マイルナ「幸太郎!無理して起きてこなくても良いって、言ったでしょ!」
幸太郎「ゴメンねお姉ちゃん…、でもパパの声が聞こえて…。」
幸太郎は、ふらつく足でゆっくりと部屋に入ってきた。
一歩一歩歩くたびに、松陽の顔に焦りと心配の色が見えてきた。
松陽「大丈夫なのか幸太郎!痛いところは?熱があるんだろう?そんな状態で、歩いて来たのか!
気分は悪くないか?目眩は?頭痛は?もし辛いんだったら、お父さんに言いなさい。」
さっきまでの紳士的の振る舞いとうって変わって、幸太郎の為にあたふたする姿は、まさに父親そのものだった。
幸太郎「大丈夫だよパパ。それよりも…。」
そう言って幸太郎は、松陽に抱き着いた。
幸太郎「エヘヘ//久し振りのパパの匂いだ。ねぇパパ、今日はどんな用事があって来たの?
何か面白い話があるなら、聞かせてよ。」
松陽「ふぅ…、しょうがない子ですね。良いですよ、タップリ聞かせてあげますから、ソファーに座りなさい。」
そして、ソファーに座った幸太郎を横たわらせ、松陽は膝枕をした。
松陽「これなら、少しは楽になると思いますよ。でも、少しでも体調に異変があるならば、すぐに私に言いなさい。」
幸太郎「うん!エヘヘ、久し振りのパパの膝枕だ。凄く嬉しいな。」
嬉しそうに笑う幸太郎の笑顔は、束達が見たことの無いほど、輝いている笑顔だった。
一夏「それにしても、松陽さんの変化と言うか、変わりようは凄いですね。」
アル「そうだろ?幸太郎の前での松陽さんは、まさに言葉通りのお父さんだ。
子煩悩で優しく、愛情タップリで接するあの姿。普段の凛々しさとこのギャップが、松陽さんの素敵な所なんだよ。」
そう熱弁するアルベルトの姿は、まさに憧れのヒーローを前にした子供だった。
マイルナ「もう、幸太郎が来たときは、本当に驚いたのよ!?
でも、精神的に癒しとリラックスが出来れば、少しは病状も安定してくると思うわ。」
幸太郎と松陽の姿を、一夏は羨ましそうに見ていた。
そんな一夏を見た千冬の顔は、後悔と悲しさが感じられた。
束「ちーちゃん…、ちーちゃんは悪くないよ。それにちーちゃんは、いままでいっくんの事を大切に育てて来たじゃない。
いなくなった両親の代わりに、いっくんの為に尽くしてきた。だから、ちーちゃんがそんなに傷つく事はないよ。」
千冬「ありがとう束。だが、幼かった一夏に必要だったのは、親代わりの私では無く、本当の両親からの愛情だったんだ。
そのせいで、一夏には寂しい想いを沢山させてしまった。」
一夏「千冬姉!俺は別に、寂しいだなんて思った通り事は無いよ。
確かに、昔はちょっと寂しいって想う時もあったけど、千冬姉がいたから俺はここまで来れたんだ。」
一夏がそう言うと、千冬は一夏をギュッと抱き締めた。
千冬の目には、うっすらだが涙が浮かんでした。
アル「一夏の言う通りだぞ?産んでくれた両親も大切だがよ、本当に大切なのは自分に愛情を注いでくれた育ての親だ。
そうだ!ついでだからよ、俺のガキの頃の話をしてやるよ。ちと、重いかも知れないけど、気にせず聞いてくれ。」
圧倒的お父さん!
やはり松陽は、理想のお父さんです!
こんなに愛されて育ったからこそ、幸太郎はこんなにも立派になれたんですね。
次回は、アルベルトの幼い頃の話です。
どうやって孤児になったのか、どうやって松陽に会ったのかを、紹介します。
お楽しみに!