というかよく考えたら1話目からこの話の最後までぷれぷれぷれあです風味でした…。故にキャラ崩壊が…。
「中二病が蔓延している件」
アインズはアルベドのみを連れ、シャルティアの元に向かった。ナーベラルやハムスケを連れて行き、シャルティアに戦闘状態に移行された場合、全く対処不可能な状況に陥る可能性が有るからだ。
その間ナーベラルは久方ぶりに、プレアデスの姉妹達と再開していた。状況が状況なので楽しむ訳にはいかなかったのが残念だが…。
「ナーちゃん久し振りっす!ソーちゃんがいないのが残念っすね~。」
「久し振りぃ。ソリュはセバス様とお出かけ中ぅ、だから仕方ないぃ。」
「……元気?」
ナーベラルがメイドの休憩室に入るとルプスレギナを筆頭に姉妹達が声を掛けてくる。
「ええ、久し振りね。でも今は…」
そう言い、ナーベラルは姉、ユリ・アルファの方を見る。
「はいはい! ナーベラルの言うとおり今は楽しんで良い時では無いでしょ? 兎に角、何が有っても良いようにここで待機しろ、との御命令なんだから。」
「ごめんっすユリ姉~。でもお喋りくらいは良いんじゃないっすかー?ペタン…シャルティア様の事はアインズ様が動いて下さってるのだから大丈夫よ、ユリ姉さん。アインズ様にお任せすればきっとシャルティア様も帰って来るわ。」
ルプスレギナはペタン…と言ってしまったのを誤魔化すように途中から話し方を真面目な物に変えた。
「そうよねぇ。久し振りに会ったんですしぃ。…アインズ様に全部お任せするのはぁ、心苦しいですけどぉ。」
「……情報交換も、大事。」
どうやら他の妹達もナーベラルとの再開を楽しみにしていたようだ。
「うーん…。そうね。情報交換くらいならアインズ様もお許しになると思うわ。…取り敢えず聞かなきゃいけないのは…その、シズの下の生き物は何かしら?」
ユリがシズの下、シズが抱きつきながら寝そべっている巨大な生き物を指差す。
「そ、某はハ、ハムスケでござる。この度、殿…アインズ様の家臣にして頂いた者でござる。あ、あのナーベラル殿、…お前はうるさいでござるよ!少し黙るでござる!…こ、この方は何をしているのでござるか?」
「…シズ、もしかしてそれが可愛いの?」
ナーベラルがハムスケを無視し、シズに向かって聞いた。
「………うん。」
「良かったわね、ハムスケ。ただ可愛いから抱きついているだけですって。光栄に思いなさい。」
「はいでござる。大人しくしてるでござるよ。」
何を隠そうここに来る前にアルベドに脅かされ、アインズの素顔を見せられ、散々ビビり倒し既にナザリックの怖さをその身体に刻み込まれたのだ。この部屋に入るなり音も無く忍び寄り抱きついて来たシズに、ハムスケは相当怯えていた。
「シズちゃんは可愛い物好きっすからね~。ハムスケも好きになったんすか?」
「………可愛いから好き。」
「ええ~、恐怖公の眷族の方がぁ、可愛くて美味しいのにぃ。」
それを聞き、姉妹達は皆、口を抑える。
「そう言えば最近、恐怖公が変な事言ってたんだけどぉ。」
「何を言ってたの?」
「『エントマ様、感情を制御出来ない奴はゴミなのですぞ?』とかぁ言われたぁ。」
「えぇ…意味分かんないっすね。」
でかいゴキブリにそんな事を言われたエントマに、姉妹達は深い同情の念を向ける。
「それでぇ最近行った時は『感情を制御出来ない奴はゴミだと教えた筈ですぞ!』ってぇ、怒られたのぉ。」
「怖いわね…。後で…シャルティア様が帰って来たら良く言っておいて貰わないと。」
ユリは今はナザリックに居ないシャルティアに向け、心配そうに呟いた。色々有って少し苦手だが、仲良しのアウラの妹の様な存在だ。彼女に何が有ったのかと、ユリはとても心配だった。
「うーん、もしかしてアレじゃないっすか? ナーちゃんが、出発前にデミウルゴス様に教えて貰った『アインズ様に少しでも近づく為のセリフを考えなさい』って奴。」
「え、何それ?」
それを知らないユリだけが皆の方をキョロキョロと見回す。するとナーベラルが代表して返答した。
「ああ、私がアインズ様の相方としてどうすればより一層お役に立てるか聞きに行った時に、デミウルゴス様が教えてくれたの。先ずはセリフから入りなさいとね。…最初はアルベド様に聞こうと思ったんだけど…、あの時のアルベド様はちょっと…。」
アインズがナーベラルを共にする、と言った時、ユリもナーベラルに付き添いでアインズの元に来ていたのだが、その瞬間のアルベドは…阿修羅すら凌駕する存在だった。
