パソコンやらスマホが同時に壊れてしまい、直ったらFGO最終章で有頂天になりながらも、章が終わって、アイツがいなくなったのに、それでも続ける意味あるのかなぁ……とやる気を削がれたしまいました、というのは言い訳ですね
一応、キャラそれぞれの過去編みたいな体で、もうちょっとだけ続けてみます。
暇があればご一読ください。
かつて、太陽に愛された。
それは彼女にとって誇りではなく、さりとて当然というわけでもなく、ただ感謝すべきものであった。そしてそれこそが愛された理由でもあった
天上の下で這いつくばる存在は気まぐれに振り回される運命。
それを知らない彼女ではなく、故に彼女は静かに叫ぶ。
懺悔と、糾弾と、贖罪。
私の罪は、太陽にいつ届く?
金で装飾された椅子が揺れ動いたのが、心臓の早鐘を動かす。ランスロットは少なくともそう感じるほどに、周りの音が聞こえなくなっていた。
原因は考えるまでもなく、目の前にいる金髪碧眼の絵画の女だ。
ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。
ランスロットに限らず、過去の英霊は未来の情報を基本的に聖杯が与える「常識」から学んでいるので、そこまで詳しい歴史観を持っているわけではない。
彼女のことも分からない歴史の1つだ。だが、それでも分かる。
彼女は
「ルイズ……やっぱり出てこないんだけど、マシュ先生」
「いえ、先輩が知らないのも無理ないです。なぜなら彼女は教科書程度には載らない人物ですから」
「お姫様なのに?」
「世界中の全ての時代の姫を書いてたら教科書が厚すぎて本になりませんよ。……ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールはかの太陽王、つまりルイ14世の見初められた妾。地方貴族から王族の姫へと躍進した数少ない女性です」
妾。妻が複数、もしくは身分の差がある場合に行う男女の愛し方。今では男女差別の象徴の1つだが、いつかは普通に存在して、誰もが当然にしていて……そして人を引き裂いていた。
俺が返しあぐねていると、マリーが助け船をくれる。
「私の時代でもここまで特殊な出自はないわ。それだけ珍しく、そしてそれを勝ち取る天性があった証。私から見ても美しい方だと思うけれど」
「良く言えば、落ち着いている。悪く言えば、花瓶のよう。美しく言えば、儚い。醜く言えば……萎れて枯れている。そんなことでしょうか」
私の評価は。と呟きをもらしたルイズは椅子の背もたれの装飾を指でなぞる。それは思わずピト、と吸い付く擬音が奏でられるほどに、ゆったりして流暢で繊細。
見る人を無言で吸い付けて彼女は再び口を開いた。
「あまり過去は言いませんが、有り体に言えば愛を捧げた方に拒絶されてしまったのです」
「それを私に……?」
「いえ、本題ではありません。愛は有限であり期限があります。殿方に言わせればリミットがあるゲームというところでしょうか。私はそれをとやかく言うつもりはありません。妾の分を弁え、常に懺悔してこの命を終えました」
その瞬間、ランスロットが膝を落とす。それは求愛とかナンパとか騎士の誓いとかそんなものではない。
ただ、ひたすらの闇。愛に生き、愛に折られ、愛に殺された男にとって同じ境遇で受け入れた人物は鬼門でしかない。
「ランスロット卿?」
「あ、貴方の願いはなんであれ、私の力では遠く及びません。既に貴方は私よりも罪に向き合っている」
「向き合うなどしておりません。己を責めているだけ。終わった愛を貫く恋のまがい物を繰り返す私には『愛』そのものを理解できなくなったのです」
「愛……それを私に、聞くために…………」
「はい。望んだ愛を拒絶され、望まれた愛に応えた貴方。私よりも過酷です。貴方が最後にしたという懺悔を聞きたいのです。それを聞けば、私も分かる。…………愛を捨てるべきなのかどうなのかを」
