資源再利用艦隊 フィフス・シエラ   作:オラクルMk-II

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作者が艦これアーケードしかやったことがないということをいいことに戦闘はやりたい放題です。


シェイクダウン

 

 相変わらず鉛色の空のせいで薄暗い今日という日の昼前。海上を四人の艦娘が滑るように移動している。編隊を組んで移動しているのは先頭から 漣、ウツギ、ツユクサ、アザミだ。

しかしそんな部隊の旗艦を任命された漣は不機嫌そうな表情で目の前に広がる水平線を見つめている。そんな漣にウツギが声をかけた。

 

「いい加減機嫌を直したらどうなんだ。もう少しで敵に遭うかも知れない。」

 

「漣の機嫌が悪いのは大体があんたらのせいなんですがねぇ......」

 

「それにいったい何さリサイクル艦って......話聞いたらただのフランケンじゃん......パッチワークじゃん......きしょいっつーの!」

 

漣がウツギに向けて、自分は今機嫌が悪いのだぞ、ということを隠そうともせずに嫌味たっぷりに返す。正直自身の深海棲艦じみた外見や建造の経緯から、こういう対応を艦娘にされたのは数えきれないほどあるので大して気にもしないが、ウツギは「またか」と内心呆れながら溜め息をつく。そして今度は自身の後ろに居るツユクサにも話しかけた。

 

「お前もいい加減許してやったらどうなんだ」

 

提督への挨拶のときに漣の蹴っ飛ばしたドアに当たって転んでから、朝、嬉々として無駄話に花を咲かせていた姿はどこへやら。ツユクサもずっと機嫌が悪い。

 

「絶っっっっ対にイヤッスね!!大体あんなことを人にしておいてごめんなさいも言えないなんて非常識ッス!!」

 

「えっ、あなた人だったの?大スクープキタコレ!」

 

「なっ......ウツギ聞いたッスか今の!?こいつぶっ飛ばさないと気がすまないッス!!」

 

 漣に煽られたツユクサが赤い目を光らせながら怒ってわめきちらす。さっきから二人はずっとこの調子である。ウツギは「誰か助けてくれ」という想いと「この先大丈夫だろうか」という不安で心配だった。

 その時レーダーに反応があり、すぐにウツギは思考を切り替えて漣に報告する。

 

「熱源反応を感知した。すぐに戦えるように準備するんだな」

 

「わかってるっつーの。ていうか何その電探?見たことないんだけど?」

 

電探?あぁレーダーのことか。一瞬考えてウツギが返答する。

 

「ワタリから貰った。それよりもう来るぞ」

 

「ワタリって誰さ......全くもう!」

 

ウツギの報告と自身の電探にも反応があったのか、漣が渋い顔をしながら戦闘態勢に入る。続いてツユクサも渋々砲を構えて戦闘に備える。いざというときは自分とアザミだけで連携をとる必要があるかもな。ウツギはギスギスしている二人を見てそんなことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数は二つ......どっちも駆逐艦か。この程度の相手ならまだ大丈夫か。四人の目線の先、そこそこ遠いところに鯨のような真っ黒い生き物が居る。 深海棲艦の......確かイ級とかいうやつだったか。漣が砲撃を開始したので、ウツギも自身が装備している駆逐艦「暁」の艤装の一部である、装甲板と一体化した砲を敵に向けて散発的な砲撃を行う。

 当てるつもりは無い。というのも漣に花を持たせてやろうという彼女なりの接待連携攻撃である。しかし隣のツユクサはそんなことを知るわけもなく、漣に張り合って駆逐艦「五月雨」の、砲身が青みがかったピストル型の砲を乱射している。大切な砲弾をそんなに無駄遣いしていいのか、とウツギが考えていることはもちろん知らない。

 

「沈むッス!当たるッス!そして吹き飛べぇぇぇ!!」

 

「マッハで蜂の巣にしてやんヨ!!」

 

 二人とも元気に撃ちまくっているが照準がダメなのか、ほとんど有効なダメージを敵に与えられていない。 強いて言えば漣のほうが敵に当てている......ような気がする。 しかもこちらの砲撃で流石に感づいたのか、イ級からも砲撃が跳んでくる。

 せっかく一応は奇襲できたからこれで終われば楽だったのに。 ウツギは回避行動をとりながら心のなかで愚痴を言う。

 頭に血が昇り冷静さを欠く二人を見かねたのか、はたまたなかなか相手に当てないことに痺れを切らしたのか。アザミが戦艦「比叡」のX字型の艤装を展開して三回だけイ級に向かって砲撃した。ちなみに彼女の装備している艤装は本来四本あるアームの先に、それぞれ砲が取り付けてあるが、今は一つの砲だけ残し他は強引に取り払って無理矢理軽量化した状態である。

