アナザーラバー   作:なめらかプリン丸

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今回はセリフ多めになっています。
ご了承ください。


第110話

一夏を乗せた迎えの車は、宗次郎が待っていると思われる高級料亭に来ていた。

 

あまりに自分には敷居の高すぎる料亭を前に、緊張のあまり足がすくんでしまっていた。

案内された個室の扉を開けると、そこには宗次郎と警護の人が待っていた。

 

宗次郎「おう、遅かったな。まぁ、今日は俺がこの店を貸し切ってる。好きなだけ騒いでもいいぞ?」

 

一夏「か、貸し切りですか!?さすが元とはいえ寿家の当主なだけありますね。」

 

そう言って一夏は、宗次郎と机を挟んで座った。

 

宗次郎「さて、大切な話があるみたいだがまずは飯にするか。腹が減ってはいくさは出来ん。腹が減っては話が出来んってな。」

 

そして二人は、少しの間料亭の綾里を堪能しながら他愛もない世間話に花を咲かせていた。

 

一夏「こんな旨い飯は食った事なかったよ。ありがとなおっさん。」

 

宗次郎「じじいの暇潰しの一環だ。きにするな若造よ。で、話ってなんなんだ?」

 

そして一夏は、自分の悩みである幸太郎を守るためにアルベルトの考えに賛同すべきかを宗次郎に打ち明けた。

 

宗次郎は腕を組ながら一夏を見た。

そして深いため息を吐いた。

 

宗次郎「なるほど・・・、世界各国の要人を処刑か。あいつの考えそうな事だな。がっかりするかも知れんが、はっきり言っておく。

俺は賛成だ。」

 

一夏「そんな!!確かに、幸太郎さんを守らなきゃいけないのはわかるけど、だからって殺すのはやりすぎだろ!」

 

宗次郎「お前の言い分も痛いほどわかる。人殺しは犯罪だ。非人道的かも知れん。だが、幸太郎を守り要人どもを止めたところで無意味だ。」

 

宗次郎「要人どもを法で裁くのは不可能だし、もし逃がしたところで奴等はまた攻めてくる。今度はより攻撃力にな。」

 

一夏「でも、勝てないとわかってるなら攻めてくるとは・・・」

 

宗次郎「命の心配がないからな。自分達は安心安全。肝心な作戦は使い捨てで替えが大量にある兵士ども。それに、今は同意してない国も安全と分かれば参加するだろう。

だから見せしめが必要なんだ。無意味な殺しじゃない。幸太郎を守り続ける為に最低限必要な殺しなんだ。」

 

宗次郎「それに武力を使ってくる以上は、こちらも武力で対抗しなければならない。要人どもはわかってないが、それが戦いにおける礼儀であり作法だ。」

 

宗次郎の言いたい事は、一夏はわかっている。だが、どうしてもあと一歩心が決めきれないでいた。

 

宗次郎「かつてお前は、大切な中間を守るために無人機を2体ほど倒したそうじゃ無いか。考えてみろ?もしそれに誰かが乗っていたら。そうだったらお前は攻撃を躊躇するのか?もしその躊躇で自分が守りたい存在が守れなかったら?

殺しはいけないかもしれない。だが、その程度の倫理観や法律と自分が本当に守るべき存在を天秤にかけるな。それは侮辱であり、本当に守りたいと思ってない証拠だ。」

 

宗次郎「まだ20年も生きていない程度の人生経験で、正義や悪を決めつけて行動するな!自分が動く言い訳に下らん事をあれこれ考えるな!

何が正しくて、何が悪いかなんて知らん!人生に正義と悪は存在しない!!自分がどうするべきか、どうしたいかそれだけだ!他人のために自分をかけるのに理由はそれだけで十分だ!わかったか!!」

 

一夏「!!自分をかける理由・・・。人殺しはしたくない。でもそれでも幸太郎さんを守りたい!!今は俺に出来る事だけをしてみせる!!」

 

そう言って一夏は、清々しい顔をして出ていった。

 

宗次郎「ふぅ、中々いい顔をするじゃないか。人殺しか・・・、昔が懐かしいな。」




これにて一夏も参戦決定ですね!!

それにしても、やはり宗次郎は経験豊富なだけあって言葉の重みが違いますね。

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