仮面ライダーディスティニー   作:茜丸

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彼女たちの決意(前編)

 がらんとした空っぽの教室の中、一つの机を囲んで座る三人の少女たち。三人が三人、やや沈んだ様な暗い表情を浮かべたまま黙りこくっている。普段は笑みや明るい表情をしていることが多いこの三人がこんな様子を見せるのは、珍しく思えた。

 部屋の中に響くのは彼女たちの吐息の音のみ、それ以外の物音が一切しないこの部屋は、まるで世界から隔絶された空間の様だ。

 そんな中、ふっと口元に笑みを浮かべた葉月が残りの二人を見ると、この状況の中で初めて声を発した。

 

「ちょっと真面目な話しようか? 久々にさ……」

 

「ええ、良いわよ。色々と意見を交換するのは良い事だしね」

 

「う、うん……」

 

 葉月の意見に乗る玲とやよい。二人は、葉月が何を語ろうとしているのかを何となく察せていた。

 数時間前の会議では、新たな情報が幾つも自分たちに提示された。それら全てを取り込み、整理できた今だからこそ、話そうと思える事がある。

 二人もまた自分と同じ思いなのだということを葉月も理解出来ていた。だからこそ、改めてここで二人の意見を聞いてみたかったのだ。

 返答を受け、軽く息を吐いた彼女は、机に身を乗り出す様にして体を前に傾ける。二人との距離を物理的に詰めてから、葉月は言った。

 

「今日の会議で出た『王の器』について、二人はどう思う? 何か思う所があるんじゃない?」

 

「思う所って、その……?」

 

「……自分もその資格を得たいと思わないのか、ってことかしら? だとしたら、私はなりたいと思うわ。残る椅子の内、一つは私が手に入れる」

 

「ん……玲ならそう言うと思ってたよ。やっぱ、そうだよね……」

 

 腕を組み、しきりに頷く葉月。やよいはそんな彼女と真剣な表情を浮かべる玲の顔を交互に見てはおろおろしていた。

 玲もまた二人を視界に映しながら拳をぎゅっと握る。彼女の脳裏には、少し前の出来事が浮かび上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会議の終了後、玲は謙哉と共に会議室に残っていた。別段、何かを話そうとしたわけでは無く、ただ仲間たちが去って行く中で二人だけが残っただけだ。

 二人きりの空間だというのに全く良い雰囲気にならないのは、直前の会議の内容が後を引いているのだろう。玲も楽しくおしゃべりという気分では無かったものの、一つだけ確認したいことがあったために重い口を開いて謙哉に話しかけた。

 

「……謙哉、あなたはこれからどうするつもり? あなたは魔王たちと同じ立場になった、力も手に入れた……あなたはどうしたいの?」

 

「今までと何も変わらないよ。僕は皆を守る為に戦う、それだけさ」

 

「それだけ? ……世界を変えられる程の力を手に入れられるかもしれないのよ? 少しは野望とか無いの? 男の子らしく、世界征服とか……」

 

 からかう様に謙哉へ笑みを見せながら、玲の胸中は不安で仕方が無かった。今の言葉も、冗談では無くある種の確認として口にしたものだ。

 人は変わる、良い意味でも悪い意味でも、変わってしまう。どんな人間も、一生そのままであり続けられる訳では無い。良い例が自分だ、人を信じず、一人で生きていくと固く決意していた玲は、謙哉との出会いで変わった。仲間を信じ、人に恋をする様になったなど、昔の自分が聞いたら到底信じられないだろう。

 そして、彼女の両親もそうだった。優しかった父と母は変わってしまった。あんなに愛してくれていた玲を捨ててしまう程に心の冷たい人間になってしまった。

 玲は人が変わってしまうことについての恐ろしさと温かさを身に染みて理解していた。そして、だからこそ不安だった。優しい謙哉が強大な力を得たことによって、変わってしまうのではないかと思ったからだ。

 

 もしも、彼が世界を滅ぼせるだけの力を手に入れられたら? それを手にした彼が野心を抱いてしまったら? 謙哉が欲望のままに動く可能性は0だとは言い切れない。

 無論、玲は謙哉を信じている。だが、謙哉が100%正しい側に立ってくれるかどうかなどわからないのだ。

 彼は変わってしまうかもしれない。優しく、温かい謙哉が、居なくなってしまうかもしれない……そう思うと玲の胸は締め付けられる程に痛んだ。そして、言い様の無い不安に襲われる。その不安を掻き消す為、確証が無くとも彼の「変わらない」という言葉が聞きたかった。

