赤い骸骨 シャア専用モモンガ   作:なかじめ

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今回でvsデス・ナイトを終わらそうと思ったのに…ネタを突っ込み過ぎました。


AOG-13S

墓地に入り、冒険者達がまず見たのは死体の山だった。とにかく広範囲に広がり、何体のアンデッドがここでその仮初めの命を失ったのか全く分からなかった。

 

「こりゃあ…すっげぇな…。その、モモンって奴らは何人でここに来たんだ?」

 

そう聞いてくるのは漆黒の剣が呼びに行った冒険者の中で最も高い、金のプレートの冒険者だった。聞かれたのは漆黒の剣のペテルである。

 

「モモンさん達は2人の冒険者チームです。 一人が真紅の戦士、もう一人が女性のマジックキャスターです。」

 

そのペテルの言葉に冒険者達はざわめく、信じられないと。

 

「すげぇ、…そりゃ本当に新しい英雄の誕生かもな…。 衛兵の言ってた事も本当だったのか。」

 

冒険者達がここに着いた時、墓地を守護している衛兵達が、興奮気味に真紅の英雄が救ってくれたと冒険者達に言ってきたのだ。

 

「良し! 俺達も遅れられねえ! 行くぞぉ!」

 

そう金のプレートを持つ冒険者チームのリーダーが声を上げると、その場に集まった冒険者達から「「おおっ!」」と威勢の良い返事が返ってくる。

 

「数はそんなに残っちゃいないが油断せず一匹ずつ囲め!……そのモモンさんってのは俺達に気を使ってくれたんだろうな…。 ミスリル達はいねえし、この時間じゃそんなに数も集まらねえから…。 すげえ人だ。」

 

そうリーダーが呟くとペテルも同意する。

 

「モモンさんはそう言う人です。 我々も何でもやります、何でも言って下さい!」

 

本当は名前を付けて貰ったアポリーとロベルトが頑張り過ぎたのだが彼等には知る由も無かった。

 

 

 

そんな自分の知らない所で勝手に株が上がっているモモンの頭の中はたった一つの事で埋まっていた。

 

(デス・ナイトが倒せない。)

 

それだけである。

余りにもレベルが拮抗し過ぎて、中々倒せない。 というか戦士としてだけのレベルならデス・ナイトの方がやや上の35レベルなので当然と言えば当然なのだが…。しかもモモンのスキルで強化までされているので尚更だった。

最初は連続で殴られ斬られては距離を取るというのを繰り返していた。

何しろあのテンションである。モモンが心の中で

(こらあ!少しは手加減しろおっ!)

と思っても、奴は

『手加減って何だ?』

と言わんばかりの猛攻を仕掛けて来るのだ。

この作戦を思い付いた時は

『自分の作成したモンスターなんだし少しは手加減してくれるよね?接待してくれるんだよね?』

という甘えた事を考えていたのだが、残念な事に彼はかなりのガチ勢だった。

最初はどれほど

「ナーベ助けろおおお!!」

と言おうとした事か。 しかし、あれだけカッコつけて手を出すなといった手前言えなかった。

 

だがモモンの、いやアインズ・ウール・ゴウンのギルド長、モモンガのプレイヤースキルは伊達では無かった。

 

戦いに目を向ければ、ガギガキっという音がし、デス・ナイトは後方にノックバックする。

 

「オオオオオオ!!(ぐぅっ!やりますなあ!!流石は御方!!)」

 

「いや、今回の戦いではお前には感謝しかない。私には決定的に近接戦闘の経験が足りない、それが良く分かった。…まだまだ消えてくれるなよ?」

 

「オオオオ!!!…オオオオオ!!(感謝など勿体ない!!…まだまだ戦いを楽しみませ!モモン様!!)」

 

「ああ。そうさせて貰おう。では…ん?どうした?」

 

そこでアインズは構えを解いた。デス・ナイトが手を挙げ近づいて来たのだ。

 

