赤い骸骨 シャア専用モモンガ   作:なかじめ

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節目の30話ですね。 内容は全く節目では無いのが残念ですけど…

GUNDAM VERSUS 予約開始来たれり!! 

今月入ってオバロにガンダムにと、良いニュースが多い…俺得

けど世界情勢が不安定過ぎワロエナイ…頼むよー。 


 


AOG-30S

_

 

ゼンベルとシャースーリューの二人は、アインズに言われた通り復活したザリュースの居る部屋の前へと来ていた。 

 

「ここだな」

「ちょっと待った」

 

シャースーリューが扉に手をかけ、開けようとするのをゼンベルが何故か制止してくる。

 

「何だ?」

「い、いやよぉ…入った途端に抱き合ったりしてりゃ…それ以上の事してりゃわりぃだろ?」

 

ガターン。 そんな音がゼンベルが言い切るが早いか遅いか部屋の中から聞こえてきた。

 

「そんな訳ないでしょうが!」

「…ほ、ほら。 行くぞ」

 

シャースーリューが漸く部屋に入ると、目の前に、確かに自分の足で立つ、弟の姿が目に飛び込んで来た。

 

「兄者…!」

「弟よ…良かった…本当に良かった!」

 

二人はお互いに近寄ると、シャースーリューがザリュースの肩をポン、と一度叩き、お互いに抱き合う。

 

「もう立って平気なのか?」

「うむ、もう寝ても居られんさ、兄者。 まだ事は終わっていないのだから」

「…そうだな。 その通りだ。 良く言った! 弟よ」

 

「良いねえ…感動だねぇ」

「誰かさんのせいで台無しだけどね」

「ぐ…許してくれやクルシュ」

 

「「はっはっは!」」

 

クルシュに嫌味を言われ苦々しい顔をしたゼンベルを兄弟揃って見、笑い合う。

 

「こうして笑っていられるのも…アインズ様のお陰だな」

「そうよ。 あの方達が居なければ皆間違い無く…多分リザードマンだけじゃなくトードマンも…いえ、この辺り全てが遅かれ早かれ死んでたわ」

「ああ。 間違いないな。 それに…これからリザードマン達も変わって行かなければなるまい」

「そうだなぁ。 あんな奴らが…いやお方達が世界を貰うってんなら誰も邪魔は出来ねえだろうさ。 流石にあんだけぶっとくて長い物には巻かれた方が良いだろうな」

 

それを聞き、ザリュースは少し驚いた。 確かにあの魔樹を倒してしまうのだから強いのは間違いないが、あのゼンベルにそこまでいわせるのかと。

 

「兄者、ゼンベル…アインズ様方はどれ程だと思った?」

 

ザリュースが二人にそう聞くと、二人は目を見合わせ一度頷き合い、代表してシャースーリューが口を開いた。

 

「皆目見当もつかん」

「なに?」

「余りにも強すぎて分からん。 あの中で一番弱い者…恐らくクレマンティーヌ様という…アインズ様の義理の妹らしいのだが…その方でさえ我らより強い」

「なっ…!?」

「あとよ、アインズ様の部下に魔獣…ハムスケってのがいるんだが…ありゃ森の賢王だったらしいぜ」

「…はは。 よく分かった」

「だろ? そんなお人等が俺達リザードマンを護ってくれて、繁栄しろって言ってんだ。 断る理由が無え…寧ろ断ったらどうなるか…その方がおっかねーぞ」

「そうだな。 後は頭の固い古い連中さえ納得させれば…」

「それも恐らく大丈夫だろう。 それに…アインズ様には寿命は無いのだろう。 今後、リザードマン達は安泰となるかもしれん」

「あんまし他人任せってのも情けねえけどな…今は手を借りるしか無えだろうな…」

「うん。 だからこそ私達もアインズ様にご恩を返せるように何か出来ないか考えましょう」

「そうだな。 アインズ様は永遠の王となるだろう。 我々では駄目でも、子供達、孫達でも良い。」

「…そこでなのだが…兄者、ゼンベル」

「ん?」

「何だ?」

 

「俺は…クルシュと番になろうと思う。 いや、なる!」

「ちょ! ザリュース!」

 

