煩悩日和   作:タナボルタ

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お久しぶりです。
詳細は省きますが、実はリアルのほうでかなり大変な目に遭ってしまい、ちょっと大変なことになってました。
それも何とかなったのでこれからは投稿できると思います。
とりあえずは更新しやすいこちらから。

今回は重要な設定をけっこうぶちこんでます。
新たな艦娘も何人か登場しますよ。

それではまたあとがきで。


着任、提督LOVE勢筆頭

 

 横島が吹雪とデートに出かけた日から、ゲーム内時間で数日が過ぎた。

 あの日から吹雪は横島と二人っきりになると、少々照れたようにはにかみながら、“先輩”と呼ぶようになった。司令官と部下ではなく、新しい二人の関係を表すその言葉が気に入ったのだろう。

 心なしか、二人の距離が縮んだようにも見え、何人かの艦娘がヤキモキとしている姿が散見される。中には突っ走って「提督! 俺と朝帰りデートしようぜ! たつ(ピー)には内緒な!」や、「司令、今度は私ともデートに行きませんか? ええ、大丈夫です。このしらぬ(ピー)に落ち度はありません。比較的安価で清潔なホテルの下調べは済んでいます」という何とも言いがたいお誘いもあった。(プライバシーに配慮し、一部音声を伏せております)

 しかし、横島はまだ誰のお誘いにも乗っていない。……忙しいのだから当然である。

 艦娘達の練度上げ、海域の攻略、遠征の成否の確認、武器の開発や艦娘の建造、何故か存在している書類の整理、艦娘達への霊能力の指導、那珂のアイドル修行のお手伝い、夜に騒ぎ出す川内etcetc……。

 

「………………………………しんどい」

 

 横島は疲れていた―――。肉体的にではなく、精神的に。驚異の体力を誇る横島でも、精神が疲労してはどうにもならなかった。食堂のテーブルにペッタリと頬を付けてだれている姿は周囲の同情を誘う。どうやらリアルの方でも最近はかなり忙しいらしく、空いた時間にログインして艦娘達に癒されようと思っていたらゲーム内でも仕事に忙殺されたのだ。これには横島の双眸から涙が零れ落ちる。

 流石に今の状態の横島を連れ回して遊ぼうとするような艦娘は一人もいなかった。

 

「提督……大丈夫かなぁ?」

 

 テーブルに突っ伏し、負のオーラを撒き散らす横島を心配げに見つめるのは、つい最近この鎮守府に着任した軽空母『瑞鳳』だ。

 茶色のセミロングヘアーを一房だけポニーテール状に纏め、それを紅白のリボンで縛っており、また同じ柄の鉢巻を額に巻いているのが特徴だ。服装も上はノースリーブの弓道着に振袖を肩口に縫いつけた独特なもの。下は赤に白のラインが入った丈の短いもんぺをはいており、健康的なふとももが眩しく映える。

 どうやら彼女は横島にも好意的なようで、時々彼に対して手作りの玉子焼きを振舞っているようだ。

 

「私や間宮さんの甘味も、人間である提督さんには効果がありませんし……倒れてしまわないか、心配ですね」

 

 瑞鳳の呟きに続くように心配の声を上げたのは、これまた最近になって着任した給糧艦の『伊良湖』である。

 同じ給糧艦の間宮の妹分であるためか、服装は間宮と同じ割烹着。しかし伊良湖はピンクのワイシャツに紺色のネクタイを締めており、スカートもやや短めである。

 髪型は黒の長髪を赤のリボンで留め、ポニーテールにしている。眉の上で切り揃えられた前髪がチャームポイントだろうか。やや幼げな雰囲気の伊良湖に良く似合っている。

 

「体力の回復に必要なのは……やっぱり休息だろうけど……」

「私達に出来ることと言えば、お料理くらいですし……いっぱい食べてもらって、体力をつけてもらうのはどうでしょうか?」

「……うん、いいね。それでいこう。――――というわけで、私は古今東西のありとあらゆる玉子焼きを」

「では私は古今東西のありとあらゆる最中を」

 

 どうしてそんな結論に達してしまうのか。二人とも横島を嫌っているわけではないので嫌がらせというわけではないのだが、これでは胸焼け必至である。

 まだまだ交流が浅いせいか、二人は横島との距離を……というよりは、加減を測りかねているようだ。このままでは横島は二人の善意にお腹を壊してしまうだろう。しかし、横島を救うべく、小さな影が二人の背後より忍び寄っていた。

 

「止めなさい」

「いたっ」

「はうっ」

 

 スパンスパーンといい音を立てて叩かれる瑞鳳達の後頭部。一体何が、と振り返ってみてみれば、そこにいたのは大きなハリセンを肩に担いだ霞の姿があった。

 

「霞ちゃん?」

「もう、何するの?」

 

 伊良湖が目をきょとんとさせ、瑞鳳が不満気に頬を膨らませて霞に文句を言うが、霞はどこ吹く風とばかりに腕を組んで跳ね除ける。

 

