煩悩日和   作:タナボルタ

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大変お待たせいたしました。
……いや、本当にお待たせいたしました。
色々と大変でしたが何とか投稿出来ました。

今回は久しぶりに結構な長さになってます。
果たして那珂ちゃんはどうなるのか……?

それではまたあとがきで。


艦隊のアイドル

 

 三日のリフレッシュ休暇も終了し、数回目の2―4への出撃。休暇が功を奏したのか、海域で戦う艦娘達の動きは目に見えて冴え渡っている。

 その中でも特別著しい戦果を挙げる者が複数居り、電もその一人であった。

 敵艦の砲撃を掻い潜り、鋭い機動で懐へと潜り込んでいく。電の得意とする間合いはほぼ密着状態の超近接戦。電は背後の艤装に装着されている、己の最も信頼する得物を()()()()()()()()

 

「ダブル・アンカー!! なのです!!」

 

 その場で回転し、遠心力を加えた二つの錨が強かに戦艦ル級flag shipを打ち付ける。

 

「ゴッ……!!?」

 

 咄嗟に出した左手の艤装による防御。それがまるで意味を成さなかったかのような衝撃が身体を突き抜ける。吹き飛びそうな意識を総動員して憎き敵を睨むが、そんなル級の目に信じがたい光景が映る。

 

「――――ッ!!?」

 

 ()()()()()()()。確かにそこに在ったはずの左手の艤装。それが完全に失われている。否、そうではない。()()()()()()()()()()。錨の一撃――正確には二撃――、ただそれだけで。

 

「やあああぁっ!!」

「……ッ!!」

 

 一瞬呆けていた意識が瞬時に引き戻される、裂帛の気合。電が振るう左右の錨が、嵐の様にル級に迫る。

 

「――――――ッ!!!!????」

 

 叫び声すら上げられない。全身に打ち付けられる、機関砲の如き錨の連打。絶え間ない暴虐がル級を襲い、その艤装を、意識を、そして生命(イノチ)を確実に抉り取っていく。

 

「むんっ!」

 

 ふんすっ、と電が更なる気合を入れ、左右の錨の持ち手部分、石突同士を合わせる。するとジョイントが作られていたのか、二つの錨は合体し、長柄の双頭錨となる。

 電はそれを目にも留まらぬ速さで十字に振るい――――――。

 

「ガ……ッ、…………、――――――」

 

 ル級を、十字に切り裂いた。

 ――――――爆発、炎上。

 爆炎を背に、電はゆっくりと振り返る。この場での戦闘は、既に終了していた。

 

 

 

 

「いやー……、凄まじかったね」

 

 旗艦である川内の言葉に、電以外の皆が一様に頷く。

 

「まさかル級を、それもflag shipを一蹴するとは思わんかったわ」

「何ていうか、凄い連打だったね。オラオラって感じ?」

「シンプルな打撃による純粋なる暴力……!! やはり暴力は全てを解決するんですね……!!」

「赤城、目が澱んどるで」

 

 電の活躍を龍驤、白露、赤城が称賛(?)する。実際、その戦果は素晴らしいものであることは間違いない。電は皆の言葉に恥ずかしそうに顔を俯かせる。

 

「でも、赤城さんが言ったように今回はシンプルな攻撃だったね。以前はもっとこう、テクニカルな打撃もあったけど……」

 

 電に戦い方に疑問を呈したのは古鷹だ。本来ならば今回出撃するのは加古の予定だったのであるが、その加古が入渠中に爆睡してしまい、湯あたりしてしまったので代わりに出撃することになったのである。

 古鷹の疑問に、電は両手をグーパーしつつ答える。

 

「はい。私も最初はもっと技術を磨いて、よりすごい技を、と思っていたのです。でも、演習で……あの時、自分が持つ最高の技を繰り出しても、マリアさんの装甲に罅を入れることしか出来ませんでした」

 

 電は両手をぎゅっと握り締め、顔を上げる。そこには幼いながらも決意に充ちた、覚悟に燃える表情が浮かんでいた。

 

「にわか仕込みの技術では通じない。だったら小手先の技術は置いておいて、まずは“威力”と“速さ”を鍛えることにしたのです。パワー! スピード! 基本を疎かにしては何も身に付かないのです!」

「……」

 

 小さな身体から迸る、重厚さを伴った霊波。それは皆を圧倒するには十分な強さを秘めている。

 

「あの……電ってさ、マリアさんの装甲に罅を入れたんだよね?」

「ん? ああ、せやで」

「提督から聞いたんだけどさ、マリアさんってお猿さんのとこの長門さんでも傷を付けるのが難しいんだって」

「マジかー……え、マジかいな?」

「うん。流石に二色の同期合体まではしなかったみたいだけど、それでも装甲をへこませるのが精いっぱいだったんだって。……まあ、衝撃を内部に浸透させれば勝てる、みたいなことは言ってたらしいけど」

