思った以上に重く辛い話に、この場の空気がシンと静まってしまった。
そしてこの場をどうにか変えようと、一夏が動いた。
一夏「そ、そう言えば奈々さんってどんな人だったんですか?
写真か何かが、残ってたりしないですか?」
いつもなら、空気が読めない一夏に皆は困っていたが、この時ばかりはそんな一夏に感謝していた。
一夏の考えを感じた松陽は、気持ちを切り替える為に一夏の考えにのった。
松陽「そうだね…、一言で奈々を説明するのなら、愛される人。だな。」
そう言って松陽は、1枚の写真を取り出し一夏達に見せた。
そこには、松陽と幸太郎と思われる赤ちゃん、そしてとても美しい女性が写っていた。
一夏「この人が奈々さんか…。凄く美人ですね…。」
箒「こ、こら一夏!何を鼻の下を伸ばしているんだ!」
セシリア「そうですよ一夏さん!もしかして一夏さんは
人妻がお好きなのですか!?」
一夏の事を好きな箒達が、一夏に詰め寄った。
その光景を見て、松陽は微笑んだ。
松陽「やはり、奈々は魔性の女だね。今まで奈々を見た総ての人が、奈々に対して恋に落ちる。
現に一夏くん以外の皆も、そうなんだろ?」
松陽の質問に、皆は下を向いた。
それは肯定を意味する行動である。
アル「そんな心配するなよ。俺達の孤児院では、奈々さんを見て恋を知る。
と、言われたくらいだからな。俺もマイルナも、初恋は奈々さんだ。」
マイルナ「そうよ。奈々さんは、言葉には表せない魅力があるわ。
その魅力の前では、性別も年齢もカップルも夫婦も関係無くなるわ。」
松陽「二人の言う通り、奈々は素敵な女性だった。そんな奈々が、こんな私を選んでくれたんだ。
それが、私が産まれてから一番の幸運だったね。」
そう言った松陽の顔は、恥ずかしそうに照れながら真っ赤になっていた。
松陽「幸太郎は、本当に奈々にそっくりだよ。あの優しさに笑顔、そして愛される。
私に似て無くて、本当に良かったと常々感じるよ。」
アル「そんな事ないですよ。誰かの為に、自分を犠牲にして助けるのは、松陽さんにそっくりですよ。
それに、あの無邪気な所は松陽さんです。」
松陽「そんな事はないよ。私なんて、元々はごみ溜めに住んでた様な、下級の人間さ。
奈々と出会わなければ、腐った精神で死んでいく。
そんなダメな男ですよ。」
千冬「松陽さんって、もしかして孤児だったんですか?」
松陽「孤児なんてレベルでは無いよ。産まれてから人権の無い、存在すら認知されない様な場所、言わば社会の闇で産まれたのが私ですよ。」
束「社会の闇…、やっぱり戦争が原因なんですよね。でも今は、義父様が作った孤児院のお陰でそんな子供は減っているんですよね。」
マイルナ「えぇ、貴方の言う通りよ。松陽さんは、二度と自分の様な暗い寂しい時間を、子供達に過ごして欲しくない。
そんな願いで、世界中に孤児院を建てたのよ。」
一夏「そうだったんですか。じゃあまだ聞きますけど、松陽さんと奈々さんの出会いって、どんな感じなんですか?」
松陽「出会いですか…、そうですね…どこから話そうか。きまりました。」
男も女も惚れさせる、奈々さんは本当に魔性の女ですね。
幸太郎の周りは、本当にハイスペックの集まりですね。
次回は、松陽と奈々さんの出会いを簡単に少しだけ説明します。
お楽しみに!