 

「世界征服だなんて、そんなことする訳ないよ。ていうか、僕がそんなこと出来る人間だと思う?」

 

「……言われてみればそうね。あなたがそんな大したことが出来る人には思えないわ」

 

「あっ、酷いなぁ。そこまで言う?」

 

 玲の望み通り、謙哉は温かな言葉と共にその不安を一蹴してくれた。やはり彼が変わることはないのだと、玲は安心することが出来た。

 そう、何の確証も無くとも、これで自分は安堵出来る……笑みを浮かべ、心の平穏を取り戻した玲が顔を上げた時だった。

 

「……ねえ、水無月さん。ちょっとだけ聞いてくれる?」

 

「えっ……!?」

 

 玲の頬に何かが触れた。それは、ぞっとするほど冷たかった。

 次いで謙哉から告げられた言葉に目を見開いた彼女は、自分の頬に触れているのは謙哉の手であることを知る。恐ろしいくらいに冷たいそれとどこか空虚な謙哉の瞳に背筋を凍らせた玲は、息を飲みこんで硬直してしまった。

 

「少しだけ、ほんの少しだけで良いんだ。僕の独り言を聞いて欲しい。もう二度と口には出来ない僕の本音だろうからさ」

 

 寂し気に謙哉が微笑む。その言葉に答えを返せないまま玲は彼へと視線を注ぐ。謙哉は、そんな玲の様子などお構いなしといった感じで言葉を紡ぎ始めた。

 

「誰かを守る為に戦うって気持ちに嘘は無い、皆の為に戦うって気持ちにも嘘は無い。でも、本当はね……とても怖いんだ」

 

「え……?」

 

「負けたら死ぬかもしれないってことも怖い、誰かが死んじゃうかもしれないってことも怖い。でも、でも……一番怖いのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことなんだ」

 

 玲の頬に触れる謙哉の手は震えていた。玲にはそれが、まるで温もりを求める赤子の様な弱々しいものに感じられた。

 

「……僕がゲームオーバーにしたエックスは、人間だったかもしれない。それはつまり、僕が人を殺してしまったってことになるんだと思う。知らなかったとはいえ、僕は……人を殺してしまったんだ……」

 

 謙哉の独白を耳にした玲は喉を詰まらせた。彼の言葉を否定したくとも、声が出て来なかった。

 ただ首を横に振り、貴方は悪く無いと謙哉に伝えようとする玲。謙哉はそんな彼女の行為に微笑みを浮かべながら、悲し気にはなしを続ける。

 

「良いんだ、事実は変わらないから。それに後悔もしてないよ。僕は皆を守る為に……水無月さんを助ける為に戦って、勝った。その結果として、僕はエックスを殺してしまった。この事実はどう足掻いたって消えない、だからこそ後悔しちゃいけないんだ。僕は人を殺した、その事実から逃げちゃいけなんだと思う。そして――僕は、これからもそんなことを続けなきゃいけないんだ」

 

 ズキリと、玲の胸が痛んだ。自分が小さなことで安堵しているすぐ傍で、謙哉が苦しんでいることに気が付けなかったことが悔しかった。

 そして、それ以上に情けなかった。弱い自分がまた彼に寄り掛かろうとしていた。傷つき、苦しんでいる謙哉に縋ろうとしていた。そのことが堪らなく玲の心を締め付けていた。

 

「もう僕は戻れない、誰かを殺してしまったという事実からは逃げられない……だから、皆にこの重しを背負って欲しくないんだ。僕が全ての魔王を倒して、彼らを殺してしまえば良いって、そう思って自分を納得させようとしてたんだ。でも、でもさ――本当は怖いんだよ、水無月さん……!」

 

 謙哉の声が震える。瞳から涙が零れる。玲もまた、いつの間にか涙して視界を滲ませていた。

 玲には想像しきれない苦しみと恐怖、それを抱いた謙哉は初めてその感情を吐露している。弱音を、本音を玲に告げ、彼女に弱い自分を晒している。そんな謙哉を目の前にする玲は、彼の言葉を聞くことに必死で瞬きをすることすらも忘れていた。