 

 電の言葉を受けて川内と龍驤がひそひそと密談を交わす。どうやら小手先の技術による一撃ですら、マリアの装甲を傷付ける威力があったらしい。

 その事実に二人の背筋が冷たくなった。もし、これ以上に電の振るう錨の威力が上がれば、一体どのようなことになってしまうのか。

 ちょっと怖い未来を想像してしまった二人はそれ以降口を噤み、そそくさと次のマスへと足を進めるのであった。

 

 ……ちなみにこの後ボスマスではなく横道に逸れてしまい、そこで川内と電以外の四人が大破してしまうこととなる。また今回も海域突破とはいかなかった。が、それでも皆手応えを感じていた。

 確実に強くなっている。前に進んでいる。そうした一体感にも似た感覚が皆を包んでいる。……しかし、当然ながら例外も存在するのだ。

 

「……」

 

 しょんぼりとした様子で執務室へと向かうのは那珂。休暇が明けてから数度出撃したが、毎回序盤で大破してしまい、思うように戦果を挙げられていない。明確なスランプに陥ってしまっていた。

 今では出撃せずに遠征をこなして皆の応援に回っているのだが、どうにも気分は晴れない。もやもやとした思いが胸中にはびこり、溜め息が何度も出る始末。そこに横島からの呼び出しがかかった。

 

「……怒られるのかなぁ。ヤだなぁ……」

 

 ばふー。と、また溜め息。もはや普段のポジティブさは微塵も見られず、完全にネガティブな思考に支配されてしまっていた。

 何をやっても上手くいかない。抱えた悩みは解決を見ず、ずっと胸に燻ったまま。――――――いや?

 そうこうしている内に執務室へと到着。那珂は精神的にも物理的にも重く感じている手をドアノブへと伸ばし、「失礼しまーす」と、弱々しく室内へと踏み入った。

 

 

 

「え」

 

 横島から話を聞いた那珂が最初に漏らしたのはその一文字だった。

 

「……出撃? 私が? 旗艦で……!?」

「ああ」

「な……!?」

 

 信じられない、といった様子で確認を取る那珂に、横島は何でもないかのような態度で肯定する。流石の那珂も自分がどういった状態なのかを分かっていながらそれを無視する横島の様子に、言葉を失ってしまう。

 周囲に視線をやれば、執務室には数人の艦娘。秘書艦の三人に加え、天龍に叢雲、金剛の姿もあった。皆一様に何度も横島と那珂とで視線を行ったり来たり。どうも彼女達にとっても横島の命令は予想がつかない物であったらしい。

 

「で、でも……私は何度も失敗して……」

「あー、まあそれはそうなんだけども。それを考慮しても、俺は那珂ちゃんに行ってほしいんだ」

 

 遠回しに辞退の言葉を返すも、更に横島は畳みかけてくる。今の自分に対して、何故そこまで信頼が置けるのか。疑問は尽きないし、何故自分に行かせるのかとちょっとした苛立ちも感じてしまうが、それでも横島の言葉に少しだけ胸が温かくなる。

 

「……わ、私じゃないとダメなの? ど……どーしても、私に行ってほしいの?」

 

 少しだけ期待を込めた那珂の確認に、周囲の少女達のこめかみがピクリと動く。

 

「いや、別にどうしてもってわけじゃねーけど」

「えぇっ」

 

 乙女心の機微に疎い横島はそれを見事一刀両断。じゃあ何故自分に出撃してほしいのか、那珂は何も分からない。

 

「んー。何つーか、こう……朝目が覚めたら()()()()()()()()()()()って思い付いたというか……」

「ええ……?」

 

 どうやら単なる思い付きである、ということらしい。そんな理由で色々と参ってしまっている自分に出撃をしろというのか。那珂はぶっすりと口を尖らせるが……まあ、別に? そう思っちゃったのなら? 期待に応えないのも失礼というか?

 那珂の中で「別に出撃してもいいかなー」という気持ちがむくむくと湧き上がってくる。先程まで尻込みしていたのが馬鹿らしく思えるほど気持ちが浮ついてくる。己が単純であることは自覚していたが、まさかここまでとは思っていなかった。

 那珂はここ最近、横島と顔を合わせるでもなく、彼の声を聞くことも少なくなっていた。そうした中でこうして呼び出だされ、直接頼まれたことが彼女の心に変化を齎したのだろう。

 不安は当然ある。恐怖も然り。でも、横島の期待にはなるべく応えたい。結局、那珂は横島の要請を受諾。2―4への出撃を決めたのだった。

 

 

 

 

「……で、本当にいいの?」

 

 那珂が執務室を去った後、霞が遠慮がちに尋ねる。今の那珂は相当に調子が悪い。それでも本当に出撃させる気なのか、今更ではあるが問いかける。

 

