魔法少女なんてガラじゃない!   作:行雲流水

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第十四話:嵐の前に

 

『ディバイーーン…バスター!』

 

その声と共に、なのはの持つデバイスと呼称されている杖の様なモノの先から桃色の光の塊が、すごい勢いで正面へ飛び出ていく。

そうして、その先に居る武装隊の最後の残り一人へと吸い込まれていった。

 

「容赦がないな」

 

「あはは…」

 

「…はは」

 

そんな感想を漏らしたのは、この光景を私の左隣で見ていたクロだ。

そうして、私の右隣にはもう二人。フェイトとはやてはクロの言葉を笑ってごまかしているように見えた。

この場所は、アースラ艦内にある訓練室に併設されているモニタールームだそうだ。

訓練室内をガラス越しに見渡すことも出来るし、設置されているカメラでいろんな角度からモニターで見られるようになっている。

 

なんでもなのはは教導部隊に所属していて、教導員として管理局の魔導師の人たちを文字どおり教導しているそうだ。そのついでらしいのだけれど、アースラに乗船している武装隊の人たちの教導をかって出たらしい。魔法を見る良い機会だから、となのはに言われて付いて来たのだけれど、武装隊となのはの戦力差が凄い。

いや、うん。どう表現すればいいのかわからないけれど、一瞬だった。

武装隊の十人となのは一人だというのに、一瞬で勝負が付いてしまったのだから。

 

『…まだまだぁぁああああ!!!』

 

「お。なのはちゃんの砲撃に耐えた人がおるんか。感心感心」

 

「はやて、その言い方は…」

 

勝負が付いたと思った矢先、集音マイクが拾い上げた気迫の怒号と共に、立ち込める煙の中から武装隊の何人かがなのはに詰め寄る。

その姿を見たなのはは、近接戦に移行していた。

そんな様子に気圧された私を察したのか、はやては軽い調子で喋り、フェイトが咎めていた。

 

「ちなみに模擬戦用の魔法やから、ダメージはちぃとばかし残るんやけど、回復は早いで」

 

そう言っているはやてだけれど、ほぼ実戦形式だそうだ。

魔法を使っている事には変わりはない、という事らしい。

魔導師ランクで魔導師の強さを分けているそうなのだけれど、圧倒的な戦力差に、なのはは凄いと言う感想しか抱けない。

そうしている間に、なのはと武装隊の人達の模擬戦が終了していた。

 

「今度は私の番だね」

 

そう言ってフェイトは訓練室の中へと入っていく。

その入れ替わりで、武装隊の人たちが此方にやって来た。

ちらちらと視線を感じるけれど、致し方ない。私は部外者だし、物珍しいものでも見るような視線だ。

無視を決め込んで、我慢すればいいことだ。

ぞろぞろと、不規則に並べられたパイプ椅子に座っていく。

どうやら武装隊の人達も、なのはとフェイトの模擬戦を観戦するようだった。

 

『なのは、なのは。スターライトブレーカーは撃たないでね?』

 

『にゃはは。流石に無理だよ。収束魔法だし』

 

こんな所で撃つ訳にもいかないし、となのはが言っていた。

 

「?」

 

なのはとフェイトの言葉に、首を傾げる事しか出来なかった私が、このやり取りの意味を理解するのはもう少し先の話だった。

 

「二人とも~準備はええか?」

 

マイク越しに伝わる、はやての声を聞いて、フェイトはバリアジャケットと呼ばれる戦闘服に変わる。

どういう仕組かは解らないけれど、一瞬で服が変わった。

これも、魔法だからとしか説明のしようがない。

 

『私はいつでも大丈夫』

 

『私も、用意は出来てるよ』

 

「それじゃぁ、いくで。――Ready Go!」

 

その声と同時、開始の合図早々、なのはとフェイトは距離を取る。

空中へと飛んで高度を取り、先手を打って出たのはなのはだった。

 

『Accel Shooter』

 