「あのね、ただでさえ提督(アイツ)は疲れてるんだから、これ以上負担を増やすような真似をすんなって言ってるの。折角たまの半休の日なのに、パンパンに膨らんだお腹で一日過ごさせる気なの?」

「うっ……」

 

 そう言われてしまえばぐうの音も出ない。二人は自らの考えの至らなさに落ち込むばかりだ。

 

「このハリセンを振るったのが私だったことに感謝しなさいよ? もし万が一まかり間違って電が振るってたら……二人の首が、綺麗にホームランされてたかも知れないんだから」

「ひえぇっ!?」

 

 霞のやけに真実味が篭った脅し文句に、瑞鳳達二人はひしと抱き合う。何しろ二人は先日、電の自主訓練の様子を見てしまったのだ。

 百を越える風を切る音。変幻自在にその動きを変える錨の軌道。たまたま訓練に付き合っていた響が投げた砲丸を打ち、水平線の向こうに轟音と大きな水柱を立てるその威容。

 

「こ、今後は気を付けます~……」

「ええ、是非そうしてちょうだい」

 

 がたがたと震えながら応える二人の前を通り、霞は席に座る。長い長い溜め息を吐き、背もたれに身体を預ける姿は伊良湖に違和感を齎していた。

 

「あれ、霞ちゃん随分と疲れてるみたいだね」

「ん……ええ、まあね」

 

 席に着いてからは返事をするのも面倒臭そうにしている。両手をだらんと下げ、天井をぼーっと見上げながら口を開けている姿はおよそ普段の霞からは想像出来ない。

 

「ちょっとちょっと、どうしちゃったの? 霞ちゃんがそんな風になるなんて珍しいってレベルじゃないよ?」

「あー……実は、今艦隊指揮の勉強中なのよ」

 

 そうして霞が語ったのは、この鎮守府の運営の仕方についてだった。

 この鎮守府の司令官は言わずもがな横島だ。現在、横島が一人で第一艦隊~第三艦隊の戦闘指揮を執っており、更には他の仕事をしながら遠征についても横島が様々な指示を出している。簡単に言えば横島に負担が掛かりすぎているのだ。

 そこで大淀が考えたのが、第二艦隊、第三艦隊、遠征の指揮を他の者が担当するというもの。横島が明石に端末を量産してもらった背景にはそういう事情があったのだ。

 とりあえず実際にやってみよう、というわけで第二艦隊を大淀が、第三艦隊を霞が実験的に指揮している。勿論これはまだまだ実験段階なので攻略する海域は比較的安全な鎮守府前海域なのだが、これに思った以上の心労を感じているのだ。

 

「いや、最初は提督を軟弱者とか思ってたけど、実際に自分の指揮がみんなの命を左右するとなったら本当にしんどくて。提督が胃を痛めるのもよくわかるわー……」

 

 その言葉と同時、霞は横島のようにテーブルに突っ伏す。それなりの時を共に過ごし、やや行動が横島に染まりつつあるのかもしれない。

 

「そっかー……みんな色々と大変なんだね」

 

 霞の話を聞き、瑞鳳は気合を入れなおす。このままではいられない。練度を上げて立派な戦力となり、横島に楽をさせてあげなければと決意を新たにする。

 伊良湖もむんと全身に力を込め、みんなを凄くキラキラさせるのだ、と目標を掲げる。随分と大雑把な目標ではあるが、彼女には彼女なりの哲学が存在している。心配する必要はない。

 

「……ところで、既に演習が実装されているはずなのに、何で演習をしないの?」

「ああ、それは先方さんにちょっとトラブルがあったみたいで」

「……先方さん? トラブル?」

 

 演習が実装されたことは、伊良湖の着任と共に家須達から通達があった。しかし、提督の一人から()()()()()()()()()()()()という理由で演習の日程を変更してほしいと打診されたのだという。

 他の四人の提督達――――通称“お猿”、“蝶の嬢ちゃん”、“大尉”、“お目々”はそれを了承。

 

「だから、そのトラブってる提督さんの準備が完了し次第、ウチの鎮守府にやってくるみたいよ」

「ほわー」

「何か、猿とか蝶とかお目々とか、気になるワードがいっぱいだね。まともそうなのは大尉さんくらい……? っていうか、本物の軍人なの?」

「聞いたところによれば、()()()()()()()()()()らしいわよ。実際の階級は大尉じゃないらしいけどね。何か大きな手柄を立てたとかで」

「へー……え、神様?」

 

 霞もやや回復してきたのか、二人の話に付き合ってやる。やはりこういった会話は癒しとなっているのか、先程よりも幾分か顔から険しさはなくなっていた。

 ――――と、霞達が談笑に花を咲かせていると、横島が徐に立ち上がり、首の骨をゴキゴキと鳴らしながら出口へと歩き出した。その傍らには睦月と白露。この二人は今日の建造のお手伝いさんだ。

 

「あれ、もしかして提督も工廠に来るの?」

「おお。部屋でゆっくりすんのもいいんだが、何か工廠って好きなんだよなー。男の浪漫に溢れてるっていうか」

「全然分かんないにゃぁ……」

 