「今の那珂を出撃させて大丈夫なのかよ? まだ悩みも解決してねーんだろ?」

「ん、ああ……」

 

 横島は天龍の言葉に思うところがあるのか、やや歯切れ悪く言葉を返す。

 

「? 何か気になることでもあるんですか?」

「気になるっつーか、何つーか……」

「何よ、えらく歯切れ悪いわね」

 

 吹雪、そして叢雲の言葉に横島は天井を仰ぎ、ぽつりと呟く。

 

「多分だけど、那珂ちゃんはもう答えは分かってると思う」

「え!?」

 

 それは、那珂の状態を知る皆に大きな衝撃を与える言葉だった。

 

「お、おいおい、本当かよ?」

 

 天龍は疑問を口にしながらさりげなく移動し、横島の肩にそっと手を置き、少しだけ身を預ける。背は低いが、それと反比例するかのようにとても大きいお胸が横島の肩に触れ、その感触を遺憾なく伝える。

 

「どーゆーことなのよ?」

 

 叢雲は横島に顔を寄せ、覗き込むような上目遣いで目を合わせる。未だ幼さは残るが、それでも充分以上に美人と言えるほどの美貌を持つ叢雲の顔が、横島の顔に触れてしまいそうなほど近くにある。

 

「hmm……何か根拠が?」

 

 金剛は執務机に肘を置き、強調した胸を横島に見せつける。少し緩めた制服の胸元から覗く深い谷間は、本来ならそれだけで横島の理性を完全に奪っていただろう。……三者の間に濃密で剣呑な空気が溢れ出す。この時すでに霞と大淀は横島から離れ、安全圏へと逃れていた。

 

「………………」

 

 吹雪は艦娘に囲まれる横島を頬を膨らませながら、少しジトっとした目で見つめると、静かに彼の背後に移動し、そっと制服を摘まむ。それだけで、吹雪は心が少し晴れた気がした。

 

「……えっと、続き、話していいのかな?」

 

 横島は周囲に突然発生した何だか形容しがたい雰囲気に呑み込まれ、金剛のチチや、叢雲の上目遣いや、天龍の温もりにいつものような反応を示すことが出来なかった。唯一吹雪のいじらしい仕草に萌えていたが。

 

「さっき久しぶりに顔を合わせたけど、以前までとは少し様子が違ってたしな。何か切っ掛けになるようなことがあったんだと思う」

 

 横島は知らぬことだが、那珂は扶桑と深雪、磯波の会話を聞いていた。その時はまるで理解することが出来なかったが、冷静にじっくりと考えてみれば、理解に至るのは早かった。だが、それだけでは意味がない。

 

「頭では理解してる。けど、心が納得しない。那珂ちゃんの抱く理想(ゆめ)と、過去に目撃した現実が一緒の物であると認められないんだ」

「……」

 

 誰も言葉を返すことが出来ない。横島の語る那珂の心情、それはいつか自分達も陥ることになるかもしれない板挟みだ。()()が自分に降りかかった時、自分は果たして上手く処理することが可能だろうか。

 明確に自信がある、とは言い難い。それ故の沈黙である。皆は目を見合わせると、誰ともなく気まずそうに目を伏せる。

 横島は背もたれに身を預け、逆に天井を仰いだ。

 

「ま、何かの切っ掛けで那珂ちゃんは変わろうとしてるんだしさ。それならまた何かの切っ掛けで更に変われるかも知れねーし。ここは那珂ちゃんを信じて任せてみよーぜ」

「……那珂を起用したのはアンタじゃないの」

「そりゃそーなんだけどな、ははは」

 

 叢雲のツッコミも何のその。横島は何の気負いもなく笑って見せる。完全に那珂を信じ切っているのだ。その姿はあまりにも楽天的すぎるが、しかし。自分達艦娘の司令官としては、限りなく喜ばしい姿にも思えた。だから吹雪は、その場の艦娘達は釣られるように笑みを浮かべる。

 希望はある。望みもある。ならば、あとは信じるのみ。

 

 ――――今こそ、第二海域攻略の時だ。

 

 

 

 

『……と、意気込んではみたものの』

 

 既に二回ほど失敗してしまっている。

 一度目はわき道にそれて資材を確保して終了、二度目はボスまで到達したものの倒し切れず、敗北を喫した。そんなわけで本日三回目の挑戦である。

 

『三度目の正直! 気張っていけよー!』

「おー!!」

 

 通信越しの横島の声に威勢よく応える。海域の入り口、波も静かな洋上にて、艦娘達は意外と元気に満ちている。リフレッシュした彼女達はまだまだ折れない。

 ちなみに今回、横島達は会議室で観戦している。管制室(えいがかん)では緊張感が長続きしないためだ。

 

