Harry Potter Ultimatemode 再会と因縁の章   作:純白の翼

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第25話 ルシウスへの警告

 俺達9人が入って来たと同時に、沈黙が流れた。そしてまた、叫び声が上がった。

 

「「ジニー!!」」

 

 ウィーズリー夫妻が、ジニーに飛びついて抱き着いた。その次に、パーシー、フレッドとジョージも駆け寄って来た。

 

 部屋の奥には、校長とマクゴナガル先生もいた。校長はニッコリしているし、マクゴナガル先生は胸を押さえて大きく深呼吸をしていた。恐らく、落ち着こうとしているのだろう。フォークスは、校長の肩に止まった。同時に、俺とエリナ、ロンもウィーズリーおばさんにきつく抱きしめられた。

 

「あなた達がジニーを助けてくれた!あの子の命を!一体どうやって助けたの?」

 

「ここにいる全員が知りたいと思っていますよ。」マクゴナガル先生がポツリと言った。

 

 俺はグリフィンドールの剣を、ゼロが組み分け帽子を、エリナがリドルの日記の残骸をデスクに置いた。あ、ちゃっかりと剣を口寄せ契約しておいた俺である。

 

「さあて。どこから話せば良いのやら……」

 

 エリナをちらりと見る。先に話してくれと視線を送った。

 

「ええと、ボク、じゃなかった。私は、今年度の初めに姿なき声を聴きました。ハリーに相談したら、スリザリンの怪物だから蛇じゃないかって予想したんです。」

 

「ただ、そこまででした。何なのかを特定までは私は出来ませんでしたからね。」

 

 俺がエリナに続いて言った。次にゼロに視線を送る。

 

「はい。俺がハーマイオニーの見舞いに行った時の事です。彼女は、パイプの中を通るバジリスクだという事に既に気付いていました。俺は、彼女の持ってた紙で知りました。そして、バジリスクの対処法をハリーから貰った蛇事典で調べました。グラント、次だ。」

 

「ええと。それで禁じられた森で、ハグリッドさんの飼ってた巨大クモが50年前の最後の犠牲者の死んだ場所を教えてくれたんです。ロン。」

 

「それで、マートルが犠牲者だと気付きました。それに加えて、トイレの何処かに部屋の入り口があるんじゃないかという結論を出したんです。そこは、ハリーが考えたんですけど。」

 

「そうでしたか。あなた方5人は、100以上もある規則を粉々に破ったというわけですか。いつもなら処罰するところですが、事が事なので不問にしましょう。それで、一体全体どうやって全員生きて帰って来る事が出来たのですか?」

 

「そこからは、これを見た方が早いです。」

 

 再生の水晶玉(プレバク・ピラクリスタル)を取り出して、再生させる。秘密の部屋のやり取りの一部始終が記録されていた。ジニーはどうなるのか。操られていたとはいえ、マグル生まれを襲った罪は計り知れないだろう。退学になるのか?そう思っていると、聞き手は全員一部始終を見終えた。見終わった時の周囲の感想。

 

「し、進化したバジリスクを下級生6人で倒したのですか!?しかも、バジリスクはもう一体いて、そちらは味方にしたなんて!!」

 

 マクゴナガル先生は、大変驚いていた。ウィーズリー家の面々は、もう言葉も出ないようだ。校長を見る。微かに微笑み、暖炉の火が、半月形のメガネにちらちらと映った。大方、閉心術が使えないエリナ、グラント、エックス、ロンから情報を引き出したのか。とことん食えないジジイだ。

 

「わしが興味あるのは、ヴォルデモート卿がどうやってジニーに魔法を掛けたかじゃな。あ奴は今、アルバニアの森に潜伏しておるようじゃが。」

 

 アルバニア?確か、変態ヘビがレイブンクローの髪飾りを分霊箱にした場所か。何かある度に逃げてるのか?

