赤い骸骨 シャア専用モモンガ   作:なかじめ

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クレマンティーヌ視点 継続 

守護者の面々との対面です。



何時も誤字脱字報告をして下さっているお二方、本当に有り難うございます!

く、くりすます?……何ですかそれ?私は普通に仕事でしたよ?


AOG-23S

クレマンティーヌはシャルティアとユリに連れられて兄が待つと言う、トブの大森林に有る、偽のナザリックとかいう場所に来ていた。あの黒い渦のような扉、ゲートという魔法らしいが、それに入る瞬間は少し怖かった物の、気付けば、偽のナザリックの近くだという森の中に居た。

そこから少し歩くと、頭に角の生えた…ユリやシャルティアに匹敵するような、絶世の美女が立っていた。

 

「はじめまして、妹様。私は守護者統括のアルベドと申します。お会い出来て光栄ですわ!」

「は、はい。宜しくお願いします。クレマンティーヌと言います」

(うっひゃあ…ユリさんやシャルティア…姉さんと同じくらいの美人だわ…。な、何だかこの人達と居ると…自分のルックスに自信が無くなってくるわ…)

「あら、私が選んだドレス。とても良く似合ってるわね。良かったわ」

「あ、あありがとうございます。」

 

微笑みながら褒めてくるアルベドに、クレマンティーヌは再び心の中に百合の花が咲くのを必死に抑えていた。

今、クレマンティーヌはこのアルベドが選んでくれたという真紅のドレスに身を包んでいたのだが、ユリやシャルティアが似合うと褒めてくれたものの、こんな高価そうなドレスを着たのは初めてだったので違和感バリバリだった。だが、彼女、アルベドが選んでくれた物ならそんな事はどうでも良くなってしまう程、アルベドはとても…女性であるクレマンティーヌからして見ても、とても魅力的な女性だった。

 

因みに、心の中でもシャルティアの事を姉さんと(お姉ちゃんは流石にキツかったので、あの後更なるセクハラを受けながらもせめて姉さんと呼ばせて下さいとお願いしたのだ。)呼んでいるのは、ずっと…舐めまわすように見つめられて居る内に、『ま、まさかこの人…心の中まで読んで居るんじゃ…』と不安になって来たからだ。何しろ人外で、桁が幾つか違う程の能力差の為、この吸血鬼の底がクレマンティーヌには全く見えないのだ。クレマンティーヌからしてみたら何でも出来るんじゃないかと思える程だった。…心配し過ぎだった事に気づいたクレマンティーヌは何だか恥ずかしくなりベットでジタバタしたが…それは少し先の話。

 

(あ〜守護者の人にもマトモな人居るんだぁ! 他の守護者もシャルティア…姉さん見たいな人だったら…私の貞操が危なかった! 本当に良かったあ!)

 

ユリ曰わく、強さは守護者各位はシャルティアに匹敵するらしい。そんな人外の強さの連中の中でかなりまともそうな人と合流出来た事で、クレマンティーヌは心の底から安堵していた。のだが…

 

「ふっふっふ!」

 

突如シャルティアが左手を腰に、右手の人差し指でアルベドをビシィッと差すと、高笑いし始めた。

 

「…何かしら、シャルティア?」

「今更取り繕っても遅いでありんすぇ?」

「何の事かしら?」

「なら教えてあげんしょう! 既に! クレマンティーヌちゃんは私ととても仲良くなってしまったのでありんす! 私に迎えに行かせたのが仇になったでありんすねぇ!! ハッハッハッハ!!」

「「はぁ?」」

 

ユリとクレマンティーヌの声が重なり、二人共何言ってんだこいつ…という目で見ていたのだが、気持ち良く喋っているシャルティアは気づかない。

う目で見ていたのだが、気持ち良く喋っているシャルティアは気づかない。

 

(そりゃ最初よりは仲良くはなったかもしれないけどさ…セクハラばっかされてたんだけど…)

「アインズ様の妹に気に入られる、これで私が正妃候補に一歩リードでありんすねぇ? ハッハッハ!!」

 

そのシャルティアの一言でクレマンティーヌはいろいろ察した。自身の兄が…どうやら取っ替え引っ替えしてるらしい事を。

 

