~~~食堂~~~
四限目が終わり、生徒達は食堂に昼食を食べに集まりだしていた。
幸太郎「へぇ、ここが学食ってやつだね。凄く人が集まるんだね。」
幸太郎とマイルナは、既に席に座りながら、集まってくる生徒を見ていた。
すると、幸太郎達の方に千冬と箒と一夏とセシリアが近づいてきていた。
千冬「おい幸太郎!なんでお前がここにいるのか、理由を聞いてないぞ!」
千冬は机を叩きながら、幸太郎に問い詰めた。
マイルナ「さっきも言ったけど、一旦落ち着きなさい。
それより、貴方達も座れるように席はとってあるわ。
まずは座りましょ?」
マイルナがそう言うと、千冬は渋々席に座った。
千冬に続く様に、一夏達も順番に着席をした。
千冬「さぁ座ったぞ!私が納得出来る、訳を聞かせてくれ!」
幸太郎「訳って言われても…。」
幸太郎は、腕組みをしながら必死に考えていた。
幸太郎「俺って、中学に進んで無いから学歴や世間体?では、ダメ人間じゃん。
だから、せめて就職して確りと働いて、マトモな人生をおくりたいんだ。
これじゃ、ダメかな?」
幸太郎の説明に、千冬はあまり納得はしていなかった。
マイルナ「そうだ、幸太郎今なら列も少ないし、何か頼んできなさい。
その代わり、塩分や糖分の高いもの、油っこいものは頼んじゃダメよ?」
幸太郎「はぁい、そんなのわかってるよ。」
そう言って、幸太郎は席を立ち昼食を注文しに列に並んだ。
千冬「マイルナさん!貴方はどうして幸太郎を止めなかったんですか!
明かに、幸太郎の調子は悪いんでしょう!」
幸太郎に聞こえない位置に移動したのを見計らい、千冬はマイルナにも問い質した。
マイルナは、一瞬幸太郎の方を確認した。
マイルナ「貴方の言う通り、幸太郎はずっと調子が悪いわ。あの状態では、とても仕事は出来ないわ。」
千冬「わかってるならどうして!」
マイルナ「もう一度言えば、わかるかしら?幸太郎は“ずっと調子が悪いわ”」
同じ事を言われ、千冬はマイルナが何を言っているのかわからなかったが、すぐにマイルナの言いたい事が理解できた。
だが、その事実を認めたくは無かった。
千冬「ま、まさか…幸太郎は!」
マイルナ「えぇ…貴方の理解通り、あまり長くは無いわ。
私達の導き出した計算では、あと一年もつかどうか…。」
箒「そ、そんな!それじゃあ、義兄さんはあと一年しか生きられないって訳なの義姉さん!」
マイルナ「体力や食欲の低下や脈拍の低下、そして貧血等で倒れる回数で計算した結果よ。
私は、幸太郎には幸せに生きてほしいの。だから、あの子が望むなら止める事は出来なかったのよ!」
マイルナは大粒の涙を流しながら、千冬達に言った。
千冬「その事は、もう幸太郎や束には伝えてあるの?」
千冬がそう聞くと、マイルナは首を横に振った。
マイルナ「まだ幸太郎には伝えてないわ。その宣告は、あまりにも残酷で私には出来ないわ。
それに束とは、連絡がつかないの。でも、もし連絡がついたとしても、彼女にも伝える事は出来ないわ。」
すると、幸太郎が帰ってきた。
幸太郎「あれ?なんだか、空気が重いような?なんの話をしてたの?」
慌ててマイルナは、涙を拭い幸太郎の方に振り向いた。
マイルナ「べ、別に。何も無いわよ?それよりも、何を頼んできたの?」
幸太郎「フフッ、ジャジャ~ン!俺の昼食は、温かい蕎麦です。食べきれるか心配だけどね…。」
そう言って幸太郎は、自分が持ってきたお盆を、机に置いた。
机に置かれた蕎麦を見て、言葉を失った。
なぜならその蕎麦は、量が少なく普通に食べれば三口で完食してしまう程度の量だったからである。
マイルナ「そ、そう…。もし残しちゃっても、私が食べてあげるから、心配しないで。」
幸太郎「わかったよ。なんだか最近、マイルナさんや所員の皆が、妙に優しくなった様な…まぁ良いか。
それじゃあ、いただきます。」
美味しそうに蕎麦を食べる幸太郎を、マイルナ達は静かに見守る事しか出来なかった…。
なんだか、思ったよりも幸太郎の様子は悪いみたいですね…。
少しだけ、雲行きが怪しくなってきています…。