 

「その日記が原因です。」エリナが、校長の疑問に素早く答えた。

 

「トム・リドル。いや、ヴォルデモートは5年生の16歳の時にこれを書いたんです。」

 

 エックスが、言葉を繋げる。何が何でも、ジニーを責めるなという目をしている。

 

「見事じゃ。確かにトムは、ホグワーツ始まって以来、最高の秀才じゃった。トムとヴォルデモートを同一人物として見る者は殆どおらん。わしがまだ、変身術の教師だった頃に彼を教えてた。卒業後、彼は消えた。再び表舞台に出た時には、もう昔の面影は無かったのじゃよ。」

 

「何でジニーが、その――その人との関係があったのですか?」

 

 ウィーズリーおばさんが聞いた。

 

「その日記なの!」ジニーがしゃくり上げた。

 

「いつも日記を書いてた。そしたらいつも、その人があたしに今学期中ずっと、返事をくれたの。」

 

 ウィーズリーおじさんは、ジニーに向き直った。

 

「……ジニー。パパはお前に、何も教えなかったと言うのかい? いつも言い聞かせていただろう? フレッドとジョージが絡んでいる物以外で、『脳みそがどこにあるか分からないのに、自分で考える事が出来る物』は信用してはいけないって。どうしてパパとママに言わなかったんだい?そんな妖しげな物は、完全に闇の魔術が絡んている事ははっきりしていたのに。」

 

「あ、あたし。し、知らなかった。ママが用意した本の中にこの日記があったのよ!あたし、誰かがそこに置いて行って、すっかり忘れたんだろうって、そう思った。」

 

「ミス・ウィーズリーはすぐに医務室に行きなさい。」

 

 校長はきっぱりした口調で、ジニーの話を中断させた。

 

「彼女にとっても過酷な試練じゃった。よって、処罰は無し。もっと年上の、大人の賢い魔法使いでさえ、あ奴に騙されるのじゃ。安静にして、熱いココアを飲むとよい。わしは、いつもそれで元気が出る。」

 

「ハリー!エリナ!それに、グラントにゼロ、イドゥンとエックス!君達には、何とお礼を言えばいいのか!」

 

 ウィーズリーおじさんが、俺達6人に頭を下げている。

 

「俺は、偽物野郎が気に食わなかっただけだぜ。ウィーズリーさん。」

 

「礼には及びませんわ。寧ろ、弟のエックスの方が頑張っていましたし。」

 

「僕は、いつも一緒にいたジニーとコリンを助けたかっただけですし。」

 

「ロンを褒めてやってくださいよ。」最後にゼロが言った。

 

「ロン!見直したわ!」ウィーズリーおばさんが、ロンをギュッと抱きしめる。

 

「ママ、やめてよ!苦しいよ!」満更でもないようだ。

 

 そのやり取りを見て、俺も思わず笑った。その間、校長が、マクゴナガル先生と何か話している。超感覚呪文で聞いてみる。

 

「のう、ミネルバや。ここは一つ、盛大に祝宴を催す価値があると思うのじゃが。キッチンにその事を知らせに行ってくれないかの?」

 

「分かりました。部屋に行った7人の処置はお任せしてよろしいですね?」

 

「もちろんじゃ。」

 

 マクゴナガル先生がいなくなった。俺は笑うのをやめた。どうやら、入れ違う様に招かれざるゲストが、怒りの形相で入って来たからだ。

 

「それで、何であなたもいるのですか?」

 

 俺は、その人物の名前を言った。

 

「ミスター・マルフォイ。」

 

「どういう事かご説明願いましょうか、ダンブルドア校長。」

 

「ご主人様!お待ちください!」聞き覚えのあるキーキー声も聞こえた。

 

「ドビー!やっぱりか。」俺の予想は当たってたようだ。

 

「マルフォイの所だったんだね。」エリナは、全て繋がったという顔をしている。

 

「こんばんは、ルシウス。」

 

 ジジイ、機嫌よく挨拶している。

 

「それで!お帰りになったわけですか!停職処分をしたのに、まだ自分が校長に相応しいとお考えのようで。」

 

「その事じゃがのう、アーサーの娘が襲われたと聞いて、あなた以外の理事から学校に戻るように頼まれたのじゃよ。そのー、何だったか。家族を呪ったり、物理的社会的問わず抹殺するぞ、とあなたに脅されたと言っておった。」

 

 うわあ、コイツ最低だ。金や力によるごり押しをしてたのか。やはり、蛙の子は蛙だな。

 

