仮面ライダーディスティニー   作:茜丸

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 ネット版スピンオフ、始まります!

 この物語は何処に続いて行くのか……?


ネット版スピンオフ レジェンドライダーの魂!平成一期編
ブレイド編


 

 

「謙哉、こっちだ!」

 

「分かった! 急ごう!」

 

 騒ぐ人込みを掻き分けて二人は走っていた。つい先ほど天空橋から町中にエネミーが出現したのと報告を受けた二人は、急ぎ現場に急行していた。

 もう既に光牙たちが戦闘を開始しているはずだ、自分たちも急いで加勢しなければならない。そう思いながら目的地に到着した二人が見たのは、信じられない光景だった。

 

「み、皆っ!」

 

「嘘だろ、おい……」

 

 地面に倒れているのは自分たちの仲間、光牙に櫂、ディーヴァの三人が傷だらけになって伏しているのだ。全員命には別条は無い様で立ち上がろうとしているが、彼らを見下ろす白い影は悠々と広場の中央に立っていた。

 

「皆、大丈夫か!?」

 

「龍堂くん! 虎牙くん!」

 

「皆をここまで追い込むなんて……まさかボスクラスのエネミーなのか?」

 

 勇と謙哉は仲間たちに駆け寄ると鋭い目でエネミーを睨む。たった一体だけのその敵は、真っ白な体をした何の特徴もない奴であった。

 

「とにかくここからは俺たちに任せてくれ!」

 

「皆は下がってて!」

 

「ち、違うの勇っち! 何か変なんだよ!」

 

「カードが使えないんです! だから変身も出来なくて……」

 

「え……!?」

 

 やよいと葉月の言葉に驚いた勇は『ディス』のカードをギアドライバーに読み取らせる。普段ならば電子音声が流れて自分の体を鎧が包むのだが、何故か今回は何の反応も無かった。

 

「な、何でだ…!?」

 

「僕のドライバーもそうだ……まさか、これが敵の能力なのか!?」

 

「くくく……違うさ、これは私達の能力では無い……」

 

「しゃ、喋った!?」

 

 あの魔王ガグマの様に人間の言葉を口にする白いエネミー、相当な知能が無ければ出来ない言語を有すると言う芸当に勇たちは驚きながら警戒を強める。

 やはりこのエネミーは只者では無い……変身出来なくとも敵意を漲らせる勇たちに対して、白いエネミーは話し続ける。

 

「変身、と言ったな……お前たちがそれを出来ないのは、資格が無いからさ」

 

「資格……だと?」

 

「ああ、そうさ! 我々は君たちがエネミーと呼ぶ存在であって、そうでは無い。様々な世界に蔓延する悪意が集合した存在……それが、私たちだ」

 

「何訳の分からない事を言ってやがる! お前はエネミーだろうが!」

 

 白いエネミーの話を理解できない櫂がそう叫びを上げる。その様子をくっくっと喉を鳴らして笑いながら見ていたエネミーは、手の中に一枚のカードを出現させながら言った。

 

「理解できないのも仕方が無い。では、君たちに分かりやすく実例を見せてあげよう」

 

『アンデッド……!』

 

 どこからか鈍く低い声が響く。その声を背景に手に持ったカードを自分の胸の中へと押し込んでいくエネミーの体に突如変化が起き始めた。

 

 白く、無機質だった体の色と形が変わっていく。唸り声を上げながらカードを完全にその身の中に飲み込んだエネミーは、先ほどまでとは大きく違う姿へと様変わりしていた。

 

 白かった体は金色に、姿もまるで大きなカブトムシをモチーフにした怪人の姿へと変わっている。

 手に持った剣と盾を打ち鳴らした後で、白いエネミーだったその怪人は自分の名を告げた。

 

「我が名はコーカサスビートルアンデッド……不死なる者、アンデッドの王が一人……!」

 

「アンデッド……だと……!?」 

 

 エネミーとは違う敵の出現に驚きを隠せない勇たち。だが、そんな彼らに遠慮することなくアンデッドと名乗った怪人は襲い掛かって来る。

 