デバイスからの声と共に十数個の桃色に光る玉が現れる。

その光の玉は意思を持つように、不規則かつ変則的にフェイトを確実に目指している。

そしてその速度は、速い。

その様子を離れて見ていたフェイトは、軽く息を一つ吸込んで、突っ込んで行く。

まるで恐怖心は全くない、と言わんばかりに。

 

そうして、なのはの放った光の玉を、避けて、払うフェイト。

けれど、桃色の光もまるで意思を持っているかの様に、なのはに近づけさせまいと、縦横無尽にフェイトを追い込んでいる。

 

はっきり言って、武装隊の人達となのはとフェイトの模擬戦は言うまでも無く異次元のレベルで違っていた。

 

「先程とは役者が違うな」

 

にやり、とクロが笑う。

まるで良い物を見ていると言う様に。

それは良いんだけれど、武装隊の人たちに聞こえていなければいいけれど。

目の前の模擬戦より、武装隊の人たちに目をやると、此方を気にしている様子など全くなかった。

なのはとフェイトの模擬戦に食い入るように見ている。

それも、全員。

 

『…っ!』

 

『!』

 

暫くの攻防が続く中、一瞬の隙をついたフェイトが、空中で動かず停滞したままのなのはに下から肉薄する。

刹那、アッパースイングの様に振り上げたフェイトの斧状のデバイスを、円形の模様のシールドを展開させて、なのはが防いだ。

 

「「「「「おお!」」」」」

 

武装隊の人達がどよめき立つ。その声色は、感心と羨望。

 

「ほう」

 

「?」

 

何に感心しているのか全く分からなかった。

そんな私をみて、その様子がおかしかったのか、長身のクロが見下ろして笑う。

 

「恐らく白い方は砲撃型の魔導師。でだ、金髪は先程までを見るに撃ちあいでは敵わないから、どうにか肉薄して白いのに近接戦を挑もうとしている。

だが、白い方も簡単にやられる訳にはいかん。唯の砲撃ではかいくぐられるのは当然だ。誘導弾で対応している。

それも高度なレベルでだ。あの数の誘導弾を操れる者はそうは居まい。管理局で教導隊に所属している事だけは有る」

 

珍しくクロがべた褒めしている。と言うか誰かを褒めているところは初めて見たかもしれない。

 

「楽しそうだね、クロ」

 

「嗚呼、そうだな。何の忌憚のない魔導師戦を見たのは久しぶりだ。このレベルの魔導師は、そうは居ないぞ?」

 

「そっか」

 

「興味が無さそうだな?」

 

「興味が無いというか…何で、なのは達みたいな女の子がこんな事しているのかなって。

痛い思いをしなきゃならない時もあると思うんだ。なのに、どうしてこんなになってまで頑張れるんだろう…」

 

生身で空を飛ぶだなんて、恐怖しか沸かないし、重そうな鉄の棒で殴られるのだって嫌だ。

そして、どうやって作り出しているのか解らないけれど、光の玉だって当たれば相当痛そうだし。

 

「闘う理由は人それぞれだ。管理局ならば、魔導師ランクが高ければ高いほど、出世の道は早い。金、名誉、権力、そんなくだらない物が欲しい奴はごまんといる。

それに、理由が知りたいのなら直接本人に聞いた方が早いぞ?」

 

管理局は軍と警察、司法や他のものが一緒になって運営されていると聞いた。

だから、男性が多いのだろうと思っていたのだけれど、なのは達三人や武装隊の人たちの中にも女性がチラホラ居る。

個人的には、何故女の子が“こんな事を”と思ってしまう。怪我をして痛い思いをしたいとは誰も思わないだろうし。

 

けれど、フェイトが誰かを守る為に強くなければ、と言っていた事。きっとこれがフェイトの言っていた事の一端なんだろう。

魔法の技術を研鑽して、強くなる。そうして、誰かを助けられる可能性を高くしているんだ。

何処の誰とも知らない人でも、危険を冒して、死地に飛び込んで。

 

「うん、わかってる。今のは愚痴みたいなものだから」

 

「そうか。だが、考える事は無駄じゃない。答えが出せなくても、迷えばいい。それを見かねた誰かがきっと助けてくれる」

 