「ああ、…あの時のアルベド様は恐ろしかったわね…普段はお優しいのに。…それにしてもセリフからねぇ。もしかしてあなた達も?」
「私と、シズちゃんと、ナーちゃんとエンちゃんで行ったんすよ。丁度ユリ姉はセバス様から仕事の引き継ぎをしてたんすよね~。ソーちゃんも。」
「ああ、あの時ね。それで…もしかしてあなた達も考えたの?」
そうユリが聞くと、全員が頷き肯定した。
「…一応聞いても良いかしら?」
流石に、ユリとしても興味が有るのと同時に、至高の御方の前で変な事を口走らないかチェックしておかなくてはならない。
「じゃあぁ私からぁ。」
一番手に名乗りを上げたのはエントマだ。ユリとしては良い子の部類に入るエントマなら安心出来る方だった。
「では、エントマからね。聞かせてくれるかしら。」
「行っきまぁす!……隠し腕っ!? コッチにも有るんだよぉっ!!」
「カッコいいっすよ!エンちゃん!」
「………悪くない。」
「勢いが有るわね。…隠し腕?何でかしら…? 親近感が…。」
「やったぁ!」
「確かに…隠し腕?は有るけど…」
有るけど…それは敵が隠し腕を持っていなければ言えないんじゃ…、とユリは思ったが、ニコニコ可愛い笑顔のエントマを見てまあ良いか、とその疑問は飲み込んだ。
「じゃあじゃあ!次は私っすね!」
二番手はルプスレギナらしい。ユリにとってこのメンツの中では一番不安な妹である。
「…どうぞ。」
「よっしゃ!……おりゃあああっ!!滅っ殺っ!!…どーっすか?どーっすか?」
「あの大きい武器を叩きつけながら言うのかしらぁ?」
「そーっす!」
「ルプーには似合いそうね。」
「……燃える。」
「おーっ! ナーちゃんもシズちゃんも分かるっすか? やるっすね!」
「い、意外とルプスレギナもまともね。じゃあ最後は……シズね。」
全員の目がシズの元に集まる。恐らく全員の頭の中は、無口なシズがちゃんと言えるのか?と、考えているのだろう。妹思いなナーベラルは少し心配そうな顔をしているし、エントマは…勿論変わらない、ルプスレギナは…何も考えてなさそうだった。シズは相変わらずハムスケの上で寝そべり、顔だけを此方に向けた。
「……分かった。」
「じゃあ、シズ、お願いね。」
「………うん。」
そこでシズは息を大きく吸い込む。
姉妹達がゴクリと唾を飲み込む音がした。
「………私、射撃苦手なのよねー。」
ガシャーンと音がする。ルプスレギナが大袈裟にずっこけた音だ。
普段ポーカーフェイスのナーベラルも目を剥いてシズを見ている。
エントマは可愛く小首を傾げ、意味が分かっていなさそうだった。
ユリは予想外過ぎるシズの言葉にびっくりし過ぎてチョーカーをしているのに頭がズレていた。
そこで、ユリの元にアインズから《伝言/メッセージ》が届く。
『ユリ、至急墳墓の入り口にシズと共に来るのだ。』
『ア、アインズ様!!は、はい!畏まりました!』
ユリはあまりのタイミングの良さにどこかから見られていたのか?とキョロキョロしてしまい、声も裏返ってしまった。
『だ、大丈夫かっ!?何か有ったのか!?』
『い、いえ、何も有りません。大至急向かいます!』
『そ、そうか。ならば頼むぞ。これから宝物殿に向かう。アルベドとシズと共に付いて来てくれ。…では、
指輪を忘れるなよ。』
それで魔法が切れ、ユリは姉妹の方に向き直る。姉妹達は不安そうに此方を見ている。
「はい、ではこれで情報交換は終わり。プレアデスとして行動します。シズは私と来る事。他の妹達はこれからアルベド様に指示を貰うのでそれまでここで待機。良いわね? それから…」
ユリはシズの方に顔を向ける。
「さっきのはアインズ様の前ではダメね。新しいの…というか、ガンナーなら他に有るでしょ?考えなさい。」
「……もう一つ有る。」
「言ってみなさい。」
「………早かったな…私の死も…。」
再びガシャーンとルプスレギナが大袈裟にずっこけた。
ユリはシズをひっ掴むとハムスケから引き剥がし、引きずりながら転移門へと向かう。
「…それ、弾切れでやられそうな時のセリフでしょ? やられそうな時のセリフ考えてどうするの。 第一、ボク…私達が前衛やってるのに後衛のシズまで敵を回す訳ないじゃないの。 今のもダメ。 分かった?」
「………分かった。」
ユリは不安になってきた。確認してなかったナーベラルは何と言ったんだろうかと。
(大丈夫よね…。変な事言ってないわよね…? ナーベラル?)