ザリュースの突然の発表に、ゼンベル、シャースーリュー…そしてクルシュまで目を点にして驚愕した。

 

「…おお!」

「めでてぇ! やったじゃねえか! 兄ちゃん!」

「〜〜〜! せめて、私に何か言ってから言いなさいよ!」

「すまぬ、だが決めていたのだ。 今回の戦いから無事に戻ったらお前に結婚を申し込もうと」

 

その場にアインズが居れば、『ああ…だからお前だけ死んじゃったのか…』と言いそうな事をクルシュに向かって言い、クルシュも恥ずかしそうに、しかし何処か嬉しそうに下を見、か細い声で返事をした。

 

「わ、私だって…その…その!帰ったら貴方にリザードマンの新しい食べ物を一緒に食べたいと思っていたわ」

「新しい食べ物?」

「ええ、旅人が親切な人間の人に教えて貰った…『とっておきのスァラダ』という物よ! 野菜と言うものがあんなにおいしいなんて知らなかったわ」

「おお…それは美味そうだな。 なる程、魚が取れないときはそういった物を食べていたのか」

「ええ、私達の所はああいう過去が有るから…」

「そうか…いや、とても良い事だろう。 それも他の部族の者達へ教えてくれ」

「ええ!勿論!」

 

「おいおい。 二人だけの空間のとこ悪いんだけどよ、そろそろいいかい?」

「だな、もし大変なら我々が肩を貸そう」

「いや、大丈夫だとも兄者。 では行こうか。 アインズ様たちの元へ」

 

そうして、カップル揃って死亡フラグを踏み、更にはへし折って復活した事には当然気づかぬまま、部屋を出て外に向かう。

 

「永遠の王か…凄いお方だ」

「ああ、あの方に…アインズ様に勝てるとすれば、周りに居た方々ぐらいだろう」

「…謀反か…あり得るのか?」

「きっと無いわ! だって皆アインズ様に絶対の忠誠を誓っているようだったし」

「そうだな。 アインズ様とは凄いお方だ」

 

そうして、要塞から出て来て…ザリュースが復活してから初めて見た外の光景は、アインズの妹だという、クレマンティーヌを他の守護者と呼ばれる者達が囲い、応援し、そこから一人離れて立っているアインズという図式だった。 そのアインズは顔以外を全身鎧で身を固め、両手にグレートソードを持っている。 クレマンティーヌもクレマンティーヌで、凄く恐ろしい顔で、殺気に満ちた笑顔でスティレットを右手に握りしめ立っていた。

 

「「……」」

「おい…」

「……な、何だ?」

「ありゃ謀反じゃねえのか?」

「「……」」

 

ゼンベルのその言葉に、リザードマン達は誰とも無く、一体どうなっているのか確認する為に駆け出した。 

 

 

 

 

「良し、何時でも来るといい」

 

アインズはそれだけ言い、ガツン、と両手に持った刃の潰れたグレートソードを地面に突き立て、顔に手を翳すと、ヘルムも創造し、これで全身を鎧で覆った。

 

「はーい、んじゃ行きますよー」

 

クレマンティーヌはそう返事をし、グッとスティレットを持った右手を後ろに引き絞り、姿勢を低くする。 

 

(何と言うんだったか…? 確か走る時にあんなポーズを…というか、この距離でクレマンティーヌは何をする気だ?)

 

アインズと、クレマンティーヌの距離は恐らく25メートル以上離れている。 剣を使っての攻撃ならば投げたり以外ならば離れすぎているぐらいだ。

しかし、アインズは次の瞬間驚愕に目を剥いた。

 

ドン! という音と共にクレマンティーヌはアインズに向けて一直線にかっ飛んで来る。 そのクレマンティーヌの背後には土煙が上がっていた。

 

「そうか、なる程! 地面を蹴る…その手」ガツン!

