幸太郎「パ、パパ!何で!どうして!!」
目の前で血を流しながら倒れて行く松陽に抱きつきながら、幸太郎はワンワンと泣き出した。
秋水「な、何をしてるんですか!!さっさと、その男を取り押さえて、救護班を!」
ハッとなった秋水の一言で、周りにいた人間達が男を動けないように押さえつけていた。
松陽「きゅ、救護なんかもう遅い・・・。それよりも幸太郎、怪我は無かったですか?」
苦しそうに、だがどこか和やかな表情をして幸太郎の頬に手を添えた。
松陽「わかっ・・・たでしょう。お前を護る。それは文字通りいのちがけですよ。」
秋水「お兄様!!これ以上喋れば、本当に助かりませんよ!!」
松陽「良いんだ・・・。もう良いんだ。私は長く生きすぎた・・・。秋水、お前には後日手紙が届く。そ、そこに書いてある通りにしてくれ・・・。」
幸太郎「ねぇパパ!死なないで!俺を・・・俺を独りにしないでよ!!」
松陽「フフッ、な・・きがおも、奈々そっくりで・・すね。だが幸太郎お前はもう独りじゃ無いですよ。ここに・・いる皆があ・・貴方の味方ですか・・ら。」
少しずつ顔から血の気が引いてきている松陽は、目が虚ろになりかけていた。
松陽「やっと・・やっとアイツらの所に・・。長い、本当に長い寄り道だった・・よ。土産話がここまで出来るなんてな・・。アルベルトに嫌味いわれ・・るか・・な?」
秋水「アル兄よりも、リズ兄が煩いと思いますよ。寂しがり屋ですからね。」
松陽の気持ちを酌んだのか、秋水は涙を流し笑顔を浮かべていた。
それを見て松陽も、嬉しそうにしていた。
松陽「幸太郎、これから先、貴方を護るために人は傷つきます。でも、そ・・れを無駄にしてはならない。哀しむだけ・・もダメです。貴方は、こ・・ことぶ・・き家の当主ですから。」
幸太郎「うん!わかったよ!これからは、強くなる!!誰にも怪我をさせないくらい、心も強くなる!!だから・・・、だから!!しっかり見守っててねパパ!」
泣きながら決意を固めた幸太郎の頭を、今までで一番嬉しそうに撫でながら松陽は、吐血した。
松陽「なな・・これです・・こ・・しは、父親らしいで・・ですかね?フッ、天国にいる奈々には、永遠にきけそ・・うに無いですね。私はまちが・・いなく地獄ですか・・ら。」
そう言って松陽は右手を空へと伸ばしていった。
松陽「ご・・めんな、奈々。いっし・・ょにいれな・・くて・・!奈々、何でお前が!!
そっか、むか・・え・・にか。みんなてんご・・くな・・の・・か。そっかお・・れもみんなにあ・・・」
そして、糸の切れたマリオネットの様に、伸びていた右手が下へと落ちてきた。
その表情は、全てに満足し全てを受け入れ、全てを手に入れた。
そんな清々しい表情をしていた。