 

「怖いよ……これから僕は人を殺さなきゃいけないんだって考えると凄く怖いんだ……。ガグマとシドーが人間だったら、僕は最低でもあと二人の人間を殺さなきゃいけなくなる。マキシマが裏切ったらもう一人、残る椅子に座る人間が悪人だったら、合計で五人だ。僕は、僕は……それだけの人間を殺す戦いに参加することになっちゃったんだ……」

 

「けん、や……」

 

「でも……僕がやらなきゃいけないんだ。皆を守れるのは僕だけだから……! 僕がやらなきゃ、皆が死んじゃう。そんなの絶対に嫌だ! だから、僕がやらなきゃ……! だって僕はもう一人殺してるから! もう戻れないから!」

 

「謙哉、もう、もうっ……!」

 

「勇にも、白峯くんにも、他の皆にも……誰にもこの苦しみを味合わせちゃいけない。こんな思いをするのは僕一人で沢山だ! だから僕が、僕が――っ!」

 

「もうやめてっ! 謙哉っっ!!」

 

 悲痛な玲の叫びが木霊する。同時に自分の側へと謙哉を抱き寄せた玲は、強く彼を抱き締めながらその背を撫でた。

 自分より頭一つは大きい謙哉が、とても小さく感じられる……弱々しく震え、怯える子供の様な謙哉は、か細い声で呟き続けていた。

 

「怖いよ、水無月さん……! 誰かを殺すことが本当に怖い……! 本当は逃げ出してしまいたい、でも僕がやらなきゃいけないんだ。だから、でも……怖いんだよ……!」

 

 今、自分の腕の中にいる青年は、強くて弱い人間だ。本当は怖くて仕方が無い癖に、その本音を押し殺して恐怖に立ち向かおうとしている。だが、どうしてもその思いを捨てきれない人間なのだ。

 それは正しい人の在り方であり、同時に歪な在り方でもある。虎牙謙哉という男は、誰よりも真っすぐであり過ぎた。だからこそ、抱える恐怖もここまで大きく膨れ上がっているのだろう。

 

 玲は悟る、謙哉はエックスを倒したあの日から、ずっと苦悩していたのだ。人を殺してしまったのかもしれないという苦悩。自分が人殺しになってしまったかもしれないという恐怖。そういったものとずっと格闘していたのだ。

 そこに今日の会議の内容である。謙哉は今日、自分がこの苦しみをずっと背負わなくてはならないことを知り、他の誰にもこの思いをさせたく無いと思った。だが、それはあまりにも過酷な道だ。20にも満たない年齢の子供が選ぶには、到底苦し過ぎる選択だった。

 

「だい、じょうぶ、大丈夫よ……大丈夫だから……!」

 

 震える謙哉の頭を撫でながら玲は思う、何が大丈夫なのだろうかと。自分には謙哉の苦しみを取り除くことは出来ない、こうして抱き締めることくらいしか出来ないのだ。それで何が大丈夫なのかと、玲は心の中で自分を笑っていた。

 

「大丈夫……! 私が傍に居るから、何時でも抱き締めてあげるから……! だから大丈夫よ、謙哉……!」

 

 今、自分が出来ることだけを口にて、ありふれた慰めの言葉を謙哉へかける玲の体もまた、小さく震え続けていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私は王の器を手に入れる。アイツ一人に全部を背負わせる訳にはいかないから……!」

 

 絞り出す様に声を発した玲は、葉月とやよいに眼差しを向けた。二人もまた、玲のその視線から彼女の強い決意を感じ取り、頷きを見せる。

 理由を教えてはくれないが、玲は本気だ。本気で王の器を手に入れようとしている……そしてそれはおそらく謙哉の為なのだろうという所までを察した二人であったが、それぞれ複雑そうな表情を浮かべて口を開いた。

 

「でも、難しいんじゃないかな。方法もさっぱりわからないし……」

 

「それでもよ。方法を見つけ出して、私も魔王と戦えるだけの力を手に入れるわ。そう決めたから」

 

