仮面ライダーディスティニー   作:茜丸

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語られる秘密、天空橋の過去

勇と謙哉は天空橋に案内されて彼の研究室へとやってきていた。ほんの少し前に設立された部署のはずなのだが、すでに部屋の中は物で溢れかえっている。

恐らく研究資料である本や英語で書かれたプリントなどが散らばる室内で天空橋はと言うと、二人から受け取った名馬のカードをパソコンに読み取らせて何やら作業をしていた。

 

「ほいほい、ここをこーして……良し、オッケー!」

 

パソコンを操作していた天空橋だったが、急にそう叫ぶと両手を挙げて椅子にもたれ掛かる。そして、首だけをこちら側に倒して二人に話しかけてきた。

 

「作業は終わりましたよ。あとは時間が経てば完成です」

 

「一体何作ってんだよオッサン?」

 

「ふっふっふ……それはまぁ、見てのお楽しみって事で!」

 

天空橋は滑車付きの椅子を転がしてそのまま二人の元へとやって来る。そして、顎に手を当てて何かを考え始めた。

 

「ふ~む……この時間で色々とお二人に話して置きたいことがあるんですけど、何から話せば良いんですかねぇ…?」

 

「あの……今更なんですけど、僕がドライバ所有者で良いんでしょうか?」

 

「あぁ、その事ですか。何も問題ないですよ。私は勇さんに好きに使う様に言って2機のドライバーを渡しました。その時点でそれは勇さんの物です。勇さんがあなたにドライバーを渡したと言うのなら、それに関しては私からは何も言う事は無いですよ」

 

謙哉の質問に答えた天空橋は再び悩み顔をして考え込む、そして何かを納得したかの様に目を開くと、こう言った。

 

「決めた。やっぱり、このドライバーをどうして作ったのかを話す事にしましょうか」

 

「……オッサン、このドライバーの開発者だって言うのはマジなのか?」

 

「マジもマジ、大マジですよ。ついでに言うならゲームギアもディスティニーカードの私が開発した物なんです」

 

「ま、マジかよ!?」

 

「嘘はつきませんって、でも、私が開発した物で勇さんたちがもっと驚く様なものがありますよ」

 

「な、なんだよそれって……?」

 

緊張した様子で天空橋を見る二人、その視線を感じながら少しだけ頬を歪ませた後で、天空橋は口を開いた。

 

「……皆さんが攻略しようとしているもう一つの世界、ソサエティ……あれも、私が作ったものなんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは十年以上前の話です。私は、数多くのヒットゲームを手掛けるゲームクリエイターとして活動していました」

 

「ゲームクリエイター…?」

 

「ゲームの基礎を作り、どんなストーリーにするかを脚本家と決め、プログラミングをチェックして、ゲームを世に送り出す。そういう仕事です。自慢じゃないですけど、天空橋渡と言ったら、業界の人間ならだれもが知る程だったんですよ」

 

「そのゲームクリエイターが何で政府の元で働くことになったんだよ?」

 

「……十数年前、私にはとある夢がありました。それは、最高のゲームを作る事………誰もが熱狂し、のめり込むゲームを作りたいと思った私は、数年の歳月をかけて一つのゲームの基礎となるプログラムを作り上げました」

 

昔を懐かしむ様な口ぶりで話を始めた天空橋、勇と謙哉は黙ってその話を聞き続ける。

 

「ゲームの名は『ディスティニークエスト』、広大な世界を冒険するRPGゲームで、これまでに無い自由度を誇るゲームにするためにそのマップの広さは広大な物になりました。数多くの困難を乗り越え、本格的にゲームの開発を始めようとした時、あの『リアリティ』が生まれたのです」

 

「世界を混乱に陥れるコンピュータウイルス『リアリティ』、その脅威を前に各国政府はある決断を下します。それは、広大なゲームマップを誇る開発中のゲーム、ディスティニークエストにリアリティを閉じ込めると言うものです」

 

「……あんたは、その……納得したのか?自分のゲームがそんな風に使われることを」

 