「すると――あなたは犯人を捕まえて、襲撃をやめさせたと?」

 

「やあ、ルシウス。聖28一族の高貴な雰囲気が台無しになっているよ。私も、娘が戻ってきた事だし。ここで言っておこうか。応接間の地下について。睨みを利かせますよ。それでは私はこれで。」

 

 おじさんは、医務室へ行った。

 

「!?」

 

 パパフォイは、完全に青ざめている。何で分かったんだ、という顔をしていた。

 

 何しろ、我らが親愛なるドラコに俺が開心術を使った時の事だ。その時に、その部屋の存在を知ったんだ。その後に、ウィーズリーおじさんに言っておいてやったのさ。

 

「さて、ルシウス。アーサーもいなくなったから言っておくが、もう二度とヴォルデモートの学用品をばら撒くのはやめにするのじゃ。次は、無いぞ?」

 

「何を証拠に!」パパフォイが吠えている。

 

「そういう事だったんだ。エイダさんに蹴り飛ばされる前に、この日記をジニーちゃんの教科書を取り上げた時に滑り込ませたんだ。この日記、返しておきますよ。」

 

 エリナが、パパフォイに向けて言う。そして、日記を自分のソックスの中に入れて、パパフォイに投げ渡した。

 

「こんなもの!」

 

 ビリビリと破った。それが、ドビーの手に渡った。かかったな、バカめ。

 

「君もそのうち親と同じ目に遭うぞ、エリナ・ポッター。連中もお節介の愚か者だった。」

 

「その時は、俺がロイヤル・レインボー財団と共にそんな目に遭わせないようにする。ロイヤル・レインボー財団は、仲間や家族の死を決して許さないのだから。」

 

 俺がすかさず言葉を返した。

 

「何故そんな事が言えるんだ?」

 

「それはのお、ルシウス。ハリーの保護者がアラン・ローガーだからじゃよ。その意味は、君はよく理解出来るじゃろ?ブラックリスト入りになっておるからのお。」

 

 校長が話に割り込んだ。癪だが本当だ。ルシウス・マルフォイは、俺達兄妹を苦々し気に見る。もう、俺達に対して迂闊な事が出来ないという事を悟ったらしい。

 

「とにかく、私はもう戻るとしよう。行くぞ、ドビー!」ドビーからの返事が無い。

 

「ドビー、来い。来いと言ってるのが聞こえんのか!」

 

 ドビーは動かなかった。ソックスを、大事そうに握りしめている。

 

「ご主人様がドビーめにソックスを下さった。これでドビーは――自由!」

 

「貴様らあああああ!良くも良くも良くも良くも…………良くも私の屋敷しもべをおおおおおおおお!!!許さん、許さんぞおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 ルシウス・マルフォイがエリナに飛び掛かって来た。

 

「いけない。エリナ・ポッターに手を出すな!!」

 

 校長室の階段下まで吹っ飛ばされるパパフォイ。怒りの形相で、杖を引っ張り出した。だが遅い。俺は、加速呪文でルシウス・マルフォイの目の前まで行く。彼の頭上に杖を突き付けた。チェックメイトだ。

 

「さあて、これだけは言っておきましょうか。良くもまあ、元ご主人様からの預かり物をお粗末に扱っちゃって。絶対、あなたの大切にしているものを命の危険に晒すという形で、この代償は支払う事になりますよ。」

 

 日記の残骸を弄びながら、俺はそう言い放った。

 

「フン。たかが日記だ。問題は無い。」

 

 あ~あ。分霊箱をたかが日記って言っちゃったよ。もう知ーらね。

 

「まあ、良いですけどね。一応、警告だけはしておくんで。それともう1つ。俺は、自分への無礼や嫌がらせ、危害に関しては平気です。寧ろ不問にする位ですよ。余程タチが悪くなければの話になりますが。だが、そんな俺でも怒る時はある。自らの親しい者や仲間に危害を加えた事に関しては。」

 

 ここで、俺の本音をぶつける。ルシウスだけに分かる様に、俺の魔力を放つ。去年と違って、威圧したい奴だけに出来る様になったのだからな。それでいて、見る者を安心させるように見せかけて、実は怒りに満ち溢れた笑顔を見せた。