(ちょ、ちょっと待ってよ…こ、このアルベドさんまで兄に…? ふざけんなよ! あいつ…何処まで美人を囲いこむつもりよ!?…まぁシャルティア…姉さんはかなり残念美人だったけど…)

 

そんな、最後の方はお前が言うなと言われそうな事を考えながら、クレマンティーヌは心配そうにシャルティアに絡まれているアルベドを見るが…どうやら要らない心配だったらしい。

 

「ハッ! アホが!!」

 

そうはきすてるように言うと、アルベドは腕を組み、仁王立ちになりながらシャルティアを真っ直ぐ見下ろした。

 

「ああん?」

「…え? あ、あれ?」

(ま、まさか…こ、この人も?)

 

適当に、子供をあしらうように対応するのを想像していたクレマンティーヌは、アルベドの今の姿、同等のレベルで正々堂々、ストロングスタイルで迎撃しようとしている姿に、虚をつかれて一瞬あ然としてしまう。…そしてその一瞬で色々悟った。この人もシャルティアと余り変わらない、残念美人タイプだと。

 

「ユリ!」

「は、はい」

「こいつが向こうで何をしていたのか…いえ、当ててみせましょう。…クレマンティーヌにセクハラしていたのでしょう?」

「なぁ!?」

「…はい。向こうに来てからここに来る直前までそれはもうネチネチと」

「ぬぁっ!?ユリィーーッ!?アンタって人はあああああッ!!」

「くふふふっ!! だぁから!お前はアホなのよっ!!」

「なっ!?」

 

一瞬ユリの方にヘイトが向き掛かるが、直ぐにアルベドがヘイトを取る。流石はナザリック最高の盾、最高のタンク役だった。

 

「くううっ! あ、あれは…違うんでありんす…って…な、何でありんすか?」

 

シャルティアが何かを言いかけるがアルベドがビシッと指を差した事で黙らせる。

 

「その先のセリフも分かっているわ! あれはセクハラじゃない、スキンシップだ…でしょ?」

「ア、アルベド…!?なんででありんすか!?そんな…何で!?」

「この守護者統括を舐めてもらっては困る!アホの言うことなど全てお見通しよっ! はぁ…、全く!セクハラの事をスキンシップなどと言うのはアホの言うことよ!」

「ぐぅ…!」

「くふふ、大体ねぇ…初対面からセクハラしっぱなしでぇ妹に好かれる訳無ぇだろおおおっ!!」

「ぐはっ…た、助けて! ペロロンチーノ様っ!」

「くっふふふふふ!言ったでしょう…だぁから、お前はアホなのよ!」

「ぐぬぬぬぬっ! ムキーーーーッ!!」

「あら? もしかして怒ったの?」

「おんどりゃあ……いや、違う!」

「あん?」

「元はと言えば、ユリが……アンタが悪いんだ! アンタが裏切るからぁ!!」

 

もしユリが聞いたら

『このっ! バカヤロウっ!!』

と憤慨するような事を言いながらユリやクレマンティーヌが居る方に勢い良く振り向いたシャルティアだった、のだが…

 

「…あ、あれ?」

「え? 居ない?」

 

ユリも、それにクレマンティーヌすらも居なかった。アルベドもシャルティアも今の今まで全く気付かなかった。

 

「ま、まさか……まさか!? 野郎っ! ア、アウラーーーッ!!」

「え?チビ助がどうかしたんでありんすか?」

「あいつも一緒にここに居たのよ! 気配を消してこの周りを警戒していたの!!」

 

そのアルベドの言葉でシャルティアも理解した。アウラが既に中に連れて行ったのだと。

 

「あ、あのチ、チビ助ぇーーーッ!!」

「抜け駆けしやがってーーーッ!!あの小娘がぁーーーッ!!」

 

二人もアウラの後を追い、漸く偽のナザリックに入って行った。

 

 

 

その少し前、クレマンティーヌとユリがシャルティアとアルベドの言い合いを震えながら観戦していたのだが、突然、目の前にダークエルフの子供が二人の前に上から降って来たのだ。

 

「全く。結局こーなるんだから! ほら、二人共行くよ!」

 