ランスロットはなにも口を数回陸に上がった魚のようにパクパクさせて、結局音にすらならない吐息しか出せなかった。
愛を捨てるか、否か。
きっとそれは、懺悔に疲れたなどという、くだらない理由ではないはずだ。
自分の勝手を通り越して貫く、終えられた愛。お互いが受け取らなければ、名付けることさえできないものだと彼女は言う。
もう誰も求めないこの思いを失わせるために、愛を懺悔した男の言葉を聞きたいのだという。
膝が石像になったかのように動かない。いや動かせない。きっとこのまま動けば騎士でありながら理性を失い、セイバーでありながら狂化してしまう。
なにも考えず、怨嗟を振りまく獣になる。
その恐怖がランスロットを石像へと変えていたが、姫はいとも簡単にさらなる呪いをかける。
「貴方の懺悔を言葉にしろ、などと言うことはありません。私程度ですら懺悔の言語化などたどたどしくて、実際の状況でもなければ伝えることもできません」
「だから英霊として召喚されているわけね」
「はい、マリー。メローラさんと同じ、呼ばれてから待った甲斐があります」
「呼ばれ、って誰か君を召喚したのか!?」
話を中断してまで俺は入ってしまう。まさか彼女たちの上に誰かいるというのか。
ルイズは首をふる。それは細かいことは教えないのか、ただ関係がないのか俺には判断出来ない。なんにせよ、彼女の反応はそれきりで、姫の指は肩かけていた弓の弦を弾く。
「私の宝具がランスロット卿の心を映します。少なくとも貴方の思いが断片ながら伝わると思っています。他の方々の妨害も気になりませんし、メローラの希望も聞けます」
「アイツの希望?」
「貴方が……モードレット卿ですね。彼女は貴方との対面を望んでいるそうで、私の宝具はそういった分割は得意です」
「ヘェ……いいぜ、その提案乗った。要はオレとコイツにそれぞれタイマンで用があるってことだろ?」
モードレットは要約し、俄然剣を嬉しそうに構える。侮辱された誇りを1人で挽回するチャンスだからだ。
マシュが俺を心配そうに見る。このまま任せれば完全な分離状態となり、手出しができなくなる。
相手の宝具の程度によるが、数的有利を手放すのは指揮役として失格者だろう。
「2人とも。生きて帰ってくること」
「先輩!?」
「マスターさん、どうして?」
マシュだけでなく、リリィもまた疑問の声を上げる。2人とも俺が否定した理由は分かっているはずだ。だがそれでもしなくてはならないことを優先しようとしているのだろう。俺にだってそれくらいは分かる。
「俺には正直知らないことのほうが多いけど、必要なんだろうよ。英霊の『あり得ない成長』のために」
「あり得ない……成長」
「終わったはずの彼らが壁を乗り越えること。忘れてしまうけれど、それでも超えた事実があるならそれは変わらない。そして、超える壁は1人でないといけないんだ」
それは例えるなら決して届かない高さの幅跳びだろうか。
何度も何度も試して絶望して、それを繰り返す。自分にはできないと納得するまで、それは永遠に終わらない。
諦める勇気を作るまで、叶える覚悟を持てるまで、英霊は召喚され続ける。
それを叶えるのは今だ。
マシュもリリィも無言で頷いた。
了承を感じたルイズは、目線を湖の騎士へと戻す。膝は無理に振るわして立つ子鹿のようで、伏せられた目の奥を見ることは出来なかった。
「それではよろしいですか」
「…………はい」
「いつでも構わねぇ」
「では、宝具――――
姫の言葉を伝える空気が闇へと染まり、それを見た瞬間世界は是正された。
誰もが思う、地獄へと。
ルイズ……どうあってもあのピンク髪ツンデレしか浮かんでこないけど、史実だと優しくてコミュ力高くて、話してるだけで和やかになれる話題が豊富な女性だったとか。
真逆すぎるw
共通点といえば、男側がモテモテで迷惑被ってたぐらいみたいです。なんというか王様とか英雄の妻って大変だ……