 

「覚悟しておいて下さいね……この落とし前は、いつかあなたの後悔する形でつけさせてあげますから。首を洗って、待っていて下さいよ。」

 

 ルシウス・マルフォイは、俺をの表情を間近で見て、非常に怯えていた。そして、逃げるように校長室を出て行った。途中、足が震える余り転んでしまった。あ~あ。情けない姿だな。貴族らしくない。ああいうタイプは、絶対保身に走るな。

 

「姉ちゃん。先輩がここまでブチ切れた所を見るのは、初めてだよ。下手をすると、姉ちゃんと同じ、いいや、それ以上のレベルで敵に回したくないな。」

 

「そうですね。ルシウスは、ハリーの逆鱗に触れたというわけですか。ルシウスも、敵対する相手を間違えましたわね。」

 

 ブラック姉弟が、そんな事を言っている。聞こえてるぞ、お前ら。確信犯だろ。

 

「色んな意味で、死の飛翔よりも敵に回したくないな。全く、ハリーが味方で本当に良かったぜ。」

 

 ゼロも同意見らしい。頷くエリナ、グラント、ロンであった。

 

「ドビー。俺は、君に対する認識を180度改めるよ。エリナを守ってくれて、ありがとうね。」

 

 俺は、この妖精には決して見せなかった笑顔を見せた。勿論、同じ目線になった状態でだ。

 

「ハリー・ポッター様が、ドビーめに初めて笑顔を見せてくれた。あなた様も、エリナ・ポッター様同様にお優しい方です。」

 

 ドビーが甲高い声で言った。

 

「ドビー。これ位しかしてあげられないけど、もうボク達の命を救おうだなんて、2度としないって約束して。」

 

「はい。誓います。エリナ・ポッター。それに、ドビーめのヒントが役立った様で、ドビーめは嬉しく思います!」

 

「ヒント?あれだけ『ヴォルデモートじゃない』って散々言ってたじゃん。」

 

 エリナが首を傾げながらドビーに言った。

 

「そうか。奴がその名前を使う前、つまり本名だったらいくらでも呼べるってわけだな。」

 

 俺が、ドビーの言葉の真意を分析した。ドビーは、満足そうに頷いている。

 

「何だ。そんな事だったの。」エリナは力無く答えた。

 

「あなた方お二方は、ドビーが考えていたよりずーっと偉大でした。」

 

「エリナはともかく、俺は偉大でも何でもないよ。寧ろ、ろくでなしの方だよ。」

 

「いいえ!誰が偉大かというのは、個人で異なってきます。ドビーにとっては、ハリー・ポッターもそうでございます。それでは、さようなら!エリナ・ポッター、ハリー・ポッター!」

 

 パチッという大きな音を残して、ドビーは消えた。

 

「さて、これで君達に話が出来る。7人には、『ホグワーツ特別功労賞』が授与される。おまけに1人につき、200点与えよう。」

 

 それを言うのなら、さっさと学校の危険物を取り除いてくれ、俺はジジイにそう思念術で送った。ジジイは、分かってるのか分からんが微笑んでいやがる。財団に伝えて、この学校の事をバラシてやろうかね。然るべき対策を、いざって時に生徒に押し付ける悪質な校長が就いている学校ってな。

 

「今年も、グリフィンドールの完全勝利ですか。まあ、スリザリンが最下位から2位に返り咲いただけ良しとしておきましょう。」

 

 イドゥンがポツリと言った。

 

「先生。ハリー先輩は右手が軽度の凍傷になっているので、早く話を終わらせてください。応急処置はしましたが、ちゃんと医務室で見て貰った方が良いです。」

 

「ミスター・ブラック。そういう事なら、わしはエリナと話したい事があるので、ハリーを医務室へ連れて行きなさい。他の皆も、ロックハート先生を連れて行ってくれないかね?」

 

 という事で、エリナ以外の全員が医務室に向かった。俺は、右手が殆ど治りかけていたが、ほんの少し残っているという事で、苦そうで不味そうな黄緑の薬を飲まされた。実際そうだったけど。

 

 少し安静にするようにと言われた。秘密の部屋に関わった全員が。

 


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