「………バイバイ、ハムスケ。またね。」
シズはユリに引きずられながらハムスケに手を振っていた。
「シズ殿、御達者にでござるよ。」
ハムスケもシズに向かい手を振った所で、転移していった。
「ナーベラル殿、背中が変でござるよ…。何かなってないでござるか?」
ナーベラルがハムスケの背中、シズが抱きついていた辺りを見ると、シズのお気に入りの印、一円シールまみれだった。
「うわぁ…。…剥がすのが面倒だし、今は緊急事態で忙しいから少しそのままでいなさい。」
「ちょっと嫌で…分かったでござる!我慢するでござるよ!」
嫌でござるよ。と言おうとしたがナーベラルの面倒くさそうな、冷たい本気の目を見て、ハムスケは諦めた。
「しかし…何だったのかしら…?…シズ。」
「私にもぉ分かんないぃ。」
「シズちゃんも不思議ちゃんっすからね~。…では、何が有っても良いようにちゃんと準備しましょうか。プレアデスとして恥ずかしく無いようにね。」
ルプスレギナの真面目モードの言葉に、ナーベラルとエントマは頷いた。
シズは久しぶりにナーベラルに会えて、しかも自分のドストライクなハムスケを連れて来てくれた事でテンションが上がっていただけだった。顔には全く出ない…出せなかったが。
アインズはユリ達と合流し、宝物殿に来ていた。超位魔法の指輪、シューティング・スターは今のシャルティアには全く効果が無かった。今のシャルティアは…考えたくはなかったが間違い無い。ワールドアイテムにより精神支配を受けている、との結論が出たためだ。
ワールドアイテムに対抗するのはワールドアイテム以外には無い。少なくとも今のアインズ・ウール・ゴウンには。
それもシャルティアの精神支配を解く為では無く、外に出ている守護者達に配る為だ。シャルティアは…。
アインズはその考えを胸に仕舞い、今はやるべき事をやることにした。
(しかし…さっきは驚いたな…。ユリがシズを引きずって来たと思ったら、ユリの首もずれているし…。姉妹喧嘩だろうか…。後でナーベラルに聞いてみなくては…。ん?…そろそろか。)
「アルベド、パンドラズ・アクターは知っているのか?」
「はい。名前と姿、その務めは管理上把握しております。財政面の責任者と言った所でしょうか。」
「そうだな。ただ、それだけでは無い、奴は_」
アインズの言葉を遮るように、三人のNPC達が顔を向けた別の通路から、ふらりと姿を見せた者がいた。
その姿を見た瞬間、アルベドが驚愕に彩られた声で叫ぶ。
「タブラ・スマラグディナ様!」
その人物こそ至高の四十一人の一人。
単純な火力ではアインズを上回るマジック・キャスターだ。
「いや、違う!」
即座にアルベドは吠える。その反応に従い、二人のメイドも機敏に行動を開始する。
シズは銃器を抜き放つと、両手に……何アレ。
「シズ…何だそれは?」
「……ダブル・ガトリング。」
「そんな物までシズに持たせていたのか…。それでどうする気なんだ?」
「……乱れ撃つぜ。」
「シズっ!! 答えになってないでしょーが! 申し訳有りません! アインズ様! アインズ様の身辺警護任務という事で最強装備で来たのです! 何卒シズをお許し下さい!」
ユリはシズの言葉に声を裏返しながらアインズに頭を下げて来る。
「いや、私は不快になどなっていないぞ。アルベドも…《真なる無》を下げろ。宝物殿ごと吹き飛ばす気か…?」
「し、しかし、あの者は!?」
