Harry Potter Ultimatemode 再会と因縁の章 作:純白の翼
再び、話をしようとした時、エリナがふとこんな質問をしてきた。
「そういえばさ、年上の兄弟がいる人に聞きたいんだけど、その人達ってどこの寮なの?」
着替えが終わって再び席に腰を落ち着けたエリナが、皆に尋ねてみる。上の兄弟がいるのはロンとゼロだけなので、実質2人だけに質問しているわけだ。義理でも良いなら、俺を含めて3人になるわけだけどな。
「俺の兄さんは、レイブンクローさ。兄さんは、どこに行っても唯一残った家族だから、無理にレイブンクローじゃなくてもいいって言ったけどな。でも、同じレイブンクローだったら、嬉しいんだってよ。」
ゼロがエリナの質問に答える。続けてロンが回答する。
「僕のところはグリフィンドールだよ。ママもパパもそうだったんだ。もし僕がそうじゃなかったら、何て言われるか。レイブンクローやハッフルパフなら悪くないけど、スリザリンだったらそれこそ最悪だよ。」
ロンの言葉に、シエルが反応した。かなり怒っているようだ。グレンジャーの事もあるだろうしなあ。
「スリザリンだからって、みんながみんな悪いわけじゃないわ。そういった碌でもない人達の比率が多いのは否定しないけどね。現に、私のお祖父ちゃんもスリザリンだったけど、とっても優しいし、他の人達に対して偏見もあまり持ってないもの。」
ふ~ん。と言いながら俺は頷いた。そのスリザリンってところも決して一枚岩じゃないってことかと。まあ、イーニアス義兄さんもそうだからな。
「俺の所は、義理とはいえ兄と姉がいる。今は3人だけど、元々4人いたんだ。その人達、見事に4つの寮に別れているけどな。でも、兄弟仲は良好だよ。どこの寮に行ったかが重要じゃなくて、どこに行っても己を捨ててはいけない事が重要なんじゃないかな?そのスリザリンでもさ。」
皆に、特にスリザリンを嫌悪しているであろうロンに対して言ってみた。かなり面食らっているロン。ゼロとイドゥンは、俺に対して感心したような表情で見ている。
人間の作った組織で、一枚岩や完璧、絶対なんて言葉はこの世に存在しないのは今までの歴史が証明しているわけだ。また、俺に続いてイドゥンが言った。
「ちなみに私の一族は、唯1人を除きますと、全員スリザリンですね。まあ、その1人は一族の家系図から抹消されていますけどね。」
『……あの人の事か。まだ言うべき時じゃないな。』
そんな事を考えていると、エリナが俺を見ていた。急にリアクションを取らなくなった俺を心配しているようだ。我が妹ながら、心配してくれるのは大変有り難い。
「どうしたのハリー。急に黙っちゃって。元からあまり喋ってないけど。」
「悪い悪い。ちょっと考え事をね。」
エリナによれば、このイドゥンとシエルがスリザリン家系だった事に、ロンはショックを隠せないようだった。ホグワーツの寮はある程度、家系で決まる側面がある。必ずしもそうじゃないが。そして、スリザリン家系の家からは闇の魔法使いや犯罪者、極悪人が数多く出ている。何を隠そう、あの自称ヴォルデモートという名の変態ヘビもスリザリンの出身なのだ。
車内が気まずい沈黙に包まれる中、またしてもコンパートメントの扉が開き(今度はノックなしだ。そういった意味では前のグレンジャーと丸々とした少年はかなり良心的とも言える)、3人の少年が入ってきた。プラチナブロンドのオールバックに、デブ2人だった。
「このコンパートメントにエリナ・ポッターがいるって聞いたんだけどね。君かい?」
「そうだけど、君はだぁれ?」
「僕は、ドラコ・マルフォイ。そこの2人は、クラッブとゴイルさ。」
「やあ、君がポッターだったんだな。ん?君達は。」
「シエル・スラグホーンよ。」
「イドゥン・ブラックと申します。」