「オオオ…。(あの、ナーベラル様がとても…恐いのですが…。)」

 

そうデス・ナイトがこそこそとモモンに言ってくるのでナーベラルを見ると、確かに怖いわ。とモモンは思わず呟いた。

今にもスイッチが入り、

『アインズ様が許しても私が許さん!』

と言って魔法の一つでもぶち込んできそうな顔をしていた。その横でハムスケがプルプルと震え、ナーベラルからなるべく距離を取ろうとしていた。

 

「…ナーベ、どうしたのだ?」

 

「いえ、そのデス・ナイトはアイ__モモンさんがお作りになられた方とは分かっているのですが…、いくらモモンさんが無抵抗だからといって、それを良いことにぽかぽかと殴るのは従者として捨て置けません!その方に少し話をさせて下さい!」

 

ナーベラルの話を聞くと、まるでモモンの子供がモモンにじゃれてボカボカ殴っており、ナーベラルが流石にそれは叱らせてくれとお願いしているように聞こえるが、現実はもっと酷いものだった。

それにモモンは無抵抗な訳では無い、今まで抵抗出来なかっただけだ。一応、モモンも今では殴り返している。

モモンは何だか分からないが少し落ち込んだ。

 

「ナーベよ、これは有る意味私の特訓でもあるのだ。手を抜いていたら意味が無い。お前も特訓をした身だ、わかるだろう?」

 

そう言うと、ナーベラルは顔が青くなる。

(…そんなにあの特訓が辛かったんだろうか?モモンと呼ばせていただけなんだが…。)

 

「畏まりました。そう言う事で有れば何も有りません。邪魔をして申し訳有りませんでした!」

 

「いや、お前の言った事は私の身を案じての事、不快では無いさ。…では、やるか?デス・ナイト!」

 

「オオオオオオーー!!!(行かせて頂きます!!)」

 

そう言い、2人は何度目かも分からない打ち合いを行う。

 

デス・ナイトはその巨大なタワーシールドで殴りかかってくる。

モモンは最初、その対処方法が全く分からなかった。単純にグレートソードで防ごうにも、相手が巨大な鉄の塊では良くて相殺、悪ければ弾かれ、逆の手に持ったフランベルジュで殴られてしまう。避けようにもまだ近接戦闘に慣れていないのでタイミングが掴めない。

 

それに対して今の、殴られ続けたモモンが漸くたどり着いた対処方法は

 

「当たってもどうという事は無い!」

 

だった。要はモモンは華麗に戦うとことは捨てたのだ。 避けて殴るのでは無く、殴られる前に殴るのでも無く、殴られながら殴る。 物理無効の効果を全面に出した戦い方だった。

超が付く程のごり押しである。

某ロボットゲームをプレイした事がある人ならこういうだろう。

 

「あいつ、赤い彗星とか言ってる癖に戦い方はマジンガーじゃねえか!」

 

まさに今のモモンは鉄の城だった。お陰で全身鎧はボコボコに変形していたが。

モモンはタワーシールドで顔面を殴られながらグレートソードを左から右に薙払う。

 

「ぬおおおお!?」

(痛くないって分かってても怖えええっ!!)

 

又も相打ち。ゴキガコっと言う金属同士がぶつかる音が重なったような音がし、デス・ナイトがよろめき、後退した。

 

(あのタワーシールドが迫ってくるのは怖い! 怖すぎる! …だが、デス・ナイト、ここから先の俺は先程までとは少し違うぞ?)