 おどおどとした様子で玲に意見したやよいは、彼女の身を案じつつ視線を向ける。王の器を手に入れた者が厳しい戦いに飛び込むことは理解している。親友にその苦しい戦いを味わって欲しくないと思うのは、優しい彼女からすれば当然のことだった。

 しかし、玲も自分の思いを譲るつもりは無い様だ。彼女の真っすぐな雰囲気に何も言えなくなってしまったやよいに代わり、今度は葉月が口を開く。

 

「そっか……じゃあ、アタシと玲はライバルだね。同じ王の器を狙うライバルだ」

 

「葉月、あなたも王になるつもりなの?」

 

「うんにゃ! アタシは王にはならないよ。……アタシは、勇を王にする」

 

「!?」

 

 今度は玲が驚く番だった。やよいもまた、葉月の宣言に驚きを隠せずにいる。

 自分では無く、勇に王の器を捧げようとしている葉月。彼女は、頬杖を突くとニヤけた面のまま自分の思いを語り出す。

 

「玲は怒るかもしれないけどさ。謙哉よりも勇の方が王様に相応しいと思うんだよね! ……アタシたちの誰より、勇が世界の未来を背負うに相応しい人間だと思ってる。だから、アタシは勇に王になって欲しい」

 

「待ちなさいよ、葉月。それって何? 龍堂と謙哉を戦わせる気があるってこと? 世界の運命を背負う人間を決める為、あの二人を争わせるつもり?」

 

「そんなんじゃないよ! もしも勇が王の器を手に入れたとして、他の王を倒した後でどちらかがマキシマみたいに権利を放棄すればいいだけじゃん? ……それに、謙哉だけに力を握らせておくのは危ないかもしれないよ?」

 

「……どう言う意味かしら?」

 

 部屋の中にピリリとした緊張感が走る。普段は仲が良い二人の間に張り詰めた鋭い空気は、どこか重苦しく感じられた。

 

「玲はさ、もしも謙哉が世界を滅ぼそうとしたら、どうする?」

 

「ありえない、そんなことになったりしない」

 

「もしもの話だよ。謙哉が力を手に入れて、世界を自分の物にしようとしたら? 玲は謙哉を止めることが出来――」

 

「ありえないって言ってるでしょ!」

 

 淡々とした葉月の問いかけに感情的になって叫ぶ玲。いつもとは逆の反応を見せる二人をやよいはおろおろと見比べることしか出来ない。

 悪戯っぽく笑う葉月と肩で息をしながら前のめりになる玲。対照的な二人が視線をぶつける中、先に口を開いたのは葉月だった。

 

「アタシはね、止めないよ。もしも勇が王になって、世界を自分の物にしようとしたら……それに手を貸すと思う」

 

「あなた、何を言って――!?」

 

「そりゃあ、勇が悪の親玉になって沢山の人を虐殺ー、とかありえないとは思ってるよ? でもさ、逆にそんな風に勇がなるとしたなら……それは、そうした方が良いと勇が判断したからだと思うんだ」

 

「……だから、勇さんがおかしくなったとしても止めないで手を貸すってことなの? もしもの話だとしても、そんなの怖いよ……」

 

「そうだね……アタシも美又と似た様な人間だってことかな? ……アタシは、勇が変わったとしても構わない。変わった彼について行って、それで……新しい王の誕生を目にしてみたいな」

 

「葉月……!」

 

 淀んでいる様な、それでいて澄んでいる葉月の瞳を見た玲とやよいは息を飲んだ。それは、いつもは無邪気な彼女が初めて見せる黒い一面を目の当たりにしたことへの衝撃と、彼女にそこまで言わせるこの状況への戸惑いから来る反応で、二人は自分の胸の中に生まれたこの感情を処理出来ずに狼狽しつつある。

 ただ一人、この中で唯一冷静な葉月は椅子から立ち上がると、ゆっくりとした足取りで部屋を出て行った。去り際に、玲とやよいへ順番に視線を送りつつ、二人への言葉を残す。

 

「玲……玲はアタシと逆だよ。玲は自分が大好きな謙哉に変わって欲しくないから力を求めてる。対等な位置に立って、傍に居ようとしているんだよね? ……でも、謙哉が望んでるのはそんな存在じゃ無いと思うよ。少なくとも、アタシが謙哉だったら玲には王の器を手に入れて欲しいとは思わないかな。その辺のことも考えてみれば?」