「ゼロ・フィールド。」
「俺は、ハリー・ポッター。」
ドラコが4人の名前を聞いた途端に態度が様変わりした。
「戦闘一族の末裔に前のスリザリンの寮監の孫娘、ブラック家の現当主、それに死んだと言われていたハリー・ポッターか?」
「今更嘘なんてつくかよ。」
俺は、少しイラついていた。純血主義が未だに残っているとは聞いていたが、まさか。最初にここまでの重度の奴と会う事になるとは思わなかったからなのだ。ドラコ以外の皆が、このコンパートメントの空気が変わったことに感づいたが、当のドラコは気にもしていないらしい。
「君らはウィーズリーや穢れた血の中でも底辺な奴なんかと一緒にいるのかい?魔法族にもいいのとそうでないのがいてね。友達の選び方を教えてあげよう。早速僕のコパートメントに……」
その時、グラントが狂気の笑みに満ち溢れた表情でドラコに突っかかってきた。
「ふーん?へー?ほーお?誰が穢れた血の中でも底辺な奴だって?」
「悪いけど友達くらい自分で選べるよ。こんな高圧的に言ってこなければ、仲良くしようと思ったのに。」
エリナが珍しく怒りながらマルフォイに言い放った。
「誰と交友関係を持とうがあなたに言われる筋合いはございません。そして何より、同じスリザリン家系でも、血だけで自分の優位性を正当化する様な低俗な考えを持つ者は仲間とも思っておりませんわ。」
イドゥンは、まるで養豚場の豚でも見るような目で、マルフォイに反論する。
「これはないね。」とシエル。
「全くだ。」とゼロ。
「黙れマルフォイ!このドジ!マヌケ!バカ!ノロマ!クズ!根暗!変態!う、後ろにオバケがいるぞ!!」
「ロン。それは流石に言い過ぎだ。やめろ……一歩間違えば同類だぞ。」
ぴしゃりとロンを黙らせる。そして、ドラコの方に向き直った。
「ドラコよ、今のロンの発言についてはこちらに落ち度があるから謝罪する。」
「何でそいつに謝るんだよ!」ロンが食って掛かる。
「……嫌な奴でも、明らかにこちらが悪ければ謝罪するよ、俺はな。そこは、自分なりに一線は構えているからな。」
理由を言っておいた。
「ウィーズリーより話が分かるようで安心したよ。それじゃあ……」
「だが、純血を謳い文句にあたかも自分が1番偉いんだというその姿勢は気に入らん。その性根を叩き直したら、交友関係に関しては前向きに検討することにしよう。」
俺は、それについては認めないと言う顔でドラコ、クラッブ、ゴイルに言葉を返す。ドラコは、顔が真っ赤になった。
「ポッター君。いつか両親と同じ末路を辿る事になるぞ。」
「どうかな?誰かが俺を傷つけた後に、もうそいつは後戻りの出来ない地獄を未来永劫体験する事になるがな。」
ロイヤル・レインボー財団の事は示唆程度に言っておくか。
「僕の言葉を素直に聞かないとどうなるか。クラッブ、ゴイル。やれ!!」
仕方ないな、と思いつつも俺は腕の骨を鳴らして臨戦態勢を整える。ここには、女子は3人もいる。特にエリナに危害を加えようとした事の愚かさに関しては、身を持って刻み込んでやろうとした。
だが、それをする必要はなかった。何故なら、グラントが3人をボコボコにぶちのめしたからだ。ボコッ!!メコォッ! という音がする。俺は、グラントには基本魔法に頼っているデブ2人と小物臭を匂わせるモヤシ野郎に負ける要素など、喧嘩や
「俺に逆らう奴はこうなるのさ。ハーッハッハッハッハッハ!」
「凄いな!グラントは!」ロンが感心する。
「本当に強いのですね。」とイドゥン。
「今に見てろ。父上が黙ってないぞ!社会的に抹殺……」
言い終わらないうちにマルフォイの顔面が陥没する。
『ギャングkoeee』ゼロが、冷や汗をかく。
「大丈夫かしら?顔がめり込んじゃってるけど。」
