一色いろはの親友になってみた   作:フル・フロンタル

4 / 5
第4話

服を買った。のだが、

 

「ね、ねぇ……本当にこんなカッコするの?」

 

「当たり前じゃん」

 

いろはの説明をそのまま言うと、ロングニットカーディガン、水色のブラウス、ボリュームチュールスカート、だそうです。ヤバイ、呪文にしか聞こえない。

しかもどいつもこいつも高いのしかなかったので、ドラマCDは諦めました。

 

「………後は靴か」

 

「いや、あのっ、勘弁してくれない?恥ずかしい上にもうお金が……」

 

「えー……まぁ、お金ないなら仕方ないかぁ。とにかく、これから私と遊ぶときはこの格好して来ること」

 

「ええっ⁉︎ほ、本気⁉︎」

 

「ジャージなんて着てきたらホントもうアレだから」

 

「………わ、分かりました」

 

そ、そんなにジャージってダメなのかな……。

 

「さて、それより何か食べに行かない?お腹すいたでしょ」

 

「あ、食べに行くなら着替えていい?汚しちゃったらあれだし……」

 

「今なんか言った?」

 

「いえ、何も」

 

「じゃ、行こうか」

 

いろはの前で服のこと話すのやめよう。

 

 

 

 

いろはとのデートを終えて、私は部屋に倒れ込んだ。今着てる服見せたら、母親に「あんた誰?」って言われました。あの母親は本当に私の親ですか。

しかし、今日は疲れた。働かない幼馴染のマネージャーの分も働いた後にバイクでゲーム売りにすっ飛び、ジャージで出かけようとしたら怒られて部屋の片付けをして、上級生の怖い先輩と顔を合わせ、服買って飯食ってプリクラ撮って、UFOキャッチャーで欲しいフィギュアを目の前に歯がゆい思いをしながらいろはの欲しがったぬいぐるみ取らされて、結局ドラマCD買えなくて……でも、楽しかったんだよなぁ。

 

「はぁーあ……」

 

そういえば、いろはとこんな風に遊ぶの久し振りかも。私と友達であると共に、クラスの子とも仲良くしてるし、一方で私はクラスに友達はいないし、いろはさえいればそれでいいってスタイルだし……あ、いや、一人いるなぁ。入学式の日に出来た妙な知り合いが……。

 

 

 

 

月曜日になった。今日ほど憂鬱な日はない、切実にそう思う。何故なら、今日から五日間学校だからだ。なんだろうね、このダルさ。もう「学校」って名前の響きがダメだよね。もう少しこう……例えば、「学力育成養成所」とかみたいな名前だったら賢そうでやる気も出ると思うんだよね。いや、育成と養成って意味被ってるな、頭悪っ。

そんな意味もないことを考えながら朝飯を作って食べて、寝癖直して着替えて家を出ると、いろはが待っていた。

 

「おはよ、葵」

 

「うん。スラマッパギ」

 

「………何言ってんの?」

 

真顔で返されてしまった……。

二人で歩いて登校。このくらいの距離なら歩いて行けるので、良い運動にもなる。いや、ならないよね。

 

「………眠い」

 

「昨日、何時に寝たの」

 

「一時」

 

「それ今日じゃん……。またなんかアニメ見てたの?」

 

「は、はははぁ⁉︎アニメなんて見るわけないじゃん!ていうかアニメって何?美味しいの?」

 

「あ、そう……まぁいいけど」

 

っぶな……ついうっかりオタクバレるとこたった。

たまーに、いろはってカマかけて来るんだよなぁ……でも大丈夫、カマをかけて来るって事はまだ完全にはバレてないって事だ。

 

(いや、もうバレバレなんだけどなぁ……隠さなくてもいいのに……)

 

けど、これ以上誤魔化すのはこっちとしても厳しいところなんだよなぁ。何か策を考えないと。

 

「じゃあ、何してて寝不足なわけ?」

 

「え、えーっと……ゲー……じゃなくて、ラノ……でもなくて、えっと……そう、カフェイン取りすぎて眠れなくてさ!仕方なく映画見てたんだよ!」

 

(いや、その言い訳は苦しすぎでしょ……)

 

よし、乗り切った。うちには色んな映画のDVDあるわけだし、大丈夫だろう。

後は話を逸らすだけだ。

 

「それより、早く学校行こう。HRと1時間目は寝過ごす予定なんだから」

 

「あ、うん」

 

しかし、何か策を練らねば……バレないように。

 

 

 

 

外見がかなり変わったことにより、クラスメイトにかなりジロジロ見られたが、流石にいきなり声をかけて来る人はいなかった。

で、今は昼休み。いろははクラスの友達と昼飯。最初の方は私を誘って来たのだが、気を使わせるのも悪い気がしてきたので、誘われる前にいつも飯を食べてるベストプレイスに逃げるようになった。

それがここ、特別棟の一階、保健室横、購買斜め後ろの場所だ。ここは安らぐ、落ち着く、誰もこないの三拍子が揃っている。

いや、誰もではない。

 

「……ん、おお」

 

「あ、どうも」

 

妙な知り合いが一人来る。一つ上の比企谷八幡先輩だ。

この人との繋がりは、入学式から遡る。特に知り合いというわけではなかったが、学校の校門で何となく目が合ってしまい、何となくお互いに会釈してしまったことから始まる。

その後も本屋で同じタイミングで同じラノベを手に取ったり、ベストプレイスで顔を合わせたりしてるうちに、好きなアニメも割と合う事が発覚し、なんやかんやで話すようになった。

この人との時間は悪くない。何せ、隠してるオタク趣味を唯一お互いに話し合えるからだ。中々悪くない。

 

「隣、いいか?」

 

「どうぞ。今日は?」

 

「カレーパンとピザパン」

 

「相変わらずパンばかりですね」

 

「お前は?」

 

「私はいつも通り自分で作ってます」

 

「ふぅん、大変だな」

 

「一人分なのでそんなことないですよ」

 

「へぇ……。あ、リゼロ見た?」

 

「見ました。パックめっちゃカッコよかったですね」

 

「かっこいいんだ。まぁあれもうちょい先進むと化け物になるけどな」

 

「へぇ、原作読んでるんですか?」

 

「全部あるけど。読むなら貸してもいい」

 

「よろしくお願いします」

 

「了解」

 

黙々と飯を食べる。また口を開いた。

 

「そういや、メガネ取ったんだな」

 

「………幼馴染に無理矢理」

 

「………なんかすまん」

 

「いえ」

 

「幼馴染と二人でマネージャーだっけ?」

 

「はい。私は入りたくなかったんですけどね……」

 

「俺もなぁ、最近平塚先生に無理矢理部活に入らされてな……」

 

「なんて?」

 

「奉仕部って部活だ」

 

「なんかエロいですね」

 

「エロさ皆無の美少女が一人いるだけだ……。最近はいつもそいつに精神を削られてる」

 

「………お互い大変ですね」

 

「………ああ」

 

二人で空を見上げた。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。