 

アインズの言葉は、ヘルムに走った衝撃によって中断された。 アインズが目の前を見れば小首を傾げたクレマンティーヌと、左目だけ目が合った。

 

「んー、やっぱり効かない感じ?」

「お前なあ…幾ら痛くないとは言え目を狙うなよ。 意外と嫌な感じがするんだぞ? 俺が生身だったら大変な事になるぞ? というか前もそうだったな…フ、最早懐かしい記憶だ」

「あー、あれはちょっとトラウマだわ…」

 

「ア、ア、アイ! アインズ様!! 大丈夫なんですか!?」

「ん?」

 

アインズは最初、その声を上げたのは守護者もしくはナーベラルかと思ったが、声の感じからしてどうも違うようだ。 とは言え声のしたほうの目にスティレットが突き立っていて見えづらい。

 

「クルシュか?」

「は、はい! あ、あのあの!」

「少し落ち着け」

「は、はい…大丈夫ですか?」

「うむ、…ヘルメットが無ければ即死だった…またそれかよ…」

「え? あの?」

「兄さんさぁ…それギャグのつもりかもしれないけど初対面の人に言うのはやめた方が良いと思うよ? ヘルメット貫通してんのに意味分かんないもん」

 

んなこたぁ分かっとるわ!! そう心の中で叫びつつ、「そ、そう…だな…」と小さく返し、アインズはスティレットを引き抜いた。

 

「私とクレマンティーヌのレベル差ではダメージは通らない。 というか、お前たちは何でそんなに慌てていたのだ?」

「む、謀反かと思いまして…」

「え?」

 

そのリザードマン達の言葉に、クレマンティーヌは「ぶっ」と吹き出し、アインズもアインズでキョトンとしてしまう。

 

「…私が兄さんに謀反? 命が幾つ有ったって…いや、アンデッドになったって無理に決まってんでしょ」

 

少し、震えながらそう言うクレマンティーヌの元に、シャルティアとアウラが近寄ってきた。 どうやら話の内容を聞いていたらしい。

 

「まーぁその前に、私達がやらせる訳無いでありんすけどね」

「そうそう。 だから駄目だよ?クレマンティーヌ。 私もクレマンティーヌとは戦ったり…殺したく無いし…ね?」

「その通りでありんす…本当に駄目でありんすよ?」

「そんな事分かってるよ! というかする訳無いでしょ! リザードマン! あんた達も変な事言わないでよ…マジで洒落にならないんだからこの人達の強さ」

「そ、そうでしたか、も、申し訳ございません!」

「お前達も見学したいのならコキュートスの元に行け。 あまりウロウロされると巻き込まれてしまうからな」

「畏まりました」

 

納得した様子のリザードマン達と共にコキュートスの元に向かうい、アインズは武技について尋ねた。

 

「どうだった? あれが30レベルそこそこの者が出せるスピードだと思うか?」

「イエ、我々ガ知ル30レベルデハ有リエマセン」

「だろうな…というか…お前、ガゼフ・ストロノーフより強いんじゃないか?」

「うーん、私が完全装備なら負けることは無いと思うよ。 今の装備だと、ガゼフが完全装備なら勝てないけど」

「ほぉ…では我々が装備を整えてやれば…?」

「絶対に! 勝てるね!」

 

そのクレマンティーヌの言葉に、アインズは深い喜びを覚えた。 こいつはとんでもないレア物だという事が分かったために。

 

「そうか、ククク…ではもう一度頼んで良いか? さっき言った通り、グレートソードで迎撃するが、その程度お前ならなんとかなるだろう?」

「…まあ、多分…でも、何かの間違いであれがぶち当たったらめっちゃ痛そうなんですけど」

「心配するな。 魔法で保護して有るのだ。 今のお前には殴打ダメージは入らない」

「効かないってわかっててもねー…」

「いやいやいや、お前も効かないとはいえ俺の目を突いたんだからな?」

「む、ぃよーし! やろうやろう!」

「全く…では先程の場所で良いな?」

「うん、オッケー」

 

クレマンティーヌの返事を聞くと、アインズは振り返り距離を取るため離れていく。

 

「仲の良いご兄妹でありんすねぇ」

「そうだねー。 ちょっとクレマンティーヌが羨ましいくらい」

「そ、そうだね! お姉ちゃん! ぼ、僕達もあんな風にアインズ様と遊びたいよね!」

「まあ難しいでありんしょうね」

「ウム、アインズ様トクレマンティーヌ様ハ、王ト姫…ワレラガ軽々シク、カノ方達ニ剣ヲヌクナド…」

「それも有るけどさ、私達じゃダメージ通っちゃうしね」 

「ム、ソレモソウカ…」

 