 

モモンの、モモンガのプレイヤースキルはまだまだその真価を発揮してはいなかった。彼のPVPは勝率の方が高い。それはその研究熱心な所から来ている。相手を知り、対策を練り上げる。今までもただ単に殴られていたのでは無く、デス・ナイトの攻撃の一つ一つを一番見やすい所で見ていただけだ。…本当に。

 

デス・ナイトが体制を立て直し、再び向かって来る。今度はタワーシールドでは無くフランベルジュでの斬撃による攻撃を繰り出してくる。

 

ティキーン!(ニュータイプ風SE音)

「見えた!」

 

デス・ナイトは驚愕する。確実に当たる、直撃コースの攻撃だったのにも関わらず、モモンは目の前から消えていた。

 

「見える!私にも敵が見えるぞ!…一々口に出すなよな…。…しかし、ふふ、慣れて来たぞ。」

 

その声にデス・ナイトが歓喜の表情で振り返る。モモンには表情の変化はわからないが。

 

モモンは真後ろに回り込むように避けていた。それもデス・ナイトが気付かない程の完璧な動きで。

 

「オオオオオオオオオオオオ!!!(楽しい!! 楽しいですなあ!!! 戦いというものは!!!)」

 

「そうだな。私も漸く近接戦闘の楽しみが分かって来たぞ。お前には感謝してもしきれないな。…正直ここで失うのが惜しいぐらいだ。」

 

「オオオオオオーー!!オオオオオオオオオオオオーー(勿体ない! 勿体無さすぎますぞ!!! ここで果てるのが我が運命!! 容赦無くお切り下さい!!)」

 

「…ふむ、そうか。 いや、そうだな。もうすぐギャラリーも来るようだ。 彼等に私の力を見せ付けるのに少しばかり力を貸してくれ。」

 

「オオオオオオ!(畏まりました! モモン様!! では…む?)」

 

デス・ナイトはそこで言葉?を切る。モモンが何やらメッセージのやり取りをする動作が目に入ったのだ。

 

「ん?エントマか。済まない、今は取り込み中だ。 分かった、アルベドに連絡をすればいいのだな。うむ。ではな。…済まんな、デス・ナイト。」

 

「オオオオオオー!!(いえ!! では、ギャラリーが来たらば、本気で参らせて頂きます!!)」

 

「…ぇ…?」

 

モモンは少し動揺したが堂々とした姿勢を維持した自分を誉めてやりたい気持ちで一杯だった。

 

 

 

漆黒の剣のメンバー達は全員無傷で、先程の金級の冒険者達と共にアンデッドの掃討を行っていた。いたのだが、漆黒の剣のメンバーはほとんど戦ってはいなかった。というのも…

 

 

「怯えろぉ! 竦めぇ! アンデッドの特性を活かせぬまま、死んでゆけぇ!!」

 

「私の夢、受け取れえええええ!!」

 

あの戦士とマジックキャスターが大暴れしているので彼らは何もする事が無かったのである。

戦士はピョンピョンと飛び回りアンデッドに剣を突き刺しており、マジックキャスターは…何だか良く分からない光の魔法を打ちまくっていた。

 

「すげぇ!これが金級の冒険者か!」

 

「我々は何も出来ませんでしたね…。(あの魔法は何?私の知らない魔法?)」

 

「そんな事は無いのである!と言いたい所であるが…。」

 

「仕方無いさ、あいつらはうちのエースと…問題児だからな。それに結構助かってるよ。 魔法の支援やレンジャーの索敵、ペテル君の指示も的確だしね。」

 

「ありがとうございます。…これで大体片づきましたかね?」

 

ペテルは自分達の周りに動くアンデッドがいなくなってきたので金級の冒険者チームのリーダーにそう聞いた。

 

「ああ、だがまだ戦ってる連中もいる。周りを見てみな?」

 

そう言われ周りを見ると、確かに戦っている冒険者達がまだいるようだった。自分達は目の前の敵にばかり集中していて、周りにまで注意を向けられなかった。周りからは戦闘音や冒険者達の声も聞こえてくる。

 

「…やっぱり凄いな。我々より一つ上のプレートなのに。」

 

「…であるな。」

 

「我々もまだまだ精進有るのみですね。」

 

「つーか、苦戦してる奴らもいるみたいだぜ?」

 

チームで一番目と耳が良いルクルットの言葉に他のメンバーも耳を済まし目を凝らす。

 

「人間だけを殺すアンデッドかよ!」

 