 談笑しながらも、ゆっくりと移動する三人。それを眺める霞はまたも大きく長い溜め息を吐いた。

 

「……提督(アイツ)、自分から疲れに行ってどうすんのよ」

「あははー……」

「……でも、ああいうのも素敵だと思いますけど」

「体調管理がしっかりしてたらね」

 

 伊良湖のフォローも素気無(すげな)く粉砕。霞はもう知らんとばかりにテーブルに突っ伏すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだまだ続くよ!! 今度は工廠の様子にゃしい!!」

「っ!?」

「ど、どうした睦月? 何を言ってるんだ?」

「だって煩悩日和にまともに登場したのって今回が初だから……許してにゃ?」

「分かるよー。うん、分かる」

 

 彼女は吹雪の親友、睦月型駆逐艦一番艦『睦月』。弥生や皐月達のお姉さんだ。今まで名前は出ても台詞もなければ姿も描写されないままだったので、少々テンションが高くなっているようだ。そんな睦月に共感したのか、白露もしきりに頷いている。白露も出番は少ない……目指せ、エコヒイキ。

 

「とりあえず開発と一発目の建造やっとくかー」

 

 横島は共に最低値で開発と建造を行う。出来たのは魚雷、建造されたのは電の艦娘カードである。

 

「おし、これで電のイナズマ・ホームランがまたパワーアップするな」

「頼もしいやら恐ろしいやら……」

「最近は色々と研究してるみたいにゃしぃ。手首の返しがどうとか……」

 

 物理最強を誇る電のイナズマ・ホームラン。ただでさえ強力なそれが更にパワーアップすれば、それはもう頼もしい武器になるに違いない。「はわわ」「はにゃー」などと言いながら敵の頭部をホームランしていく電の姿……。それが頭を過ぎった二人は身体をぶるりと震わせる。まさにこの世ならざる光景といえよう。

 

「それはともかく、早く建造を済ませちゃうにゃ」

「そうだねー。あんまり長くここにいても明石さんや妖精さん達の邪魔になっちゃうしね」

 

 二人はてきぱきと機材を操作し、まずは開発を終える。あまり大した装備は造れなかったが、新人達の教練には丁度良いだろう。そして、遂に本命の建造の時間である。

 

「とりあえずはレア艦レシピを試してみようかにゃー?」

「重巡も出るし、それが良いかもね」

「重巡かー。確か、第四艦隊を開放する条件の一つに妙高型を揃えるってのがあるんだよな」

 

 現在開放されている艦隊は第三艦隊までである。一先ず鎮守府の運営は何とかなっているが、これから先更に戦艦や空母が増えれば資材が足りなくなるのは目に見えている。出来れば、早々に開放してしまいたいと考えるのは自然なことだろう。

 

「そんなわけで妖精さん達、お願い!」

「重巡洋艦カモンにゃしい!」

「ナイスバディのお姉様よ来たれ……!!」

 

 三人の気合と期待の篭った声が響く。一人おかしいような気がするが、それは気のせいである。何故ならこの鎮守府ではいつものことだからね。

 さて、そんな三人の願いの結果は……?

 

『01:00:00』『01:00:00』

 

「んー……軽巡……かな?」

「軽巡……ぽいね」

「軽巡かにゃ」

 

 結果は二つとも一時間。今までの経験から言えば、これは軽巡洋艦娘が建造される時間だ。未だ駆逐艦が多い横島鎮守府では軽巡も貴重な戦力であるのだが、期待していた分やや拍子抜けといったところ。

 

「ま、しゃーない。切り替えていこう。とりあえずはみんながいっぱい集めてきてくれた高速建造材で一気に終わらせようか」

「りょうかーい」

「もっと燃えるがいいにゃ!」

 

 今日も嬉々として高速建造材という名の火炎放射器でヒャッハー! する妖精さん達。いい気分転換、あるいはストレスの発散になっているのかもしれない。

 やがてツヤツヤとして帰っていく妖精さんと、ゆっくりと開かれるドック。煙の立ちこむそこから覗くシルエットは、二つともよく似通っていた。右腕に艤装が集中しているのか、大きく無骨な印象を受ける。左肩に見えるのは主砲だろうか。一人は恐らく背中側から、もう一人は肩の甲板と思しき艤装に付属しているらしい。

 

 ――――煙が晴れる。そこにいたのは横島と同年代の二人の美少女。おへそが丸出しのセーラー服を身に纏った、駆逐艦娘でも、軽巡洋艦娘でもない艦娘。

 

「古鷹といいます。重巡洋艦の良いところ――――」

「加古ってんだー。よろ――――」

 

 二人はまだお互いの存在に気付いていないのか、同時に話しはじめる。このままでは何を言っているのか聞き取れないところだが、今この場にいる一人の少年はそうはならなかった。

 

「ぢょぉしこおせええええええええええええっっっ!!!!!」

「――――ッ!!?」

「――――ッ!!?」

 