『……二度あることは三度あったりして』

 

 つい思ったことを口にしました、といった風な声が聞こえた。声の主は深雪。容易く想像出来る嫌な未来に出撃メンバーがしゅんと肩を落とした姿を見て、深雪はようやく「あ、やべっ」と自らの失言に気付く。

 横島が指を鳴らして一言告げる。

 

『独房、連れていけ』

『了解っ!』

『うわあああぁぁぁっ!?』

 

 詳細は分からないが、どうやら深雪が何人かの艦娘(聞こえてくる声からして不知火、時雨、川内か)に捕まり、どこかへと連れていかれたようだ。

 ちなみにだが横島鎮守府に独房は存在しない。あくまでポーズである。

 

『何か最近こんな役回りばっかりぃーーーーーー!』

 

 また今度良い目を見させてあげるから許してね。

 

『こほん。では気を取り直して……那珂ちゃんアイドル艦隊、出撃!!』

「おぉーーーーーーっ!!」

 

 横島の命に意気揚々と声を上げ、海を駆ける。必ず勝つ、そんな決意を秘めた勇壮な笑みを皆が浮かべている。

 

「……」

 

 ただ一人、その笑顔の裏に膝から崩れ落ちてしまいそうな不安を隠したまま。

 

 

 

 

 

「……ここまでは順調に来れたな」

「と言うより順調すぎるくらいですね」

 

 今までの航路を振り返り、摩耶がぽつりと呟く。それに応えたのは瑞鳳だ。和服型の制服の襟元を緩め、少し汗ばみ火照った肌を手で扇いで冷ます姿は外見年齢に似合わぬ色気を滲ませる。それに対し摩耶が少し悔しそうな顔を見せる。粗暴な自分ではちょっと真似出来そうにないタイプの色気(もの)だと思っているからだ。

 

「次はついにボスとの決戦……。ひえぇ、武者震いが止まりません……!!」

「……そういうことにしておきましょうか」

 

 明らかに武者震いではない震え方をする比叡に、赤城は苦笑を浮かべる。ここでそれを指摘するのも大人気ない。多少情けなくとも本人はやる気を見せているのだ。信じて任せるのも信頼の証である。

 

「勝ったら寝れる、勝ったら寝れる、勝ったら寝れる、勝ったら――――」

 

 遠く水平線の向こうを見やりながらぶつぶつと呟き続けているのは加古である。以前古鷹に迷惑を掛けてしまったので自主的にお昼寝を禁止しているらしく、時折どこか遠くを眺めながらぷるぷると身体を震わせている姿が確認されている。意外と長く我慢出来ているようであるが、その姿は何かしらのお薬の禁断症状のようで主に駆逐艦から怖がられている。

 

「……」

 

 最後に旗艦の那珂。誰とも話さず、目を瞑り、ゆっくりとした深呼吸を続けている。まるで一息ごとに意識が研ぎ澄まされていくかのように、霊波が鋭さを増していく。

 おちゃらけた言動が多い那珂ではあるが、その根はまっすぐで、とても真面目な少女だ。日々の鍛錬を欠かさずこなし、その身に確と刻み込まれている。

 それ故に――――横島は不安を覚えた。ちらりと他の艦娘にも目をやれば、同じように心配そうに見つめる者もいる。

 そう、あらゆる意味で次の戦いが正念場となる。

 

『……さあ。がんばれよ、みんな』

 

 その呟きを背に、少女達は海を往く。

 

 

 

 

「敵艦隊見ゆ!! ……これは――――!?」

 

 瑞鳳は敵の編成を見て驚き、言葉に詰まる。彼女の表情から強い緊張とわずかな恐怖も垣間見えた。

 

「敵、戦艦ル級flag ship三体、軽巡ヘ級flag ship一体、駆逐ロ級後期型二体……!!」

『flag shipが四体……!!』

『一番キツイのが来たか……』

 

 改めて赤城から敵艦隊の内容が明らかになり、その強大な戦力に吹雪が慄く。横島も冷静を装っているが、頭の中では「はーーーーーーんっ!!?」と鼻水を噴いて今にも倒れそうだ。現在の彼を支えているのは吹雪達の前で格好悪い姿を見せたくない、爽やかな青年というイメージを崩したくないという意地のみである。(今までの言動ですでに手遅れであることには気付いていない)

 

『とにかく、ここが正念場だ。確かに敵は嫌になるくらい強いんだろーけど、みんなだって頑張って強くなってんだ。そいつらをぶっ倒してそれを証明して、そんで気持ちよく次の海域に繰り出そうぜ!!』

「――――はいっ!!」

 

 艦隊の士気が下降気味になったのを敏感に察知した横島は声を張り上げ、皆を鼓舞する。上手い言い回しではないが、それ故に横島が皆を思う気持ちが十全に伝わってくるような、素直な言葉だ。