「迂闊だ!出過ぎだ!」

 

「う、うわぁ…!!これしきの事で!!」

 

「もっと動け!」

 

「無茶言ってないで助けろよおおおお!!」

 

どうやらピンチのようだ。両脚と片腕を怪我している人にもっと動けとはあの人はなかなかの畜生だとニニャは思った。

 

「分かったみたいだな。奴らを助けてさっさと奥に、モモンという英雄を助けに行こう!」

 

「「はい!」」

 

全員で協力し、周りの冒険者達を救い、アンデッドを撃破し霊廟に近づいて来るにつれ、冒険者達は段々と疑問を持ち始める。奥から、剣と剣を打ち合わせる音がするのだ。

 

「何だ?…スケリトル・ドラゴンとマジックキャスターじゃ無かったのか…?」

 

そう誰かが言い、漆黒の剣は同意する。彼等が判断出来たのは色々な知識を持っているニニャがスケリトル・ドラゴンの事も知っていたからだ。

 

「あれは間違いなくスケリトル・ドラゴンです。でも…おかしいですね…。何でこんな音が?」

 

「…兎に角、急ごう。」

 

そうして冒険者達が霊廟に着くと、全員が驚愕する。真紅の戦士と、死を具現したような禍々しい全身鎧のアンデッドの騎士が、神話の世界かと見紛うような戦いを繰り広げていたからだ。

真紅の戦士も、死の騎士も、お互いの全身鎧は所々凹み、激闘の跡を残して居た。

 

「モモンさん…貴方は何度我々を驚かせれば…!」

 

「あの鎧が…あんなに! あのアンデッドの騎士は…スケリトル・ドラゴン以上なのでしょうか…?」

 

「あの鎧、森の賢王と戦っても傷一つ無かったよな…?」

 

「その通りであるな…、あのアンデッドの騎士は化け物か…」

 

漆黒の剣のメンバー達の言葉に、周りの冒険者達もざわめきだす。

 

あの死の騎士は森の賢王以上か! と。

 

 

 

 

その声にモモンがチラッと冒険者達の方を見れば、ペテル達や他のエ・ランテルの冒険者が此方をみて驚愕していた。

 

(ふふふ!良いじゃないか、私の評価が鰻登りだ。しかし、ペテル達もやはり来たのか。後は知らない奴らばかりだな。皆、精々俺の広告塔になってくれよ?)

 

「オオオオオオ!!!(では! ここからは本気で参ります!!)」

 

モモンはもう腹を括った。 先程は、まだ本気じゃないの? と結構動揺したが、もうやるしかないのだ。

これだけギャラリーが居ては魔法も使える訳ないし、ナーベにも助けろおおおお!!とも言えない。 

今まで培って来た全ての経験と、この短い時間で得た経験をフルに使い、今の出せる万全の力でこのデス・ナイトを倒してやろう。と決意した。

 

(デス・ナイトは35レベルとは言え近接戦闘に特化している。対して俺は魔法職。一応、筋力などの近接戦闘の能力値もそれなりとは言え恐らくデス・ナイトにはやや負けているだろう。しかし、勝てなくは無い。何しろ負けは絶対に無いのだからな。ふふふ、やってやろうじゃないか!)

 

 

「オオオオオオオオオオオ!!!(参りますぞ!!!創造主よ!!!)」

 

 

「来いっ!デス・ナイト!…能力値の差が、戦力の決定的な差では無いということを…、教えてやる!!」

(うおおおお!! このセリフカッコ良いっ!!…メモしなきゃ。)

 

そうして、エ・ランテルの若い冒険者達の前で、今後ずっと語り告がれる事になる、真紅の戦士と死の騎士の決闘が始まった。




この話しを書いてる途中、モモンガーZというしょうもない単語が頭から離れなくなりました…。そんなSSは有るのでしょうか?
頭にパイルダー乗っけたアインズ様?
検索しても引っかかりませんね…。
誰か是非!!

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