資源再利用艦隊 フィフス・シエラ   作:オラクルMk-II

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皆様お久し振りです。

コラボ企画第二弾、今回はいつも感想を頂いていた早瀬誠晏様の作品、「艦隊これくしょん~特自第一機動歩兵団」とのコラボレーションになります。

作者様からは許可を頂いたため、今回も  超 転 回  になる可能性が大です。
ご了承ください。


ゴーストアーミィ・ワイルドスイムズ(艦隊これくしょん~特自第一海上機動歩兵団コラボレーション企画)
時よ


 

 

 

 ウツギが、若葉との一対一の演習で一日を費やした日から数年。RDを仲介しての深海棲艦との停戦交渉も着々と進み、今、日本という国の海には平穏が戻りつつあった。

 そんな穏やかな日々が続くなか。ほどほどに晴れて、ちょうどよく涼しい風が吹く過ごしやすい気候の今日。少ない仕事を早々に終わらせてしまい、第五鎮守府の執務室で、ウツギは深尾と他愛ない無駄話に花を咲かせていた。

 

「暇だな。そう思わない?」

 

「良いことじゃないか。自分達に仕事が来ない、って事はそれだけ平和ってことだろう」

 

「いや、若葉が最近うるさくてな......」

 

「単艦で出撃でもさせればいいんじゃないか。二つ返事で了承すると思うが」

 

 「まさか。何かあったら上からドヤされるぞ」。おちゃらけたような苦笑いで返答してきた自分の上司に薄い笑顔で返事をし、ウツギは読んでいた本に意識を集中させる。

 ......これ、前に読んだやつだな。数行読んでそんな事を思いながら、ウツギが本を閉じたとき。部屋に置いてあった固定電話が鳴る。

 

「はい、こちら第五横須賀鎮守府です。ご用件は.........」

 

 ただでさえ最近暇なのに、ここに電話なんて久々だな。いつぶりだろうか。

 受話器に一番近かった深尾の応対を見ながら、ウツギは電話の内容についてと平行して考える。数分後、通話を終えた深尾の口から出てきたのは、こんな話だった。

 

「ウツギ、お客さんが来るとさ」

 

「珍しいな。また査察の依頼かと思ってた」

 

「俺もそー思ってたんだがね。またどうにもお偉いさんが来るらしい......」

 

 自慢じゃ無いが、自分達の大戦果で、すっかりその「お偉いさん」の仲間入りした深尾の上を行くお偉いさんね。まさか元帥レベルだろうか。

 相変わらずの仏頂面で、椅子に深く腰掛けながら、ウツギが、着崩していた軍服を直している上司を見ていたとき。ドアを軽く三回ノックして、セーラー服の上から緑色の防弾ジャケットを羽織った艦娘......磯風が入ってくる。

 

「失礼します.........所長、客が来てるぞ」

 

「......!? もう来たのか!?」

 

「あぁ。なにかやましいことでもやったか? スゴそうなのが来てるぜ?」

 

 前に居た部隊のクセが抜けきっていないのか、深尾を「所長」と呼んだ磯風が、口を弓型に歪めて楽しそうな顔になる。

 スゴそうなの......一体何がどう「スゴい」のだろうか。気になったウツギは磯風に聞いてみる。

 

「スゴいとはなんだ」

 

「マッポの首みたいなヤツさ。黒い服着て椅子にふんぞり返ってそーな。まだ若かったがな」

 

「.........マッポ??」

 

「おっと、サツとかおまわりって言ったほうが良かったかナ......まぁなんか胸にこれ見よがしにバッヂがジャラジャラだったから。気を付けといたほうがいいと思うよ」

 

 「護衛もなんだかクサかったから頑張って」。へらへらしながら、そう言って磯風はふらふらと部屋を出ていく。

 ......要約すると、警視総監みたいな人が来たってことか。......べつに何もないけど。一応、立ち振舞いは気を付けるか。

 「客」を出迎えるため、ウツギは椅子に掛けていた戦袍(ひたたれ)(外套の一種。せんぽうとも読む。)を羽織りながら、深尾と一緒になって部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

