資源再利用艦隊 フィフス・シエラ   作:オラクルMk-II

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明石「徹夜で作業......疲れた......」
ウツギ「どうぞ」つクレープ
明石「.........!? お母さんの味だ!?」
ウツギ「え......?」


小休止

 

 

 

 

 

@@月 -%日

 

 

 手術で動けなくなった春風と

 どうにか刀だけでなら戦える墨流(すみながし)を連れて

 この島に着いた

 考えることはただひとつ

 田中 恵

 私から

 私たちから全てを奪ったあの女を殺す それだけだ

 

 

 

 

$¥月 &#日

 

 島に住むようになってもう半年だ

 部屋に持ち込んだラジオで傍受(ぼうじゅ)した情報を頼りに

 ここ数日であいつに関係する船を二人がかりで片端から切り刻んで沈めてやった

 しかし残念なことに 用心深いやつなのかあいつは乗っていなかった

 船から強奪した歩兵用の武器は墨流に持たせることにした

 自分も弾薬が心許なくなってきた頃だ

 深海棲艦から取ってくるか

 

 

 

 

=^月 /_日

 

 「あなたたちは見逃してあげる。そのほうが楽しそうだから」 

 あのふざけた嘲笑の言葉が毎晩夢に出てきて非常に精神衛生的によろしくない

 それに聞いた話ではまだあいつは違う鎮守府で働いているらしいではないか

 腹が立ってしようがなかったので島に通りがかった駆逐艦をバラバラにしてやった

 ストレス発散に加えて弾の補充も出来た

 上々の結果だ

 

 

 

 

$>月 &"日

 

 ついにこの日が来た 

 ここからそう遠くない場所にある鎮守府

 第五横須賀鎮守府があの女の乗った船の護衛をやるという情報を得た

 護衛は四人

 聞いたことのない名前の艦娘が一人居たがたいして問題にもならないだろう

 待っていろ田中

 お前は私が直々に夕霧(ゆうぎり)でバラバラにしてやる

 

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

「.........な~んか、さ」

 

 島の調査に行った二日後。いつかに使った会議室にて、ウツギが日向に頼んで作らせた神風の日記のコピーを読んだ天龍が何とも言えない表情で呟く。

 

「ものっそい負の感情っていうかなんてゆーか......」

 

「言いたい事は解る。それよりも......球磨と木曾は中々の運を持っていたようで」

 

「言えてる。あの二人がこんな状態のあいつらに会ったら何されてたか......」

 

 「島に斬殺死体が二つ人知れず埋められてたかも」。そんな事を言って、知らないうちに危機を回避していた二人にウツギと天龍が溜め息をつく。考えてみれば艤装も無しに何キロも海を航行していた時点で解りきったことだったが。

 日記のコピーを一通り見終わった天龍が、次は高雄の経歴やプロフィールの載っている書類の束を手にして読み始める。向かい合う席にいたウツギは、机に積まれた鎮守府の設備強化についての書類を捌いていた。

 

「艦娘になる前の名前、井上 墨流。戦災孤児で、神風の親がやってた剣道場で養子になって生活......墨流ってまた変な名前だな」

 

「神風が付けた名前だとさ。元は名前も知らずに行き倒れていた孤児の少女。それが高雄。墨流は書道の技法の名前らしい」

 

「ふ~ん。にしても剣道場ねぇ......刀持ちはそこからか」

 

 天龍は高雄についての書類を放って、次は神風の事が書かれたコピー紙の塊を手に取る。

 

「人間時代は......なんだこれ、神風心刀流(かみかぜしんとうりゅう)を現代に伝える道場、神鳴舘(しんめいかん)の......師範代!?そんなにスゴい奴だったのあいつ!?」

 

「それだけじゃない。日向に聞いたが大本営の艦娘にもファンが居たほどの手練れの艦娘だったらしいぞ」

 

「うえぇマジかよ......なんで若葉はそんな奴とやりあって生きてんだ......」

 

「呼んだか?」

 

 話題に挙げた若葉の声が突然自分の後ろから聞こえた事に、天龍が変な声を出して驚いて膝を机に強打する。すごく痛そうだ。

 

「あったたた......びっくりしたぁ、いつから居たお前?」

 

「『うえぇマジかよ』から居たぞ......ンフふ......♪」

 

 膝を押さえてひいひい言う天龍を見て、彼女を(あざけ)るように若葉が顔を歪める。そして「面白そうな物を持っているじゃないか。見せろ」と言って天龍が机に置いた書類に目を通し始めた。