それを聞いていたリザードマン達は絶句していた。 リザードマンからすれば、さっきのクレマンティーヌの突進からの突きというシンプルな攻撃ですら凄まじいのに、それをこの方達は遊びと言う。

リザードマン達が、驚愕に固まっていると、クレマンティーヌが声を上げた。

 

「そんじゃーもう一回、スッと行ってドスンですよー」

「何だそれ? まあ良いか。 よっと…」

 

アインズはクレマンティーヌの言葉に答えると、地面に突き立てたグレートソードを引き抜いてグルンと振り回し、構える。

 

「うおお…あんなデケェ剣を片手で…」

「あ、アインズ様はマジックキャスターでは無かったか…?」

「凄い…」

 

「来るが良い」

「はーい。 んじゃあまたそのスリット狙うから」

「止めろと言うに…まあ良いか」

 

クレマンティーヌは先程の焼き直しのように姿勢を低く沈め、スティレットを持った右手を引き絞る。そして…

 

再びドン! という音と共に背後に土煙を上げ、弾丸の様に飛び出す。

 

「お前の行いの不幸を呪うがいい! そこだ!」

(目に突き刺さると痛く無いけど気持ち悪いんだからな!)

 

タイミングはドンピシャ、間違いなく命中は確定。 それに対しクレマンティーヌはその振り抜かれたグレートソードに向かってスティレットをかち合わせるようにつき出す。 その質量差、そして両者の腕力の差は確実にクレマンティーヌの細腕では防ぐのは不可能。 たが…

 

〈不落要塞〉

 

ギィン、という音と共に弾かれたのは、アインズのグレートソードだった。 流石にこれには守護者達も驚愕した。

 

「なっ!?」

「う、うそっ!?」

「そ、そんな!?」

「バ、バカナ! アリエン!!」

 

それは当のアインズも同様だった。 てっきり何時ぞやのガゼフの見せた急激に方向転換する武技を使って横に躱すのかと思い、それごと巻き込めるように、(どうせノーダメージなんだからさっきのお返しとばかりに、一回全力でぶち込んでやると全力で…)横に薙ぎ払ったアインズのその渾身の一撃をあっさりと、その細いスティレットが、まるで何か巨大な鉄の柱になったように、剣を々と弾き返したのだ。 アインズの驚きも無理は無かった。 

 

「なっ!」

 

だが、本当の驚きはその後にやってきた。 グレートソードを弾き返し、クレマンティーヌ自身もその反動で一瞬動きを止めていた。 しかしそこから…

 

〈流水加速〉

 

まるで自身がスローモーションの中にいるような鈍さの中、クレマンティーヌだけが先程と…いや先程より更に加速し、アインズの元に突進を再開していた。 

 

(げぇっ! また目狙いかよ! やめろっちゅーにっ!!)

 

そのクレマンティーヌのスティレットは先程と同じ軌道を描き、真っ直ぐアインズの目に向かって来ていた。

 

「さ」

 

だが、アインズの中に何か、電流の様な、閃きの様な物が弾け…

 

ティキーン(NT効果音)

 

「させるかぁっ!!」

 

ガンっというその音と共に、今度はヘルムでは無く左肩の辺りに衝撃が走る。

 

「チィっ!」

 

アインズがその左肩を確認すると、ベッコリと凹み、貫通はしていないものの大きな傷が付いていた。

 

「一撃…一撃で凹むか!? 何という…いや! 素晴らしい! 素晴らしいぞクレマンティーヌよ! ん?」

 

アインズがクレマンティーヌを賞賛したが、クレマンティーヌからは何の反応も無い。 どうしたんだろう、とアインズがクレマンティーヌの顔を覗き込むと、クレマンティーヌも目が点になり驚いた様な顔をしていた。

 