「ぐっ、わぁっ!」

 

 剣での攻撃は何とか躱すもその後に繰り出された前蹴りを喰らって吹き飛ばされる。生身のままで戦おうとしていた謙哉たちも瞬く間に蹴散らされてしまった。

 

「お前たちには資格が無い……我らと戦う『仮面ライダー』としての資格がな……!」

 

「どういう……意味だ……!?」

 

「お前が知る必要は無いさ、白峯光牙。お前は、ただ自分の運命をなぞって破滅の道を歩いて行けば良い」

 

「なんだと!? ぐわっ!!!」

 

 その言葉の意味を問い詰めようとした光牙の腹にアンデッドの容赦の無い拳が見舞われる。その一撃を喰らった光牙は気を失い、ガクリとその場に倒れ伏してしまった。

 

「光牙っ!」

 

「他人の心配をしている暇はないぞ、龍堂勇……!」

 

「ぐっ……!」

 

 アンデッドは勇の首を締め上げると、その顔を自分の顔に近づける。そして、何かを知っている様な口ぶりで彼に語り掛ける。

 

「お前は、ここで我々に殺されておいた方が幸せだ。『その時』が来たらお前は必ず後悔する……お前の辿る運命はそう言うものなのさ!」

 

「なん、だと……っ!?」

 

「だからここで死ね。苦痛も無く死すことが、お前の最大の喜びだ」

 

「勇っ!!!」

 

 葉月の悲痛な悲鳴が響く、このままアンデッドの一撃を喰らい、勇が命を落とすかと思われたが……

 

「ふっ、ざけんなっ!」

 

「何っ!?」

 

 勇は自分を掴むアンデッドの手を振りほどくと蹴りを喰らわせる。予想外の反撃を受けたアンデッドは勇を取りこぼすと必死に抗う勇に対して忌々し気に言葉を吐き捨てた。

 

「何故抗う!? 何故苦しむ道を選ぶ!? 今だって戦う力も無い癖に何故我らに挑む!?」

 

「決まってんだろ、俺が『仮面ライダー』だからだ!」

 

 そう叫ぶと勇はアンデッドへと殴りかかって行く。何度も繰り出される拳はダメージを与える事は出来ていないのだろうが、アンデッドは勇のその気迫に押されていた。

 

「……俺や、この世界に生きる皆の命を運命だなんて言葉で片付けられてたまるかよ! どれだけお前が強かろうと、変身できなかろうと、俺は戦う!」

 

「無意味な事を! カードも無しに我らを倒す事など出来はしない!」

 

「例えカードが一枚も無くても、お前を倒せるはずだ……俺に、『仮面ライダー』としての資格があるのなら! 俺は、世界中の戦えない人の為に、戦い抜いて見せる!」

 

「ぐっ、おおっ!?」

 

 自分の決意を叫びながら戦う勇の勢いの前にアンデッドは押されて行く、やがて、大きく振りかぶった勇の渾身の一撃が相手の胴を捉え、大きく後ろへ後退させた。

 

「ば、馬鹿な……!? 何故、ただの人間にこんな力が……!?」

 

「人間だからさ! 誰かの為に戦う時、人は一番強くなるんだ!」

 

 力強く、未知の敵に勇は言い放つ。力無き人々の命の為、運命などと言う確証も無いものを押し付ける敵を倒す為、その拳を握りしめた勇の耳に不思議な声が聞こえて来た。

 

(……そうさ、それで良い。人は、人だからこそ誰かを愛せる。そして、その為に強くなれる……)

 

「誰……なんだ?」

 

 謎の人物の声に振り返れども姿は見えない。だが、確かな力を感じた勇はその手を前に突き出す。

 

(……きっと君なら俺の力を使いこなせる。さぁ、掴み取れ! 運命の切り札を!)