「……できませんでしたよ。でも、そうしなければ世界が滅ぶと言われて泣く泣く諦めました。これで世界が救われるのならと無理に自分に言い聞かせたんです。しかし……」

 

「世界は救われなかった。リアリティ達はディスティニークエストの中で進化を果たしてしまった」

 

「その通りですよ。私は深く絶望し、そして怒りました。私の作った生涯最高のゲームが今、未知の存在によって人類の脅威へと化している事に。そして、これを止める事こそが私の使命だと考えたのです」

 

ちゃんと座りなおした天空橋は二人に向き直ると再び口を開く

 

「まず私はエネミーと戦えるだけの力を持つ方法を考えました。思いついたのは、向こうがゲームで来るのならこちらもゲームで迎え撃てばいいと言うものだったのです。そこで私は、ディスティニークエストを元としたカードゲームを作り、それにリアリティを感染させる事に成功しました」

 

「えっ!?こ、このカードってリアリティに感染してるんですか!?」

 

「カードだから何の意味もありませんがね。リアリティはそのカードの中に閉じ込められています。しかし、一度ゲームとして変化すれば実態を持ったものとして生み出される。それを可能にしたのが……」

 

「ゲームギア、ってことか……」

 

「その通りです。これで人類はソサエティと戦う術を得た。しかし、私はそれだけでは足りないと思ったのです。そして、最後に人間に強力な力を与える兵器、ギアドライバーを作り上げました。そして政府に4機のドライバーを献上し、内二つの所有者を選定する権利を得たんです」

 

「それが、オッサンの辿って来た道って事か……」

 

天空橋の過去、そしてドライバーやディスティニーカードの誕生秘話を聞いた勇は自分の懐にあるギアドライバーに目を移す。

 

ソサエティの生みの親が、ソサエティを打ち倒すために作り出した兵器……それが、このギアドライバー

これを作る時、天空橋は何を思っていたのだろうか?子供たちを楽しませるために作っていたゲームが化け物を生み出す温床とされ、世界を危機に陥れている事をどの様に思っているのだろう?

 

(……きっと、歯痒いんだろうな)

 

もうこれ以上、ソサエティを悪しき物にさせたくない。生みの親として、その暴走を止める事が使命だと誓って数々の発明を繰り返してきたのだろう。

彼もまた、強い信念の元に戦う戦士なのだと勇は思った。

 

「本当なら、私が先頭に立って戦わなければならないんでしょうが、なんせもう歳でしてねぇ……運動もてんで駄目だし、他の皆さんの力を頼るしかなかったんですよねぇ…」

 

「……オッサンにとっては、自分の作り出したゲームを取り戻す戦いでもあるってことか」

 

「……正確には、自分の過去と決別するための戦いでしょうかね。戻ってこない過去を、自分の作り出したゲームと共に葬り去りたいんでしょうかねぇ…?」

 

自嘲気味な笑みを浮かべながら、天空橋はそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー同時刻、虹彩学園のある市内の駅前では帰宅目的の会社員たちで賑わっていた。

それ以外にもちらほらと学生や子供たちの姿も見える。いつも通りの夕方の喧騒の中、それはいきなり現れた。

 

「なんだ?ありゃぁ……?」

 

サラリーマンの一人がそう言って足を止める。視線の先には見慣れない物体がふよふよと浮かんでいるのが見える。

 

ゆっくりと回転する赤い輪、現実に現れた異世界からの歪な贈り物……

 

ゲートが、姿を現したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何ですって?それは大変だ!」

 

研究室内で話していた天空橋だったが、突如けたたましく鳴り響いた電話の音に話を切って立ち上がるとその電話に出る。

黙って何事かを聞いていた天空橋の顔色が一気に変わると、急いで電話を切って勇たちの元に戻って来た。

 

「緊急事態です。K駅前にゲートが出現、ソサエティとの境界を開いてエネミーが侵攻を始めたという報告が入ってきました」

 

「なっ!?マジかよ!?」

 

「対応はどうなってるんですか!?」

 

