アインハルトさんはちっちゃくないよ!   作:立花フミ

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毎年10月31日はハロウィンです。
ヴィヴィオたちも、魔女やお化けに仮装してお菓子をもらいに行く――かと思いきや、リオの一言から斜め方向に突き進む!!



探せ! 七鍵守護神(ハーロ・イーン)の魔導書

 ハロウィンとは、毎年10月31日に行われるお祭りです。

 

 起源は地球の古代ヨーロッパのケルト。秋の収穫を祝い、悪霊を追い払う宗教的な行事でしたが、現代では民間行事として定着しています。

 

 オレンジのカボチャを飾り、子供たちが魔女やお化けに仮装してお菓子をもらいに行く――といったイベントです。

 

 日本では、クリスマスやバレンタインデーと同じく商業的な意味合いでの普及が進められましたが、成果は芳しくありませんでした。

 

 しかし2000年以降、インターネットの広がりにより、メイド喫茶など、コスプレ文化が一般層にまで浸透。

 

 さらに近年のSNSの波及により、

 

『お祭りという合法的な空間内において、本格的な仮装をみんなで共有できる――』

 

 ハロウィンは、多くの人たちに楽しまれるイベントに成長したのです。

 

 

 まあ、わたしとしては「ヒーホー」とか言って、女神転生シリーズのジャックランタンが、炎の魔法アギを唱える方が馴染み深いのですが……。

 

 

 そんなわけで、いつもの学校の帰り道、いつものようにリオが唐突に言い出しました。

 

 

「ハロウィンといえば、やっぱり〝七鍵守護神(ハーロ・イーン)〟だよね?」

 

 

「いや、それハロウィン違いだから。七鍵守護神は『バスタード』の攻撃魔法だよ?」

 

 異界の七つの門を開き、流れこむ膨大なエネルギーを、自身の体を媒介に収束し光線として放つ。

 その破壊力は、ママのスターライトブレイカーをも上回るかもしれない伝説の古代語魔法だ。

 するとコロナが「あっ」と声を発した。

 

 

「七鍵守護神の魔導書が存在する――って噂なら聞いたことあるよ?」

 

「あるのっ!?」

 

 

 リオ情報だと嘘っぽいけど、コロナ情報だと途端に真実味を帯びてくる。

 でも、確かに、管理外世界や並行世界を重ねていけば、バスタードと似た世界だってあるかもしれないわけで……そうなると、七鍵守護神にまつわる魔導書が、いつものようにアルハザード経由で古代ベルカに伝わり現在に至る――みたいな流れがあってもおかしくはない。たぶん。

 

 

「無限書庫にあるのかな~?」

 

「あたしは見たことないけど……」

 

 

 その手の物事に目ざといリオが発見していない――ということはない可能性が高い。

 

 

「だったらさ、聖王教会のカリムさんに在り処を占ってもらえば?」

「う~ん、そんなことで占ってもらえるのかな~??」

「聖王陛下なんだし大丈夫だって」

「今年のハロウィンは、みんなで七鍵守護神の魔導書探しだね!」

 

 

 リオコロが随分と乗り気だな~と思っていたら、

 

 

「ちょっと待っていただけませんかっ!?」

 

 

「アインハルトさん?」

「どうかしたんですか?」

「あの……私、今年のハロウィンのために先週からいっぱい準備をしたんですが……」

 

 そういえばそうだった。

 

「ですよね。アインハルトさんのコスプレも見たいし、七鍵守護神の魔導書はまた別の機会にでも探せばいいんじゃないかな?」

 

 リオがチッチッチと指を振る。

 

「何をおっしゃるクリスさん――」

「うん、クリスはしゃべれないけどね」

 

 うさぎさんだ。

 

「ヴィヴィオもアインハルトさんも大事なことを忘れてるよ? それはそれこれはこれってね!」

 

 

     ●

 

 

 ハロウィン当日。

 仮装したわたしたち4人は、金髪お嬢様のいるダールグリュン邸を訪れていた。

 

 

「「「「トリックオアトリートっ!」」」」

 

 

「どうしてわざわざ遠いうちに来るんですのぉぉ!?」

「お菓子がいっぱいもらえそうだから?」

「……まあ、来たからにはあげますけど」

「流石はおかん」

「おかんさん……」

「ヴィクターさんは母親のようですね」

「アインハルトまでっ!?」

「まあまあヴィクターさん。代わりといってはなんですが、ここに来る途中、また行き倒れてたので拾ってきたこの方をプレゼントしますんで」

 

 

 わたしたちの背後に隠れていた黒いジャージの人を前に突き出す。

 

 

「やっはろ~」

 

 

 どこで覚えたその挨拶。

 

「ジークっ!? ……交渉成立ね。エドガー、お菓子の蔵を開けなさい!」

「かしこまりました、お嬢様」

 

 

     ●

 

 

 こうして大量の食料(お菓子)をゲットしたわたしたちはその足で聖王教会本部へ。

 

「そういえばカリムさんって名前を聞く度に仮面ライダーカリスを思い出すんだよね……」

「うん、それリオだけだから」

 

 早速カリムさんに七鍵守護神の魔導書の在り処を尋ねると、

 

「せっかくのハロウィンなのだから、お菓子の代わりに占ってみましょうか?」

 

 なるほど。

 ハロウィン効果で普段は占わないことまで占ってもらえる。これがリオの言っていた〝それはそれこれはこれ〟か!