そう言い、その小さな手でユリとクレマンティーヌの手を掴むとさっさと歩き出したのだ。クレマンティーヌは確かに、直ぐにでもこの場、戦場になりかねない場所から離れたかったが、流石にこの面倒くさ…お強い二人に何も断らずに立ち去るのは後が怖かったので最初は少し抵抗した。しかし…

 

「え…ちょ、なんつー怪力!」

「あー、ごめんね、いきなりで。私はアウラ、アウラ・ベラ・フィオーラ。あの馬鹿二人と同じ…は何か嫌だな…とにかく私も守護者だから安心してね」

「は、はぁ…私はクレマンティーヌ…です。…ん? 私?」

 

クレマンティーヌは、何か、良くはわからないがこの子、アウラの言葉使いや見た目に違和感を感じ、手を引かれながらもアウラを良く観察してみることにした。その違和感の正体は直ぐに分かった。

 

「あっと、アウラ…ちゃんは女の子…だよね?」

(この子の目…法国のバケモノとは関係…有るわけ無いか…)

「うん? そーだよ」

「男の子の格好をしてるんだ…」

「うん、そー。」

 

そう言いながら此方を向き、ニコッと可愛らしい笑顔を向けてくるアウラに、クレマンティーヌはいけない感情が湧いて来るのを必死で抑えつける。

 

(やべぇ、この子超可愛すぎる…色々な意味で滅茶苦茶にしてぇな…でもダメだ! 絶対に勝てない! 勝てる訳ない! 私がミンチ的な意味で滅茶苦茶にされる!)

 

「ん?どーしたの?」

「い、いや…可愛いな〜って思って…」

「ふふ、今アー…アウラ様はお仕事モードですけど、そうじゃない時はもっと可愛いんですよ!」

「もう!ちょっとユリ! 止めてよ!」

 

顔を真っ赤にしてユリに抗議するアウラもとてもキュートだった。アウラのキュートさは自分には存在しないと思っていた母性本能を、ゴリゴリとくすぐってきていると、クレマンティーヌは感じていた。

 

「うへぁ…かわいい…」

「も、もー! クレマンティーヌも止めてよ!」

 

(な、撫でまわしてぇ…いや、もういっそ抱きつきたい…ダメだ…気持ち悪がれる…話題を変えねば!)

 

「それにしても…よ、良かった。守護者の人に普通な人が居た…」

「皆普通だよ、あの二人が変なだけ。」

「私はノーコメントでお願いします」

「ユリ、ずるい! でもね、クレマンティーヌ…」

「何?」

「あの二人も根は悪い奴じゃないから…嫌いにならないでくれたら嬉しいなーって…」

「…超良い子…! ユリさん! この子超良い子だよ!」

「ええ。アーちゃんはとても良い子です」

「分かったよ!アーちゃん! 私姉さん達の事嫌いにならないよ!」

「もう! アーちゃんはお仕事中はダメなの! 普段はアウラってちゃんと呼んでよ!」

「「アーちゃん可愛い…」」

 

そんな、ナザリックでは珍しい、割りとマトモなガールズトークをしながら偽のナザリックに入って行ったのだった。

 

 

 

 

 

偽のナザリック、その中の一室で、先ずは守護者各位と顔合わせしろ、と言うのが兄の命令らしかった。

これにはアインズが少しでも言い訳を考える時間が欲しい…という涙ぐましい理由が有るのだが守護者やクレマンティーヌには知る由もない事だった。

 

その一室にクレマンティーヌがユリとアウラと共に入ると、一人の…アウラとそっくりな…超絶美人な子供と…でっかい虫が居た。

 

(あ、あの人?…人? あの人も守護者なの? もしかして着ぐるみ? んな訳ないよね…)

 

その、一見巨大な虫かと見紛う白銀のモンスターと、隣に居た滅茶苦茶可愛い子供が近づき、話しかけてきた。

 

「オハツニオメニカカリマス。私ハ第五階層守護者、コキュートスト申シマス」

「しゃ…あ、ああ、は、初めまして。私はクレマンティーヌと申します」

 

クレマンティーヌは今、喋ったーーーッ、と言いそうになるのを必死に堪えた自分を褒めてやりたい気持ちで一杯だった。

 

(見た目によらず…めっちゃ丁寧な話し方なのね…)

 

クレマンティーヌが心の中でガッツポーズをしていると、その白銀のモンスター、コキュートスの横から超絶美人な子供が話しかけて来た。

 