「K市の警察が対応しているようですが、状況は芳しくない様です。このままでは甚大な被害が出るでしょう」

 

「謙哉、行くぞ!」

 

「ああ!」

 

「ちょっと待ったお二人さん!」

 

天空橋から話を聞いた二人は急いで駅に向かおうとする。しかし、天空橋はそんな二人を呼び止めるとその手に一枚ずつカードを持って二人に差し出す

 

「こいつを使ってください。先ほど持ってきてもらったカードで作った新兵器です」

 

「これは……?」

 

「ちょっとカードの情報を弄って、とある物に姿を変えさせました。ところでお二人さん、重要な質問なんですが……バイクの免許持ってますか?」

 

カードの絵柄と天空橋の言葉にすべてを察した二人は、揃って首を縦に振ってから外へと駆け出して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁっ!」

 

「ギャイッ、ギャァァッ!!!」

 

駅前に人の悲鳴とエネミーの鳴き声が木霊する。前にカードショップ前に現れたジャイアントホッパーによく似たエネミーとその一団は逃げ惑う人々を追って破壊の限りを尽くしていた。

 

「撃てっ!撃てえっ!」

 

警官隊が銃を向けて発砲するも何の反応も無くエネミーはこちら側に向かって来る。パトカーのドアを掴んだエネミーは、そのままドアを車体から引き千切ると振り回し始めた。

 

「ギュゥウゥルィィッ!」

 

ガン、ガン、と振り回されるドアが警官隊に当たり、その度に人が吹き飛ぶ。抵抗も虚しくあっという間に壊滅した抵抗部隊を尻目にエネミーたちは再び破壊活動を始めた。

 

「こちらはK駅前です。今現在、ここではエネミーが現れ破壊活動を行っています。近隣の住民の皆さんは速やかに避難をしてください!」

 

テレビ局のキャスターがやってきて一連の映像をカメラで捉える。破壊される建造物、泣き叫ぶ人の声、エネミーの咆哮……生々しく映るその映像を日本中に人々がテレビを介して見ていた。

 

「あぁぁぁん!わぁぁぁん!おかぁさぁん!」

 

カメラが泣き叫ぶ小さな女の子を映し出す。どうやら母親とはぐれてしまった様だ、必死になって母親の事を呼び続ける少女の前に、一体のエネミーが立ちはだかった

 

「ひっ……!」

 

先ほどまでの鳴き声が嘘の様に少女は黙り込む。そんな少女に向かってエネミーはその鋭い爪を振り上げた……その時だった

 

ブゥゥゥゥゥゥン……

 

遠くから聞こえるエンジンの駆動音、徐々に大きく、こちらに近づいて来るその音に人間もエネミーも注目し、動きを止めた。

市街地に続く長い国道の向こう側から近づいて来る二つの影、黒と青のバイクに跨った二人の人間が猛スピードでこちらに向かってきているのが見える。

 

「謙哉っ!行くぞっ!」

 

「OK!」

 

二人は腰にドライバーを当てると、片手を離してカードを掴み取る。バイクが駅のターミナルに差し掛かろうとするその時、二人は同時に叫んだ。

 

「「変身っ!」」

 

<ディスティニー! チェンジ ザ ディスティニー!>

 

<ナイト! GO!ファイト!GO!ナイト!>

 

そのまま二人は左右に分かれるとそれぞれ目の前の敵にバイクでの強烈な体当たりを喰らわせる。あの少女を襲おうとしていたエネミーを吹き飛ばした後、バイクから降りた勇は少女の頭を撫でながら彼女の無事を確かめる。

 

「もう大丈夫だ!立てるか?」

 

「う、うん!」

 

「よし!ここは危ないから急いで逃げるんだ!」

 

「わ、わかった!」

 

とてとてと走り出した少女を見送った後、振り返った勇はディスティニーソードのカードを取り出すと身構える。目視できる敵の数は四体、うち一体は恐らくボス級だ。

 

「へっ!ちょっと物足りねぇが相手してやるよ……ゲームスタートだ!」

 