瀬川範政(せがわ のりまさ)"特将"だ。よろしく」

 

「お初にお目にかかります。第一艦隊にて、旗艦を勤めさせていただいております。ウツギと申します。遠路はるばる、お越しいただき、ありがとうございます.........」

 

 二人が部屋を出た数分後。来客を探すためにと鎮守府の外で深尾と別れたウツギの近くに停車していた、パールブラックの高級セダンから護衛の艦娘二人と共に降りてきた、若いながらもどこか貫禄と威圧感がある男へ。ウツギが挨拶をしてからお辞儀をする。

 ......敬語、これで合ってたかな。間違っていたらどうしよう......。

 襲撃者でも現れようものなら皆殺しにしてやろう、とでも言いたそうに目を爛々と輝かせて殺気だっていた護衛二人に、凄まじい悪寒と居心地の悪さを感じながら......努めて無表情で、ウツギが考えていると。男の方から声をかけられる。

 

「堅苦しい挨拶はいい。案内頼む」

 

「はい。ではこちらに......」

 

「「............」」

 

 いったい私が何をしたというんだ......なんでこんなに猟犬みたいな目で睨まれないといけない......。まさか言葉遣いが間違っていたか。

 心のなかでぶちぶちと文句を垂れながら。ウツギは帽子を目深に被り直し、背後から突き刺さる視線を出来る限り無視しながら、三人を来客室に案内する。

 

 背中からのプレッシャーのせいなのか、いつもは短く感じる廊下が、今のウツギにはなぜか永久回廊に感じるほど長く思えていた時。廊下の突き当たりで春雨と会った。

 

「あっ、おはようございまス」

 

「おはよう.........」

 

「後ろの方は......お客様でしょうカ」

 

「そうd.........」

 

 

「仕事の話で邪魔しに来た。瀬川範政だ。君は、駆逐棲姫だな?」

 

 

 .........? 春雨に用事があるのか?

 案内の途中だったのが、春雨を見たとたんに足を止め、彼女に話を振る瀬川を見て、ウツギが気になっていると、男はそのまま続ける。

 

「良いところで会ったもんだ。客の俺が言うのもあれだが、着いてきてくれないか」

 

「...............?」

 

「今回の仕事が関係しているんだがね......君が一番適任なんだ」

 

「あ、あの......すいません、何がなんだか......」

 

 今回の作戦で春雨を突撃にでも使う気か?

 彼女の体質を知っているウツギが、瀬川の言葉に割り込みながら考える。すると瀬川は、自分に劣らずずっと仏頂面だった顔をほんの少しだけ笑顔にして、こう言った。

 

「詳しいことは部屋でだが」

 

 

「南方海域に現れた戦艦棲姫。そいつについての案件だ」

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 鎮守府近海の水中。ウツギが、水面から差し込んでくる光をうっとおしく思っていると、目の前で自分と同じく水のなかに潜っていた艦娘...... 護衛についていた一人が口を開いた。

 

「呉鎮守府から来ました。航空母艦、加賀です」

 

「......どうも」

 

「初めましテ」

 

 一体何なんだろうな。この状況は......。自分と春雨、相対する加賀の三人が海に潜って話をしているこの状態に、違和感を感じながら、ウツギも口を開く。

 

「あの......なぜ水の中でお話ししなければいけないのでしょうか」

 

「これから話す内容のせいね。結構デリケートな話題なの。言いたくないけど、内通者とかが居たら大変でしょう」

 

「なるほど。ではもうひとつ......どうして貴女もこの場所で平然としていられるのでしょうか」

 

 体が人間よりかは深海棲艦に傾いている自分や春雨はともかく、こいつは艦娘のはずだ。潜水艦の艦娘でもなければ、艦娘というのは水中という環境に拒否反応を示すはずなんだが。