 横島の身体から猛烈な勢いで霊波が吹き荒れる。そのお陰で横島の周囲にいる女の子四人のスカートがめくれ上がり、その中身が露となってしまった。……肝心な横島は喜びのあまり天を仰いでいたのでそれを見ることは叶わなかったが。しかし横島はそれに気付かず歓喜の涙を流す。だって美少女だもの。同年代くらいの美少女だもの。

 ……さて、ここまでくればお分かりだろう。横島は二人の話を聞き取れないのではない。そもそも聞いていなかったのだ。

 

「古鷹さんと加古さん……ということは……!!」

「重巡洋艦……!! ついに来たにゃ!!」

 

 スカートがめくれたことによる羞恥で顔を真っ赤にしている二人だが、それでも二人の建造に成功したことによってそれを忘れるくらいにテンションが上がる。

 重巡洋艦。横島鎮守府に存在しなかった、新たな艦種。攻防力が高く、能力値のバランスも良い。装備を変更するだけで様々な作戦に対応可能と、中々に優秀な艦種だ。夜戦になれば火力も高まり、回避も駆逐艦並みになる。

 そんな重巡洋艦の美少女(しかも同年代)が、二人も建造されたのだ。これで横島が喜ばないわけがない。

 

「な、何だったんだ今の風……?」

「何か、目の前の男性が光ったような――――って、あれ? 加古……?」

「あん? ……古鷹ぁっ!?」

 

 古鷹達二人は突然光り輝き暴風を齎した目の前の男――――即ち横島に対して訝しげな視線を寄越すが、その際についにお互いの存在に気が付き、驚きながらも旧交を温める。久々に会った姉妹艦だ。二人の顔には笑顔の花が咲く。

 それをずっと眺めていても良かったのだがしかし、いつまでもそうしているわけにもいかない。横島は一通り歓喜に震えた後、睦月達に一つの確認を取る。

 

「なあ、白露、睦月」

「ん?」

「なに?」

「あの二人は重巡洋艦なんだよな?」

「そうだよ」

「重巡にゃ」

「そうか……」

 

 横島は二人の言葉にうんうんと頷き、そして二人の肩に手を置いて自分の方へと引き寄せる。いきなりの行動に顔を赤らめる二人。しかしそれも次の横島の言葉にそんな照れは吹き飛んでしまう。

 

「よくやった。今度間宮と伊良湖ちゃんに頼んで、好きなだけスイーツ食わせてやるよ」

「ほんとに!?」

「おおお、あまりにも太っ腹!! 睦月感激ぃ!!」

 

 お目当ての妙高型ではなかったが、それでも初の重巡洋艦だ。横島は嬉しさのあまり財布の紐を緩めてしまう。当然二人だけで済むはずがないのだが……それはまた、別の話。

 

 横島は睦月達との会話に一段落つけると、今度は古鷹達へと近付いていった。

 

「あー、何か再会を喜んでるとこ悪い。俺はこの鎮守府の司令官の横島だ。よろしく」

「あ、すいません挨拶もせずに! 私は古鷹型重巡洋艦一番艦“古鷹”といいます! こちらは妹の“加古”です」

「んあー、よろしくー」

 

 今まで結果的に自分達の司令官を無視していたためか、恐縮しきった様子で頭を下げる古鷹に、特に気にした様子もなく眠そうな顔と声で緩い挨拶を寄越す加古。実に対照的な姉妹だ。加古の挨拶に怒った古鷹が加古を叱りつけるも、やはり加古はそれも面倒臭そうに受け流している。姉妹仲は良さそうなのだが、それでも衝突することはあるのだろう。

 

「はいはい、ケンカするんじゃねーぞ? 工廠の中で暴れられたら堪ったもんじゃねーからな」

「すいませんっ! すいませんっ!」

「あー、ごめん……」

 

 流石の加古もそういった危険性は理解しているらしく、言葉は軽いながらもきちんと頭を下げて謝った。色々と面倒そうに……あるいは眠たそうにしているが、やはり根っこの部分は良い子らしく、素直に謝れる美徳も有しているらしい。

 

「それはそうと、二人とも重巡洋艦なんだよな?」

「おう、そうだぜー」

「はい。私達は小型で旧式なのですが、それでも充分な戦力として戦えます。何かお困りの時はお声を掛けてくださいね」

 

 横島を真っ直ぐに見つめる古鷹の瞳。『小型で旧式』と謙遜の言葉を発しているが、その癖彼女から溢れるのは自分の……自分達の力に対する自信だ。しかし、それは過信ではない。自分達の力に誇りを持っているからこその確信の言葉だ。

 

「……そうか。うちの鎮守府では二人が初めての重巡だからな。これから頼りにさせてもらうぜ」

「はいっ! 私達が初の重巡洋艦ならば尚のことです。提督に重巡洋艦の良い所を知ってもらうためにも頑張ります!」

 

 交わされる視線。柔らかな微笑みと、力強い微笑み。横島は一つ頷くと、古鷹と加古の肩に手を掛ける。

 