<運命剣 ディスティニーソード!>

 

カードをリードしてディスティニーソードを召喚する勇、民間人の避難が完了している事を確認すると一目散に敵の集団へと斬りかかって行く

 

「うらぁっ!」

 

「ガガッ!?」

 

敵の一体を切り伏せ、二体目へと向かう。まずは敵の体勢を崩す事を目的とした突きを繰り出し、相手の体をのけ反らせた勇はそのまましゃがみ込むと足払いの要領で剣を振り回す。

 

「グギッ!?」

 

「おっっしゃぁっ!」

 

足を斬られバランスを崩したエネミーに向かって強烈な振り下ろしを決める勇、確かな手応えと共に目の前のエネミーから火花が飛び散った。

 

「ガガアァッ!?」

 

「これで終いだぁっ!」

 

<スラッシュ!>

 

ディスティニーソードに斬撃強化のカードを読み取らせる勇、そのまま敵に躍り掛かった後、目の前で怯む敵に向かって剣を振り下ろした。

 

「ギャァァァァァッ!」

 

斬撃、悲鳴、爆発……一連の流れをものの数秒の間に行った後、勇は次の相手に挑みかかる。しかし、そんな彼の背中に向かって一体のエネミーが飛び掛かった。

 

「っっ!やべっ!」

 

とっさに振り向いて迎撃しようとする勇だったがどうやら間に合いそうにない。ダメージを受ける事を覚悟して歯を食いしばった彼だったが……

 

「もう、油断大敵だよ勇!」

 

勇の前に謙哉が割って入ると、左腕に付けられたイージスシールドで敵の攻撃を受け止めた。そのまま左腕を振るうと、敵は盾に弾き飛ばされる形で攻撃を受け、よろめき体勢を崩す。

 

「サンキュ、謙哉」

 

頼りになる相棒に感謝の意を示すと、勇は再びエネミーに向かって斬りかかる。後ろの敵は謙哉に任せても問題ないだろう。そう考えた勇はホルダーから筋力強化のカードを取り出すとギアドライバーにリードする。

 

<パワフル!>

 

跳び上がり強烈な一撃を見舞う勇、謙哉もまた立ち上がったエネミーに蹴りを喰らわせると、そのままの勢いを持って拳の連打を叩きこむ。

二人が果敢にエネミーと戦う姿は先ほどまで駅の惨状を映していたカメラにもしっかりと撮られており、生放送の番組のキャスターが興奮気味に実況を続ける。

 

「な、何なのでしょうか彼らは!?突如バイクに乗った二人組の仮面の戦士が現れ、エネミーと戦いを開始しました!襲われそうになっていた少女を助けた事から我々人間の味方の様ですが……」

 

キャスターの実況が続く間にも二人の戦いは進む。勇は回転切りの要領で一気に二体のエネミーを切り払うと、再び体を反転させながらその二体の胴を切り裂く、謙哉はエネミーの胸に拳を叩きこんだ後、盾の付いた左腕での強烈な裏拳をよろめく相手の側頭部に喰らわせる。

 

「ウゥガァァッ……!」

 

エネミーの内、勇が相手をしていた雑魚と思われる二体はその攻撃で爆発し、光の粒へと還って行った。

残るは謙哉と戦うボス格のみ、振り返った勇の目に謙哉が自分の盾を叩いて勇に手招きをしている姿が映った

 

「……なるほどな、いっちょ行くか!」

 

その意図を理解した勇は謙哉に向かって走り出す。剣を上に構え、何時かに使ったあの必殺技を発動する。

 

「たぁっ!」

 

剣にエネルギーが溜まり始めたのを見計らって勇はその場から跳び上がる。着地地点の目標は謙哉の頭の上辺り、しかし無論そのまま謙哉を踏みつける訳では無い。

 

「勇っ!」

 

「おうよっ!」

 

謙哉が頭上に構えた盾を踏みつけて再び跳び上がる勇、二度の跳躍で十分に勢いがついた剣撃が残るエネミーに迫る!