 

「神風心刀流。通常の剣道のような武術ではなく「とにかく勝つこと」に重きを置いた流派。用いる刀剣や構えは特殊な物が多い......ね。なるほどなるほど.........奴の刀もその一種と言うわけだ。......くふふ.........」

 

「日記の最後に乗ってた夕霧ってのは?俺気になったんだけど」

 

「神風の持っている刀の名前らしい。今の技術でも解析不能な謎の刀、と明石さんは頭を抱えてボヤいてたよ」

 

「ふフふふ......それはそれは......こわーい一品だナ......?」

 

 そう言うと、どこへ仕舞っていたのか。若葉は背中から一振りの刀を取り出して、それを書類で埋まった机の上に置く。ウツギと天龍が驚いた顔でそれを見つめる。

 

「なんで持っていたんだ?」

 

「んふフフッ......こいつで人を斬りたくなった」

 

「てめぇ......!」

 

「おっと、冗談冗談。何時ものが刃こぼれしたんでね。今度からこいつを使うことにしたのさ」

 

 若葉の冗談に聞こえない冗談を流し、二人が机に置かれた刀......「夕霧」をまじまじと眺める。一見すると日本刀に見えるがどういうわけか握る部分は西洋の剣のようにナックルガードが取り付けられており、刀身が妖しく赤色に光っていてなんとも不気味な美しさを放っている。

 

「......「妖刀」って表現が合いそうな武器だな。俺はやだねこんなの使うのは」

 

「自分もだ。あと、若葉」

 

「......使っていいと許可は出たのか?」

 

「別に、うまくやればバレやしないさ。それに」

 

「持ち主は連行されて大本営。勝手に使わせてもらうよ......うふふ.........」

 

 若葉は机に置いた刀を鞘に仕舞って、部屋を出ていった。数分間二人が呆けていると、館内放送がかかる。

 内容は「新しく鎮守府にやって来る整備員の出迎えをする」と言うものだった。

 

「......部屋、出るか。ウツギ」

 

「そうだな」

 

 こうして、二人も若葉に続いて部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

鎌田(かまた) 康平(こうへい)です。よろしくお願いします」

 

田代(たしろ) (そう)っす。頑張ります」

 

 夕方に差し掛かった昼過ぎ、鎮守府の駐車場にて。長身で顔立ちの整った男と、背丈は普通で目付きが悪い眼鏡の男が自己紹介をする。

 本当なら深尾が出迎える予定だったらしいが、今は書類と格闘中だということで、ウツギ他特にやることもなく暇だったツユクサ、アザミ、天龍、漣が挨拶をする。

 

「ウツギです。施設のご案内を」

 

「あ、大丈夫ですよ。建物の間取りは確認してきたので」

 

「......そうですか。では」

 

「ちょっといいすか」

 

 鎌田と名乗った男に案内はいいと言われ、ウツギが退がろうとした時に今度は鎌田の隣に居た田代に呼び止められる。

 さっきから思っていたが目力が......その、睨み付けて来るような人相はどうにか出来ないのだろうか。ウツギが田代の目付きの悪さに心の中で悪態をつく。

 

「なんでしょう?」

 

「ツユクサさんに話があるんです」

 

「へっ?アタシ?」

 

「..................」

 

 話がある。そう言ったにも関わらず、田代はツユクサの前にたった途端に無言になる。やりたいことがあるなら早く済ませてくれないだろうか。仕事が残っていたため急いでいたウツギがそう思っていると、漣達が何やらこそこそ話している。

 

「お、愛の告白かな......?」

 

「馬鹿.........その......訳.........無イ.........」

 

(聞こえるってもっと声小さくしろ!)

 

 天龍、残念だが聞こえているぞ。ウツギがそう思っていると田代が言う。

 

「ツユクサさん」

 

 

 

 

「俺の彼女になってください!!!!!」

 

 

 

 

「え」

 

 

 

 

瞬間、空気が凍り付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

突然の告白にたじろぐツユクサ。

この言葉に込められた田代の真意とは。

オーバーホールが完了した暁の艤装を持って、ウツギ、シエラ隊は近隣の部隊の救援へ。

そこで若葉に異変が起こる。

 

 次回「夕霧」 沈む夕陽の光に照らされて。

 




ずっとやりたかった話だったのでスッキリしたぜぇ!!(白目)

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