幸太郎「うぅ…ん、あれここは?」
一夏「起きたんですね幸太郎さん。あのまま、寝ちゃったんですよ。覚えて無いんですか?」
少し記憶を遡り、幸太郎は思い出した。
幸太郎「そうだったね。それよりも、もう一人で歩けるから降ろして。」
幸太郎がそう言うと、一夏は幸太郎を下に降ろした。
そして二人は、たわいのない会話をしながら廊下を歩いていた。
すると一夏は、ふと思い出した様に外を見た。
一夏「そう言えば幸太郎さん、今日は満月らしいですよ。どうですか今から見に行きませんか?」
幸太郎「満月だって!それは急いで見に行かなきゃ!」
夜の外出はおろか、外出をあまりした事のない幸太郎にとって、一夏の提案は素晴らしい提案だった。
一夏「風が吹いていないだけ、寒くないですね。ですが幸太郎さん、もし寒くなったら我慢しないでくださいね。」
幸太郎「もう、一夏は本当に心配性なんだから。そんなにやわな体じゃないよ。」
幸太郎は冗談っぽく笑ったが、それでも一夏の心配は消えなかった。
幸太郎「いざ外に出てみたけど、お月様見えないね。」
一夏「そうですね。昼間はあんなに晴れてたから、大丈夫だと思ったんですが、こんなに雲がかかってるなんて、想定外でしたね。」
二人は近くの岩に腰を下ろし、空を見上げていた。
ラウラ「どこにいるのかと思ったら、こんな所にいたのか嫁よ。随分と探したぞ。」
束「そうよ。幸太郎の部屋に行ったら、誰もいないからびっくりしたのよ?」
幸太郎「ラウラに束も来たんだ。二人も満月が出てくるのを、待ってようよ。」
束「そうね。じゃあいっくん、私達が来たからもう大丈夫よ。」
一夏「えっ!?大丈夫って言われても…。」
困った一夏だったが、顔は笑っているが何か黒いオーラが出ている束に逆らえなかった。
一夏「そ、それじゃあ幸太郎さん、俺はもう行くよ。満月は三人で楽しんでね!」
一夏はこの場から、逃げる様に急ぎ足で立ち去っていった。
幸太郎「どうしたんだろう一夏?あんなに急いで、何か用事でもあるのかな?」
束「まぁまぁ、深い事は気にしなくても良いのよ。」
ラウラ「そうだとも。それよりも、隣に座らせてもらうぞ。」
そう言って二人は、幸太郎を挟む様に隣に座った。
二人は対抗意識を燃やしていたが、幸太郎の横顔を見たらそんな気も失せていた。
すると、月にかかっていた雲がずれて満月がゆっくりと顔を出し始めた。
そして満月からの月光が、三人を照らし出した。
そのあまりの美しさに、幸太郎はその場から立ち上がった。
幸太郎「ラウラ、束!凄いね、これが満月か…。二人とも、月が綺麗だね…。」
月が綺麗。何気ない幸太郎の感想だったが、別の意味を知っている束、その意味をクラリッサから教わったラウラは、顔が真っ赤になっていた。
ラウラ「月が綺麗か…、たしかにそうだな//嫁よ、月が綺麗だな//」
束「もう幸太郎たら、大胆なんだから//そうね、月が綺麗ね本当に//」
こうして幸太郎達は、目の前の満月を満喫して、宿場へと戻っていった。
千冬「こそこそせずに、幸太郎の前に行っても良かったんじゃ無いですか?」
マイルナ「私は幸太郎を溺愛してるけど、出てって良い雰囲気か否かは、理解してるわ。」
いつからか、後ろから幸太郎を見ていたマイルナと千冬も、宿場に戻っていった。
月が綺麗、誰かに言ってみたいですね!
まぁ、そんな甘酸っぱい恋をしたこと無いですし相手はいないですがね。
それにしても、マイルナは本当に神出鬼没ですね。
幸太郎いるところに、マイルナあり!ですね。