亊を詰め込むだけだぁ!

そしてどんどん増えていく一話辺りの文字数。
読み手の人にダレない文字数と思って調整したいのですが、キリの良い所で終わりたいので難しいです。

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