「あ、あの、ぼ、僕は、第六階層守護者、マーレ・ベロ・フィオーレで、です! よ、宜しくお、お願いします!」

「………!」

 

クレマンティーヌは余りの衝撃に、笑顔を通り越して真顔になっていた。真顔で見下ろして居るクレマンティーヌに向け、本気で心配そうにマーレと名乗ったダークエルフの子供が声を掛けてくる。

 

「あ、あのぉ?」

「…すげぇ良い」

「え?」

 

(これは…やべぇ…この精一杯、めっちゃ頑張って話し掛けてる感が…もうたまんない!! アーちゃん以上に…滅茶苦茶にしてぇ…。しかも! 僕って! 男の子!? 男の子なの!?)

 

「あ、あの、く、クレマンティーヌさん? ど、どうしたんで、ですか?」

「はっ!? ダメだダメだ!! えっとマーレちゃんは…もしかして、アーちゃんの…弟?」

「は、はい! そ、そうです!」

 

少し会話を交わしただけで、自分の表情の口元は緩み、とてもだらしない顔になっているのが鏡を見なくてもわかった。

そんな、だらしない顔になっているクレマンティーヌに横から声を掛けて来るものがいた。

 

「クレマンティーヌちゃん、その子は怒らせちゃダメでありんすぇ?」

 

その声がした方に、守護者は普通に、クレマンティーヌとユリはビクッと振り向いた。

 

「シャ、シャルティア姉さん? あ、アルベドさんも、さっきは黙って居なくなって済みませんでした!」

「良いのよ、さっきは情けない所を見せてしまったわね。…あーそれと、私の事も姉さん、と読んで欲しいのだけど」

「う、は、はい。…分かりました、アルベド、姉さん。…えーと、シャルティア姉さん、さっきは何て言ったんですか?」

「ああ、マーレはこの中でも最強たる妾に次ぐ強者。その子が怒ったら、妾かアインズ様で無くては単騎では止められんせん、下手をすればここにいる全員…全滅するかもしれないでありんすから、怒らせちゃダメでありんすよ」

「いっ!? マジっすか!?」

 

それを聞き、クレマンティーヌはマーレから大きめに一歩分距離を取った。別に怒らせるような事はしていないとは思うが、やられてもおかしくない事は考えたのは事実。…あと表情にもでていたし。

 

「あ、アインズ様の妹に、そ、そんな事はしませんよ!」

「そうよ! それを言ったらアンタの方が変な事してんだから危ないじゃない!」

「分かっていんすよ。今のはちょぉっと…クレマンティーヌちゃんが危ない事を考えていそうな顔になっていんすから…すこぅし釘を刺しただけでありんすよ」

「「?」」

 

それを聞き、クレマンティーヌはマーレとアウラから目を逸らし、大量の唾を飲む。

 

「げぇ…ゴクリ」

(バレてるーーーーーッ!! 流石はシャルティア姉さん!! だよねぇ!! 私にセクハラしてる時も今の私と同じような顔してたもんねーー!!…いや、もしかして…やっぱり心がよめるんじゃ…?)

 

「それにしても…アウラ、今回は私達の負けね。やるようになったわ」

「そうでありんすね。チビ助、妾達に気付かれる事無くクレマンティーヌちゃんを連れて行くとは…恐れ行ったでありんす」

 

クレマンティーヌが一人でアワアワしていたのだが、何やらシャルティアとアルベドの…今日唐突に、何の前触れも無く出現してきた二人の義姉がアウラを褒め称え始めた事で、どうやらこれ以上追求されずに済みそうだった。

 

「な、何の勝負よ?」

「決まっているでしょう?クレマンティーヌに気に入られれば、アインズ様の正妃としてプッシュして貰えるかもしれないじゃない。」

 

(…いやいや、アルベド姉さん? こっちをそんな本気の目で見ながらそんな事を言われても…シャルティア姉さんもそんなにガックンガックン首を縦に振られても…あのクソ兄となんてあなた達が勿体ない…ん?…ちょっと待てよ?)

 

クレマンティーヌは一つ、おかしい事に気が付いた。

 

(な、何でアーちゃんまで…正妃争いに…?)