時折、クロは私にこうやって助言をくれる。困った時、迷っている時、悩んだ時。

決して、答えそのものをくれる訳じゃないけれど。前に向く為に、前に進む為に。

 

「…ありがとう。クロ」

 

「別にかまわん。唯の老婆心だからな」

 

私には、こんな事を言える人は居なかった気がする。

一番の話し相手になるであろう両親は既に居ないし、兄は仕事で忙しく、こんな愚痴や弱音とか相談なんて出来る筈が無かった。

仲の良い友達にも、なかなか私の心の内を打ち明ける事は出来なかった。暗い顔なんて出来ないし、笑って居なければと思っているから。

武装隊の人たちのざわめきの中で、私達二人はなのはとフェイトの模擬戦を見ながら、そんな話をしていた。

 

なのはとフェイトの模擬戦は膠着状態に陥っていた。どちらも一進一退。

決定打に欠けて、どちらも手を出しあぐねている。

しんと静まり返った、訓練室。そして、私達の居るモニタールームも同様だった。

 

「ふむ。次で決まる、だろうな」

 

「なんで、そう思うの?」

 

「この状態を続けていても仕方ない。状況を打破したいのなら、決めの一手しかあるまい」

 

そのクロの言葉の直後だった。フェイトのバリアジャケットの意匠が変わった。

軍服調のものから、肌の露出面積が多い物へ。かなり際どい服である。

私がアレを着ろと言われれば、少しばかり、否、大分拒否感のあるものだ。

男の人が見る分には喜ぶのかもしれない。フェイトはスタイルも良いし、顔立ちも整っているし。

 

「フェイトって脱ぎ癖でもあるのかな?」

 

「さぁな」

 

首を傾げた私の様子が可笑しかったのか、くくく、とクロが笑って居る。

 

「…上総ちゃん、クロ。その認識は、流石にフェイトちゃんが可哀そうやで。あれは、バリアジャケットに回している魔力を削って防御力より、攻撃に回す魔力を増やして攻撃力を上げようっちゅうヤツなんや」

 

私達の会話を黙って聞いている事に耐えられなくなったのか、はやてが会話を割ってきた。

と言うよりも、フェイトの名誉の為なんだろう。

 

「なるほど。脱げば強くなるのか」

 

「はぁ。それ、せめてフェイトちゃんの前では言わんといてな? お願いやから…」

 

意味が伝わらなかった私の様子にはやてが肩を落として頭を抱えていた。

そんな間抜けなやり取りをしている間に、訓練室の中では、只ならぬ空気が流れていた。

 

「いくよ、フェイトちゃん!」

 

「うん! なのは!!」

 

ビリビリと響き始める空気に、緊張が走る。

 

「やっば! なのはちゃんもフェイトちゃんも本気出し過ぎや! アースラ壊してまうつもりなんか!?」

 

ちょっとだけ、涙目になりながらはやてが訓練室に届くように叫んだ。

その言葉の通り、先ほどから感じる空気は異常だ。武装隊の人たちも固唾を飲んで二人を見ている。

モニタールームは大丈夫なのだろうか。此処にいる人達が避難とかしていないから、訓練室の壁は、魔法に耐えうる壁になっているのだろうと納得して、なのはとフェイトの様子を見守る事にした。

 

なのはの桃色の光と、フェイトの金色の光が訓練室内を覆わんとばかりに光力を増す。

魔法の事を知らない素人の私でも、二人の魔法が尋常ではないと感じることが出来る。

 

『エクセリオン・バスター!!』

 

『――Excellion Buster』

 

『サンダー・レイジっ!!』

 

『――Thunder Rage』

 

なのはとフェイト、そしてお互いのデバイスから声が響く。

その瞬間。なのはとフェイトが撃ち出した光の玉は、互いにぶつかり拮抗する。

手をかざして、目を覆う。その隙間から覗き込んだ光景。

どちらの力も拮抗した魔法は、結局どちらかを押し切る事は無く、細かな光となって霧散してる。

 

