赤い骸骨 シャア専用モモンガ   作:なかじめ

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沢山のご感想、評価、閲覧本当に有り難うございます。

また一瞬だけナーベラルがキャラ崩壊注意です。


AOG-08S

アインズ達はカルネ村に到着した翌日、トブの大森林に入っていた。

 

そして今日、薬草採取をする事になる辺りは森の賢王の縄張りらしい。

もし近づいて来るなら撤退しましょうとのンフィーレアの言葉だった。

 

だがアインズはその、森の賢王と戦うつもりだったので先に他のメンバーに伝えておく事にした。

 

「もし森の賢王なるモンスターが現れたら…下がれ!私が全て倒す!…う、うん。そうです。」

 

と勇ましく宣言するアインズだったが勿論今のも勝手に言わされた事だ。

 

「い、いえ、森の賢王は一体しかいませんよ?モモンさん?」

 

「あ、ああ!も、勿論知っているとも!森の賢王以外も任せておけ、と言うことですよ!ンフィーレア君。」

 

「…やっぱり、モモンさんはすごいや…。流石…憧れる…。」

 

「ンフィーレア君?」

 

「いえ、すみません!あと、一つお願いが有るんですが、もし、森の賢王と戦いになっても殺さないで欲しいんです。」

 

「流石のモモンさんでも伝説の大魔獣相手にそれは…「いや。」

 

とアインズを気遣っての発言をしたペテルの言葉をアインズは遮る。

 

「了解しました。」

 

「モモンさん!?本気ですか!?」

 

「勿論。しかしンフィーレア君、どうして森の賢王を?」

 

そう聞くと、どうやらこの辺りに森の賢王の縄張りが広がっているお陰でカルネ村にモンスターの脅威が及ばないのだと言う。

 

「なる程、分かりました。難しいかもしれませんが追い払う程度に留めておきましょう。」

 

その、アインズの言葉に漆黒の剣のメンバーは驚愕しているが、アインズの真の実力を知っているンフィーレアの顔は安堵の表情になっている。

 

「有り難うございます!では、出発しましょう!」

 

そのンフィーレアの言葉に一同が頷き、目的地に向け、レンジャーであるルクルットを先頭に進み始めた。

 

森に入ってしばらくは、あの村の柵作りに使ったのだろう、木を切り倒した跡が続いていたのだが、徐々に緑の迷宮と呼びたくなるような世界へと変わっていく。もしかしたら普通の人間なら恐怖しているのかもしれない。

 

しかし、アインズはそれよりも自然界が産み出した見事な光景に賞賛を送る。

 

(ブルー・プラネットさんが自然を愛していたのも分かるな…)

 

そんな事を考えながら他のメンバーを見ると、先頭のルクルットが五感を全力で集中させ、注意深く歩いているのが見えた。彼は周囲に隠れるものはいないと判断しているようだ。

 

(実際はいるんだけどな。…流石だなアウラ!)

 

アインズは静かに尾行してきているだろうアウラをとても誇らしく思う。

 

そうして歩いていき、やがて直径五十メートル程の開けた場所に出た。

ンフィーレア君によるとそこが目的地という事だ。

アインズはナーベラルを連れて行動を開始する。他のメンバーは少し不安気だったが説得し、すぐ戻ると伝え、警戒用のアラームの魔法に似たような魔法をセットしてくるといって森の先に歩き出す。

 

しばらく進むと、ナーベラルが口を開く。

 

「アインズ様、一つ宜しいでしょうか?名声を高める作戦と仰いましたが、何をされるのですか?」

 

「森の賢王と戦うつもりだ。」

 

ナーベラルはハッキリと頭にクエスチョンマークを浮かべている。

 

「私の強さを、伝説の魔獣を撃退したという事でハッキリと彼等に分からせるのが目的だ。」

 

「なる程、流石はアインズ様!しかしどうやって森の賢王を?」

 

「既に手は打ってあるとも。」

 

そこで急に何も無いと思っていた木々の切れ目から可愛らしい声が響く。

 

「はーい!そういう事で私が来ましたー!」

 

ナーベラルがそちらに鋭い視線を向ける。指を突きつけ、魔法のターゲッティングまで行っている。

アインズは一瞬、ビクッとしたが、必死に悲鳴をこらえた。

 

「消えろ!プレッ…、アウラ様!脅かさないで下さい!」

 

「えへへ、ゴメンね!」

 

(……いや、ナーベさん?今何を言おうとしたの?)