「ところで、あっちに静かで邪魔が入らない秘密の部屋があるんだが。そこで重巡洋艦について()()と教えてほしいんだ……」

「はい、お任せください! 重巡洋艦(わたしたち)の良い所、いっぱいお見せしちゃいますね!」

「……そこにベッドかお布団ある? あったらちょっとだけ寝かせて……」

 

 最初の雄叫び以降横島が大人しかったのはこの時を待っていたからだ。言葉巧み(?)に女の子を誘い出し、密室で三人だけになったところを一発!! という作戦だったようだ。横島のせいか、古鷹達の台詞まで何だか妖しい意味を秘めているように聞こえてしまう。……まあ、当然古鷹達以外にも人がいる時点で成功するはずもないが。

 

「そーいうのは駄目だよ提督ー!」

「吹雪ちゃんの親友としてそういうのは見過ごせんにゃー!」

「な なにをする きさまらー!」

 

 横島の邪な企みに気付いた白露達の手によって、古鷹と加古を横島から引き剥がす。そしてそこに響く何者かの走り寄って来る足音。その足音に覚えがある横島は工廠の入り口へと振り返る。そうして目に入った光景は――――自分に向かって回転しながら伸びる、何者かの脚、その先の白いパンツ、さらにその先のおへそ!!

 

「早速何やってんのよアンタはー!! 叢雲錐揉脚ー!!」

「ぐわあああーーーーーー!!?」

 

 繰り出されたのは心臓目掛けて放たれる回転ドロップキック。服装が相変わらずいつもの制服なのでパンツもおへそも丸見えだ。それに目が釘付けになった横島に回避出来るはずもなく、横島はまともに蹴りを食らい、工廠の奥へと吹っ飛んだ。ちなみに今回は単なるツッコミシーンなので機材その他には何の被害もなかったことをここに記載しておく。

 

「お、おいおい提督が吹っ飛んだぞ!?」

「叢雲ちゃん、何を……!?」

 

 叢雲のツッコミ(ドツキ)はやはり初見の者には色々と危険なものに映るようで、古鷹達もすわ反逆かと危機感を煽られる。そこに現れるのは吹雪と天龍……つまりはいつものメンバーだ。食堂で霞から横島が工廠に向かったのを教えられたのだ。

 

「あー、大丈夫大丈夫。これはいつものことだから」

「まあいつものことになってるのが異常と言えば異常なんですけどね」

「え……って、天龍さんに吹雪ちゃん!」

「よう、重巡(おまえら)も建造されたんだな」

「えへへ、着任を歓迎します」

「お、おう、ありがとう……」

 

 二人は古鷹達に歓迎の言葉を掛け、この鎮守府がどういった所なのかを簡単に説明する。簡単な人間関係や横島についてだ。吹雪達が説明をしている最中、横島と叢雲は口喧嘩を始める。

 

「いきなり何すんだお前は!!」

「うっさいわね! アンタがあの二人に変なことしようとするからでしょうが!!」

「あの二人は美少女女子高生なんだから仕方ねーだろーが!!」

「仕方なくはないでしょ!! 第一――――美少女なら今もアンタの目の前にいるじゃないの!!」

「そりゃ確かに叢雲は美少女だけども……!!」

 

 説明が終わり、横島達の口喧嘩を眺める皆の目が、やや生温かさを帯びる。

 

「……あの二人、付き合ってんの?」

「いえ、そういう関係ではないんですが……」

 

 加古の質問に、吹雪も困ったように笑みを浮かべながら曖昧に返す。自分の妹の色々と素直じゃない――ある意味では素直――な態度に、苦笑を禁じえない。

 

「いやまあ、提督は自分と同年代か年上の女が好みみたいでな? 特に胸とかがでかかったりするのが良いらしい。――――この俺みたいにな」

「え、ええ……っ!?」

 

 天龍さん、受け入れ態勢バッチリなのっ!!? という古鷹の驚きの声が上がる。吹雪は吹雪でドヤ顔を浮かべる天龍を頬を膨らませて不満気に見やる。デート第一号は自分であるが、決定打に欠けているのは自覚しているのだ。姉妹艦のこともあることだし。

 

「つーか叢雲、お前その服装でああいう技は止めたほうがいいぞ。時々飛び蹴りかましてくっけど、その度にいつもパンツ丸見えだからな?」

「んなっ!?」

「はっは~ん、それとも何か? 俺に見せ付けてんのか? つまり誘ってたり?」

「あ、あああああアンタ、調子に乗ってんじゃ……!!」

「最近間宮達のご飯食べてるせいか、叢雲(おまえ)も以前みたいに痩せぎすな感じじゃなくて、年相応の女の子らしい丸みが付いてきたしさ。しかも色々と育ってきてるせいか、けっこうむっちりとした感触になってるんだよ。やっぱりそういう風に身体が成長してきてるといくら年下とは言っても年齢は近いわけじゃんか? そうなるとやっぱり超人プロレス技を掛けられたりして身体が密着すると、けっこうドキドキするもんなんだよ。チチとかフトモモが触れると特に。男はいつも切羽詰ってるようなもんなんだぞ? そんな男に身体押し付けて密着してくるとか、そりゃもう誘ってるようなもんじゃんか。それをいつも仕掛けてくるとか――――お前は俺に惚れとったんか?」