 

そんな事を考えながらアウラを見ていると、アウラが顔を真っ赤にしている事に気づいた。そして、アウラがアルベドとシャルティアに、向かって口を開いた。

 

「わ、私はそんな…プッシュとかじゃなくて…普通に友達になりたかったの! それに! アインズ様の正妃とか…まだまだ先の話しでしょ!!

「アーちゃん…本当に良い子!…ん?正妃は?…先の話し?」

 

クレマンティーヌは一瞬感動しかけたが、アウラの口から正妃と言う単語が出てきた事でクレマンティーヌの機嫌は急降下した。

 

(あ、あんのクソ野郎…こんな良い子にまでちょっかいかけてんのか!? …ん?待てよ…まさか!?)

 

「ま、マーレちゃん?」

「は、はい?な、な、何ですか?」

「えっと、私の兄、あ、あいんず様だっけ…の事はどう思うの?」

「え、えっと…か、格好良くて…そ、その、だ、大好きです!」

 

大好き。別に男が男に大好きと言うのは悪くないだろう、別にそっちの意味以外でも使うことは有る。だが、今大好きと言ったマーレの目は…何やら不穏な色をしていた。…多分、そっちの意味だった。

 

「やっぱりぃ?」

「ぇ、えっと…だ、ダメで、ダメですか?」

「マーレちゃんは…何も悪くないよ…うん。」

「は、はい。ありがとうございます!」

 

(あいつは…絶対にぶちのめしてやる!!)

 

クレマンティーヌが静かに宿命を再確認した所で、コキュートスがアルベドに近寄り、話しかけているのが視界の端に入ったので、クレマンティーヌはそちらに目を向けた。

 

「アルベド」

「何かしら?コキュートス?」

「デミウルゴスハドウシタノダ?アマリアインズ様ヲオ待セスルノハ心苦シイノダガ…」

 

そんな、アインズが聞いていれば「別に急がなくていいぞ!あと半日ぐらい!」と言いそうな、とても忠義を感じさせる言葉だった。

 

(あの人も、見た目より全然マトモなのね…。話し方も丁寧だし凄い真面目そう、というか寧ろ好感を持てるぐらい…。他の守護者の人達も真面目そうだったし……シャルティア姉さんは…うん)

 

「ああ、大丈夫よ。そろそろ此方に来ると思うわ。今パンドラズ・アクターにナザリック防衛の引き継ぎをしている所だから」

「ナルホド、我々ガ居ナイ間ハ彼ガナザリックヲ守ルトイウコトカ」

「ええ。彼ならば間違いないわ。アインズ様の創造された守護者と言う事なのか非常に優秀だしね」

「フム、私モ一度話シテ見タイモノダ」

 

(ん? そ、創造!? え!? どういう事なの!?)

 

クレマンティーヌが一人で大混乱していると、今居る部屋の入り口がノックされる音が響いた。扉の元にユリが向かうと少しだけドアを開けて確認し、此方に振り向いて誰が来たのかを告げた。

 

「皆様、デミウルゴス様がいらっしゃいました」

「ええ、入れて頂戴」

 

(来た! 私が一番会いたかった人!)

 

ユリが扉の向こうに向かい、どうぞ。と言うと、扉が開かれ、一人の男、三揃えの…スーツ_と言ったか、確か東の方で良く着られて居ると聞いた事が有る_を着て、黒髪をオールバックに纏めたとても知的な雰囲気の男が入って来た。彼の背後には、銀のプレートメイルに覆われた尻尾が生えていた。

 

「皆さん、お待たせしました。」

 

彼はそう言うと辺りを見回し、クレマンティーヌを見つけると笑顔で此方に向かい、声をかけてきた。

 

「…ああ、貴方がアインズ様の妹君ですか、お会い出来て光栄です。お初にお目にかかります、私、デミウルゴスと申します。お見知りおきを」

「は、はい。私はクレマンティーヌで…と申します。宜しくお願いします」

「ええ。宜しくお願いします…あぁ、それと申し訳ありませんでしたね」

「え?何がですか?」

「あの牧場、人間で有る貴方には酷な光景だったかと…ご気分を悪くさせてしまいましたね」

「いえいえ! 全然! とても楽しい…凄い物を見せて貰いました!」

「え? 本当ですか?」

「はい!もっと見たかったくらい!」

 