シエルは、顔がめり込んだマルフォイを心配そうに見つめる。しばらくして、俺達のいるコンパートメントから姿を消した。イドゥンは、グラントにマルフォイの事について質問する。
「彼と会った事があるのですか?」
「ダイアゴン横丁でな。あれは……」
グラントがみんなに話した。それによると、マダム・マルキンの店であったときに、グラントを穢れた血と侮辱して彼の怒りを買ったようだ。ついでに、グラントはマルフォイから、かえるチョコレートを借用という名の強奪を行ったという。
「それは、マルフォイが悪いな。」俺はきっぱりと言う。
「チョコを奪うのかはどうかと思うけど。」エリナが言葉を繋げる。
「あいつ、一体何だったんだ?」
「ああ、それはですね。」
イドゥンはマルフォイという家がどんな連中かを知っている。なので、グラントの疑問に答える。マルフォイ家は魔法界の名家であり、そして純血主義を掲げる
余談ではあるが、マルフォイの母親はイドゥンの母親の従姉だ。どういう事かと言うと、マルフォイとイドゥンは、いわゆるはとこの関係にある。
「えっと……再従弟って、どういうことなの?」
エリナは頭がショートするくらい話についていけてないが、ハリーはイドゥンの正体を悟った。
「簡単な事ですよ。私の母の従姉が、彼の母親なのですよ。」
「ていうことは、お前も純血なのか?」ゼロがイドゥンに聞く。
「そうですね。否定はしませんよ。不変の真理でありますので。それよりも、この話はやめにしましょう。あまり気分が良くなりませんからね。」
「うん、そうだね。やめにしよう。寮が分かれても、皆で仲良くやればいいだけだし。」
と、エリナが頷く。
そこからしばらくの時間が経つと車内にアナウンスが流れた。
『あと5分でホグワーツに到着します。荷物はこちらで別に学校に届けます。なので、車内に置いていってください』
ようやく外に出られるのが嬉しいのか、7人は車両のドア付近に向かうことにした。
「俺たちもそろそろ行こうか。」
「うん。」
列車が止まり駅に降りると、ダイアゴン横丁でエリナの付き添いに来ていた大男のハグリッドが、新入生を集めていた。
「相変わらず大きい人だよな。ハグリッドってさ。」
「恐らく彼は、半巨人の可能性が高いですね。」
新入生達は、険しく狭い道を、ハグリッドに続いて降りていった。木がうっそうと生い茂なと俺は思った。また、左右は真っ暗だった。俺に目の前を歩いているヒキガエルの少年、ネビル・ロングボトムが何回も鼻をすすっているではないか。
「みんな、ホグワーツがまもなく見えるぞ。」
ハグリッドが振り返りながら言った。
「この角を曲がったらだ。」
「「「「「「うおーっ!」」」」」」
あちこちから一斉に歓声が上がる。狭い道が開け、大きな湖のほとりに出ると、向こう岸に高い山がそびえ、その頂上にホグワーツ城を一望することができた。というか、城だったのか。意外だな。
「ここがホグワーツか。精々この俺を、退屈にさせないでくれよ。」
これからの7年間の彼らの学校での寮生活が、幕を開けようとしている。ここから、一体どんな出来事が俺たちを待ち受けているのだろうか?楽しみだ。
「面白そうなとこだよな。ここ。」
「え?何々?そこまでなの。ゼロ?」
「気にするなよエリナ。それよりも、ボートに乗っちゃおうぜ。ハリー、エリナ、グラント。後がつっかえるぜ。」
俺を始めとする新入生達は
そのボート船団は蔦のカーテンをくぐる。そこの陰に隠れてぽっかりとあいている崖の入り口へ進んでいった。城の真下と思しきトンネルの先には地下の船着場があった。全員が岩戸小石の上に上陸した。
俺達新入生は石段をのぼり、巨大な樫の木の扉の前に集まった。
「みんな、いるな?」
ハグリッドは確認し、城の扉を大きな握り拳を振り上げて、3回叩いたのだった。