 

アウラが急に声をかけてきた事より、ナーベラルの変貌ぶりに驚愕したアインズだった。

 

「一体何時から?」

 

「うん?アインズ様と二人で森に入った時からだよ。と言うことで、私が森の賢王なる魔獣を、アインズ様達にけしかければ宜しいのですね?」

 

「…ああ。その通りだ。流石…アウラは賢いな。…またかよ…。」

 

見ればとても嬉しそうにアウラは満面の笑顔だったので、まあいいかと話を進める事にするアインズ。

 

森の賢王の特徴等をアウラに教えると、アウラは知っているようだったのでアウラに任せ、アインズ達はンフィーレアや漆黒の剣達の元へ戻る。

 

「ではモモンさん達も戻って来たので、採取を始めましょう!お願いします!」

 

アインズ達も、採取を始めるがフリだけだ。森に入った所で、ンフィーレア

に見本を見せて貰ったが全くその辺の雑草と見分けがつかなかったのだ。

 

なのでアインズがやっているのはただの草むしりだった。

 

ブチっ「うーむ、これは違うな。」

 

ブチっ「これは?いや、これも違うな。」

 

(……仕方無いんだ。俺は魔法職しか取って無いから分からないんだ。…でも突っ立ってる訳にはいかないんだ!早くして!アウラ!!)

 

目の前で同じ魔法職のニニャが薬草をきちんと見分け、採取しているのは無視した。

 

ナーベラルは何もせずアインズの側でしゃがんでいるだけだった。

 

「流石はア_モモンさーーん。薬草まで見分けられるとは…。」

 

「…。」

(…お前もやれよ。俺だって恥ずかしいんだぞ!)

 

そんな一同が薬草採取をし、アインズが虚しい草むしりをしていると、ルクルットが緊迫した声を上げる。

 

「こりゃまずいな。」

 

聞けばかなりデカい物が近づいてくるらしい。ペテルが撤退を宣言し、作戦通りアインズにしんがりを頼んでくる。

 

「ええ。任せて下さい。あとは…下がれ!私が全て倒す!…。」

 

「…いや、モモンさん。向かって来るのは一匹だけだぜ?」

 

「う、うむ!そ、そうだったのか!あ、あとは私が何とかしましょう!」

 

「モモンさん、無理はしないで下さいね?」

 

そう言うンフィーレアの目は、長い前髪の下に隠れていてもハッキリ分かるぐらい憧憬の眼差しでまっすぐアインズを見ていた。見ればニニャも同じような目で此方をみている。少しむず痒くなったアインズは早急に離脱を勧めると、森の奥に向き直った。

 

「…さて、見せて貰おうか。森の賢王の……実力とやらを!」

 

今のはアイテムに言わされたのでは無く、以前かっこよかったので心のメモ帳に書き留めておいた物を使ってみたのだ。

 

後ろの一同とナーベラルから「おおっ…」の感嘆の声が漏れた。そうして、漆黒の剣とンフィーレアが森から離れていく。

 

(良し!やっぱりあのセリフはなかなか良いじゃないか!)

 

そんな事を考えているとナーベラルから声がかかる。

 

「アインズ様。」

 

「お客様のご登場か…。見せて貰おうか、森の賢王の……実力とやらを!…ぇぇっ!?」

 

今のはアイテムに言わされた物だった。

 

アインズは何も無かった事にして、ナーベラルの前に立つ。ナーベラルは若干困惑していたが、無視だ。どうしようもない。大事な事なのでryもネットを知らないナーベラルには通用しないのだ。

 

すると、何かがしなるような音がする。それを受け、グレートソードを引き抜き、盾のように構える。

 

ガギィと金属が軋むような音がし、アインズの腕に重みが走った。

 

「それがしの初撃を完璧に受けるとは…見事でござる。そのような相手は初めてかもしれないでござるな。」

 

「それがし…ござる…」

 

(…ああ!それも謎の翻訳こんにゃくのせいか。)

 

「では侵入者よ。今逃げるので有れば先の見事な防御に免じて追わない事にするでござるが…どうするでござるか?」

 

「愚問だな。お前を倒し、名声を得るとしよう。その前に姿を見せてくれないか?もしかして恥ずかしがりやさんかな?」

 

「言うではござらぬか!侵入者よ!」

 

そう言い、森の賢王が姿を現す。

アインズはその姿を見て、目を見開いた。

 

「そのヘルムの下から驚愕が伝わって来るでござるよ!」

 

「森の賢王。もしかして、お前の種族は……ジャンガリアンハムスターとか言わないか?」 

 

現れた森の賢王は、もうハムスターだった。どうしようも無く。

 

「おお!それがしの種族を知っているのでござるか!?」

 

「知っているというか、かつての仲間にお前によく似た生き物を飼っている人がいた……。」

 

横からナーベラルが「おお…。」と感嘆の声を漏らしている。至高の41人パワーすげぇ。ただペットの話をしただけなのに。

 

「なんと!…その話は詳しく聞きたい物でござる。もし同族がいるのならば子孫を作らねば生き物として失格でござるがゆえに。」

 