クレマンティーヌがそう言うと、デミウルゴスはアルベドの方を向き問いかける。

 

「聞きましたか?」

「ええ。なる程…人間を妹にすると仰った時は不思議だったけど」

「ええ、流石はアインズ様に認められたということですね」

 

その短いやりとりだけして再びデミウルゴスはクレマンティーヌの方に向き直った。

 

「ふふふ、貴女は人間にしておくのが惜しいですね」

「ええ、身体は人間だけど…心は異形そのもの。私達に近いのでしょうね」

 

何やらかなり酷い言われようだったが、彼等の口振りからしてどうやら褒めてくれているようだ。

 

「え、えーと…」

「ああ、済みませんね。であれば…今度アインズ様にお願いして、牧場の見学に来てみると言うのはどうですか?」

「い、良いんですか?」

「ええ、是非とも」

「あ、ありがとうございます! あ、でも…」

「? どうかしましたか?」

「見るだけじゃ無くて…私もやって見たかったりして…」

「ククク、ハハハハ! 素晴らしい! アインズ様の妹君自らお手伝い頂けるとは! ええ! 是非ともお願いします! これで現場の士気も更に上がるでしょう!」

「ふふふ、クレマンティーヌは働き者なのね」

「い、いやぁ、ありがとうございます」

 

あの現場の士気が上がると言うのは、あの牧場の『羊』達にとってはただただ迷惑かつ恐ろしいだけだろう。だがクレマンティーヌには関係の無い連中だ。

しかし、あれを自分もやれるとは…そう思うと自然と口角が釣り上がるのを、クレマンティーヌは感じていた。

 

「あら…うふふ、クレマンティーヌちゃん、そう言う笑顔も妾は好きでありんすぇ」

「うんうん、すっごい良い笑顔だね」

「あら、本当ね。その笑顔…さっきデミウルゴスも言ってたけど、貴女人間にしておくのは惜しいわね」

「で、でも、アインズ様に聞いてからに、し、しないと…お、怒られますよ?」

「ウム、マーレノイウトオリダ。ソレニ…」

「ええ、私が遅れてしまったので少し時間が押しています。ヴィクティムは今後いつか顔合わせするという事でしたし…ガルガンチュアも…とにかくこれで命令に有った我々との顔合わせも済みました。アインズ様の元にお連れしましょう」

「そうね。その通りだわ」

 

そんな守護者の人達の会話を聞きながら、クレマンティーヌは考えていた。兄に会ってどうするのかを。

 

(取り敢えず一発殴る。その次はどうする? 逃げるのは…無理だよねー…でも、何か…ここに居るのは悪く無い…どころか結構楽しいかも…)

 

 

 

 

クレマンティーヌは他の守護者と共に、アインズが待つと言う一際立派なドアの前に立っていた。この向こうに…あの野郎が居る。

 

「さて、ではユリ。お願いするわ」

「は!」

 

アルベドがユリにそう言うと、ドアを少し開けて、中に居る者に声をかけた。

 

「では、先ずは妹君からどうぞ」

 

その声を聞き、クレマンティーヌはドアの前に立つ。

 

(やっとこの時が…殴ったら…もしかしたら殺されちゃうかもな…やっと私の居場所を見つけられたのかもしれないのに…でも! 人間誰でも一回はぶん殴らなきゃ済まない奴がいるの! 皆いつかは分かるはずだ、こういう奴は生かしておいちゃいけないって…! 分かるはずだ! みんな、みんなには分かるはずだ!)

 

クレマンティーヌは守護者達やユリを見回すと、1つ大きく息を吸い込んだ

 

(焦りすぎよ…だからいけないの…でも!…クワイエッセ…お前だ!いつもいつも脇から見てるだけで!魔獣にばかり戦わせて!…こんなに良い人達を弄んで!)

 

そんなアウラが聞いたら…少し怒りそうな事を考えつつ、未だ閉まっているドアを見据える。

 

(許せないっ! 私の命に代えても、体に代えても! お前だけはっ!!)

 

〈疾風走破〉

〈能力向上〉

〈能力超向上〉

武技を一つ一つ発動させ、フルブースト、全力での攻撃を放つ準備を整える。

 

(それに…女の人達を取っ替え引っ替え…! あんなに小さい子まで…歯ぁ食いしばれ…! そんな大人っ!!)