 艦隊の皆は横島の思いを受け、頷き合うと、横島に負けぬほどに声を上げ、彼の言葉に応える。

 真っ直ぐに走り、敵との戦闘空間に突入する。――――これより、戦闘開始だ。

 

「赤城さん! 瑞鳳ちゃん!」

「ええっ!」

「はいっ!」

 

 那珂の号令に二人が応える。開幕の先制爆撃。二人から射出される数多の艦載機が敵艦隊に向けて攻撃を開始する。

 満身の霊力が込められたそれら必殺の攻撃を、敵艦は避け、防ぎ、撃ち落す。無論無傷では済まないが、それでも想定よりも遥かに軽いダメージを負わせるに止まってしまう。

 

「比叡さん!」

「任せて! ……気合い! 入れて!! 行きますっ!!!」

 

 比叡から溢れる強力な霊波。主砲から放たれる強力な霊気と裂帛の気合を込められた砲弾は、ル級の一体に突き刺さる。巨大な爆炎が海に広がり、大きく海面を揺らし――――その炎の中から未だ健在のル級が飛び出してくる。被害は軽微、小破と言ったところだ。

 

「ひえぇっ、割とショック!」

「流石はflag shipってとこか!」

 

 隊列を維持しつつ、一か所に留まることなく動き続け、隙を見ては砲撃を繰り出す。しかしいずれも有効打にはならず、無駄弾を使わされる一方だ。それに対し、敵の攻撃は驚異の一言である。

 精度が甘いせいか未だクリーンヒットはしていないが、それでもその一発一発が自分達を超える威力の火力であり、ただかすっただけでも小破判定となってしまう。

 

「うええぇぇっ、そろそろ避けられないかもぉ……!?」

 

 瑞鳳が玉のような汗を浮かべ一人ごちる。既に数回戦闘をこなしてるとは言え、普段の彼女からは想像出来ないくらいに消耗している。何せ自分の攻撃はあまり通らず、相手の攻撃はとても痛い。精神的な負担が疲労を倍増させ、体力を容赦なく奪っていく。

 

「落ち着きなさい! ……呼吸を整えて、意識を落ち着けるの。そして相手の動きに集中しなさい。相手をよく見れば行動の起こりが分かって攻撃を察知しやすくなる」

「は、はいぃ!」

 

 瑞鳳の後方に就いていた赤城が慌てる瑞鳳の横に並び、手早くアドバイスを送る。瑞鳳はその通りにまず深呼吸をし、次いで敵艦の動きを観察し始めた。

 じっと敵艦を見つめる内、ぎこちなくではあるが行動の先読みが出来るようになり、先程までの様に焦ることはなくなる。……しかし、攻撃力の差が埋まったわけでは当然ない。

 何か余程のことが起きなければ、敵を倒すどころか有効打を当てることも難しい。

 

「行って!!」

 

 再び赤城と瑞鳳の爆撃が敵艦を襲う。広い範囲に爆炎と爆煙を撒き散らし、少しでも相手の動きを縛ろうという目論見であったが、敵は炎なぞお構いなしに縦横無尽に海を駆ける。その装甲の堅牢さには苛立ちや憎らしさも一周回って称賛の言葉を述べたくなるほどだ。

 

「くっ……!!」

 

 自分達は弱くない。それどころか以前よりも格段に強くなっている。戦えば勝つ自信はあった。実際にそれだけの実力もあるだろう。だが、上手くいかない。何かが噛み合っていない。自分の実力を出し切れていないのだ。

 那珂はル級の一体に砲撃を当てる。見事クリーンヒットしたかに見えたそれはしかし、芯を外されていた。……外してしまった。

 ここに来て、自分の中でイメージする動きと実際の動きに大きなズレが生じてきている。そこに()()()()()()()()()と那珂の直感は告げているが、今はただ思い通りに動かない己の身体に苛立ちが募るばかりである。

 

「那珂ちゃんさんっ!!」

「――――――ッ!!?」

 

 瑞鳳の焦燥に充ちた声が耳に入ると同時、那珂は己の失敗を悟った。視界の隅、海面に生じた大きな影。()()()()()()()()()()()()()()()()――――――!!