「む、どうした?」

「…え? い、いやいや…兄さん…あんたなんちゅー反射神経してんのよ!?」

「え?」

「さっきの一撃は絶対にまたスリットに当たってたはず…なんで避けられたの?」

「なんでと言われてもな」

「先程ノハ、反射神経ダケデハ無理デス。 姫」

「え!? じゃあどうやって?」

「恐ラク、アインズ様ノ卓越シタ先読ミ…先読ミ以外デハ説明ガ付キマセン。 マルデ体勢ヲ崩サレルノガ分カッテイルカノヨウナ…アインズ様ハソンナ体重移動ヲサレテイマシタ」

「ふーむ。 偶然、偶然だ。 運が私に味方したな」

「あれが運て…」

「しかし…武技とは凄い物だろう? コキュートス」

「ハイ…コレハ侮ッテイイモノデ無イトイウ事ガ良ク分カリマシタ」

「うむ。 そして優れた使い手はどんどんと我々の中に引き込み、研究するべきだ」

「ソノ通リカト存ジマス。 姫、今後ハドウカ研究、ソシテ鍛錬ニゴ協力頂ケマスカ?」

「え?うん。 良いよ」

「アリガトウゴザイマス」

「良し、本来は今ので終わりで良いのだが…クレマンティーヌの動きにヒントが見えた気がする。 クレマンティーヌよ、もう一度頼めるか?」

「良いけど? 今度は何やるの?」

「まあ、すぐに分かるさ」

「ふーん? まあいっか」

 

クレマンティーヌは良く分からないのか首を傾げていたが、コキュートスと共にアインズの元から離れていく。

 

「本当にいい勉強になるな。 まさか兄妹揃って似たような戦闘方法とは思わなかったが…クク…本当に素晴らしい。 クレマンティーヌから得られた物は本当に大きいな。 クク…今後、多少の我儘は多目に見てやらないとな」

 

アインズの戦士化した状態での戦闘方法、そしてクレマンティーヌの戦闘方法は共にスピードを活かした一撃離脱戦法。 こんな身近に目標とするべき者が居るとは思わず、アインズにとっては望外の物だった。

 

「やはり近くにある物程見つけづらいものだ…灯台…モトクロス?…絶対に違うな…」

 

良く分からない事を呟き、離れていくクレマンティーヌが此方に振り向くのをアインズは確認すると、アインズはポツリと呟いた。

 

「ぶっつけだが…何とか行けるか?」

 

「そんじゃあ、行っきまっすよー」

「ああ…何時でも来い」

 

クレマンティーヌは今日三度目、クラウチングスタートの要領で構える。 全ての武技を発動し終えたのかその顔は先程よりも真剣だ。

そして…ドン!っという音と共に"銃弾"が発射された。

 

(…1…2…ここだ!)

 

 

 

クレマンティーヌは自身の持つ全ての武技を発動し、アインズに突っ込む。 今度は何をしてくるのだろう? 少し楽しみでもあった。 普段は驚かされっぱなしだがこの武技の時だけは皆を驚かせられるというのも楽しい。

 

(…何をするのかなー?兄さん……え?何も、しない?)

 

アインズはグレートソードを持ったまま微動だにしなかった。 既にこの距離ならば迎撃も、回避も"さっきまでの"アインズであれば間に合わない。

 

「なら、喰らええええいっ!!」

 

クレマンティーヌは全力でスティレットを、今度はアインズの身体に突き入れる。 多少横に動かれても当たるし、そのとんでもなく頑丈な装甲が恐らく鎧のなかで一番厚い場所がどれだけ凹むのか見てみたかったというのもある。

 

だが____

 

「っ!?」

 

手応えなし。 クレマンティーヌがスティレットを振るった瞬間に、ドオンっ!! という音と共に土煙が上がり、兄の、アインズの姿が掻き消えた。

それだけではない、掻き消える寸前…

 

(鎧が…消えた…よね!?)