 

クレマンティーヌは自身の体を、クワイエッセをぶっ飛ばす機械に作り変えていく。そしてここに来てからの更なる怒りを右手に込めた。

 

「では、どうぞお入り下さい」

 

ユリが扉を開けた瞬間、クレマンティーヌは疾風になった。

 

「修正してやる…ぇ…ぅえええええええっ!?」

 

クワイエッセ、余り言いたくないが自分に良く似た男。それが扉の前に居ると思ってイメージしていたのだが…そこに居たのは全く違う男だった。

そこに居たのは、あのエ・ランテルで出会い、優しく送り出してくれた、今やクレマンティーヌの中で憧れに近い思いを抱いている、赤い全身鎧を着用した背の高い男だった。

 

(止まんないーーーッ!!)

 

クレマンティーヌは振り上げた拳をそのままに、顔面からその赤い全身鎧に突っ込んで行った。

次の瞬間、ガッチーン!!と凄い音がし、クレマンティーヌの視界に火花が散った。

 

「うっぎゃあ!!…うぐぐううう!…あいたぁ…。」

「おっと…久しぶりだな。…しかし、君は会うたびに額にタンコブを作っているな。…ふふ、かなりのじゃじゃ馬…ということか?」

 

痛みに悶絶していると、頭上から優しげな、あの時聞いた声が降ってきた。

 

「うぃ!? あ、あにゃたは…あの時の…」

「ふふふ、いや…あの時は私のせいだったな。済まない」

「ひゃ、ひゃい…大丈夫です」

「まあ、何だ…そうだな…ふ、よく来たな、我が妹よ」

「お邪魔…してます…」

 

気づけばクレマンティーヌは赤い鎧の男、アインズにガッチリと抱きしめられていた。このまま鯖折にされるんじゃないかと思うぐらいにがっちりと。

…それに気づいた時、クレマンティーヌはボンッという、自分の顔面がとても熱くなり、真っ赤に沸騰する音を聞いたような気がした。

 

 

 

 

「いきなり抱きつきに行くとは…情熱的な兄妹でありんすねぇ。アインズ様もあんなにしっかりと…」

「そうだねー。とても仲良しなんだね」

「ウム、トテモ美シイ光景ダナ」

「…というか、クレマンティーヌちゃん、あんなに足が速かったんでありんすね」

「うん、ちょっとビックリした…もしかして…あれが武技ってやつなんじゃない?」

「ナルホド、武技ヲ使ッテマデ抱キツキニ行クトハ…ヤハリ美シイ光景ダナ…」

「そうでありんすねぇ…」

「…何か…違くない?」

 

そんな同僚の声を聞きながら、マーレは羨ましそうにアインズに抱きしめられているクレマンティーヌを眺めていたのだが、顔の横からギチイリ…という音がしたのでそちらに振り向いた。そこには…

 

「この子は妹この子は妹この子は妹この子は妹この子は妹この子は妹この子は妹この子は妹この子は妹この子は妹この子は妹この子は妹この子は妹この子は妹この子は…この子は妹なの?本当に…?まさか!?…いえ、アインズ様の仰る事を疑うなんて…そうよ!この子は妹よ!…この子は妹この子は妹この子は妹…」

「ヒィッ」

 

念仏のように『この子は妹』と、延々と唱えている守護者統括の姿がそこには有った。

 

「あ、アル…ん?」

 

マーレがアルベドの名前を言う前に、ポン、と肩を叩かれた。

 

「で、デミウルゴスさん?」

「止めておきなさい。マーレ。」

 

デミウルゴスは優しげな笑顔を浮かべ、首を横に振りながらそう言ってきた。

 

「い、良いんですか?」

「…彼女は、あれで必死に自制しようと努力しているんだ。…彼女の努力を無駄にしない為にも…今は放っておいてあげよう」

「そ、そうですね、は、はい。分かりました」

 

 

 

アインズは抱きしめるつもりは無かった。たまたまだ。ドアが開いた瞬間、凄い勢いで突進してくる女を見て、このまま回避すれば折角アウラが作ってくれたこの偽のナザリックの何かしらが壊れてしまうかも知れない。そう瞬時に判断して受け止めたのだが、守護者達の会話を聞き、ハッとして視点を下げて、自分の格好を見てみると…そこには何やら柔らかそうな2つの程良い大きさのおっ…物体が、自分の胸板と相手との間でつぶれていたのが視界全体に入って来たので直ぐ様視点を天井に向けた。