 

「………」

 

「やよいはさ、自分がどうしたいかを考えた方が良いよ。やよいは凄い女の子だってこと、アタシたちは知ってる……だからこそ、ここからの戦いは自分の意思で何を目指すかを決めなきゃいけないんだ。そうしなきゃ、やよいは本当の力を出しきれないと思うから。誰か、じゃなくって、自分の為の戦いを始めなきゃ、ね……」

 

「葉月、ちゃん……」

 

「もしかしたら……アタシたちは、正面切って戦うことは出来なくなるのかもしれない。でも、誰かを支える戦いなら出来ると思うんだ。それが女の子だけが持つ強さで、男には出来ないことだと思うから」

 

 ガラリと扉を開いた葉月は、その言葉を最後に教室から出て行ってしまった。取り残された二人は、何とも言えない空気の中で硬直したまま微塵も動かないでいる。

 そして、同時に息を吐いて脱力した玲とやよいは、そのままぺたりと背後にあった椅子に腰かけた。首だけを動かして相手を見つめ、今の葉月の言葉に何を感じ取ったのかを視線だけで語り合う。

 

「……真美ちゃんもさ、同じ様なことを言ってたよ。きっと、今も光牙さんの為に動いてるんだと思う」

 

「そう……皆、想い人の為に一生懸命ってことなのね……」

 

「……玲ちゃん、私さ――」

 

「???」 

 

「私は……皆と仲良くしたいって思う。人間だけじゃなく、もし協力してくれるならマキシマみたいな魔王とも仲良くして、世界中が平和なら良いなって思うんだ。だから、王の器とか言われてもいまいちピンと来なくて、その為に皆が喧嘩するのは、嫌だなとしか思えないんだ」

 

「……あなたらしいわ、やよい。とっても優しくて、温かい気持ちじゃない」

 

「でもさ、それじゃ駄目なのかな? これからは苦しい戦いが続くから、もっと強い覚悟を決めなきゃいけないのかな? 葉月ちゃんや、真美ちゃんみたいに……」

 

「……いいえ、私はそうは思わないわ。やよい、あなたは……あなたは、変わらないでいて。私と葉月は変わってしまうかもしれないけど、それでも……あなただけは、そのままでいてね。お願いだから……」

 

 泣き出しそうなやよいにそう告げ、今日は何度も大切な人たちの泣き顔を見る日だなと苦笑しながら、玲は天井を見上げる。葉月の残した言葉を思い返し、深く息を吐く。

 またきっと、何かが動くのだろう。自分たちの全てを巻き込んで、変わって行くのだろう。

 自分が変わることを望みながら、大切な者には変わって欲しく無いと願う自分はとんだ強欲な女だなと自嘲して、玲は自分自身を鼻で笑う。それでも、その身勝手な願いを捨てることは出来ないのであった。

 





純白の歌姫(ピュアホワイト・ディーヴァ) ユー

ATK 1

HP  5

分類 人間 歌姫 アイドル



効果

他の「歌姫」を持つカードが場に出る度、そのターン中このカードのATKを+1する

他の「歌姫」を持つカードが場から離れる度、このカードのHPを1回復する(1ターンに三回まで)




「さあ、君もアイドルになろう!」



天空橋博士からのワンポイントアドバイス!


ディスティニーカード第二弾『異世界への旅路』から、新テーマの『歌姫(ディーヴァ)』の核となるカードをご紹介!

分類『アイドル』を持つカードは、場に出た時と場から離れる時に発動する様々な効果を持っている。カードのドロー、装備のサーチ、他のカードの強化……という様な効果を存分に使って、次々と新しいカードを場に出すプレイスタイルは、正にアイドルのライブ! 『純白の歌姫 ユー』は、そういったアイドルカードの効果と噛み合った能力を持つ切り札となるカードだ!
ガンガンフィールドに『歌姫』を出し、その効果でアドバンテージを稼ぎつつ、攻撃力を強化! 最後は超強力な一撃でゲームを決めろ!

ユーとは、英語で君、という意味を持つ。このカードで君もアイドルとなって、他のカードと一緒に輝こう!


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