――嗚呼。なんて、綺麗なんだろう。

 

私が今まで見たどんな光景よりも、目に焼き付いた。

胸が締め付けられるほどのその光景は、熱く、綺麗で。

訓練室に広がる、桃色と金色の小さな光たちは、まるで降り注ぐ細かな雪の様に床へと落ち消えていく。

 

「そこまでや! なのはちゃんもフェイトちゃんも、もう十分やろ?」

 

『…はやてちゃん』

 

『はやて』

 

まだ決着はついていない、と息も絶え絶えでなのはとフェイトがはやての声に不満そうに反応していた。

 

「なのはちゃん達の気持ちも理解出来るんやけど、仕事に支障をきたすわけにいかんやろ? ここいらが落としどころやないの?」

 

そうして、無理と判断したのか、二人は構えていたデバイスを下して、結局は引き分けと言う形でこの模擬戦は終了した。

素人の私でも、なのはとフェイトの魔法を使った模擬戦は、見惚れるものがあった。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「あれ? どうしてだろ。疲れてるのかな」

 

自身で気付かなかった。クロの指摘でやっと鼻血を出している事に気が付いた。

鼻を手で覆って、服が汚れるのを防ぐ。といっても、数滴の血が服に落ちているのだからもう遅いのだけれど。

 

「上総ちゃん、シャマルの所に行って診てもらうで。何かあったら大変やし」

 

「大げさだよ、はやて」

 

医務室とか保健室とか、苦手なのだ。病院の様な場所は。匂いとか雰囲気とかがどうしても昔を思い出すから。

それに高々鼻血であるし、診てもらう必要性も、シャマルさん―こう呼べと言われた―の手間を取らせる事も無いと思う。

 

「駄目や。行くで」

 

結局、はやてに強引に押し切られて医務室に行くことになった。

まるで首根っこを掴まれた猫の様に、右手首をはやてにむんずと握られて、無理矢理にモニタールームを後にする。

なのはとフェイトは武装隊の人たちの質問攻めにあっていて、此方の様子に気付くことは無かった。

 

英語に良く似た文字で書かれたプレートが示している場所は“医務室”。

何故私に管理局の言語が読めるのかと言えば、翻訳魔法なるものを掛けてくれているらしい。

管理局の人達が日本語を理解できているのは、この魔法のおかげだそうだ。

だから、なのは達以外のアースラ乗員の人と話そうと思えば話せるようになって居るらしい。その機会は訪れていないので、その効果を知る由は無いけれども。

 

「シャマル、上総ちゃんが鼻血出してしもうたから、念のために診てくれへん?」

 

「はやてちゃん? あらあら、大丈夫ですか?」

 

扉が開くと同時。はやてが何の遠慮も無しに医務室の中へと入っていく。

私を視認したとたんにシャマルさんが駆け寄って、はやてに代わって右手首を掴んで、診療机の脇にある丸椅子へと導かれる。

椅子に座る事を促されて、しぶしぶ私は席に着いた。

 

「平気ですよ。もう殆ど止まりかけていますし」

 

鼻を押さえていた手を放すと、血は殆ど出ていない。

どうやら、鼻の中に残っている血が固まり始めたのか、少し違和感を感じるくらいだ。

 

「駄目です。何が有るか解りませんし、ちゃんと診ておかないと」

 

そう言って、治療器具を出してテキパキと動き始めるシャマルさん。

そんなに大げさにすることも無いと思うのだけれど、医者としての使命なのだろうか。

 

「無理はしないで下さいね。まだ怪我も治りきっていないんですから」

 

「無理なんてしていません。そもそも動きたくても、動けませんし」

 

肋骨はまだ折れているままだし、左腕も余り動かせないのだから。

無理、無茶をしようとしても、現状のままならほぼ何もできない事に等しい。日常生活ですら困っているのだし。

それでもまぁ、何とか人より時間を掛けて動いて何とかしている感じだ。

 

「そう言う人が、一番無茶をするんです!」

 

「うぶっ! 痛いです!」

 