「長々と喋った上の結論がそれかー! 叢雲圧搾機ーーーーーー!!」

「おああああああーーー!? だ、だからそういうのが……!! あああ全身痛いけど背中と脚に幸せな感触が……!!」

 

 叢雲は横島を背後から羽交い絞めにし、自分の脚を横島の脚に絡ませる。その顔は怒りかはたまた別の感情でか、真っ赤に染まっていた。二人の戯れ(意味深)を見る古鷹と加古は、次に吹雪と天龍に視線を移す。二人は速攻で目を逸らした。

 やがて満足したのか叢雲は横島を開放し、首根っこを掴んで引き摺りながら皆の下へと戻る。一体何に満足したのかは不明であるが、とりあえず未だ顔に赤みは帯びているが心身共にモヤモヤ(意味深)は解消されたようだ。

 

「……何よ?」

「いや、別に」

 

 自分を見る皆の目が生温かいのが気になる叢雲だが、今はそれを放っておいて遅れながらも古鷹達と挨拶を交わす。

 

「ふう……恥ずかしいところを見られちゃったけど、二人が来てくれて心強いわ。これからよろしくね」

「え、ええ。はい。……よろしく、叢雲ちゃん」

「あー……よろしくな?」

「……?」

 

 どうにも歯切れが良くない二人に疑問を覚える叢雲であるが、自分がしたことをよく思い返してもらいたいものである。

 

「……あ、そういえばまだ建造の途中なんだった」

 

 ここで思い出したように白露が任務が途中であることを話す。建造任務は二回に分かれており、それぞれ建造を一回と三回行うことで達成となる。今は二回目であり、最後の建造が控えている。

 

「あー、そうだったにゃ。吹雪ちゃん吹雪ちゃん、最後はどうする?」

「うーん、最近みんなが頑張ってくれてるから資材はまだまだ余裕があるし、多めに使っちゃってもいいんだけど……」

 

 吹雪は睦月の言葉に端末を操作し、現在の資材を確認する。潤沢、とまではいかないが、戦艦レシピや空母レシピを数回試しても大丈夫なくらいには潤っている。横島の判断を仰ぎたい所だ。

 

「それなら戦艦レシピを試してみるか? 確か重巡も出やすいみたいだし、戦艦が出ても問題ないしな」

「うわあっ!? もう復活した!?」

 

 いつの間にか吹雪の横で端末を覗き込んでいた横島に加古が驚きの声を上げる。こんなことで驚いていてはこれから先苦労するぞ。ちなみに吹雪は横島の顔が近いので頬を赤く染めていたりする。

 

「そんじゃあ資材は400/100/600/30で、っと」

 

 横島は吹雪が持つ端末を横から操作し、建造を開始する。より横島の身体が密着するので吹雪としては恥ずかしいやら嬉しいやら。睦月はそんな吹雪をにやにやと見つめ、天龍は「俺も何か考えといたほうがいいか」と思考を巡らせる。叢雲はつんと横を向いていながらもチラチラと横島達の様子を盗み見ているようだ。

 

「……何か、凄い複雑な人間関係が築かれてそう……」

「……早くお布団に入って寝てしまいたい……」

 

 新参の古鷹達二人は微妙な空気が蔓延するこの空間に疲れを見せ、現実逃避を始める。そんなことではこれから先苦労するぞ。

 

「建造時間は――――おっ?」

 

 端末に表示された建造時間は『04:00:00』――――戦艦の建造時間だ。

 

「これは……戦艦ですね!」

「ついに扶桑に続いて二人目か?」

 

 一時期は駆逐艦しか建造されなかった横島鎮守府も、今では空母や戦艦も建造されるようになった。一番騒ぎそうな横島は吹雪の横で地面に跪き、神に感謝を捧げている。それを見る叢雲の目はとても冷たい。

 

「みんながいることだし、高速建造材の出番かなー? ふっふふ、今夜はパーティーだぜ」

 

 妖精さんが「Let's Party!!」と叫んで火炎放射。妖精さんにとって誰かの独り言を盗み聞くなど容易いことなのだ。

 火炎放射が終わり、ドックが開く。両サイドにシニヨンを結った茶のロングヘアー、巫女装束を改造し、西洋風の意匠を取り入れた衣服。戦艦娘特有の巨大な艤装。そして何より横島よりも年上でスタイルも良い、美人なお姉さん――――それが彼女、金剛型戦艦一番艦。

 

「英こ――――」

建造される(うまれる)前から愛してました」

「――――what's!?」

 

 いつの間にか金剛の前に移動し、金剛の両手を握っている横島。吹雪・天龍・白露・睦月は「まあ、そうなるな」と諦めた風にやや遠い目で微笑んでいるが、叢雲は柳眉を逆立て、古鷹と加古は横島の瞬間移動に驚愕の表情を浮かべる。そんなことでは(以下略)だ。