 

 光が勇を包む。それが消えた時、勇の手の中には一枚のカードがあった。

 そこに描かれていたのは剣を持つ青と銀の騎士……何かを感じた勇は、そのカードを構えるとギアドライバーへと通した。

 

「……変身ッ!」

 

『ブレイド! スペード ザ エース!』

 

 カードを通した瞬間、何の反応も無かったドライバーから電子音声が響き渡り、勇の前には青いエネルギーの壁が出現した。カブトムシの様な模様が描かれたその壁に向かって勇は走り出す。

 

「うおおぉぉっ!」

 

 その壁を突き抜けた勇の姿は大きく変わっていた。普段のディスティニーを基にカラーリングは青と銀、カブトムシと騎士が混じり合った様な姿になった勇は腰に差してあった剣を引き抜くやいなやそれをアンデッドに振るった。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁっ!?」

 

 火花が散り、斬撃が舞う。勇の攻撃を受けたアンデッドはたじろぐと理解できないと言った様子で呟いた。

 

「そ、その姿は『ブレイド』の力か……? 何故、貴様がその力を!?」

 

「ごちゃごちゃ、うっせぇんだよ! お前ら風に言えば、俺に資格があったってだけだろ!」

 

<マッハ! スラッシュ!>

 

 手に持つ剣、『醒剣ブレイラウザー』と勇の足に力が籠って行く。次の瞬間、爆発的な加速で駆け出した勇は、強化されたブレイラウザーによる強力な斬撃を繰り出した。

 

「ぐわぁぁっ!」

 

「まだ、まだっ!」

 

<ビート!>

 

 今度は拳に力が籠められる。繰り出されたパンチを盾で防ごうとしたアンデッドだったが、その盾を打ち破った勇の拳はアンデッドの胴へ突き刺さり、大きく後ろへ吹き飛ばした。

 

「ぐっ、はぁ……っ!」

 

「……お前、言ってたな。俺には苦しい運命が待ち受けているって………上等だ、なら俺は戦ってやるよ、その運命と!」

 

<キック! サンダー! マッハ!>

 

 力が、雷撃が、加速力が、勇の足へと集まって行く。勇の後ろには3つのカードの絵柄が浮き上がり、それが勇に力を与えていた。

 

「そして俺は勝って見せる! 俺を襲う運命には負けはしない!」

 

<必殺技発動! ライトニングソニック!>

 

 最大まで高められた力を解き放つ様にして勇は走る。強力な体当たりをアンデッドに喰らわせて体勢を崩させると、勇は一気に上空へと跳び上がった。

 

「うおぉぉぉぉぉっ!」

 

「また、この世界でも我らの邪魔をするか! 仮面ライダーァァァァッ!!!」

 

 雷を纏った右脚がアンデッドにぶち当たる。その一撃を受けたアンデッドは憎しみを込めた断末魔の叫びを上げると共に爆発四散した。

 

「……はっ!」

 

 戦いに勝利した勇の上から舞い降りる一枚のカード、『アンデッド』と書かれたそのカードを手に取った勇は先ほど手に入れた『ブレイド』のカードと共にそれを見る。

 

「これは、一体……?」

 

 ディスティニーカードとそっくりだがこんなカードは見た事が無い。一体このカードはなんなのかと疑問を持った勇の耳に、またしても聞き覚えの無い声が届いた。

 

「そいつは『レジェンドライダーカード』……数多の世界を救うために戦って来た『仮面ライダー』の力が込められたカードさ」

 

「だ、誰だっ!?」

 

「今、私の名を教えるには早い。君たちが英雄たちに認められたその時こそ、私の正体を明かそう」

 

 謎の声は徐々に勇たちから離れて行く、その声は最後にこう言った。

 

「手に入れろ! 強大な悪に立ち向かう光の強さを! そして学ぶのだ! 仮面ライダーの在り方を!」

 

「仮面ライダーの、在り方……?」

 

 『ブレイド』のカードを握りしめたまま、勇はその言葉の意味を考えていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――NEXT RIDER……

 

「こんな奴らの為に、これ以上誰かの涙は見たくない! 皆に笑顔でいて欲しいんだ!」

 

「だからそこで見てて……僕の、変身!」

 

次回、『伝説』

 

 

 


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