 

クレマンティーヌがそんな事を考え、辺りを見回そうとした瞬間、ガチン! という音と共に頭部に衝撃を感じた。

 

 

 

 

「ぐえっ! 痛ー…くない?」

「ふふ、言っただろう? ダメージは無くとも嫌な感じがするとな」

 

そんな声が真後ろから聞こえ、クレマンティーヌが振り向けば、鎧姿では無くなったアインズが立っていた。

 

「いいっ! 後ろに!?」

「ああ」

「て、転移の魔法?」

「いや、転移の魔法ではない」

「えー、じゃあどうやって後ろに?」

「マ、マサカ…セ、戦士化…デゴザイマスカ?」

「ほぉ…流石に分かるか?コキュートス」

「ハ、ハイ…サ、流石デゴザイマス」

「戦士化…?」

「うむ、一瞬だけ、無詠唱化した戦士化の魔法を発動し、地面を蹴り、猛スピードでお前の背後に回ったのだ。 名付けて『一秒の戦士化(ワン・セコンド・ウォーリア)』…とでもしておこうか」

「それって…凄いの?」

 

その素朴なクレマンティーヌの疑問に、ただ思い付いただけでやってみたアインズはどう答えた物かと悩むが、その疑問は別の者が答えた。 解説のコキュートスさんだ。

 

「姫、凄イニ決マッテイマス。 私ハ、アインズ様ト私ノ戦力差ハ…私ヨリ強イシャルティアニ対シ、ホボ一方的トモ言エル勝チヲ納メタアインズ様ニ対シ8:2程デ不利ダト思ッテイマシタガ…コノ戦法ノオカゲデ、私ハアインズ様ニハ勝チ目ガ無クナリマシタ」

「「え?」」

「ぇ…」

 

驚愕の声を上げたのは、クレマンティーヌと…アインズだけでは無い。 あの化物を解体するのを目の当たりにしたリザードマン達もだった。

 

「世辞はよせ、コキュートス」

「世辞デハゴザイマセン。 今ノ戦闘方法ヲ完璧ニ習得サレレバ、何時デモマジックキャスタート、戦士ヲスイッチシテ戦エルトイウコト…魔法ヲカイクグリ漸ク距離ヲ潰シテ近ヅイタト思ッタラ戦士化シテ距離ヲ離サレアノスピードカラ一瞬足ガ止マルトハイエ、強力な魔法ガ飛ンデクル…想像シタダケデヤル気スラ無クナルトイウモノデス」

「ほぉ…」

 

アインズはコキュートスに言われて、漸く自身が思い付きで取った戦法の有用性に気づいた。

 

「でも、それではアインズ様の魔力の消耗も激しいんじゃ無いでありんすか?」

「うむ、そうだな」

「ダガ、魔法デジワジワト削ラレ、アインズ様ノ魔力ガ無クナル頃ニハ私ノ体力モホンノワズカ…ソコデ近接戦闘ニスイッチシテ来ラレレバ…先ニ倒レルノハ私ダロウ…」

「おお…」

「流石デゴザイマス! 流石ハアインズ様…」

「そうか…だがまだまだ私は今の戦い方をマスターしてはいない。 今後、コキュートスには稽古を付けてもらわねばな。 頼んでも良いか?」

「是非モ無シ…此方カラモオネガイシマス!」

「うむ」

 

コキュートスとそんなやり取りをしていると、いきなり目の前のクレマンティーヌが手を上げた。

 

「はい! 私も! 私もお願いします!」

「勿論デゴザイマス。 喜ンデオ受ケイタシマス」

「いよっしゃー! 私ももっと強くなってやる!」

「フ、そうか。…ん?」

 

アインズがクレマンティーヌの言葉に、何か微笑ましい物を感じているとリザードマン達…クルシュを覗いてオスのリザードマン達が地面にひれ伏しているのが目にはいった。

 

「どうか! どうか我々にも稽古を付けて貰えないでしょうか!」

「俺達ゃ今はまだ全然弱ぇけど、いつか絶対にお役に立ってみせますぜ!」

「お願い致します!」

 

「ほぉ…良い心掛けだな。 勿論良いとも。 だろ? コキュートス」

「ハイ。 オ前達…ソノ意気ヤ良シ…共ニ高ミヲ目指ソウゾ!」

「宜しくお願い致します!」

 

そこでアインズの視界に、ナーベラルの横にぽつねんと立つデカブツが目に入った。

 