 水の中に潜って既に数分。常人ならもう息継ぎに戻る時間をゆうに越えていることについてウツギが加賀に突っ込むと、相手はこう返事をした。

 

「あら、今言おうと思っていたのだけれど......そうね」

 

 

「私も貴女と同じなの。資源再利用艦の一人よ」

 

 

「............!!.........どこで建造されたのでしょうか」

 

「貴女たち三人とは違うわ。呉の設備で私は造られたの。正確には「改造された」と言ったほうが正しいかしら」

 

「改造された......?」

 

「......昔は空母棲姫って名前だったわ。RDって名乗っている装甲空母姫がいるでしょう? それと同じ。私も降伏してきたのよ」

 

「「..................」」

 

「続けるわ。向こうのやり方についていけなくなって、逃げてきたわけだけど。失敗して、後ろから撃たれて瀕死で海を漂っていたの。そうしたら、呉の鎮守府に拾われて......」

 

「最初は酷い有り様だったらしいわ。覚えていないけど、四肢は焼ききれて損失。外傷が酷すぎて修復材も効果なし。じゃあどうしたか......本当に、人間の技術には感服するわ」

 

「貴女を作った研究所の技術......そして深海棲艦化の技術を統合して治療したそうよ」

 

「......と、言うと」

 

「艦娘から深海棲艦が作れるなら、逆もできると考えたのよ。春雨さん。あなたの逆になるわ。私という艦娘は。......みてくれだけで、この通り水の中で息をするなんて平気だけど」

 

 ......逆、か。そんなことができたんだな。

 最初こそ嘘かと思っていたが、彼女の頭にちらついている白い髪の毛と、手袋でもしているのかと思いきや、地肌が指先に進むにつれて黒くなっている腕を見て。本当かな、とウツギが思っていると。加賀が話題を変えて続ける。

 

「話を戻すわ。南方海域に現れた戦艦棲姫の撃退。それを貴女たちに頼みに来たわ」

 

「私たちである必要ガ?」

 

「あとで話すけど、ちゃんと理由があるわ。この深海棲艦......数ヵ月前に、降伏を装って基地を占拠して、周辺海域に睨みをきかせているらしいの。これを追い払うのに協力して頂戴」

 

「撃退、と言いますが、撃破、轟沈は?」

 

「もちろん許可が出ているわ......そう簡単に行くとは思えないけど......」

 

 加賀が話していたその時。ウツギが外套の中に入れていた防水のスマートフォンのバイブレーションが起動し、何かと思った彼女は、携帯の画面を覗く。そこには、鎮守府に戻るようにと、深尾からのメッセージが送信されていた。

 

「どうしたのかしら」

 

「鎮守府に戻るようにと。内通者や盗聴機等の確認が終わったので、こんな場所で話す必要も無くなったみたいです」

 

「そう。じゃあ、あがりましょうか」

 

「はイ」

 

「............」

 

 戦艦棲姫の撃退か。同じ深海棲艦がいることは別に驚くことでもないが......前ほど厄介な敵じゃないことを祈るか。

 「どーせ今回も一筋縄じゃいかないのだろう」。なんとなく、これまでの経験からそう考えながら。ウツギは水中で深く息をはく。口から漏れた空気が泡になり、それは水面にぶつかって消えていった。

 

 

「......頑張るか。」

 

 

 太陽光を反射して、水中からでもきらきらと光っている水面を見上げながら、ウツギは一人呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

唐突に現れた五人目のリサイクル艦、加賀。

基地に戻ったウツギは、彼女を擁する特殊部隊、

それへの編入を命じられる。

そして同時に、彼女は特将より「ある作戦」を授かる。

 

 次回「桜の森」。 「おしおき」が始まる。

 

 




いかがでしたでしょうか。

たった数週間ですが文章力がガタ落ちしてそーで怖い作者です(白目

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