「大丈夫だ、私を信じろ。…もうよい、パンドラズ・アクター。」
そのアインズの言葉で、タブラ・スマラグディナの姿がドロリと溶け、一拍の後にそこに立っていたのは別の者で有った。
まん丸卵の頭に被った制帽の帽章にはアインズ・ウール・ゴウンのギルドサイン。二十年ほど前、欧州アーコロジー戦争で話題になったネオナチ親衛隊の制服に酷似した制服を着用している。
彼はカツンと踵を合わせて鳴らすと、オーバーなアクションで右手を帽子に添えて敬礼する。
「ようこそおいで下さいました! 私の創造主たる、ムォモンガ様っ!」
「…お前も元気そうだな。というか今の私の姿で分かるのか?」
「はい! 元気にやらせて頂いておりますっ!」
そこで一旦区切り、ポージングを変更するパンドラズ・アクター。胸に手を当て、逆の手を天に翳し、再び口を開いた。
「ん勿論ですっ! そのぅお姿…あの至高の四十一人、そのモモンガ様以外の方々が、ムォモンガ様の為にっ! お作りになられたアイテムによる効果とお見受け致しますっ! どうでしょうかっ?」
言い切ると胸に手を当てたまま一度頭を下げ、顔だけを此方に向けて来る。恐らく顔が動かないので全く分からないのだが、凄いドヤ顔な気がした。
(…ぐふっ!な、何だ! アイツが姿を見せてから何かが、何かが音を立てて削れて行っている気がするっ!凄い多弾ヒットでガリガリと…! HPとかMPとかじゃない目に見えない物が…!…ん?あれ?)
その時、アインズは本当に久しぶりに精神が沈静化されたようだった。
(ええっ!? 今の俺はこんなに精神状態が悪くならないと精神の沈静化が起きないのか!? というか…それが分かったのが自分が作ったNPCって…。おっと、いかんいかん。)
「その通りだ。よく知っていたな。」
「はい。何を隠そう、そのアイテムは私で外装のチェックをやっていたので。」
「成る程な。…それと私はアインズと名前を変えた。今後はアインズと呼ぶように。」
「おお! 承りました。 ン~アインズ様!」
そこで二回目の精神沈静化が起こった。
(こんな、こんな高難易度のイベントが…シャルティアと戦う前に有るとは…!)
「そうでした。一つ言っておかなければいけない事が。」
「ん? まさか! 宝物殿に異常が有るのか!?」
「いえ、そのご心配は私が守護している限りございませんっ! ご安心下さい! ン~アインズ様!」
(止めて! いちいちアインズの前にンを付けないで!)
「では、何なんだ?」
「私は、ガンダムでは有りませんっ! ですからご安心をっ!」
「「は?」」
とその場にいた全員が余りの意味の分からなさに唖然とする。
「お、お前は何を言ってるんだ?」
「私にも意味は分かりませんっ!がっ!言わなくてはならないと誰かが私に囁いているのですっ!」
パンドラズ・アクターは言いながらビシッとポーズを決め此方にカッと顔を向ける。
そこで三回目の精神の沈静化が起こった。アニメなら光りまくりである。
(意味は全く分からんが、凄い自信だ…! ぐぬぅ!負けるわけには…、負けるわけにはいかんのだ!)
「まだだ!まだ終わらんよ!」
(その通りだっ!シャルティアを…シャルティアを救うまではっ!)
次回 VS パンドラズ・アクター
本当は次回と今回は一緒の話だったんですが…前半が書いてて長くなりすぎたんです。
次回はVSなんて書きましたが、原作通りアインズ様がパンドラさんに一方的に殴られる痛さと怖さを教えられるだけです。…精神的に。