昼食を済ませた後、千冬達は午後の授業にマイルナは保健員の仕事に行ってしまった。
幸太郎「それにしても、凄く広い学園だなぁ。歩くのに、一苦労だよ。」
幸太郎は、一人で学園内を歩いて散策していた。
中庭についた幸太郎は、疲れが来たのかベンチに腰かけた。
幸太郎「はぁ…考えてみたら、こうやって一人で過ごすのは、初めてかも知れないな…。
俺が倒れた時も、マイルナさんや所員の皆が周りにいてくれたしな。」
そんな事を考えた幸太郎は、なぜか孤独感に教われていた。
そして少しだけ、涙を流していた。
幸太郎(一人か…。でも、社会人になればこんな孤独感は、日常になって当たり前か。
でも…それでもやっぱり、一人は寂しいよ。)
幸太郎「ゴホッゴホッ!!」
幸太郎は咳をしながら、吐血をしてしまった。
その吐血を幸太郎は、何かを認める様に見ていた。
幸太郎「最近、こうやって血を吐く回数が増えてる。マイルナさんや所員の皆は隠してるけど、やっぱり俺の残りの命は、そんなに長くないのかな…。」
幸太郎はそう呟き、ベンチから立ち上がった。
そして貧血と疲れでふらつく足を引きずりながら、また園内の散策を開始した。
散策をしながら、幸太郎はこれからの事を考えていた。
無事に用務員になれたが、この体調ではマトモに仕事はこなせないだろう。
それでも、自分がマイルナに無理を言って決めた道だと、幸太郎は自分に言い聞かせた。
幸太郎「ハァ…ハァ…、結構ヤバいね…。なんだか、目がチカチカして目の前が歪んで見えてきたよ。」
既に、壁にもたれ掛からなければ立っている事も、困難になってしまっていた。
だが、いつもよりは調子が良いと幸太郎は少し安心していた。
それでも、気を抜けばすぐに倒れてしまう事には変わらない状況である。
ふと気づくと、一夏達のクラスの近くまで来ていた。
このまま教室に入れば、千冬や一夏や箒が心配しマイルナに伝え、自分は治療して貰えるだろう。
だが、幸太郎はそこから一歩も教室に近づく事はしなかった。
幸太郎(お、俺はこれまで自分の病気で、マイルナさん達に沢山の心配や負担をかけていた。
自分の命が短いのはわかってる、だからこれからは皆に余計な心配は絶対にかけない!)
そして幸太郎は、学園が用意してくれた自室に戻ろうとしだした。
幸か不幸か、マイルナと幸太郎の部屋は別々になっている。
こうして幸太郎は、他の誰かに見られる事無く無事に自室に辿り着いた。
自室のドアを開け、中に入った幸太郎は真っ先にマイルナに渡された処方箋を飲んだ。
飲んだすぐには効果は無いが、それでも幸太郎の気持ちは少しだけ楽にはなった。
幸太郎「だ、大丈夫だ…。少し横になれば、なにも無かった様に、目が覚めるはずだ…。」
そう自分に言い聞かせ、幸太郎はベッドに横になった。
幸太郎「絶対に、病気なんかには負けない!必ず病気を治して、皆と同じ様に過ごすんだ!」
幸太郎は写真立てに入っている写真を見ながら、改めてそう誓った。
その写真には、幼い頃の幸太郎とマイルナと束と箒、そして千冬と一夏が写っていた。
そして幸太郎は、そのまま深い眠りについてしまった。
やはり、自分の体の事は自分が良く知っているんですね。
例えマイルナが内緒にしていても、幸太郎は気づいていますね。