「コキュートス、そしてクレマンティーヌよ」

「ハ!」 「ん? 何?」

「ハムスケの稽古も頼む」

「ええっ!? 殿!? 何ででござるか!?」

「お前は私の騎乗用のモンスターなのに未だ鎧も着られない。 戦士としての修行を積み、武具を身に着けられるようになってもらわねばな」

「おお! 畏まったでござる!」

「私もいーよ!」

「ナラバリザードマン達ト共ニ稽古ヲ付ケマス」

「うむ。 そうだ…それとどうだ? クレマンティーヌの武装強化案は何か有るか?」

「お! それそれ! コキュー…じゃない爺ちゃん!」

「爺チャンハ何カ違ウ気ガ…ゴホン。 ソウデスナ…」

 

そうして、コキュートスから提示された案は3つだ。 そしてどれもが同時に行わなければならないもの。

 

まず一つ目は、いくら武技で攻撃を弾けるとしても防御が薄すぎるので、鎧の強化。

そして二つ目は、スピード特化過ぎるので、膂力の強化。

そして三つ目は、上記の物を装備させて重くなった分を相殺…よりもそれ以上のスピードの強化で有る。

 

そしてそれをてんこ盛りに、アインズの今現在持ちうるアイテムと、アイテム創造の魔法で再現してみたのだが…

 

「このゴテゴテしたのは何なの!? 重くなる!!」

 

酷い言われようだった。

 

「うーん、正にフルアーマークレマンティーヌちゃんと言うのが相応しいでありんすなぁ」

「結構カッコ良くない?」

「う、うん。 似合ってると思う」

「コレハ…アルベドノ鎧デゴザイマスカ?」

「え?」

「ほぉ、よく分かったな。 あの鎧の設計図ならタブラさんに見せてもらった事が有ってな。 まあ色は少々変えて有るがな」

「しかし、露出が減ってしまったのは残念でありんすねぇ」

「…シャルティア」

「このバカ…本当にバカ」

「そーそー、あの方がセクシーで良かったっしょ?」

「ば、馬鹿者、妹の肌を他人に見られて喜ぶ兄が居るか」

「ぐ…申し訳有りません…アインズ様…」

「ふーん。 くふふ…私の心配? 嬉しいから良いや」

「い、今の、あ、アルベド様に、似てた…」

「あー、くふふってのね? 確かに」

 

そんなボソボソと喋る守護者達にアインズは微笑ましい物を感じながら、クレマンティーヌに向かって指示を出す。

 

「クレマンティーヌ、少し動いてみろ」

「え? 了解ー。 ん? あれ? 軽い? おおっ!! おおっ!! 力も…? ひゃ〜感動の嵐!! なんてパワーなんでしょ!!」

「フフ、コキュートス、この武具を魔法では無くきちんと再現出来そうか?」

「恐ラクハ…シカシリソースヲ相当数消費シテシマウカト」

「構わん。 クレマンティーヌが我々にもたらした物は計り知れん。 この程度安い物だ」

「いやったーっ!! 兄さん好き好き!!」

「…そ、そうか…では! リザードマン達よ! 待たせたな。 お前達の集落に向かおうではないか!」

 

「「畏まりました!」」

 

アインズは照れくさくなり、会話を打ち切った。 やはり面と向かって美女に好きと言われるのは相変わらず照れくさくてしょうがない。

 

「では、此方の方角でございます」

「ふむ…いや、シャルティア!」

「はい!」

「ふ、一気に本丸に行こうではないか。 恐らくは我々が遠くから近づいてくれば警戒するだろうからな」

「畏まりました!」

「え、あ、あの?」

「まあ、見てろ。 私に考えが有る」

 

アインズはリザードマン達を無視して、〈遠隔視の鏡/ミラー・オブ・リモートビューイング〉を取り出し、起動する。

 

「さーて…サクッと片付け、森に行かねばな。 リザードマン達にコソコソと隠れられたり逃げられたりしては面倒だし…アウラ!」

「はい!」

「ユリに連絡し、大量の魚の搬出準備を急がせろ」

「畏まりました!」

 

リザードマンだけがオロオロと、所在なさげにする中、テキパキと守護者達が準備を進めて行く。

 

「ザリュース」

「は、は!」

「お前達の集落はどのあたりだ?」

「な、これは!? …い、いえ…こ、この辺りです」

「む…お、いたいた! 子供達は近くにいないな?