 

「VUMOOOOOOOOOO!!!」

「ぅあ゛っ!!?」

 

 那珂の腹に突き刺さる駆逐ロ級後期型の頭部。その勢いのままに那珂は吹き飛ばされ、海面を跳ねる。それでも意識を失わず、何とか体勢を立て直そうと海面に手を触れ勢いを殺し……視界の先で、ロ級の大きく開いた口が大きく火を噴いたのを認める。

 

「きゃああああぁぁぁっ!!?」

 

 砲撃だ。那珂を襲うロ級の主砲。意識の外より受けた腹への一撃のせいか、那珂が纏っていた霊気は弱まっている。そこに砲撃を受けた。制服は破れ、艤装は損壊し、気を失ってしまいそうな程の衝撃を受ける。――――那珂、中破。

 

「那珂ちゃんさんっ!?」

「――――鳳っ!!」

「あ……っ!?」

 

 那珂が中破したことに気を取られ、瑞鳳はそちらへと意識を向けてしまう。当然、そんな大きな隙を逃す敵ではない。気付いた時にはル級の砲弾は最早避けることの出来ない距離にまで迫って来ていた。

 砲撃音は赤城の声をかき消し、何を言ったのか上手く聞き取れなかった。だが、何をしたかったのかは嫌というほど理解出来てしまった。

 

「赤――――」

 

 強く抱きしめられる己の身体。抱きしめているのは赤城だ。()()が理解できた瞬間、全身に強い衝撃が走った。二人一緒に海を何度も転がる。数回バウンドしたところで思い切り海面を叩き、その反動で無理やり体勢を立て直す。瑞鳳の腕の中には制服と艤装が無残にも砕かれた、傷だらけの赤城が苦しそうに呻いていた。――――瑞鳳、小破。赤城、大破。

 

「この野郎っ!!」

「おりゃーーーーーー!!」

「離れろぉっ!!!」

 

 ここで摩耶、加古、比叡の砲撃がロ級、ル級に打ち付けられる。今度は流石に損傷軽微といかなかったのか、二体とも中破に追い込むことが出来た。だが、追撃の手を緩めない。執拗に砲撃を仕掛けてくる。己の失態に歯を噛み砕かんばかりに食いしばりながら、瑞鳳は赤城を庇うように彼女の前面に位置し、攻撃に曝されないように努める。

 

「ちっくしょうがぁっ!」

 

 思わず摩耶は毒づく。このままではじり貧だ。何とか那珂や赤城への攻撃は凌げているが、それもいつまで持つかは分からない。むしろ自分達の方が参ってしまいかねない。今も損傷は増えていき、ややもすれば中破してしまうだろう。

 

『司令官っ!』

『分かってる!』

 

 通信越しに聞こえる吹雪と横島の声。そう、もうすぐ()()だ。陽が沈み、世界が闇に包まれるその刹那。撤退を選択することが出来る唯一の時だ。

 勝ち目が薄いのは明らかである。今回は運が悪かった。flag shipが四体と戦うにはまだ練度が足りていなかった。だが今回の戦いで敵の情報を得ることが出来たのだ。それは猿神鎮守府やワルキューレ鎮守府などから得た物とは違い、自分達で得た情報だ。ただの知識と実際の経験では、その確度に雲泥の差が出ることもある。収穫は充分にあったのだ。

 

『――――……』

 

 横島の口から指令が出る。否、それは願いだろう。それは――――――。

 

 

 

 

 

 頭が痛い。耳鳴りがする。周囲の音が良く聞こえない。

 那珂は痛む頭を押さえ、耳の奥からキーンと響く耳鳴りに表情を歪めながらも海上を駆ける。

 

 ――――提督の役に立てなかった。

 

 今那珂の胸を刺す思いはそれに尽きた。艦隊の旗艦に抜擢され、期待も掛けられたというのに結果を出せない。知らず涙が滲んできてしまうほどだ。

 敵を睨み、砲撃をする。当たらず。当たらず。当たらず……命中。しかし敵のル級はそれを意にも介さず攻撃を仕掛けてくる。もう落胆すらすることはない。

 周りで瑞鳳や比叡達が何事か話し合っているが、やはり上手く聞き取ることが出来ない。咄嗟にガードできたとは言え、頭部に砲撃を喰らったのだからそれも当然と言えよう。

 戦闘空間の空気が変わっていく。もうそろそろ時間なのだろう。横島は撤退を指示する。彼はそういう人物だ。スケベだが優しく、温かで、自分達を大切に想ってくれる……そんな、大好きな人だ。

 期待に応えたかった。思いを遂げたかった。しかし、現実は非情だった。今の自分達には逃げ帰ることしか出来ない。

 ……諦めが心を支配する。また次がある。機会は巡ってくる。それはそうだろう。しかし、那珂は今回、その結果を出したかったのだ。……最早、どうすることも出来ないが。胸の中に燻る何かがある。しかしそれも、もう消えてなくなりそうだった。

 

 敵艦の攻撃を避け、その時を待つ。今の那珂は聴覚に異常をきたしている。何とか、周囲の動きに合わせなければならない。だから、それは想像の埒外にあった。

 まさか、横島の声が。横島の言葉が。

 

 

 

 

 

 

 

『頑張れ――――――!!! 那珂ちゃーーーーーーん!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――こんなにも、はっきりと聞こえてしまうなんて。

 