 

(…どう見ても抱きしめています。本当にありがとうございました…じゃぁない!そんな事を考えている場合じゃない!! 近い、近すぎる!でも…そう、でも!…仕方ない!…仕方ないよな!? だってあのまま走り回ったらこの娘が怪我をしてしまうかもしれないし、建物を壊してしまうかもしれないんだから!! それにしても…鎧を着ておいて良かった…この2つのおっ…物体の感触を感じていたらやばかった…。それに彼女にタンコブが出来たお陰でこの女と何時何処で出会ったか思い出せたのは僥倖だったな…)

 

そして、彼女を地面に下ろすと守護者に声をかける。

 

「さて、では…そうだな。先ずは兄妹水入らずで話がしたいのだが、守護者達は先程の部屋で少し待っていてくれるか?」

「「は!」」

「この子は妹この子は妹この子は妹この子は妹この子…」

「…あ、アルベド?」

「は、はい!何でしょうか?まさか!? 次は私を抱きしめて下さるのでしょうか?さあ! バッチ来いです!!」

「なっ!? ずるいでありんす! 妾も! 妾も!!」

「そんな事に確認は要りません!!…いや、寧ろ…予告も何も無い方が良いんじゃ…いきなりアインズ様にギュッと…キャアアアア!!」

「なる程! 流石はアルベドでありんすね。…でも今回はクレマンティーヌちゃんの前でありんすし、仕方ないでありんすよ」

「そうね、そうだったわ…貴女こそ流石ね、シャルティア」

 

「はぁ…」「ハァ…」「ぼ、僕も…な、何でも無いです…」

「…はぁ。アインズ様、おいたわしや…」

 

「さあ! アインズ様、どうぞ!」

「仕方ないでありんすね。今回はアルベドに先を譲りんしょう」

 

呆れて、溜め息をついている他の守護者達もなんのその、そんな事を言いながら両手を上げて仁王立ちになるアルベドとシャルティアに対してアインズは、若干の可愛らしさ?と同時に、結構な恐怖を感じていた。

 

「…へ?お、お前達は…一体何を言ってるんだ?…い、いやそうでは無くてだな、一度彼女とゆっくり話がしたいから少し外で待っていてくれるか?…と言ったんだが…。」

「…はい。…ですよねー…畏まりました…」

「…はい、畏まりんした…」

「う、うむ」

 

露骨にガッカリ…というか完全に意気消沈しながらも深々と頭を下げて部屋を出て行くアルベドとシャルティア、それに対して呆れている他の守護者達を…アインズは何故かウットリとした表情のクレマンティーヌと共に見送ると、アインズは大きく息を吐いて自身に気合を入れる。

 

(さて、ここからが本番だ。彼女に何とか納得してもらえるようにしなくては! 俺の…妹になって貰う為に!…しかし、自分の頭の中で考えて見ても…何て…何て!!…犯罪的な言葉なんだ…俺の妹になってくれって…)

 

 

 

 




そら(変形も出来ないのに頭から突っ込んだら)そう(頭超痛く)なるよ…
クレマンティーヌちゃん…タンコブだけで済んで良かったね!原作ならあのまま鯖折りだよ!…でもあの直前、クレマンティーヌは一瞬だけ主人公になってた。補正はかからなかったけど…でも主人公補正かかっててアインズ様をぶっ飛ばしちゃったら…それはそれで…うん、死んじゃうね!

クリスマス…そうか、アインズ様は何だかんだ美人に囲まれてのクリスマスなのか…

昔はリア充といえば俺の事を言ってたんだぜ。
小金持ちのなかじめさんとか言われてね。
懐かしいなぁ…。
リアルで充実してる骸骨爆発しねーかな。
(元ネタが何だか分からない人は『ジュドーさん』で検索してみて下さい。スパロボVで復活おめでとう!)

次回の更新は、来週の土曜日はそれこそ年末も年末なので1日早い金曜日に上げたいと思います。年内最後になりますが、宜しくお願いします!

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