「はい。 子供達は別の場所に集めております」

「ほぅ! それは僥倖! シャルティア! ここだ!」

「了解しんした」

「では行こうか…先ずは我々が先に行く、合図をしたらお前たちも来い…あー、クレマンティーヌも後から来い」

「ん? 了解」

「良し…ではシャルティア、頼んだ」

「了解でありんす!」

 

ゲートをくぐり、リザードマン達のど真ん中に降臨するアインズ達を出迎えたのは…阿鼻叫喚の大パニックだった。

 

「「う、うわあああああっ!!! あ、アンデッドだああああっ!!!」」

 

「フッフッフ…そうなるのは分かっていた…戦いとは常に2手3手先を読んで行う物だ!」

「うわぁ! 流石はアインズ様!」

「ドウナサルノデスカ?」

「大パニックで、です」

「殺しんすか?」

「はぁ?」

「そんな訳ないだろ…幸い私にはこれが有る! こんな事も有ろうかと! 取っておいたこの特殊能力(スキル)!!」

 

ブアーーーっと黒いオーラが集落を包んで行く。

 

「「ひっ!!!」」

 

 

アインズの作戦とは、ハムスケを従えさせた時の焼き直しだった。

だが…戦争は非情だった。

 

集落のど真ん中。 戦争の準備をしているリザードマン達のど真ん中にアインズ達が突如出現し、大混乱、大パニックと言っても良い状態の中、アインズが〈絶望のオーラ・レベル1〉を使用し、その場の全員を恐怖によって大人しくさせた…中には泡を吹いて気絶する者、卒倒して頭を打つもの…なども居た程だった…

 

(ええい! 完全な作戦にならんとは! こんな…こんな筈では無かった…ハムスケの時はひっくり返っただけだったじゃないか…やはりレベルの差か?)

 

「ぐ…よ、良し! 今だ! 魚を持て! さ、魚を、お、お食べなさい! リザードマン達よ!」

 

そんなこんなで、恐怖に震えるリザードマン達にナザリックの魚を(無理矢理)差し出し、食べさせる事で何とか事なきを得た…得たと思いたかった。

 

この場に子供が居なくて本当に良かった。 子供が居たらどうなっていたかなど、アインズは考えたくも無かった。

 

「流石はアインズ様!!」

「あの場を一人の死人も出さずに収めるとは…流石でありんす!」

「ナルホド…スキルノ応用…コンナ使イ方モアルトハ…勉強ニナリマシタ」

「さ、流石です! そ、尊敬します!」

 

(こいつらの…アインズ様は凄いんだフィルターを通してこの現場はどう写っていたんだ…地獄絵図だったのに…)

「フッフッフ…完全な作戦だった…」

「兄さん、声が震えて…いや何でもない」

 

アインズはクレマンティーヌの優しさに甘えたくなったがそうも行かない。 まだこれではいたずらに怯えさせただけで尊敬や畏怖まではされないだろう。

 

「ふぅ…さて、守護者達よ」

「「はっ!」」

「始めるぞ、何の為にお前達を連れてきたのか分かるな?」

「はい! データを取るためです!」

「そして、超位魔法を発動中のアインズ様を守る為でありんす」

「シャ、シャルティア…?」

 

シャルティアが正論だと? アインズはまさかシャルティアが正論を言うとは思わず、驚愕に目を剥いた。

 

「先程アルベドに聞きんした。 超位魔法を放つ際に注意すべき事は、私達が何をすべきかを」

「…おぉ! 素晴らしい! うむうむ…やはりお前たちも成長しているな!」

「ありがとうございます!」

「矢張り、レベルは上がらないにせよ、こういった成長は有るのだ…うむうむ。 今回の出撃は得る物が多いな…分からないものだ」

「兄さん、超位魔法ってさ、どんなの?」

 

 

「フィールドエフェクト…つまり…このエリアの地形の全てを改変する力…超位魔法〈天地改変/ザ・クリエイション〉だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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リザードマン編の筆の進まなさは異常。 恐らく原因は萌えが足りねぇ。
でもクルシュちゃんのヒロイン昇格は俺には無理だった…NTR&ケモナーは俺にはレベル高過ぎる…
そもそもトカゲはケモナーに入るのか…? 
は! 分からない事は聞けってアインズ様が言ってた!
教えて!エロい人!

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