少し冗談めかして、ピンセットで詰め込んでいたガーゼを少し力を入れて、シャマルさんが突っ込んできた。

涙目になって居る私を、真剣に見つめている。

 

「…ごめんなさい」

 

こう言うしかなかった。

 

「解ってもらえれば、それでいいんです。本当に無茶をしないで下さいね?」

 

「…はい」

 

心から心配されている事は、伝わった。

シャマルさんにこれ以上苦労を掛けるわけにもいかないし、ここは素直に従っておこう。

けれど、何故私が無茶をするように思われるんだろう。そんな事は決してしていないのに。

 

「せや。上総ちゃん、これ」

 

そう言ってはやてが差し出してきたのはクロから貰ったミサンガだ。

どうにか直らない物かと四苦八苦しているところをはやてが見かねて、直そうかと声を掛けてくれた。

両手を使うことが出来ないので、ありがたい申し出だったから、素直に受けておいた。

 

「ありがとう、はやて」

 

「完全再現は無理やったけどな」

 

そう言って手渡されたミサンガは、ちぎれた部分に留め具が新たに付け加えられていた。

黒一色で飾り気のない物だったのが、少しだけお洒落になっていた。

 

「十分だよ。助かった。はやて、幾ら掛かったの?」

 

「ええよ、気にせんといてな。手持ちの物で補修しただけやし、手間もそんなにかかっとらんへんのや」

 

はやての器用さに、羨ましい思いを抱く。

私は、家事全般は出来るけれど、裁縫はどうにも苦手な類に入るから。

受け取ったミサンガを、どうにか左手首に着ける。

少しだけ、重さを感じる存在にほっとして、息を吐いた。

 

「「上総!(ちゃん!)」」

 

かなりの勢いで、医務室へと駆け込んできた、なのはとフェイト。

先程まで、熱戦を演じていたと言うのに元気なものだ。

 

「二人とも慌ててどうしたの?」

 

「どうしたも何も、上総ちゃんが医務室に行ったって聞いて、飛んできたんだよ!」

 

「そうだよ。急に居なくなるから心配したよ!」

 

「鼻血が出ただけだよ。念の為にって、はやてに言われて来ただけだし」

 

駆け寄ってきて、問い詰められる。皆、本当に心配性だと思う。

フェイトは先程からあわあわしているし、なのはは眉尻を下げて心配そうに私を見ているし。

はやては面白そうに、少し離れてこちらの様子を見ているし。

ここは少しばかり、反論しておこう。

 

「なのは達は、疲れて無いの? さっきの模擬戦、凄い迫力だったし」

 

「少し疲れたけれど、楽しかったって気持ちの方が大きいかな? フェイトちゃんとも久しぶりに模擬戦したし。ね? フェイトちゃん!」

 

「だね」

 

嬉しそうに、笑うなのは。その言葉に同意するフェイト。

二人とも仲が良さそうで何よりだと思う。信頼してないと、幾ら模擬戦だとは言え、あんな事はなかなか出来ないと思うし。

 

「けれど、なのはちゃんは無理をする傾向が有りますから、シャマルさんとしては心配です」

 

「にゃ! 無理なんてしてないよ!」

 

突然のシャマルの言葉になのはが反論する。

 

「そう言って誤魔化して、肝心な時に無茶をするのが貴方です!」

 

「そうだね。なのはは無茶をしすぎだよ!」

 

「せやな」

 

少し涙目になった、なのは。どうやらこの場に味方は居ない様子。

反論出来ないなのはは、真面目そうだからそういう傾向が有るのかもしれない。

 

「誰も味方が居ないよぅ。上総ちゃん、助けて!」

 

「あーうん。頑張れ、なのは」

 

無理をするな、と言われている身ではなのはに助け船を出した所で、なのは以外に論破される事だろう。それに巻き込まれるのは、遠慮願いたい。

 

「上総ちゃんに見捨てられた!!」

 

笑い声が木霊する医務室は、嵐の前の平穏な日々を謳歌していた。

 

 

 

 

 


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