次の日一夏は、授業に出ていたが考え事をしていて心ここにあらずだった。
普段なら千冬から注意されるのだが、事情を知っている千冬はあえて何もしなかった。
アルベルトは世界各国の要人を殺すと言っていたが、どうしてもそれだけは許せなかった。
かつて自分が亡国機業に誘拐され、殺されるかもしれない恐怖を味わったからこそ、他人に同じ想いをしてほしくないからだ。
一夏(はぁ・・・、俺はどうするべきなんだよ。俺も幸太郎さんを守りたい。けど、アルさんみたいに他人を平気で傷つける事は出来ない。なんで千冬姉は覚悟を決めてれたんだよ。人を傷つけるかも知れないんだぞ!?)
誰かにこの事を相談したかったが、この学園の代表候補生達には勿論、親友である弾に相談して巻き込む訳にもいかない。
悩めば悩むほどに、一夏は自分が追い詰められているように感じていた。
そうこうしているうちに、終了のチャイムがなっていた。
いつもの元気がない一夏の姿を、周りの生徒達は心配していたが良からぬ気配を感じ取っていたのか、だれも声をかけようとはしなかった。
そんな周りの気遣いが、今のところは一夏にとっては心から嬉しかった。
授業が終わり、一夏はほぼ無意識に近い状態で自分の部屋へと戻っていた。
一夏(どうすれば良いんだよ。本当に誰かを傷つけなきゃ幸太郎さんを守れないのかよ!?俺には覚悟ってのが無いだけなのかよ!?」
ふと一夏は、引き出しに入れてあった1枚の紙切れを思い出した。
それは、幸太郎の誕生日、そして二代目当主に就任した記念パーティーで宗次郎からもらった宗次郎のプライベート用の番号が書かれた紙である。
一夏「そうだよ。今の俺が相談出来る相手ってのは、おっさんだけじゃねぇかよ。
それに、困ったら電話してこい!って言ってたしな!」
そうして一夏は、紙に書かれていた番号をダイヤルした。
いざかけてみると、相手は引退したとは言え元々は世界一とも言える寿家の当主である。
さすがの一夏も少し緊張していた。
プルルル、プルルル。
と2コールがなったあと、宗次郎が電話にでた。
宗次郎「おう!待ってたぞ少年。どうした?もしかして、俺の下で働きたくなったのか?
そうかそうか!それなら今すぐに来い!それなりのポストを用意してやる。」
一夏「違いますよ。実は、どうしても相談したい事がありまして。」
一夏の真剣な声色に、宗次郎はそうとう真面目な話だと直ぐに理解した。
宗次郎「そうか。今はIS学園にいるんだろ?今すぐに迎えの車を手配する。少し待っていろ。」
いよいよ、一夏も今回の件について向き合っていかなければなりませんね。
相談相手にあの宗次郎を選ぶとは、中々素晴らしいチョイスですね。
まぁ、他にいないだけでもあるんですが。