 

「お前ら......いらない......きえロ......」

 

呟くようにアザミがそう言ったあと、彼女の砲撃がイ級に当たる。当たり(どころ)が悪かったのか、そのまま二匹のイ級は悲鳴のような唸り声をあげて沈む。完全に敵が沈黙した事を確認するとアザミがさっきまで砲を乱射していた二人の方を向く。

 

「なにヨ......自分がMVPだから誉めろっての?」

 

漣がばつが悪そうにそう言う。するとアザミが彼女にしては珍しく自分から口を開いた。

 

 

 

 

 

 

「砲弾......貴重......乱射......ムダ......こんど......同じこと......お前ら......()ス......」

 

 

「「すいませんでした!!」」

 

 

 

 

 

 アザミが能面のような表情で二人に言う。彼女の威圧感に()されたのかツユクサと漣が海上で土下座した。その様子を見てウツギは、今日何度目かわからない溜め息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて......言い訳を聞かせてもらおうか」

 

 鎮守府の艤装保管室にいる四人の艦娘の前にいる深尾がにっこりと笑顔を浮かべてそう言った。それを聞いたウツギとアザミはそれぞれ漣とツユクサの後ろに立つと、全く同じ動きで二人を両手で突き飛ばす。

 

「ちょっと何すんのさ!?」

 

「な、なんスか?」

 

「それは、此方(こちら)の台詞だよツユクサ君、漣君?」

 

深尾が顔面に貼り付けたような不自然すぎる笑顔をさらににっこりさせて続ける。アザミはどう思っているかわからないが、ウツギはちょっと恐いと思った。

 

「5と0。何の数字か解るかい?」

 

「ご主人様なんの話~?」

 

「わかんないッス!」

 

 漣は心当たりがあるのか目が泳いでいる。ツユクサは本当に知らないのかテンションが高い。まさかとは思うがツユクサはこれから説教が始まるということに気づいていないのだろうか。深尾は体がわなわなと震えている。

 

「そうかそうか。解らないか。ふぅぅ~......」

 

深尾が深呼吸して間を置いてから一喝。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら二人の砲の残弾数だよこんのバカチンがぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!」

 

「「ぴぃっ!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

2バカが素っ頓狂な声をあげる。

 

 

 

 

 

「おかしいだろ!?駆逐艦二隻相手にこっちは四隻で戦艦まで居るんだぞ!?何故だ!?いったいどこにそんなにバカスカ弾を使う必要性が出てくるんだ!?しかもツユクサ!お前は弾切れときたもんだ!!漣お前もだ!残り五発だぞ五発!充分異常なことだ!お前の使っていた装備はマシンガンじゃないんだぞ!?教えろ!いやむしろ教えてくれ!いったい何をやったんだぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 鎮守府に小男の魂の叫びが虚しく響く。一通り言いたいことが終わったのか深尾ははぁはぁぜぇぜぇと少し息があがっている。そこに目をつぶって耳を塞いでいた漣が余計な発言で追い討ちをかける。

 

「ま、まあまあご主人様、怒らないでさぁ、怒ったら寿命縮んじゃうよン?」

 

何を言っているんだこいつは。ウツギとアザミは漣に侮蔑の眼差しを向ける。すると深尾が漣のセーラー服の肩を掴む。いったいなにをするつもりだろうか。

 

「いやぁんご主人様のえっt」

 

言い終わる前に漣はスパァン!!と深尾の見事な、格闘技の教科書のお手本のような手さばきで床に叩きつけられ泡を吹いて気絶した。そしてその気絶した漣を深尾は何処かへ運ぶのか、三人の前から立ち去ってしまった。目の前で漣に起こった恐ろしい出来事が自分の身にも起こるのではないだろうか。そう思ったのかツユクサが震えた声でウツギに話しかける。

 

「う、ウツギ、アタシはどうすればいいんスか......」

 

「知らん私の問題じゃない」

 

「アザm」

 

「うるさイ......」

 

ツユクサは涙目になりながら床に突っ伏した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

鎮守府の暮らしにも少しずつ慣れてきた。

そう思っていたウツギたちへ、大本営から「大規模作戦」への参加命令が来る。

戦いの結果は生きるか死ぬか。ただそれだけ。

彼女たちは生きて勝者となれるのか。

 

 次回「充電」 装備チェック、オールクリアー。発進準備よし。

 




最低でも一週間に一回投下します

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