 

「はいはい、こっちこっち」

「いだだだだだだだ!? 耳を、耳を引っ張るなあああああああ!!」

 

 結局横島は叢雲に耳を引っ張られながら金剛から引き剥がされ、正座でお説教だ。代わりに吹雪、天龍が金剛への対応へと向かう。

 

「あー、着任早々悪いな、金剛。提督にも悪気はねーんだよ」

「そうなんです。ただ、美人を見ると見境なく口説きに掛かるだけですので……」

「oh……そうなのデスか。でも私は気にしていまセーン! ああいう情熱的なところはむしろ好ま――――……っ?」

 

 不意に言葉を詰まらせる金剛に、吹雪達は疑問符を浮かべる。

 

 

 

 

 ――――記憶にノイズが走る。

 

 ただ一人海を走っていた。大切な誰かを探していた。仲間は全て失った。自身の身体も朽ちていた。

 

 

 

 

「……っう、ん……!?」

「お、おい金剛!?」

「金剛さん!? どうしたんですかっ!?」

 

 頭に鋭い痛みが走り、金剛は頭を抱えて膝をつく。吹雪達の声も聞こえない。金剛は激しい痛みの中、()()()()()()()()()()()()()()()()のだと直感的に理解出来た。

 

 

 

 

 海の底へと沈んでいく。自らの意識が塗り替えられていく。今までの自分とは違う、別の何かへと変わっていく。

 ――――それでも、心に残るのは一つだけ。

 

 

 

 

 

「ちょっとアンタ、金剛に何やったの!?」

「ななな何もしてないっ!! ただ手を握っただけで……!?」

「じゃあ何よ、金剛は生理的にアンタを受け付けなかったとかそういう――――それはそれでムカつくわね」

「そんなことより明石さんを……ていうか何で明石さんいないの!?」

「明石さんならお昼ご飯に行ってるって妖精さんが言ってるにゃ!!」

「ああもう、そんなんだから出番が少ないのよあの人はーーーーーー!!」

 

 突然の事態に横島含め、艦娘達はパニックへと陥る。さりげなく明石へのディスも混じりだすくらいには冷静さを欠いているほどだ。

 

 

 

 

 

 

 ――――ひたすらに海を走り続けた。障害が現れることもあったが、それら全てを払いのけた。ただ、心に残っている唯一のものを求めて、彷徨い続けた。

 それはやがて、一つの終わりへと辿り着く。もはや心の中の()()は磨耗し、それがどんなものだったのかも忘れかけていた。それでもただ求め、新たな障害を打ち砕かんとした時――――自分は、敗れ去ったのだ。

 身体を打ち据えられ、爆発と爆炎に身体を焼かれ、既に消えかけていた意識も消滅寸前だ。それでも――――それでも何かを求め伸ばした手は空を切り。そして――――

 

 

 

 

 

 

 “――――ここにいるぞ”

 

 それは。

 

 “――――お前の提督は、ここにいる”

 

 ああ、それは。

 

 

 

 

 ――――ずっとずっと、捜し求めていたものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「金剛さん、大丈夫ですか!? 金剛さん!?」

「ん、ん……、Yes。大丈夫デース。ちょっと頭が痛かっただけナノデー……」

「ちょっとって感じじゃなかったみてーだが……本当に大丈夫なのか?」

 

 金剛はまだ少し痛む頭を押さえながら、長い息を吐きつつゆっくりと立ち上がる。心配の声を掛けてくれる吹雪と天龍に笑顔を見せ、大丈夫だと言う。顔色も悪くないことは確認できた吹雪達だが、それでも心配なのは心配だ。そんな心配をよそに、金剛は遠巻きに自分を見ていた横島達へと歩み寄る。

 

「えーっと、金剛さん、だっけ。大丈夫なのか? 念のため明石に精密検査をしてもらった方がいいんじゃ……?」

「問題Nothing!! No problemネー!!」

「そ、そうか? でも一応明石に話は通しておくから、検査は受けてくれよ?」

「了解デース! ふふっ、提督は優しいデスネー……」

「んん……?」

 

 金剛の何やら高めのテンションや、横島を見る目の色に疑問を浮かべる叢雲。他の皆も金剛の横島へのやけに親しげな態度に疑問を持つが、ここで二人を離しておけば()()()()()にはならなかっただろう。

 

「ところで提督ぅー、さっきの愛の告白についてデスガー……」

「いやーあれは金剛さんがあまりにも美人だったからつい! 美女美少女は口説かなければ失礼にあたるし!」

「どんな言い訳よ」

 

 下から覗き込むようにして見つめてくる金剛に対し、横島は汗だらだらで目を逸らしてよくわからない言い訳をする。叢雲がジト目で横島を見やるが、金剛は対照的に微笑みを浮かべる。

 

「ひとまず、お答えしますネー?」

「ええ!? ふ、フラれる心の準備が……!?」

 

 金剛は慌てる横島の懐に入り込み、その両頬に優しく手を添える。

 