 

<必殺技発動! ディスティニーブレイク!>

 

「おらっ!っしゃぁっ!」

 

縦の振り下ろしの後、横に切り裂く薙ぎ払い。最初に繰り出した時と同じ軌道を描いて放たれた必殺の一撃は、前と同じ様にエネミーの体に黒と紅の十字架を刻む

 

「グギッ……グガァァァッ!!!」

 

腕を広げ、じたばたともがいた後でエネミーは断末魔の悲鳴を上げて爆発四散した。戦いの終わりを確信した二人が緊張を解くと、それを待っていたかのように電子音声が鳴る。

 

<ゲームクリア! ゴー、リザルト!>

 

いつも通りに現れた画面を見てみれば、勇のレベル表記は5から6に上がっている。謙哉も2から4へとレベルアップしていた。

更に、暗くなった画面が再び明るく光ると、ラッキーボーナスの文字が浮かび上がり、勇の前に新たなカードが出現した。

 

「……『スマッシュキック』、蹴り技のカードかぁ」

 

「良かったじゃない。ラッキーだね、勇!」

 

「う~ん……俺、もうキック技のカードは持ってるんだよなぁ……あ、そうだ!謙哉、これお前にやるよ!」

 

「えっ!良いの!?」

 

「構わねぇよ。使ってみて気に入ったらそのままお前の物にしてくれ、俺は前に手に入れた奴が気に入ってるからな」

 

「わーい!ありがとう!」

 

手に入れたスマッシュキックのカードを謙哉に渡す勇、二人が変身を解除しようとした時、乗ってきたバイクに通信が入っている事に気が付いた。

 

『もしもしお二人さん、そっちの様子はどうですか?』

 

「オッサンか、こっちはもう終わったよ」

 

「このバイクのおかげであっという間に現場に辿り着けました!ありがとうございます!」

 

『そりゃあ良かった。と言いたい所なんですがね。実はもう一か所エネミーが現れたと言う報告があるんですよ』

 

「またかよ!?んで、今度は何処なんだ?」

 

『K市内の市街地です。規模はあまり大きくないようですが、場所が場所なので急いで対処をお願いします』

 

「あいよ。んじゃ、速攻向かってやるよ!」

 

ひらりとバイクに跨った勇はエンジンをかけると一気に速度を上げてその場から立ち去る。謙哉もまた安全運転を意識しながら勇の後を追って行ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……指定されたポイントってここだよな?」

 

一足先に事件現場に辿り着いた勇はバイクから降りて周りの様子を確認する。しかし、そこで妙な事に気が付いた。

 

(なんか……静かすぎやしねぇか?)

 

エネミーの暴れる音どころか人の声一つもしない。本当にここにエネミーが現れたのかと心配になったが、逆に市街地に人っ子一人居ないのも何か事件が起きたからだろう。

つまり、この場で何かが起きた事は間違いないのだ。問題はなぜここまで静かなのかと言う事だが……

 

「……ん?」

 

ゆっくりと市街地を歩いていた勇の目に気になる物が映った。それは、何かを囲む様にして騒ぐ人だかりであった。

よくよく聞いてみれば拍手の様な音も聞こえる。何が何だか分からないが無事な人間が居るのは間違いない。もしかしたら向こうにエネミーが居るのかもしれない。

 

そう考えた勇はその人だかりに近づいて行く。ゆっくりと慎重にその様子を窺っていた勇だったが、突如としてその足を止めた。

 

「……嘘だろ?」

 

勇が目にした物、それは市街地に集まる人々の輪の中心に居た3つの人影

数多くの人から拍手喝采を受け、歓声を受けるその三人の姿は普通の人間とは異なっていた。

 

赤、青、黄の三色の装備に身を包んだその姿は、紛れもなく勇たちと同じ仮面の戦士だ。その証拠に腰にはギアドライバーが装着されている

 

「5、6、7人目の……戦士だと…?」

 

あまりにも早く、そして唐突なその登場に勇はただその姿を見る事しか出来なかった。

 

 


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