 

 

 

 

 

 

『司令官っ!?』

『ちょっ、あんた何を……!?』

 

 吹雪や霞、他にも多くの艦娘の驚く声が通信から聞こえてくる。気付けば空は闇に覆われていき、やがて夜へと姿を変えるだろう。夜戦へと突入したのだ。

 誰もが驚く横島の暴挙とも言える行い。しかし、その場で一番その行動に驚いていたのは、他でもない横島自身であった。

 

 ――――俺は何をやってんだ……!?――――

 

 まるで空白地帯となってしまったかのような思考の中で、ようやくその一言だけが浮かんできた。しかしそれもほんの一瞬。横島の思考は瞬時に切り替わった。

 先の言葉が脳裏を過ぎったその瞬間から、()()()()()()()()()()()()()()()のである。

 朝目が覚めて那珂を出撃させようと思いついた。ただ何となく、那珂に出撃してほしかった。その時の感覚の答えが、今だというのだろうか。

 横島は霊感に従い、更に言葉を重ねようとする。しかし、それよりも早く意外な人物の声が会議室に響き渡った。

 

『負けないで! 那珂ちゃーーーーーーん!!』

 

 普段の落ち着いた姿からは想像出来ない、大きく張り上げた声。大声を出し慣れていないのか、その声音は大きく上ずり、しかしそれだけに必死さが嫌でも伝わってきた。

 聴覚が上手く機能していない今の那珂にも鮮明に聞こえるその声の持ち主。横島と共通しているのは、その声に()()()()()()()()()()()()()

 言霊の使い手――――――。

 

「扶桑……さん……っ」

 

 呆然とその名を呟く。同じ霊能の使い手としてライバル視していた相手からの、必死の応援(エール)。扶桑の人柄を考えればこういった行動に出る可能性は十分にあることは理解出来る。しかし、大きな声を張り上げ、声が裏返るまでに必死になってくれるとは思わなかった。

 その事実に胸が少し熱くなるのを感じた。じんわりとした熱が全身に広がっていき、徐々に聴覚も正常に戻っていく。すると、何やら通信からざわざわとした喧騒のような物が聞こえてきた。それは、会議室にいた艦娘達の声。

 

『那珂ちゃあああああああああん!! ファイトオオオオオオオオオッ!!』

『那珂ちゃん、しっかり!!』

『那珂ちゃんさーーーーーーんっ!!』

『オラーーーーーーッ!! やられっぱなしで終わんじゃねーぞ摩耶ぁっ!!』

『加古もしっかりしなさーい!! 勝ってお昼寝するんでしょー!?』

『比叡ーーーーーーっ!! Don't give up! You can do it!!』

『赤城さーーーーーーんっ! 大丈夫ですかーーーーーーっ!?』

『瑞鳳は後で私の部屋に来なさい。少しお話をしましょう』

 

 横島の、そして扶桑の那珂を応援する姿に触発されたのか、その場の全員が那珂達に応援の言葉を贈っていた。

 当たり前だが皆の胸の内に不安はある。撤退をしてほしいとも思っている。だが、信じると決めた。横島と扶桑の言葉には、それだけの力があった。()()()()()()()()()()

 

「みん……な……!!」

 

 絶望的な戦闘だというのに、艦隊の皆はそれを一瞬忘れた。その声に、言葉に、応援に、心の中の何かが大きくなっていくのを感じる。

 そして――――――。

 

「え……?」

「これは……」

 

 通信の向こう、皆の声のその中に。小さくも、確かに聞こえてくるものがある。

 

「これ……歌……?」

 

 それはあまり上手だとは言えなかった。音程は所々外れ、声の張りも足りているとは到底言えない。しかし、その歌に込められた気持ちは、想いは、その場の何よりも確かなものだった。

 

「この、歌……この曲は……!」

 

 那珂の脳裏に蘇る、()()()()()()()()()。磯波と楽しそうに話していた時に扶桑が言っていた、彼女が一番好きな、那珂の歌。それを扶桑が歌っているのだ。

 それは、泣いている人や、苦しんでいる人、見えない未来に怯える人達に宛てた――――扶桑の心を救った、応援歌。

 やがてその歌は独唱(ソロ)ではなくなり、二重唱(デュオ)となり、三重唱(トリオ)となり――――やがて、大合唱(カンタータ)となる。

 

「……っ」

 

 自然と涙が溢れる。胸の中の熱は既に全身に広がり、熱く身体を燃やしている。身体だけではない。小さく燻っていた()()も大きな炎を上げ、那珂が抱いていた絶望感を完全に焼き尽くしていた。

 今になり、ようやく理解出来た。心の底から納得出来た。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 歌を歌っていたのは恐怖を誤魔化すためではない。胸の中の小さな勇気を奮い立たせるため。皆で歌ったのは自分は孤独ではないのだと、仲間がいるのだと、戦友の心を守り支えるため。

 

 

 ――――応えたい。みんなの歌に応えたい。私はまだ頑張れる。こんなにも力が湧いてくる!!