(…どーせ、俺は童貞の骸骨…しかも赤くて角が生えてますよ…。…それはもう生き物として失格なんてレベルじゃないな…。…まあアンデッドだけど…)

 

とやさぐれているアインズだったが、一応、自分が知っているハムスターはとても小さく、大人でも手のひらサイズだという事を教えてやる。

 

「それはちょっと無理でござるなぁ…やはりそれがしは一人なのでござるかなぁ…。」

 

その一人という言葉にアインズは少し同情する。アインズもついこの前、このリストバンドのフレーバーテキストにかつての仲間達の署名を発見するまで、勝手に一人だと思いこんでいたから。

 

「…生きていれば……その内見つかるさ。しかも意外と近くにな。」

 

「おお…。なかなかかっこいい事を言うでござるなぁ!…では!命の奪い合いをするでござるよ!」

 

「ええ…。」

 

アインズは、やる気スイッチが完全にオフになるカチッという音が聞こえたような気がした。

 

(巨大ハムスターと戦っている自分…カッコ悪い。それにこいつをもし倒してしまって、他の人達は森の賢王だって分かるんだろうか…?でも向かってくるなら仕方無いか…。まかり間違ってナーベラルや他のメンバーに被害を出すわけにはいかないし…)

 

「ナーベ、下がれ。」

 

「二人がかりでも良いのでござるよ?」

 

「言うじゃないか。だがお前如きに誰かに助けて貰っていては英雄モモンの名前にケチが付くのでな。どういう事か、分かるか?」

 

「ほう。どういう事でござるか?」

 

「お前如き一人で十分…ということだ。」

 

「後悔しても遅いでござるよ!行くでござる!」

 

ドンと地面を蹴り、此方にトタトタと走って来る様はまんまハムスターなので可愛いが、流石にデカい。

 

そのままの勢いでぶつかってくる賢王の体当たりを、アインズはグレートソードを交差させて受け止める。

 

「むぅ、でござるよ。」

 

一歩も後退しないアインズに流石に驚いた賢王だったが、今度は両手に生えた爪による攻撃を繰り出してくる。

 

右、左、と振られるそれを、アインズはグレートソードにより防ぎ、今度は

その合間に攻撃を差し込んだ。その攻撃は全力では無いがそれなりに力を乗せた攻撃だったのだが、金属音を立てて森の賢王の毛皮に弾かれる。

 

「やるでござるな!これはどうでござる!?〈全種族魅了〉(チャームスピーシーズ)

 

アインズは今現在このリストバンドによる物だけは精神攻撃耐性が弱くなっているが、アンデッドは基本精神攻撃を無効化する。

その魔法攻撃を完全に無視し、アインズは両手のグレートソードを同時に突き出す。

それも甲高い音が鳴り響き、弾かれる。

 

(硬い…。これじゃモフれないじゃないか…。しかし、これは良いじゃないか。良い近接戦の練習になる。)

 

その後も森の賢王は魔法攻撃を放って来たのだが、アインズは低位の魔法攻撃を完全無効化するスキルを保有しているので、それらの魔法は一切効果を発揮する事なく消えていった。

 

それを気にも留めず、森の賢王は再び近接戦を挑んでくる。

 

アインズの脳裏にはかつての仲間達の戦闘風景が浮かんでいた。

それと、今現在の戦士としての自分と同じレベルで有るガゼフ・ストロノーフの戦闘風景も…。

 

脳裏に浮かんでいる彼らのようにアインズは剣を振るう。

が、ガムシャラに振るった森の賢王の爪がグレートソードを二本とも弾きアインズは一瞬無防備になる。

 

「貰ったでござる!」

 

森の賢王はそう叫ぶと、真っ直ぐ突き刺すように右手の爪を突き出してくる。グレートソードでの防御は間に合わない。

 

(くっ、戦闘中に考え事なんてしてるから!)

 

しかしその瞬間、アインズの頭にまたアイテムの効果が発動する。

 

気づけば、アインズは土煙を上げてジャンプしていた。そして、

 

「甘いな!」

 

その一言と共に爪を突き出して無防備な森の賢王の頭に、跳び蹴りをお見舞いした。

 

「ぐえっ!でござるよ!!」

 

それをカウンターで喰らい吹き飛ぶ森の賢王。

 

「…今のは何だ?…もしかして…攻撃モーションのデータも入ってたのか?…幾ら掛けたんだよ…。…ははは!全く!こんな物、近接戦をしない魔法職の俺は絶対に使わなかったろうに!」

(…だが、そのお陰で無様な真似を晒さずにすんだ。助かったよ。)

 

口では文句を言いつつ、頭ではかつての仲間達に感謝している。実にツンデレなアインズ様だった。

 

 

 

 

 




長くなったのでここで切ります。

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