 こういう時は、意外と策士なんだよなぁ~。

 すると、カリムさんが首を傾げた。

 

「あら? 結構近いのかしら……教会本部の裏手にある森の奥……」

「騎士カリム、それはもしかして例の洞窟のことでは?」

「あ~、アレのことね」

 

 カリムさんとシャッハさんが頷き合った。

 

 

     ●

 

 

 こうしてわたしたち一行は、カリムさんに教えられた通りに森を進む。そして、ぽっかりと開けた場所に出た。

 小さな岩山がある。

 

「こ、これが聖王の洞窟?」

「まさかこんなところに未知のダンジョンがあったなんて……」

 

 内部はもともと自然の洞窟だった空間を、人の手によって加工された造りになっていた。

 床は整地され、壁には古い壁画が描かれている。

 

「どのような由来があるのでしょうね?」

「えっと……竜の神さまから光の玉を授かった聖王が魔王を退治する――といったような内容だと思いますけど」

 

 どこかで聞いたような話だ……。

 最深部の部屋には石碑が置かれており、

 

「ヴィヴィオ、ここってロトの洞窟?」

「うん、わたしも今そう思ったけど言っちゃダメぇぇ!」

「大変だよ、ヴィヴィオ、リオ! こんなところに怪しい玉座がっ!」

「どうしてこんなところに玉座があるのぉぉ!?」

「まさか後ろに隠し階段があるとか?」

「流石にそんな竜王の城みたいなことは……」

「ヴィヴィオさんありましたよ、隠し階段。これですよね?」

「え~」

「竜王がいたりして?」

「いやいや」

「じゃ、ゾーマ?」

「いやいやいや――」

 

 否定しながら階段を下りていくとケーキ屋があった。

 

 

『こんなところにお店があってごめんなさい』

 

 

 わたしは見なかったフリをして石碑の部屋に戻った。

 

「そんなネタ誰も知らないよっ!?」

 

「ちょっと待ってヴィヴィオ!」

「今度は何っ!?」

「あんなところにさっきまでなかった謎の扉が!」

「え~」

 

 ドアノブは真鍮製で、よく手入れされた黒い樫の木で出来ていた。

 

「とりあえずロトの石版……じゃなかった、石碑を読んでみたら?」

「うん、そうする。

 

 私の名は聖王。私の血を引きし者よ。

 毎週土曜日ではなく、1年に1度、ハーロ・イーン日にだけ、ラダトー……じゃなかった、ベルカから遠く離れた彼の地に通じる転移の扉を使い、伝説の魔導書を託した――。

 

 何その異世界食堂……」

 

 要するに、どこでもドアみたいなものなのだろうけど……。

 

「開けたらアレッタさんみたいな格好したユミナさんがいて『いらっしゃいませ!』とか、中の人ネタはもうお腹いっぱいだよっ!?」

「いや待ってヴィヴィオ、ここがもしロトの洞窟だとすると……」

「うん、聖王の洞窟だからね、リオ」

「この扉はただの転移装置ではなく魔王の爪痕――つまり、大魔王ゾーマの城に通じてるんだよ!?」

 

 

「な、なんだってー!? って、そんなことあるはずないでしょぉぉ!?」

 

 

「ほら、ドラクエ3でゾーマを倒すと城が崩れて、出来た裂け目に飲みこまれると、この洞窟のひび割れから出てくるでしょ?」

「その光景は少しプレシアさんに似ていますね」

「え~」

「つまりリオが言いたいのは、この扉が魔王城に通じているんじゃないかってこと?」

「そうそう」

 

「魔王城……まさか、ヴィヴィオさんのおうちのことでしょうか?」

 

 

「やめてー、わたしもちょっとそう思ったけどやめて~」

 

 

 コロナが扉に歩み寄る。

 

「少なくとも、転移魔法がかかっているのは確かだと思うよ?」

「本当にぃぃ!? これ、扉を開けても平気なのかなぁ……」

「うん、たぶん平気だと思う」

「コロナが言うなら……じゃ、開けるよ?」

 

 

「「「お~っ!」」」

 

 

 リオが祈る。

 

「なのはさん来い! なのはさん来い!」

「やめて~」

 

 コロナも祈る。

 

「私はユミナさんユミナさん~」

「だから、ねこやとかないから! あ~、でもなのはママよりはマシか~、こうなったらわたしもユミナッタさんでぇぇ!」

「どちらであろうと私が倒してみせますから!」

「倒しちゃダメぇ~」

 

 

 ――カランコロン!

 

 

 ドアベルが鳴った。

 

 

「いらっしゃいませ~」

 

 

 目の前に広がるのは複数のテーブルや椅子。

 

 まさか本当に異世界食堂っ!?

 

 大穴でミウラさんちとかぁぁ!

 

 

「――あらヴィヴィオ? ハロウィンだからってわざわざ海鳴まで友達と一緒にお菓子をもらいに来たの?」

 

 

 わたしに声をかけてきたのは、なのはママによく似たエプロン姿の大人の女性。

 

「……って、桃子さんっ!?」

 

 異世界食堂ならぬ異世界喫茶店だったというオチだけど、リオがポンと手を打った。

 

「そっか、ゾーマは〝大〟魔王で、バラモスが魔王だったでしょ?」

「うん」

「なのはさんがバラモスだとしたら、その上に君臨する大魔王は……」

 

「あ~」

 

 納得。

 ちなみに七鍵守護神の魔導書は高町家(ママの実家)の物置にありました。

 

 

 




お祭りなので何でもアリということで勘弁してください(笑)。

せっかくなので、桃子さんの年齢を計算しました。
新暦65年(33歳)……PT事件
新暦79年(47歳)……『ViVid』本編
新暦80年(48歳)……『ViVid Strike!』

危ない危ない。もう少しで、5……ゲフッ!?

そんなわけで、次回は……あ、コンプエースの本家が完結しちゃったよっっ!?
というわけで、予定を変更して何か考えます。
どうしよう??


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