 

 

 那珂の全身に強力な霊気が満ちる。普段よりは弱くとも、それでもその力は今までのどんな時よりも輝いて。

 

『那珂ちゃーーーーーーんっ!!』

 

 不意に聞こえてきた横島の声。

 

()()()()()()()()()()()()()()!!』

 

 その声が響き、那珂は思い出した。自分がアイドルに憧れた、アイドルになるのだと決めた理由。

 どんな時でも笑顔を忘れず、誰かに勇気を与え、救いを与え、夢を与え、願いを与え――――そして、笑顔を返される。これほど、素敵な存在が他にあるのだろうか?

 だからアイドルに憧れた。アイドルになると決めた。どうして忘れていたのだろう。こんなにも簡単なことであったというのに。

 

 

 ――――私は応える。みんなの声に、歌に、応援に。そして何よりも………………!!

 

 

「提督の思いに、応えたい――――――!!!」

 

 とても強く、心の底から希う。そして――――――()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

『――――何だっ!!?』

 

 スクリーンに映る那珂の身体から、激しい光が迸る。それと同時、横島が持つ端末からも同様に激しい光が荒れ狂う。だが、それらの光は強くとも、それと同時にとても優しく、柔らかでさえあった。

 敵艦隊はその光に何かの恐怖を感じたのか、攻撃をピタリと止め、忌々しそうに歯を剥き、唸りを上げる。

 那珂の光は柱となって宵闇を切り裂き、空へと昇り、雲を突き抜けどこまでも遠くへ。それは圧倒的な霊気の奔流だった。那珂は、彼女は()()()()()()()()()()()()

 

『……!? これは……!!』

 

 横島の端末に文字が浮かぶ。表示されるのは消費される弾薬と鋼材の量。そして、とある一文。

 

『第二……改装……』

 

 それは、二つの世界で初めての正式な存在となる。壁を越え、一つの領域へと至った、最高の艦娘の一人。

 

『――――()()()()……!!!』

 

 

 

 

「アアアアァァァァッ!!」

 

 突然巻き起こった不可思議な現象に理解が追い付かずとも、たとえ恐怖が身体を縛っても、それでも深海棲艦は艦娘を沈める為に裂帛の気合を以って砲撃を繰り出した。全ての狙いは那珂へと向かう。迫りくる砲撃に対し、今の那珂は余りにも無防備と言えるだろう。このままでは先の損傷もあり、那珂は轟沈してしまう。

 しかし、それはありえない。

 光の柱が枝分かれし、雷電の如き速度で砲弾を叩き落したのだ。

 

「ウア、アァ……!!?」

 

 その光の枝は二振り在り、螺旋を描くように光柱より廻る。やがて光柱はその高さを変え、光球となる。光の枝も回転を止め、大きく左右に広がった。

 光球に小さな罅が走る。それは全体へと及び、甲高い音を立てて弾け飛んだ。

 その中から姿を見せる、一人の少女。改二へと至った、一人の艦娘。

 

『これ、が……!!』

 

 マイクを模した探照灯。電探のネクタイピン。丸く膨らんだパフスリーブ。小さな白手袋にブレスレット。そして、フリルがふんだんにあしらわれた白いスカート。

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 大きな二振りの光の枝が背中から生えたその姿は異様であるが、同時に神々しさを感じさせる。光の枝……否、光の翼は一度だけその身を振るい、周囲に霊気の羽根を舞い散らせた。

 大きく深呼吸し、探照灯(マイク)を口に持っていく。そして、満面の笑顔で自己紹介!

 

「艦隊のアイドル! 那珂ちゃんだよー! よっろしくぅっ!!」

 

 

 

 ここに、艦隊の天使(アイドル)が降臨した――――――!!

 

 

 

 

 

第五十二話

『艦隊のアイドル』

~了~

 

 

 




休暇中の描写……? いえ、知らない子ですね(挨拶)

そんなわけで那珂ちゃんが改二へと強化されました。
背中の翼は単なる演出なので何の意味もありません。(能力発動のエフェクトみたいな感じ)
元ネタはアーマーガールズプロジェクト『那珂改二』。羽型ステージパーツを那珂ちゃん自身に取り付けることが出来るギミックから。

次回は那珂ちゃん無双……になるのかな?
那珂ちゃんの悩みについては……これで解決ということでどうか一つ。

それではまた次回。




電の技の元ネタはグレンダイザーのダブルハーケン、ゲッターロボのゲッタートマホーク、マシンロボの運命両断剣ツインブレードです。
あんなでかい艤装背負ってどうやって振り回しているんだろう……?

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