「ぅえ?」

「――――I loved from before birth,too(わたしも、うまれるまえからあいしてました)

「え――――んんっ!!?」

「んなぁっ!!!!!?」

 

 金剛が軽く背伸びをし、横島の唇に自らの唇を重ね合わせる。このいきなりの事態に横島は何も抵抗出来ず、周りの艦娘も金剛の大胆な行動に驚き、身を固めてしまう。その間も金剛は横島への攻めの手を緩めはしなかった。

 

「ん、むっ……む、ぢゅ、るる!?」

 

 横島の咥内に、金剛の舌が進入してくる。横島の唇と歯をこじ開け、舌を絡める。金剛の舌は長めなのか、舌を絡めるだけでなく横島の歯茎や歯の裏側、口蓋にも舌を這わせ、舌を吸い、横島の唾液を吸い、自らの唾液と交換する。

 頬に添えていた両手も今では腰に回され、全身を押し付けるようにして密着させる。とても濃厚なディープキス――英国風に言うならばフレンチキス――である。

 横島は金剛から齎される快感になすがままになっている。いつまでも続いてほしい……そう横島が望んでしまうのも無理はなからぬことだ。しかし、そういったものはいつも唐突に終わりを告げる。

 

「――――何をやってんのよ金剛おおおおおぉぉぉーーーーーー!!!」

「Oh!?」

 

 叢雲が金剛から横島を一本釣りにしたのだ。シュポーンと抜き取られた横島はその勢いのままべしゃっと地面に叩きつけられる。横島の事なので心配は無用だろうが、とても痛そうだ。

 

「ちょっと司令官!! アンタも何されるがままに――――これは!?」

「し、司令官の瞳に――――Hな漫画みたいにハートマークが浮かんでる……!!」

 

 何故Hな漫画のネタを知っているのかというツッコミは置いておこう。横島の痴態(?)を見た何人かの艦娘がちょっとだけ興奮したという隠された事実も今は置いておこう。問題は敵意むき出しで天龍が金剛に向かっていったことだ。

 

「テメェ……!! 提督に何してやがんだコラ……!! 俺だってまだしたことねーんだぞ!!」

 

 ……その怒りの矛先はどこかずれていたようだが。天龍の怒気を向けられた金剛は余裕そうに互いの唾液で汚れた口元をハンカチで拭っている。その姿は天龍を苛立たせるには充分なポーズだ。

 

「ふふふ。私よりも先に着任していながら、提督と距離を縮めることが出来なかった己の未熟さを嘆くのデスネー」

「あんだとぉっ!?」

 

 天龍の額にビキビキと井桁が形成される。修羅場の完成だ。天龍の後ろには怒りによってか髪が逆立つかのようにゆらゆらと揺らめいている叢雲と、涙目で金剛を睨みつける吹雪がいる。三対一の状況……それでも尚金剛は余裕を崩さない。

 

「それにしてもー……天龍サンがそれほど悔しがるとは、私の溜飲も下がるってものデス」

「あ? そりゃどういう……」

()()()()()()()()()()()()()……とても痛かったデスから」

「……何だと? 俺がいつお前をぶん殴ったってんだよ?」

 

 金剛は自らの頬を擦り、拗ねたような顔で()()()()()()()()()()()。当然名指しされた天龍にも、他の皆にも金剛の言葉の意味が分からない。

 金剛は天龍達の様子を見て、まだ気付かないことに悪戯な笑顔を浮かべる。

 

「まだ気付きませんカー? ――――()()()()、分かりますよネ?」

「――――テメェ、まさか……!?」

 

 金剛は全身から霊波を放つ。それは天龍や加賀と同じ、二色の霊波。その色は――――()()()()。ここにきて吹雪も理解した。この色、この霊波の感触。金剛は――――。

 

「金剛さん、貴女は……!!」

 

 金剛は大きく頷く。

 

「Yes! that's right! 私は()()()()()!! ()()()()()()()()()()()()()()()()()のがこの私、金剛デース!!」

 

 その力強く、自信満々な宣言は工廠に響き渡り――――

 

「な、何だってーーーーーー!!?」

 

 ――――その残響をかき消すほどの驚愕の叫びが、工廠を震わせるのだった。

 

 

 

 

第三十四話

『着任、提督LOVE勢筆頭』

~了~

 

 

 




お疲れ様でした。

本当は深海棲艦サイドの話も入れたかったけど、長くなるのでカットしました。
ヲ級ちゃん達はまた次回以降ですね。

さて、今回金剛が着任しましたが、彼女の英語はG〇〇gle翻訳に頼っていますので、文法がおかしくてもそれは私が悪いのではなくG○○gle翻訳が(ry

ちなみにですが私の初重巡は加古でした。(多分)
加古いいですよね……。

それはそうと睦月のキャラが掴めません。とりあえず『テンションが高い多摩』みたいな感じにしてますが……うーん、違和感




叢雲もバレンタインの限定グラで瞳にハートマークが浮かんでましたよね……あれはとてもいい文明

それではまた次回。

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